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リーダーシップ白熱教室視聴メモ。社会変革は傾聴から始まる。

ETVで2013年に放送された「リーダーシップ白熱教室」を6hぶっ続けで見返していました。


ハーバード大学ケネディ行政大学院・通称ケネディスクールで30年間にわたり公共政策におけるリーダーシップの講義を行っているロナルド・ハイフェッツ教授による全6回のワークショップ。

このエントリではその際に行ったメモのまとめと、その後に感想を書けたらと想います。

以下視聴メモ

・まず第一にリーダーシップと権威・影響力は異なる

・権威とは関係性の中で影響力を行い代わりに人々はサービスを受ける事

・信頼とは相手の心が正しいと信じ、サービスを提供してくれると信じる事

・集団内の優先順位に関しては

1経験/専門知識
2進むべき方向を示す
3集団を守る
4秩序の維持、対立をコントロールすること

これらが権威を形成する。権威とは「自分たちの価値観を代表する者」に与えられる

・また公式な権威より非公式な権威に実がある

・だが、良く混同されるが権威とリーダーシップは別物

・権力は人々の期待に応えないと損じるが、リーダーシップの行使により平和や繁栄のサービスをするにしろ、シンガポールのリークワンユーの様に期待に逆らう政策をして経済発展を目指すこともある

・リーダーシップとは素質や個人の特質ではない

・生来的な特質で社会的な優位に立ちやすいものもある。赤ちゃんに対する実験で、刺激に敏感に反応するグループと動じないグループだと敏感に反応する赤ちゃんは成長した時社会的に優位にならない傾向

・年齢、体の大きさ、見た目などの遺伝的要因が個々のアイデンティティを形成していく
・自分から志願するタイプが社会的優位に立つタイプ

・しかしリーダーシップは社会的優位性とは別個のもの
・カリスマ性とリーダーシップもまた異なる

・リーダーかどうかは問題解決に進展をもたらせるかどうか。リーダーシップとは頼られることでも権力、影響力でもなく「困難や問題に立ち向かい、前に進むために大勢を動かす手腕のこと」

・故にリーダーシップの分析単位は「仕事、問題の進展状況」である

・偉大なリーダーと言われる人はとんでもない失敗を犯してもいる。チャーチルもそう。つまりリーダーシップは人物の特徴でなく、実践に対しての評価であり、どのように問題解決に挑戦を試みたかが大切

・政権中枢にいなくても国を動かしたりした人もいる。反逆したらいいのかというのも違う。例えば市井の人でも堤防を構築した人もいる。集団的な困難に集団を動かして対処する、リーダーシップとは実践である

・問題には
1専門家が解決法を知っている「技術的な問題」
2「一般市民が適応を必要とする問題」
がある

・権威とリーダーシップの違いの例としてのキング牧師
彼には無論公式な権威も非公式な権威もあったが、キング牧師が動かさねばならなかったのは権威の外側、支持者でない大衆であり、そのためには「学びの戦略」「教える戦略」というリーダーシップが必要だった

キング牧師にとっても重要だったのは新しい価値観に一般大衆が適応できるように導くこと、考えを改めさせるための戦略だった

・リーダーシップの行動、人々を導くという事は単に正しいことをすることではない

・リーダーシップに関する基本的な失敗を避けるためには、既に解決策が分かっている・技術で対処できることと、技術だけでは改善できない事(一般の人々が新状況に適応する努力がいること)の対処を区別すること

・例えば心臓病を患った人は手術(医師の技術)だけでなく、手術後には煙草を吸ってはいけないなどのライフスタイルの改善と言う適応をしないといけない

・リーダーシップは技術と適応の診断をするのが大切で、診断と行動は反復のプロセスであり、発見と適応も反復のプロセス。状況の中で適応

・専門的・技術的解決策がなく、一般の人を適応的チャレンジに導かないと解決できない話がある。権威は解決策が求められがちだが、技術的な解決策がないことがある

・適応しやすい環境づくりへの援助はできるが、問題を解決するには国民の努力が要る
・環境を整えても直面する現実は肩代わりできない。その時私たちの価値観や願望とのギャップが問題を露わにする

・危機的な状況に於いて権威はより強大な権力を獲得しがちだが、カリスマ指導者は根本的・体質的な改善を社会にもたらさない

・性急に解決を求めず、直面する問題は何なのか、問題の診断・分析・定義・分類をしないといけない

・新しい適応力を創り出すには力量の限界を越えなければならず、それまで力量の無さを痛感しないといけない。そのためには学びなおしも必要

・リーダーシップで大切なのは多様な見方を調整すること

・それは生物学的な概念に似ている。適応とはDNAの特定・破棄・温存の選択からの革新

・適応とは環境に対する反応
・機能している部分、機能していない部分の特定

・何事もゼロからは始まらない。変えないものを特定することでより適応は上手くいく。劇的な変化とは保守的な物で、文化のDNAの総量からみれば、革命が起きてもほとんど変わらない

