未来と芸術展@森美 世を創る意図と技術の刺激のテーマパークの光翳

アブダビやシンガポールで進む未来都市計画から始まる本展はまるでテーマパークのようなサプライズにあふれていましたが、同時に「世の中は誰かの意図に満ちているのだ」と怖くなりました。その意図に自覚的でないと支配されてしまっているのだと。

「支配」には二種ある。強制、つまり法や暴力で無理矢理従わせること。これは可視化されやすい。一方で環境設定において“その環境下では自然と一定の行動を取りやすくなる”タイプの支配がある。そして建築というのはこの種の意図の集積で。もっと言えば芸術作品自体この種の意図は無論あるけれど。とはいえ、建築の日本展でも思ったけれど、森美の建築展示は確かに見事。

フォスター+パートナーズ ≪マスダール・シティ≫

MADアーキテクツ ≪山水都市リサーチ≫ビャルケ・インゲルス・グループ ≪オーシャニクス・シティ≫

ポメロイ・スタジオ ≪ポッド・オフグリッド≫XTUアーキテクツ ≪Xクラウド・シティ≫
ヴァンサン・カレボー・アルシテクチュール ≪2050 パリ・スマートシティ≫ネリ・オックスマン & ザ・メディエイテッド・マター・グループ ≪江戸のエデン≫

ザ・ワイ・ファクトリー/デルフト工科大学 ≪ポロ・シティ≫

会田誠 ≪NEO出島≫

本編の前、エレベーターホールでのAI美空ひばりの歌唱からして未来のコントロールされる不穏さはあって。私はこのプロジェクト結構好意的だったのだけど、恐らく最高の環境で観て“これは、贋作だ”という意思が強くなって。少なくとも「美空ひばり」ではなく、秋元康などの意図に満ちたプロジェクトだった。技術は環境を変えていく。

無論、技術の進歩は何もディストピアにばかり繋がるわけではありません。建築は人の稼働空間を情報・宇宙にも拡大するし、珊瑚や菌類にエンパワードされた建築、或いは「ムード」そのものでつくる建築など直方体ばかりの味気ない建築を越えていくプレゼンテーションにはわくわくもさせられました。

≪2025年大阪・関西万博誘致計画案≫

アリババグループ グリーティングチーム ≪中国杭州市のライフストリーム≫山梨知彦 + Loose Interfaceプロジェクト・チーム（日建設計）≪Loose(ルーズな)Interface(インターフェイス) もう一つの世界の誕生と、ティンバーインターフェイスの可能性≫

MX3D & ヨリス・ラーマン・ラボ ≪MX3Dの橋≫

ビャルケ・インゲルス & ヤコブ・ランゲ ≪球体≫

ハッセル・スタジオ + EOC ≪NASA 3Dプリンター製 住居コンペ案≫

アヒム・メンデス/コンピュテーショナルデザイン&建設研究所ザ・リビング/デイビッド・ベンジャミン ≪ハイ・ファイ≫

エコ・ロジック・スタジオ ≪H.O.R.T.U.S. XL アスタキサンチン.g≫

WOHA ≪オアシア・ホテル・ダウンタウン≫

ニュー・テリトリーズ / フランソワ・ロッシュ ≪気分の建築≫ダーン・ローズガールデ ≪ロータス・モデル≫

未来と芸術展においてフェーズは建築から衣服・生活へ。ここのブースはよりぐっと親近感がありましたね。半歩先の未来と言うか。それはロボティクスにも繋がって人間を拡張していくのだなと。

エイミー・カール ≪「インターナル・コレクション」シリーズ≫

中里唯馬

Archiphilia プロジェクト・チーム（竹中工務店）≪Archiphilia ー建築に生命が宿るー≫

長谷川愛 ≪ポップ・ローチ≫

ネクスト・ネイチャー・ネットワーク ≪ビストロ・イン・ビトロ≫クラレンベーク & ドロス ≪ヴェールの女性III (「菌糸体プロジェクト」シリーズより)≫タクト プロジェクト ≪ダイ・イット・ユアセルフ≫≪LOVOT≫≪aibo≫サイモン・デニー ≪中央集権化vs脱中央集権化≫ウィメンズ・テクノロジー協会(Wotech) / 交通整理ロボットマチュー・ケルビーニ ≪倫理的自動運転車≫ヴァンサン・フルニエ ≪「マン・マシン」シリーズ≫ヒュー・ハー ≪リハビリのための装着型ロボット≫ ≪身体拡張のための装着型ロボット≫遠藤謙 ≪OTOTAKE PROJECT≫パトリック・トレセ ≪ヒューマン・スタディ #1、5 RNP≫ガイ・ベン=アリ ≪cellF≫アートは科学と社会の交差を切り取ります。ゴッホの親族の細胞からつくった『耳』、熱射に耐えうるように頭皮をぐにょりと引き伸ばしたデザイナーベビー、オランウータンと人間の子供は動物で臓器をつくることのモラルを問いかける一方で遺伝子組み換えで光る絹の着物は美しかった。
やくしまるえつこ ≪わたしは人類≫

エイミー・カール ≪進化の核心?≫

ディムート・シュトレーベ ≪シュガーベイブ≫

森村泰昌 ≪肖像（ヴァン・ゴッホ）≫

アギ・ヘインズ ≪「変容」シリーズ≫

アギ・ヘインズ ≪体温調整皮膚形成手術≫

アギ・ヘインズ ≪延長骨形成≫

アギ・ヘインズ ≪二重頬形成≫

アギ・ヘインズ ≪足指切除≫

アギ・ヘインズ ≪表皮性マイオストミー≫

リー・シャン（李山）

李山 ≪再構造案6≫

李山 ≪再構造案7≫

李山 ≪再構造案8≫

李山 ≪再構築案15≫李山 ≪再構造案21≫李山 ≪再構造案24≫パトリシア・ピッチニーニ ≪親族≫長谷川愛 ≪シェアード・ベイビー≫ANOTHER FARM ≪Boundaries≫

人口知能が生み出すアート。イスラム建築の「ムカルナス」を読み込ませて生成させた立体作品。味を4要素に分け客に合わせて出すという未来の寿司のプレゼン。「世界のすべて」というタグ画像を学習させAIにつくらせた画像動画と、実在しない人々の自動生成tweet。

ミハエル・ハンスマイヤー ≪ムカルナスの変異≫

OPEN MEALS ≪SUSHI SINGULARITY≫

≪エレナ・ノックス≫東京大学 池上高志研究室、大阪大学 石黒浩研究室、ジュスティーヌ・エマール、渋谷慶一郎 ≪オルタ1≫
マイク・タイカ ≪私たちと彼ら≫

ダン・K・チェン ≪末期医療ロボット≫メモ・アクテン ≪深い瞑想：60分で見る、ほとんど「すべて」の略史≫

未来と芸術展のムカルナスは恐らくミフラーブの構造なのではと想いますが、凹からなるモスクの美に対してAIはパイプオルガン的な凸でした。都市がいかに進化してもまた津波気候変動ウイルスと自然環境が今喫緊の課題としてあり、その設定者も思わずにはいられませんでした。その意味でまるで天の目のように監視カメラが機能する作品やデータモノリスは示唆的でした。

ラファエル・ロサノ=ヘメル & クシュシトフ・ウディチコ ≪ズーム・パヴィリオン≫アウチ ≪データモノリス≫

非常に示唆に富んだ展覧会、3/29まで。AI美空ひばりの展示は今月までだそうです。