![]() この展覧会では19世紀後半から20世紀初頭までのロシア絵画を、四季の風景や人物画であらわしています。 最初は「春」。アレクセイ・サヴラーソフ≪田園風景≫の林檎の樹に咲く花で幕が開けます。イサーク・レヴィタン≪春、大水≫の白樺のスナップショットのような景、ワシーリー・ヴェレシャーギン≪アラタウ山にて≫の鹿、イサーク・レヴィタン≪樫の木≫の聖剣伝説のような綺麗さ。そう、綺麗で、写実的な絵画世界は現代のCM等にも共鳴する様な感覚。アブラム・アルヒーポフ≪帰り道≫はGMOのガッキーのCMのよう。しかし同時代のフランス絵画の表現の冒険からすると”きれいなだけに終わるのだろうか”なんても想ったり。綺麗なのだけど。 そして「夏」。色(ツヴェート)と花(ツヴェトーク)の語源からの冒険的な表現のミハイル・ヤーコヴレフ≪花のある静物≫から始まり、ボリス・クストージエフ≪干し草作り≫のマトリョーシカ的な朴訥な画。イワン・シーシキン≪樫の木、夕方≫はパキっとしていて綺麗。熊たちが遊ぶイワン・シーシキン≪松林の朝≫もいいし、イワン・シーシキン≪正午、モスクワ郊外≫の夏の入道雲。アポリナリー・ワスネツォフ≪祖国≫とワシーリー・ペローフ≪植物学者≫の透明感にアルカージー・ルイローフ≪静かな湖≫のパタゴニアの広告のような濃い自然。そしてレフ・カーメネフ≪サヴィノ・ストロジェフスキー修道院≫はなんと『惑星ソラリス』の撮影があった地を描いた絵画だとか!ロシアの夏は確かにタルコフスキーが寫した水草の透明感に通じるものがありました。 そしてイワン・アイヴァゾフスキー≪海岸、別れ≫のイタリアの海の夕暮れに、≪嵐の海≫の水色の海に空に開けるサミットの美しさ。 それでもまだ想像を超えてはこなかったのですが、ニコライ・ドゥボフスコイ≪静寂≫にはぶっ飛ばされて。豪雨が降る直前の雲の圧倒的な存在感が宙に浮かんで。超自然的な光景にも感じる、”ここにしかないカタチ”がありました。 「秋」の訪れ。エフィーム・ヴォルコフ≪10月≫の白樺林に落ちる黄葉。セルゲイ・ヴィノグラードフ≪秋の荘園で≫は黄色い建物がGood. グリゴーリー・ミャソエードフ≪秋の朝≫は黄葉の森の美しさがめいっぱいつまった作品で。秋を擬人化したイワン・ゴリュシュキン=ソロコブドフ≪落陽≫も美女でした。 ついに「冬」。ワシーリー・バクシェーエフ≪樹氷≫のきらめく氷の美。ミハイル・ゲルマーシェフ≪雪が降った≫のガチョウの可愛らしさ。アレクセイ・サヴラーソフ≪霜の降りた森≫も綺麗で。ロシアでは樹氷は霜の概念に含まれるそうです。また春になると溶けてしまう伝説を描いたヴィクトル・ワスネツォフ≪雪娘≫に、3頭だての勇壮なダイナミズムを描いてくれたニコライ・サモーキシュ≪トロイカ≫も好かった。 そして人物画。何より女性たちの絵画が素晴らしかった。 やはり群を抜いて素晴らしかったのがイワン・クラムスコイ≪忘れ得ぬ女≫。憂いを湛えるなんとも美しい女性に惹き込まれ、一説にはアンナ・カレーニナともいわれるこの女(ひと)にはときめかされました。 またクラムスコイの≪月明かりの夜≫の映画の名シーンのような場面もまた麗しい女性がいて。イリヤ・レーピン≪画家イワン・クラムスコイの肖像≫では彼自身のダンディな姿も描かれていました。 ヴィクトル・ワスネツォフ≪タチヤーナ・マーモントワの肖像≫のちょっと非バランスな瞳の美しさ。ミハイル・ネーステロフ≪刺繍をするエカテリーナ・ネーステロワの肖像≫の知性を感じる佇まい。ワシーリー・スリコフ≪カリーナ・ドブリンスカヤの肖像≫のキリっと可愛い姿にフィリップ・マリャーヴィン≪本を手に≫の実直な美に、ニコライ・カサートキン≪柵によりかかる少女≫は森の香りがして。パーヴェル・チスチャコーフ≪ヘアバンドをした少女の頭部≫はツルゲーネフ『あいびき』から着想を得たものでした。 子どもたちの画も良くて。 ウラジーミル・マコフスキー≪小骨遊び≫とイラリオン・プニャニシニコフ≪釣りをする子供たち≫のいきいきとした姿。一方でアレクセイ・ステパーノフ≪鶴が飛んでいく≫は荒涼とした草原に子供たちが風に吹かれている姿で。オリガ・ラゴダ=シーシキナ≪草叢の少女≫のプラトークとサラファンの赤ずきんのような少女の可愛らしさ。アントニーナ・ルジェフスカヤ≪楽しいひととき≫の幸せな一時に、アレクサンドル・モラヴォフ≪おもちゃ≫は赤で明るい太めの筆遣い。 セルゲイ・ヴィノグラードフ≪家で≫の調度品と子供の佇まいからのドラマ性。グリゴーリー・セドーフ≪フェオドシア・オゴロードニコワの肖像≫のモデルの不安定さや知性に、ワシーリー・コマロフ≪ワーリャ・ホダセーヴィチの肖像≫の人形と遊ぶ可愛らしい盛りの幼女にアレクサンドル・キセリョフ≪本に夢中≫のキュートさ。オリガ・デラ=ヴォス=カルドフスカヤ≪少女と矢車菊≫の可愛らしさにはほっこりしました。 最後の間は「都市と生活」 ニコライ・トレチャコフ≪ダーチャでの朝≫は美術館創始者の甥によるダーチャ(別荘)の風景。グリゴーリー・セドーフ≪民族衣装を着たクルスクの町娘≫の神々しさ。 またニコライ・クズネツォフ≪祝日≫はこの展覧会のピークの一つで、草原に寝そべる少女がハイレゾな筆致で描かれて。写実で描かれる素晴らしい光景でした。 さらにセルゲイ・スヴェトラーフスキー≪モスクワ美術学校の窓から≫の聖なるモチーフにニコライ・グリツェンコ≪イワン大帝の鐘楼からのモスクワの眺望≫の金色の建築の装飾という年風景の画も。アレクセイ・ボゴリューボフ≪ボリシャヤ・オフタからのスモーリヌイ修道院の眺望≫の水辺はまるでイタリアの風景のような味わいがありました。そしてニコライ・タールホフ≪朝食≫は印象派的な筆さばきで。 この時代のロシアの風景画を始めとして印象派などの革新ではなく写実の中でスナップ写真的な美を現したロシアの地政学的な絵画の進化のバランスになかなか面白いView体験となりました。1/27まで。結構人出がありましたのでお早めがお薦めです。
by wavesll
| 2019-01-11 21:21
| 展覧会
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