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京のかたな展 at 京都国立博物館にて刀に開眼す

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京のかたな展を京博にて観ました。いっやー凄かった!入場前は「刀剣だけの展示は渋すぎだろ…違いが分かるものなのか…」と想っていたのですが、名刀たちの波状乱舞に心も湧きたち、ピークには放心状態になるまでに。この受容体の開眼は、東博・国宝展で仏像・仏画に目覚めた並みのインパクト。

前期最終日、14:30過ぎに京博に着くと45分待ちとのこと。実質30分強くらいで入場出来ました。

3Fへ上がると場内にも列が。第一章は「京のかたなの誕生(平安時代後期)」。目玉の一つ≪太刀 銘三条(名物三日月宗近)≫をみるための列。近年はこういうの増えましたね。なんと場内のこの列に並ぶと40分かかるとか。本日は開館が18:00までなので、ここは後で観に来ようとスルーし展覧会の歩を進めました。

武士の登場を描いた絵巻で展覧会は始まります。≪前九年合戦絵巻≫と≪後三年合戦絵巻 三巻のうち巻下 飛騨守惟久筆≫の特に後者は人々の描写が流麗さもあって素晴らしかった。また≪十二類絵巻≫は擬人化されたタヌキが十二支になれなかった動物たちと軍をつくり十二支軍と血みどろの戦をして、負けて出家するというぶっとんだ絵巻。やばいねw

平安から鎌倉の初期の山城(京都)の刀は細身が多いイメージ。岐阜・南宮大社≪太刀 銘三条≫・福井・若狭彦神社≪太刀 銘宗≫・京都国立博物館≪太刀 銘吉家作≫や香雪美術館≪太刀 銘吉家作≫が美しかった。この時代は直刃にみえても小乱れらしく、乱れ刃の美しいカーヴが綺麗で。≪太刀 銘近村≫、刀剣博物館≪太刀 銘兼永≫、≪太刀 銘国永≫、そしてレアな鍛冶の≪太刀 国則≫といった一振りも。

そして3Fから2Fに降りて第二章「後鳥羽天皇と御番鍛冶(鎌倉時代前期)」。
後鳥羽天皇は、兄の安徳天皇が三種の神器と共に身投げし、神器がない状態で即位したコンプレックスもあってか、刀剣づくりに精力を傾けたと伝えられる天皇。彼の働きで刀工の身分が上昇するなど、日本における刀のポジションやクラフトマンシップが高められた歴史があります。

中でも京博・徳川美術館・林原美術館・黒川古文化研究所の≪太刀 菊御作≫が素晴らしくて。ここの菊の文様から天皇家の菊の家紋が生まれたとの説もあるそうです。刃文の様、湾れ(のたれ)や丁字、具の目という乱れ刃が時に波や山入端にみえて何とも美しい。≪太刀 銘(菊紋)一≫も好くて。東建コーポレーション株式会社≪太刀 銘一 鎺下ニ菊花文ノ切付アリ≫や東博≪太刀 銘国安≫も良かった。

そこから第三章「粟田口派と吉光(鎌倉時代前期ー中期)」。それにしてもこの展覧会、重文・国宝目白押し。よくぞこんなにも集めて呉れた。気持ちも徐々に高まります。ちなみに会場は8割方女性客だったのですが、女性二人連れから漏れ聞く会話がとんでもなくコアな刀剣話で、プロフェッショナルの戦場にやってきた新米の気分と成りましたw

愛知・熱田神宮≪太刀 銘国友≫、文化庁≪太刀 銘久国≫、株式会社小松安弘興産≪太刀 銘国清≫、京博≪太刀 銘則国≫の太いカッコよさ。≪太刀 銘国吉≫、東博≪刀 銘左兵衛尉藤原国吉(号鳴狐)≫のいかにも切れそうな感じ。立花家史料館≪短刀 銘吉光≫のアーミーナイフさ。愛知・熱田神宮≪剣 銘吉光≫は正倉院展の刀子を想い起して。≪短刀 銘吉光(号五虎退)≫は遣明使が虎を追い払った逸話も楽しい。

そしてここから『藤四郎』シリーズが。徳川美術館≪短刀 銘吉光(名物後藤藤四郎)≫、京博(永藤一氏旧蔵)≪短刀 銘吉光(名物秋田藤四郎)≫、東博≪短刀 銘吉光(名物岩切長束藤四郎)≫、文化庁≪短刀 銘吉光(名物博多藤四郎)≫、徳川美術館≪短刀 銘吉光(名物包丁藤四郎)≫、前田育徳会≪短刀 銘吉光(名物前田藤四郎)≫、東博≪短刀 銘吉光(名物毛利藤四郎)≫は毛利輝元が持っていたもの。後期には京都・豊国神社≪薙刀直シ刀 無銘(名物骨喰藤四郎)≫と徳川美術館≪脇差 銘吉光(名物鯰尾藤四郎)≫も展示されるそうです。

