Speaker Music - Black Nationalist Sonic Weaponry (bandcamp)
リズムアナリストであるDeForrest Brown Jr.のPlanet MuからSpeaker Musicとしての2ndリリース.
その紹介文が素晴らしく、僭越ながら引用させていただくと
QT 2位 Speaker Music 「Black Nationalist Sonic Weaponry」
間違いなく、今年最も衝撃を受けた作品。NYのDeForrest Brown Jr.という方のプロジェクトで、テクノとフリージャズを基盤にした音楽とのことですが、その言葉から四つ打ちにサックスが乗っかっているような音楽を想像して聴いていない方がもしいらっしゃるのなら、とにかく今すぐ聴いてもらいたいぐらいです。始まって5秒でこれは尋常ではない音楽だと感じるのではないかと思うので。BLMについての思想が強く反映されている曲タイトルを眺めながら、乱打されるドラムの打撃音にサンドバッグにされるように聴いていると、自分はもうその場から動けないくらいですよ。それぐらい、圧倒的な聴取体験をもたらしてくれた音楽です。UQ
QTニューヨークの多作なプロデューサー。一定のペースを保ちステップする強靭なビートを這いずり回るようなエグいベースが牽引する。テクノでありジャズでもありヒップホップでもある恐ろしくタフな音楽。ブラックミュージックの偉大さと凄みにただただ狼狽するしかない大大大傑作。UQ
こう書かれると”果たしてどんなアルバムなんだ!?”と想像力が掻き立てられます。
で、聴いてみると、暗黒的な電子の硬質なビートにBLMのナレーションが止揚する現代電子フリージャズ。
一聴して感じるのは”怒り”。これは闘争のアルバムでした。おそらくセリフに端的に表れているのでしょうが、音だけ聴いてもその怒りは伝わってきます。
今月に入って様々な年間ベストをみて、聴いて。数多の人の琴線に触れた新譜を拝聴して、2020年と言う1年の輪郭がみえてきたというか、世の歪みや災禍から、重々しい、或いは内省的な音楽がみてとれて。そこからいくと私が今年聴いていたのは能天気というか、沈む気持ちをグルーヴでチアアップするものが多かったように思います。そしてそれらは主には旧譜で、時代状況から生まれたものではなかったなと。
無論疫病の不安はあったけれど、どちらかといえば人の関わりが減ったのはwebに元からどっぷりな人間には順風ですらあったかもしれません。順風というか、問題意識のない人間は現状が逆風の人の気持ちに無理解でありがちです。そして今年は人が社会と闘っている姿を良くみた年でした。彼らが感じる社会に吹き荒ぶ逆風を完全には共感できないというか、寧ろ体制側に自分はいてしまったのではないか。比較的安全圏(にいると思っている)な自分は何が出来るだろうか。
それは一つには耳を澄ますことだと思います。もしかしたら権力闘争で敵対するかもしれない相手が言う事にも、聴くべきものはあるはず。ましてやノブレスな第三者ならば傾聴するオブリージはあるはずです。今年ほど「徳」が軽視され、同時に重視された年もないでしょう。多数派には少数派の意見を掬いあげる度量が欲しい、耳を傾けることは、その第一歩です。
そして聴く本作、最後の30分を越える「On Bloodthirst and Jungle Fever (ft. Ariel Valdez and Catalina Cavelight)」はどんどんハイヴォルテージになってとてつもない地点まで持っていかれます。コントロールをスレスレ越えてしまっているというか。人は手負いの時、自分が苦しみ切っているときに、”助けてください”と懇願するより、寧ろ意固地に凶暴になるものです。これは一種の人間のバグというか、プライドの為す仕組みで。さっき強者に徳を言いましたが、逆に弱者は徳をなす余裕もない事は、一つ理解しなければならぬことだと思います。
無論、弱者が世の中ひっくりかえしたら理想郷が築かれるなんてお花畑は言いません。ロベスピエールの昔から急進左派は寧ろ恐怖を撒き散らしました。また政治は権力闘争であることはその本質として在ります。私自身「正義」なんかは存在せず、それぞれの立場の「欲望」だけが存在するのではとすら思います。それでも、今、耳を貸すべき声は闘うしかない状況に陥っている人々から聞こえてくるように思います。その切実さをこの音から感じました。