・リーダーシップで変化をもたらすにせよ、伝統的な価値観や歴史的背景をきちんと残すことを報せることが変革の重要なポイント

・そのたった1%の変革が可能性を生み出す

・解決策はほとんど組織内部にある。外部からもたらされることは、地域内部を理解していない

・名著『ポジティブな逸脱の力』では何か問題があったときに、地域社会を注意深く観察し、良い地区にあるプラスの差異を特定し、それを広めることから解決策を組み立てる

・プラスの差異のアプローチは問題を抱えている人々自身が問題だと認識することで、その人自身が解決できるように促すメソッド

・同じ状況下で複数の人間がリーダーシップを働かすことはある。集団的な問題には、人を動かす、適応するという意味で大勢の人がリーダーシップを働かすことがある

・適応が必要な問題は上からの指示より複数の観点から問題に取り組むことは必要。作業をしやすい環境をつくるために権威を使うこともある

・人は適応を回避する。その傾向に対抗するのがリーダーシップのもう一つの仕事

・避ける傾向は2つある

1責任転嫁。例えば権威あるものへの責任転嫁。問題の根は文化にある。ギリシャでは依存や恩顧主義など

2注意をそらす。娯楽などに意識をそらし、能力に合った問題しか特定しなくなる

・リーダーシップを発揮するには絶望を直視しないといけない。改革するために問題を考え続けないといけない。文化や戦略や能力に向き合わないといけない

・外部コンサルが失敗する理由は、問題を分析するときに人間の適応の要素を外し技術論のみになってしまうから
・真の解決策は人の心や考え方を変え、新しい能力を備える事

・人は変化を嫌うが、いい方向なら別。変化に抵抗するのは何かを失うリスクがあるから

・リーダーシップは人々が失うものにどう耐えるかを探らないといけない。喪失の危機は時に誇りにまで及ぶから

・リーダーシップとは不平不満を言う事ではなく歴史から未来へと人を動かすこと。自由と叡智を以て未来へ進むこと

・人々の喪失への恐怖を乗り越えるには、改革する組織の文化、土壌を理解することから始める。組織の文化に一旦適応する。内部から組織を変えないと、やりすごされる。特に官僚組織には。十年単位で住み、根差して変えていく覚悟がなければ変革はできない

・文化の違いを越えてリーダーシップを発揮するには注意深く耳を傾け、文化が許容できる範囲で変革しないといけない

・文化を高く評価するのは100%残すことではなく、適応とは何かを捨てて変えていく能力。その文化の人を変える前に信頼を得ないといけない

・例えば彼らの暴力の力学を理解するには、コミュニティに入って、問題の本質を理解しないといけない

・リーダーシップに必要なのは人類学者の様に「何をすべきか、何をしてもいいか、誰と何をし誰に協力してもらうか」。リーダーシップを発揮するには誰も行ったことのない世界に行かなくてはならないことがある。コミュニティの力学を知っている人にコンタクトを取る

・行動を起こさないのはダメ、行動を起こすのに足りなかったことを分析する。リーダーシップを発揮するには自分が忠誠を尽くす人と向き合う事

忠誠の対象とは
1職場と言う共同体
2家族・友達・御近所といった社会的な共同体
3自分の先祖

・変化を実現するには忠誠を尽くす人達に向き合うことが大切

・リーダーシップを発揮する機会を活かせなかった理由は?誰をがっかりさせただろうか?「リーダーシップは地位の高い人に任せて一般人は文句を言えばいいんだ」という人は?

・リーダーシップを行うのは一般人でも可能

・抵抗する人が何を失うのか特定し損失を受け入れさせることが大事。その分他の価値は買えないことが大事

・ある慣習であったり文化・価値観は親からの愛情とないまぜにインプットされる。それを「間違っている」ということは損失であり抵抗を産む

・従来の価値観を変えるには歴史と戦ってもらうことが必要

・大切な人達との軋轢を越えていくように損失の痛みを引き受けてくれるように人々を導くことが大事。その為には人々が何を失うのか分かっていなければ始められない。今までの歴史に敬意を示しつつ、新しい一歩を踏み出すことが肝要。変革の痛みに深い敬意を示さないといけない