吉光だと≪小太刀 銘吉光≫や株式会社ニトロプラス≪短刀 銘吉光≫の滑らかな輝き。京博(淺田幸一氏寄贈)≪太刀 銘国定≫も好かったです。

第四章は「京のかたなの隆盛(鎌倉時代中期ー後期)」。

東博≪太刀 銘定利≫のスケールの大きさ。刃文がもうSmoke On The Waterみたいな煙り。いいなぁと想ったら国宝で。刀剣博物館≪太刀 銘国行(号明石国行)≫も水も滴るいい男っぷりで、やっぱり国宝でした◎

京博(永藤一氏旧蔵)≪短刀 銘国行≫や徳川美術館≪太刀 銘国俊(名物鳥養国俊)≫が小さい刃文が美しい。徳川美術館≪太刀 銘来孫太郎作(花押)/ 正応五□辰八月十三日(以下不明)≫や≪太刀 銘来国俊≫も素晴らしかった。

この来派、面白い逸品としては中世に復活した形での最古の鎗、≪鎗 銘来国俊≫なんかもありました。東アジア全域で矛はあっても、鎗という形式は日本独自のものらしいです。≪鎗 銘来国次≫は平三角がまた好し。

東博≪太刀 銘来国光 嘉暦二年二月日≫やウェイヴが美しい≪短刀 銘来国光(名物有楽来国光)≫、≪短刀 銘来国次≫の白の垂れ、≪太刀 銘来国次≫の手元の美しさ。≪短刀 銘光包(名物乱光包)≫や埼玉県立歴史と民俗の博物館≪短刀 銘備州長船住景光/元享三年三月日(号謙信景光)≫、山梨・恵林寺≪太刀 銘来国長≫や福井県立歴史博物館≪太刀 銘守弘≫も好くて。

そしてデカァい!度胆を抜かれたのは愛知・熱田神宮の≪太刀 朱銘千代鶴国安 木屋□研之(号次郎太刀)≫の巨大さ!こっれは凄かった!

刀の他、徳川美術館≪薙刀 銘了戒子息久信作 徳治三年戊申十月六日≫のソリもよくて。

香雪美術館≪刀 額銘了戒守能作≫の流水の美しさ。出光美術館≪太刀 銘国村≫の端正さ。和歌山・紀州東照宮≪太刀 銘国時≫の刃文の白い波。九博≪刀 銘九州肥後同田貫上野介≫は王貞治さんが持っていたものだそう。

そして1Fに降りて第五章「京のかたなの苦難(南北朝時代ー室町時代中期)」。

この展覧会のピークであり、そもそも本展に来る動機となったのが福岡市美術館≪刀 金象嵌銘長谷部国重本阿(花押)/ 黒田筑前守(名物圧切長谷部)≫!ここは最前で観たいと列に並び、7分程まって愈々拝見。

もうね、本当に此処まででも会場の熱気に当てられて芸術にのぼせていたのですが、へし切長谷部をみたら一気に閾値を超えて。なんて美しいんだ。織田信長の所蔵でもあったこの刀のなんとも野性的かつ実力が輝く無為の魅力。360度みれて、切っ先を眺めたのですが、どうにも魅入られて、斬られても喜んでしまいそうな境地になっちまいましたwなんか、音楽で名刀の刃文を波形として整えたいなんて妄想したりw

そこから株式会社小松安弘興産≪短刀 銘国光(名物会津新藤五)≫あたりは放心状態でwなんとかそこから再び正気を取り戻すまで時間がかかりましたw

≪短刀 銘正宗≫に”おお!正宗!”と昂揚して。FFでもそうですし、日本一くらい有名な刀工である正宗。けれども名前がはっきりしている刀剣は、短刀だけしか残っていないとは知りませんでした。そして有名どころだと刀剣博物館≪刀 銘村正≫も。蛇のような雰囲気を纏った刀でした。

黒川古文化研究所≪刀 無銘伝長谷部≫も好かったし、≪短刀 銘長谷部国重≫・≪太刀 銘長谷部国信(号からかしわ)≫・熱田神宮≪短刀 銘長谷部国信 藤原友吉≫も好かった。京博(野惠造氏・野壽二氏・鈴木美貴子氏寄贈)≪鎗 銘長谷部国信≫なんて品も。

≪短刀 銘信国≫・京博≪短刀 無銘≫・和歌山・紀州東照宮≪太刀 銘信国≫の煙のような刃文もいいし、福岡市美術館≪刀 銘京信国十七世之孫筑之前州源茂包造之/宝暦十二季春吉日≫のギラリさも好かった。

