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ルーベンス展@国立西洋美術館 人景、忌際の土気色、烈迫の逞しさ、白き柔肌、獣・モブに至る全方位に優れる筆の画家の王

ルーベンス展@国立西洋美術館 人景、忌際の土気色、烈迫の逞しさ、白き柔肌、獣・モブに至る全方位に優れる筆の画家の王_c0002171_15020863.jpg
2018年最後のアート鑑賞はルーベンス展となりました。
キャッチコピーが「王の画家にして画家の王」でしたが、人景、忌際の土気色、烈迫の逞しさ、白い柔肌、獣・モブに至るまで全方位に優れた筆は画家の王という呼称が誇張に聴こえないハイレベルさでした。

まず初めに出迎えてくれるのがルーベンス作品の模写である≪自画像≫、外交官としても活躍したというルーベンス、聡明な威厳がありました。

そしてこれがみたかった!リヒテンシュタイン侯爵家の宝物、ルーベンスの長女≪クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像≫。ばら色の頬がなんとも可愛らしく耀く目がなんとも賢そう。

ルーベンスは古代の事物からインスピレーションを受けるというか、造形のモデルにしていて≪ティベリウスのカメオ≫の素描なんてものも。

また16世紀に流行った『人間観相学について』/ジョヴァンニ・バッティスタ・デッラ・ボルタの展示なんかも、人の顔を動物との類似から性格診断なんかもしていてなかなか面白かったw

また忌の際の土気色の顔だけはルーベンスが描いたというペーテル・パウル・ルーベンスと工房≪セネカの死≫の隣には2世紀前半の≪偽セネカ像のヘルメ柱≫も展示されてました。

ルーベンス展でまずルーベンスの腕の凄さを感じたのがこの忌際の人々の表情で。≪法悦のマグダラのマリア≫の死を迎える時間の顔、一方で威風堂々とした祈りを発しながら天命を迎える≪聖アンデレの殉教≫の迫力。

死に瀕する時は人生で最も劇的な場面とも言えるかもしれません。そこにはきらめきもあって。輝く光の癒しが描かれている≪天使に治療される聖セバスティアヌス≫の優男ぶりもさることながら、≪キリスト哀悼≫に描かれる女の子の可愛さも印象的で。そこには斑岩の彫刻技法を蘇らせたフランチェスコ・フェッルッチ(通称デル・タッダ)≪瀕死のアレクサンドロス大王(ウフィツィ美術館作品の模作)≫も赤茶と白の二色で彩を添えていました。

ルーベンスが主題としたものにはヘラクレスもあって。獣の画が上手いと評判のスネイデルスにドラゴンを描いてもらった共作のペーテル・パウル・ルーベンスとフランス・スネイデルス≪ヘスペリデスの園で龍と闘うヘラクレス≫も今でいうWネームのコラボな魅力があるし、ルーベンスだけで描いた≪ヘスペリデスの園のヘラクレス≫も輝度が高く今にも動き出しそうな生命感がある筆致で。

そしてルーベンスの魅力は可愛い女性を描くことにも長けていて。≪「噂」に耳を傾けるデイアネイラ≫の白い柔肌。人妻が老人たちにセクハラを強要された場面を描いた≪スザンナと長老たち≫は二作展示。ちょっと固く荒さのある筆致でばらの花が誕生した場面を描いた≪バラの棘に傷つくヴィーナス≫の隣にはルーベンス派の画家が潤柔に描いた≪ネッソスとデイアネイラ≫が。

そしてその同室にはルーベンスが後世に与えた影響のパネルも掲げられていて。その隣にはピエール・オーギュスト・ルノワールがルーベンス作≪神々の会議≫の模写がかけられていて。ルーベンスから印象派にも脈々と美術の遺伝子は伝わっていったのかと感じ入りました。

忌際、柔肌の可愛らしさ、英雄の逞しさについでさらにルーベンスは劇的場面の複合的な陣形構図でも冴えわたる筆致を魅せます。

≪聖ウルスラの殉教≫の群衆の一人一人に込められた感情とデザインとしてのうねる流れの光景、美味しい艶がある筆致の≪サウロの改宗≫でもポーズと配置が全体としての湧きたつ劇的場面な効果を生んでいて。そしてそれの極致が≪パエトンの墜落≫。神の雷にやられる青年とそれをみる女神たちが降り注ぐ光に向かって斜め上へ向かう構図のなんたるドラマティックさか。

この三枚の隣にはルーベンスから大きく影響を受けたルカ・ジョルダーノ≪パトモス島の福音書記者聖ヨハネ≫が。これも構図の動きが良かった。

さらにさらにルーベンスは獣の描写も卓越していて。ペーテル・パウル・ルーベンス?≪聖ゲオルギウスと龍≫の禍々しい龍の獣な筆!ペーテル・パウル・ルーベンスと工房≪ヘラクレスとネメアの獅子≫のグレーのライオンもキャラが立っていて。ルーベンス、死角がない。

またこの部屋に展示されていたピエトロ・ダ・コルトーナ(本名ピエトロ・ベッレッティーニ)≪ゴリアテを殺すダヴィデ≫もパステルに残酷な場面を描いていて好かったです。

いよいよラストの部屋。ここがまた大作が目白押しでした。

≪マルスとレア・シルウィア≫は大小二枚が展示されていて。愛し求めるマルスと、恋焦がれることへの恐れもあるけれど目が潤むレア・シルウィアがなんとも感情が伝わって。そしてプットーのいたずらな笑顔もw

≪ヴィーナス、マルスとキューピッド≫の母乳の与え方には驚愕wそして囚われの父親に母乳を与える娘を描いた≪ローマの慈愛(キモンとペロ)≫も聖性と共になんともコケティッシュさがあって。≪豊饒≫の女神も綺麗でした。

ヤーコブ・ヨルダーンスに帰属、ルーベンスの構図に基づく≪ソドムを去るロトとその家族≫もカラフルな色彩ながら後ろ髪を引かれるロトの表情が印象的で、ルカ・ジョルダーノ≪ヨーロッパの寓意≫も大陸自体を擬人化してしまうというコンセプトが面白かった。

最後を飾る大作が≪エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち≫。白い躰の優美とふくよかさ、蛇の脚をもつ赤ん坊をみつけたのに後ろに描かれる多乳の神像も含め、なんとも明るいエロスをみせつつ女の園が描かれていました。

王の画家にして画家の王。イメージだとルーベンス展って自分は好きだけどそんなに集客はないかなと思ったら結構な人の入りで。日本においてもその魅力が伝導率を高めているのだなぁと。素晴らしき展覧会体験となりました◎

by wavesll | 2018-12-28 15:53 | 展覧会 | Comments(0)
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