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モネ それからの100年@横浜美術館 印象派から現代美術への水脈

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みなとみらいの横浜美術館にて開かれていたモネ展。モネ自身の絵画の他、現代美術に浸透したモネの華がみられて。春にみたビュールレ・コレクション展での印象派の流れの最後に、米国現代美術家にオールオーバーの祖として見出された≪睡蓮≫があったのも印象深いですが、この展覧会ではそこから現代に繋がっていった潮流がみれた気がしました。

クロード・モネ≪税官吏の小屋、荒れた海≫の破れる波しぶき、≪ヴィレの風景≫は”これモネなの!?”というくらいに印象派のスナップショット的な筆遣い。

今回はモネからの流れだと感ぜられる現代美術家の作品も展示していますが、その大きな集団にU.S.のアクション・ペインティングの一派がいます。ウィレム・デ・クーニングもその一人。≪風景の中の女≫だったり≪水≫はモネが睡蓮で魅せた風景の抽象化を人物画において更に進めた感じ。またルイ・カーヌ≪彩られた空気≫は金網を使って描いた”色の影”が新鮮で。2013年作の≪WORK 8≫の透過する絵具も印象的でした。

また日本人画家の作品も展示していて。中西夏之≪G/Z 夏至・橋の上 To May VII≫のライトグリーンにパープルや≪G/Z 夏至・橋の上 3Z II≫の水面、丸山直文≪puddle i the woods 5≫の暖色のパステル。中でも写真をデジタル加工して解像度を歪ませたような木版画の湯浅克俊≪Quadrichromie≫が素晴らしかった!

再びモネ。≪印象、日の出≫と対を為すような氷が浮かぶ≪セーヌ河の日没、冬≫。太陽の光が印象的な作品には≪テムズ河のチャリング・クロス橋≫≪霧の中の太陽≫がありました。他にも白く深い景色が広がる≪ジヴェルニー近くのリメツの草原≫≪チャリング・クロス橋≫も魅力的でした。

再び現代美術へ。やはりNYスクールのマーク・ロスコ≪赤の中の黒≫はずっとみていられ惹き込まれるような存在性。ゲルハルト・リヒターの≪アブストラクト・ペインティング(CR 845-5)≫≪アブストラクト・ペインティング(CR 845-8)≫は黄と灰が立体的に塗りこめられた多重絵画で素晴らしかったです。

松本陽子≪振動する風景的画面III≫のピンク・白・グレーの光の羽搏き。根岸芳郎≪91-3-8≫はロスコをカラフルにモコモコさせたようなカラーフィールドペインティング。丸山直文≪Garden 1≫はクリーム色の世界に緑が生える風景画が不思議な魅力。

そして想像以上に素晴らしかったのがロイ・リキテンシュタインの作品。アメコミを駆使した作品で有名な彼ですがドットで描かれた≪積みわら≫に、メタリックな鏡面と実線の有無を使って實界と水面をポップに描いた≪日本の橋のある風景≫!これが複雑な意図をなんとも簡便に表していて本当にみれて嬉しかったです。

ここから睡蓮をモチーフにした一連の作品群が。

9枚の絵画がウォーホルのように連続するルイ・カーヌ≪睡蓮≫。ジヴェルニーから株分けした大原美術館の睡蓮を描いた福田美蘭≪モネの睡蓮≫湯浅克俊≪Light garden #1≫が光画の縦縞で画き出した睡蓮も素晴らしかった。児玉麻緒≪IKEMONET≫≪SUIREN≫は太くプリミティヴな筆遣いで描かれた蓮池。水野勝規≪holography≫は岐阜のモネの池を寫した映像作品。

モネ本人による睡蓮の作品も展示されて。黄色の睡蓮の花が描かれた≪睡蓮≫≪睡蓮、水草の反映≫のもぞっと揺蕩う感じも好かった。また最晩年にモネが描いた≪バラの小道の家≫の鮮烈な赤にも晩年の紅の睡蓮を想いました。

最後の部屋はWWII以降の現代作家たちの絵画たち。

サム・フランシス≪無題(WC00956)≫はアンフォルメルの作品。青と紫が印象的でした。同じくサム・フランシス≪Simplicity≫はポロックのよう。ジャン=ポール・リオペル≪絵画≫もアンフォルメルな一枚。そしてアンディ・ウォーホル≪花≫の多重性も確かにモネ的ともいえそうかも?もしこの展覧会の瑕疵を一つ挙げるならポロックの作品が欲しかったですね。

そして本展覧会の一つの白眉だったのが福田美蘭≪睡蓮の池≫。高層ビルのリストランテのガラスに写り込んだテーブルクロスを睡蓮の葉に見立てた、モネが決して描かなかった夜景の逸品。さらに横浜展ではその朝の光景を描いた≪睡蓮の池 朝≫も展示されていました。

そして最後の部屋で格別に存在感を放っていたのは小野耕石≪波絵≫。小さな立体が粒粒に並べられて、3次元の筆触分割とも言えるような概念を破る作品。

モネという水脈がいかに豊かなユニヴァースを拡げていったかがよく分かる非常に愉しい展示でした。現代美術への導入としてのモネというコンセプトが素晴らしかったです。

by wavesll | 2018-10-15 19:49 | 展覧会 | Comments(0)
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