黒川古文化研究所≪短刀 銘平安城住光長/元享二年二月日≫や香雪美術館≪太刀 銘平安城長吉≫、岐阜・榊山神社≪太刀 銘吉則≫・香雪美術館≪短刀 銘三条吉則作≫・京博(浅田京江子氏寄贈)≪太刀 銘吉次≫・≪太刀 銘三条弥太守家/寿福円満軍勝≫・≪短刀 銘達磨≫も迫力があって。

日美で知ったのですが、刃文は粘土を塗ってある程度計算して出すそうで、Session22で知ったのは焼き入れの天然ものの他、後でアイライン加工を入れることもあるとか。刀って一種の抽象画というか、スウィッシュのキャンバスにおいて行う一種の定型詩な感覚もありますね。

そして第六章「京のかたなの復興(室町時代後期ー桃山時代)」へ。

刀身以外の展示は人波が途切れていましたが、≪阿国歌舞伎図屏風≫なんかも当時の刀の使われ方が見れていいし、≪堀江物語絵巻 岩佐又兵衛筆≫や≪祇園祭礼図屏風≫など画も良いものが多かったです。

≪刀 切付銘備州長船兼光 大町甚右衛門尉麿上之/嘉吉二年八月日 中心有之≫もいいし、徳川美術館≪刀 銘本作長義天正十八年庚寅五月三日二九州日向住国広銘打 / 天正十四年七月廿一日小田原参府之時従屋形様被下置也長尾新五郎平朝臣顕長所持≫のワイルドさがまたよし。京博≪刀 額銘来国光 / 切付銘埋忠麿上之≫も好かった。

また興味深かったのが≪短刀 朱銘元和二 正宗 / 光徳(花押)(名物朱判正宗)≫と並んで置かれていた≪刀 金象嵌銘本多美濃守所持 / 義弘本阿(花押)(名物桑名江)≫。この作者の郷は正宗の弟子らしく、彼自身も全然作品が残っていない幻の刀工だとか。正宗の刀はこんな感じなのかなぁと眺めました。

≪脇差 銘以南蛮鉄於武州江戸越前康継 / 骨喰吉光摸≫は骨喰藤四郎の模作で、死神のような龍が彫り込まれた刀身がかっこよかった!

山形・上杉神社≪鎗 銘城州理忠作 / 文禄二年十二月日≫に≪短刀 銘理忠宗吉/慶長二年八月日≫も滑らかに美しい。京博≪刀 銘山城国西陣住人埋忠明寿(花押) / 慶長三年八月日他江不可渡之≫の紋様がまたよくて。≪刀 銘肥前国忠吉≫や≪脇差 銘武蔵大掾藤原忠広 / 寛永六年九月廿四日 切物明寿七十二才時 此忠広埋忠明寿弟子≫も良く、≪刀 銘東山住美平 / 宗昌就≫は雪解けのような白の美しさ。≪刀 銘日州古屋之住実忠作 / 永禄九年七月廿二日≫のとろける感じ。≪刀 銘日州古屋住国広山伏時作(以下切)≫も好し。

≪短刀 銘藤原国広造 / 沢田道円所持≫も眩いし、東博≪刀 銘国安≫・≪刀 銘銘大隅掾藤原正弘 / 慶長十一年三月吉日≫に和歌山・紀州東照宮≪刀 銘信濃守藤原国広造 / 越後守藤原国儔≫の深い刃文。京博≪刀 銘越後守藤原国儔≫は円弧が綺麗で。

永青文庫≪刀 銘濃州関住兼定作(号歌仙兼定)≫は足軽向けの片手打の小振りな刀。同じく永青文庫≪剣 銘肥後住人越前守藤原国次 / 貞享四丁卯歳十月吉日≫は神具な太長な存在感。

京博(中山英子氏寄贈)≪刀 銘洛陽堀川住歳長≫の山の峰々のような刃文。株式会社ブレストシーブ≪短刀 銘濃州岐阜住大道 / 信濃守国広≫は鍾乳洞のような刃文。≪刀 銘伊賀守金道≫と京博(淺田幸一氏寄贈)≪短刀 銘伊賀守金道≫の簾刃も興味深いし、≪刀 銘丹波守吉道 / 為内藤九朗右衛門代々≫の乱れ刃の美しさに、≪刀 銘越中守正俊≫のオーラな刃文。黒川古文化研究所≪刀 銘山城大掾藤原用恵国包 / 慶安元年八月吉日≫も好かった。そして京博≪刀 吉行≫は坂本龍馬の愛刀ですが、今は本来とは異なる直刃調になっているそうです。