・現代、グローバル社会から取り残されてしまわないように変革は必要

・価値観を捨てさせるには相手の処へ行き耳を傾ける。すると相手の価値観の中に敬意を払えるものを見つけることが出来、敬意を払えない価値観は捨てるように説得できる。

・相手の価値観や人生を知るとどう説得すればいいか見える。

・相手の大事な思い出を捨てさせることなく変容させることを目指す

・未来に持っていく価値観と捨てて欲しい価値観を明確に区別する

・深い思い入れを理解し、とても大切にしている価値観は残すようにしないといけない

・リーダーシップとは自分の価値観を相手に押し付ける傲慢な行為ではなく、人々の価値観の内部矛盾を特定することで、既に持っている価値観に沿って生きることを促すことだ

・人々は目を背けたがる。矛盾を直視するのは難しい。キングは「私にはビジョンがある。それはアメリカのビジョンに深く根差したビジョンだ」と人々の信じる価値観と生き方は矛盾していると言った。

・権威を振りかざしては本当の意味ではリーダーシップの効果は上がらない。ここにそれぞれに適応しないといけない。真に社会が変革するのは人々がリーダーシップをあちこちで発揮する場合。何故ならリーダーシップは潜在的な能力を生み出すこと。カリスマ性に頼っては依存を産むことしかない。コミュニティが持つ適応の能力を発揮するには大勢がリーダーシップを発揮するのは大事

・私は問題を認識している。乗り越えなければならない試練について学び、想定される未来に向かって色々と工夫している。しかしどうやったら未来に辿り着けるか分からない。何故なら進化の過程において私たちは学びながら前へと進むからだ。ただ単に敷かれた道を前へと行進するのではない

・どうやったら消耗し潰れず、高い志を失わず熱い精神のまま生き生きと活動し続けられるのか

・どんな集団であれ過去(歴史)から現在、未来へ進む。変革を乗り切れるように支え続けることがリーダーシップである

・問いを発して、そのためのデータを提供し、次世代に適応するのびしろ・可能性をもたらす。その為には歴史と向き合うことが重要。大きな変革でも文化的DNAの大部分は失われずに保たれる

・人々は変化に抵抗する。その時とは1リスクを伴う時、2何かを失いそうなとき

・「失うものはこれです」といった上で「本質的なものを残せるならその損失は受け入れる価値がある」と説明することが大切

・価値観の変化を定着させるには損失がもたらされても価値があると説得しなければならない。中心的な物は保たれ、集団は繁栄を維持できるのだと

・ハンセン病などの民間伝承を信じ科学を信じない社会を再教育するには20年はかかり、家族とも緊張状態になるかもしれない

・だから戦略を以て、まず身内に意識を変えるところからやらないといけない。その時家族内に嵐が起きるがそのバランスが悪い状態に対応することが最初の仕事。奥さんの親族への忠誠心をきちんと理解する。誰がカギとなる人物かを特定する。どうやって切り出すべきか、どう味方を見つけるか考え、孤立しないで自分を中立化させる

・リーダーシップとは人が混乱する時期に支え続ける事。異なる意見の言い争いから時間をかけて新しいやり方を学んでいく

・リーダーシップの実践は徐々にゆっくり。失敗したら修正し再挑戦する。次はどんな手を打つべきか、どう話すべきか考え、投げかけた疑問から何がわかったか考える

・だからリーダーシップを発揮する立場の思考はゆっくりではいけない。状況の変化に素早く対応しないといけない

・リーダーシップとは文化全てを捨てさせるのではなく、伝統や文化、価値観のどの部分を保持するか、どの部分を諦めてもらうように働きかけるかの査定をすること

・相手の価値観を理解したいと思っても、相手に敬意を示せない場合どうするか

・人々は真実を否定し現状を維持するための自己欺瞞をする。人々は事実や現実の濃密な分析を受け入れようとしたがらない

・どういう国家を目指すか。外部に問題を求めず、内部からの成長改善が必要になる

・最も大切な戦略は命を落とさない事と素早く決断を下すこと

・バルコニーの上に立って全体を大局的に眺める。状況を吟味し分析する。何故変化に抵抗するか考え、吟味した中身を確かめに行く。色々な人に会い、傾聴する。誰に話しを持っていくか、誰と力を合わせるか、誰と信頼関係を築けばいいか特定する。共同体の中の忠誠心がどこにあるのか、進歩の鍵は誰か、誰が何を学ばなければならないか、妨害するのは誰かを特定し戦略立案する

