
Oneohtrix Point Neverの新譜がリリースされて。
OPNはその鬼才振りを聴きながら、『Garden of Delete』くらいしかリアルタイムで追っていなくて、『Garden~』は同時期のArcaの盤もそうでしたが、激しくはあるのだけれど、驚くべき独創性はそこまで感じられなくて。
独創性、革新性について、『OK Computer』から『In Rainbows』辺りのRadioheadに「イノヴェイティヴな音楽は『違和感』をもたらすものだ」と刷り込まれた思いが私はあり、”そうだ、この機会に当時「とっつきづらい」と想っていたOPNの過去作を聴いてみよう”と。
で、チョイスしたのが『Returnal』, 『Replica』, 『R Plus Seven』の三枚。
『R Plus Seven』から聴いたのですが、これが物凄い面白い!何というか、10'sクラシックな風格もありながら今聴いても鮮度があるし、同時にちょっと『AKIRA』っていうか、80sっぽさも感じられたり。
個人的には2010年代の最重要アルバムはDaft Punk『Random Access Memories』で、EDM全盛の中で放たれた『RAM』で80sリヴァイヴァルが決定づけられたと思っていたのですが、同時期の本作にも80sの馨りがするというか。90s,80sリヴァイヴァルのVaporwaveの起こりが2010年前後ですから、その辺りの萌芽、時代の空気を的確に掴んでいたのだなぁと。
そして次に聴いた『Reprica』、これには2011年の作で、『R Plus Seven』よりも尖った作風は90s的といえるかもしれないなと感じました。さっきから「80s的」「90s的」とは言っていますが、そのスパイスの活かし方と何よりファンダメンタルのあふれる独自性がOPNの作品からは感じられて。自らの素地に、香辛料を化学反応させてさらに音盤のクリエイティヴを高めているのだなと。
そして聴いた『Returnal』、此の始まりのノイズの美しい波景といったら!こーれは凄い。さざれ石の波濤のような音の海の中で、音楽が鳴っている。この人はやっぱり民族的な打音を電子音楽に入れ込んでいくのが本当に上手い。聴いていて本当に愉しく、たまたまWebでみてチョイスしたこの三作品がどれも当たりだったので、ちょっと全作品聴いていかねばなるまいなという気持ちにさせられています。
この三作、まだ全然聴き込んだとはいえない雑感ですが、OPNはその時代時代にストラテジーを立てて、自らと化学反応を起こさせる題材を選んでアルバムを制作しているように感じました。最新作の『Magic Oneohtrix Point Never』ではWEEKNDを迎えてかなりPOPなつくりにしていて、ちょっとまだ良さがつかみ切れていないのですが、冒頭に言った様に「わからない」ことは次代の音楽であるかもしれませんので、まだ評価は寝かせておきたいと思います。少なくとも『Returnal』『Reprica』『R Plus Seven』は確かな傑作だなと2020の今聴くと思った次第です。