続けて第七章「京のかたなの展開(桃山時代ー江戸時代前期)」。

サーフな≪刀 銘河内守藤原国助 / 寛永十九年二月吉日≫に水が跳ねるような≪刀 銘摂州住藤原助廣≫、うねるリズムな≪刀 銘津田越前守助廣 延宝三年二月日 / 井上真改≫、≪刀 銘津田越前守助廣 / 延宝七年二月日≫や≪刀 銘於大阪和泉守国貞≫や京都・伏見稲荷大社≪太刀 銘粟田口住人善太夫忠縄 / 播州於姫路作之 刀身銘山城国稲荷大明神奉捧御剣 / 寛永十四年二月吉日≫そして京博(伊藤勉氏寄贈)≪太刀 銘粟田口一竿子忠綱 彫同作 / 宝永六年八月吉日≫のワルい感じ。

京博(浅田京江子氏寄贈)≪刀 銘粟田口近江忠綱≫の丁字のらせんな乱れ刃に和歌山・紀州東照宮≪刀 銘平安城住忠俊≫の津々とした雰囲気も好かった。

長い旅路だったこの山城の刀剣の旅路も第八章「京のかたなと人びと(江戸時代中期ー現代)」がラストパート。

京都・鞍馬寺≪黒漆剣≫は坂上田村麻呂の劔。そして京都・大覚寺≪太刀 銘□忠(名物膝丸・薄緑)≫と京都・北野天満宮≪太刀 銘国綱(名物髭切・鬼切)≫は源氏の宝という伝説が後に憑いた刀剣。

そして源氏兄弟刀に並ぶ前期の目玉の京都・建勲神社≪太刀 金象嵌銘永禄三年五月十九日義元討捕刻彼所持刀 / 織田尾張守信長(名物義元左文字)≫。天下の名刀が拝めるとは。歴史のスペクタクルですね。

また京都・石清水八幡宮で使われるインドネシアの≪クリス≫なんて剣も展示されていました。

京都・泉涌寺≪太刀 銘大和則長≫、京都・幡枝八幡宮≪太刀 銘幡枝八幡宮藤原国広造 / 慶長四年八月彼岸≫、京都・御霊神社≪太刀 銘平安城住国路作 / 慶長拾七暦十月廿二日≫、京都・新日吉神宮≪太刀 銘(菊紋)山城守藤原国清 / 寛永十年二月日≫、京都・伏見稲荷大社≪刀 銘鎮国神器伯耆国大柿宮本能登守菅原朝臣包則 / 明治元年十月八日奉稲荷社納稲荷神山剣石百日参籠シテ謹鍛之≫の綺麗な弧。

長刀鉾保存会≪長刀 三条長吉作 / 大永二年六月三日 切付銘去年日蓮衆退治之時分捕仁仕候於買留申奉寄附感神院江所也願主江刕石塔寺 / 之麓住鍛冶左衛門太郎助長 敬白 天文六丁酉歳六月七日≫の鎌のように図太く曲がる様が好かった。同じく長刀鉾保存会≪長刀 銘(裏菊紋)和泉守藤原来金道 / (菊紋)大法師法橋来三品栄泉 延宝三年二月吉日≫は湾れが好くて。≪太刀 銘平安駒井法眼慶任作≫も好かった。

明治以降も山城の刀工たちは刀を創っていきます。

京博(株式会社e-sword寄贈)≪短刀 銘大阪住高橋晴雲子信秀七十五歳作 / 於京都帝国大学鍛之 大正六年十二月吉日≫は京大に於いてつくられた刀。

また有栖川親王による≪刀 銘於舞子別邸 稠助 / 以一文字傳 予非鍛冶軍務余暇用日出 丸古釘慰造有不折不曲徳≫や親王が廃刀令でおまんま喰いあげていた刀工につくらせた東博≪刀 銘舞子有栖川宮庭前 / 明治四十三年十一月吉祥日 卍正次謹作≫、そして立命館にて刀つくりを学んだ隅谷正峯による≪刀 銘蕪城正峯処女作昭和十七年八月日 / 於洛北衣笠山辺立命館鍛錬場傘笠亭≫と、彼が最後につくった≪太刀 銘備前国包平作 / 傘笠正峯作之 / 平成八年十二月日(大包平写)≫にて展覧会はフィナーレを迎えます。

最後の山城の鍛冶の仕事を観て、まだみていなかった冒頭の三日月宗近の列に並んで。17:00頃になっていて待ち時間は20分でした。
その解説で、まさにこの三条宗近こそが山城の鍛冶の祖だと知って鳥肌が立ちました。浮雲のように三日月形に浮かぶうちのけがなんともファンタジックでした。

鉄という素材にこんなにも美しい魂を魅せるこの国の感性に、新しい地平線が開けた、そんな凄まじい鑑賞となりました。

by wavesll | 2018-10-31 06:51 | 展覧会 | Comments(0)
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