・リーダーシップは診断と行動の繰り返し

・単独で改革を成し遂げることは出来ない。2種類のパートナーが絶対必要

1協力者:基本的な考え方は同じだが違うグループに属する

家族や信頼して話を聞く人の言葉はパワフル。また協力者がいると複眼的になり状況をまとめ分析しとった行動から学び修正して次の行動が起こせる。リーダーシップは即興の行為、プラン通りにはいかない。ただ、グループが異なるために利益が相反することが有る故に協力者と分かち合う情報は新味しないといけない

2相談役:忠誠心で対立することなく利害関係がない人。気にかけて元気づけてくれる相手。リーダーシップの発揮の価値を思い出させてくれる人

どんな人もずっと常に相談役には居られない。喋りすぎず、相談役を使い分ける必要もある

・リーダーシップを発揮するときがどうやったら分かるか?どうやったら効果的にできるか

→未来を見据え、どんなチャレンジが自分に訴えてくるか考える。愛する者のためにしたいと思うことからリーダーシップ始まる。

・孤独と絶望のどん底でも前進し続けるスピリットがいる

・個人攻撃でないと言ってくれるパートナーがいる

・自分自身に戻れる聖域が必要

・数値化の世界に我々は住んでいる。数値化ツールは便利なものだし何事も予算なしには経営は出来ない

ただ数値化に慣れると数値化が真実だと想いがちだ。しかし数値化できない真実は沢山ある

善を数値化することは出来ない。

一人の子供の目に光をともすことは数では表せない善を行ったことになる。一つの命を救う事は世界を掬うこと。

・達成できないことばかりみたり数値を挙げる事に執着しては絶望を産む

・リーダーシップの実践ん位必要なのは愛情を注ぐ行動にとどまる能力。小さな善を行えたことを嬉しく想う事。人間性と向き合う事

以上視聴メモ。
以下感想。

「リーダーシップ」と言っても、この講義でのリーダーシップは権威とかとは一線を画した社会変革のための「困難や問題に立ち向かい、前に進むために大勢を動かす手腕」のこと。

特にリーダーシップが必要となる、一般大衆に新状況や新思想への適応がないと問題解決ができないというものは、まさにCOVID-19への世界各国の対応状況が想い出されました。例えば当初マスクを着けるという行動変容を起こせなかった欧米諸国や、今、外出自粛を守れない首都圏の人たちなど。こうした時に技術(ワクチンや特効薬)を大衆が期待するのはまさにだなと。

そして講義を聴く内に、”なんか欧米諸国のオリエンタリズムというか文化的帝国主義の傲慢なのではないか、このリーダーシップとやらは”と想っていたのですが、流石にその疑問への回答は用意されていて。

講義の中で口酸っぱくいわれているのが、社会変革をもたらすリーダーシップを発揮したければ、相手が大切にしている文化・価値観をきちんと傾聴する上に本当に組織を変えたければ性急な変化を求めるのではなく場合によっては数十年かかる覚悟がないといけないと。

リーダーシップとは自分の価値観を相手に押し付ける傲慢な行為ではなく、人々の価値観の内部矛盾を特定することで、既に持っている価値観に沿って生きることを促すこと。キング牧師は「私にはビジョンがある。それはアメリカのビジョンに深く根差したビジョンだ」と人々の信じる価値観と生き方は矛盾していると言った。

ここは慧眼だなと想いました。いわゆる出羽守など、Twitterで社会変革をやろうとしている人たちが悉く反発を招いて実効力がないのは、相手の主張の奥にある相手が大切にしている心情を無視して全否定して自分の考えを押し付けているだけだと想いました。そこには傾聴がない。本当は相手を変えたいと思ったらその相手の話を真剣に聞かなければならないのに。

講義では価値観を捨てさせるには相手の処へ行き耳を傾ける。すると相手の価値観の中に敬意を払えるものを見つけることが出来、敬意を払えない価値観は捨てるように説得できるといいます。最初から自分の主張だけを押し付けては、社会は動かない。その点で140文字と言うtwitterでは異なる思想同士の対話には決定的に向かないのかもしれませんね。

私自身、今まで人から何かに巻き込まれて嫌な思いをしたことが結構あり、人を巻き込むことも、人に巻き込まれることも嫌でしたが、本当に社会変革を目指すメソッドなら、きちんとした傾聴と、相手の大切にしている価値観への敬意を以て、寧ろそれにフォーカスして、主張の矛盾を適正にすることで変容を行うことだと。それには非常に共感をするところがありました。

本当に社会規模で変革を行うリーダーシップを行うためには自分を律する本当に厳しいハードルを自分にも求めないといけませんが、一般人でもリーダーシップを発揮することは出来るとのことで、市井の一人として、出来ることをやっていきたいなと想った次第でした。

by wavesll | 2021-03-03 19:28 | 書評 | Comments(0)
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