
月岡芳年展、≪英名二十八衆句≫がすべて展示されるという惹きにやられて行ったのですが、「血みどろ絵」だけでない芳年の画業の全貌をしれたのは収穫でした。美人画や月の浮世絵も。そして戦闘画のやはりの素晴らしさ。年を重ねるごとに絵の上手さが増して、最晩年に到達した“最後の浮世絵師”の画に感動しました。
次の章は 転生・降臨ー”大蘇”蘇りの時代。
≪郵便報知新聞 第五百卅二号≫では捨てられた女の妖しい報道記事の挿絵が。
≪明治小史年間記事 皇后宮西京行啓鉄道発車之図≫の鮮やかな紫の傘。≪見立三光之内 近江石山 秋の月≫の青。≪見立多以尽 いっぷくのみたい≫の女のいろっぽさ。
≪美人七陽華 正五位柳原愛子≫の活発で溌溂な女性像。≪東京自慢十二ヶ月 一月 初卯妙義詣 柳ばし はま≫のグリーンの艶。≪新柳二十四時 午後十二時≫のヨルの風景。
そして明治15年から明治25年(1882~92)の最後の十年の作品達。ここにおいて芳年の筆はさらに究めていきます。
こうしたサスペンスフルな画の冴えも素晴らしい中で、晩年芳年は月百姿という月景のシリーズも手掛けています。
芳年翁の芸術はどんどん向上して行ったのが本当に感ぜられて。人間、研鑽は人生をかけての営みなのだなと感じ入りました。血みどろ画のエッジや、ワンダーをモノにしながら、さらに広い光景を描いていったその心の躍動、エナジーをもらえました。