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エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』アニメの様にファンタジックなアフリカのめくるめく神話的冒険譚

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お気に入りのTwitter Botであるアフリカのことわざさんで何度も拝見していた『やし酒飲み』を読みました。

こっれが面白い!10才の頃からやし酒を飲むくらいしかしてなかったと語る主人公が、父の死、やし酒造りの死でその生活が送れなくなり、再びやし酒造りに会い連れてくるために死の町へ旅に出るというのが大枠の物語。

そして死の町に辿り着くまでに差し入れられる旅路の挿話が「死神」「<頭ガイ骨>以外を借り物を使っている奇妙な生き物」「半体の赤ん坊」「幽霊島」「えじきの精霊」「不帰(かえらじ)の天の町」「白い木の誠実な母」「赤い町の赤い住民」「幻の人質」「王子殺害者で汚された町の賢い王様」「赤ん坊の死者」「未知の山の山の生物」「魔法の卵」など、めくるめくファンタジックな展開にわくわくしっぱなしで。

この感覚、HUNTER X HUNTERで暗黒大陸の五大厄災がティーザーされたときの様なドキドキなノリに似てるあれが全編にわたって間髪入れずに展開されます。

やし酒飲みも、実はジュジュという魔法具を使えたりしてシャーマンか何か(自分では”この世のことはなんでもできる神々の<父>”と名乗っている)で、相当な能力者。そしてアフリカの神話的・伝承的な森(Bush)の恐ろしい生物な化け物たちからもたらされる危機を切り抜けていくわけですが、そんなに凄いのに旅の理由が「やし酒が飲みたいから」というのが面白いw

また「恐怖」というのが一つのキー・ポイントとなっていて。この危機にびびりまくっていることを主人公は正直に吐露します。それでも状況に対応していくヒーロー像は、逆にマンガ・アニメの主人公っぽさもあって。

そう、この『やし酒飲み』、すげーアニメでみたいんですよね。演劇化もされたそうですが、絶対にアニメ表現とあうと思う。当たり前ですがアフリカの物語なので主人公や登場人物は黒人でしょう。『彌助』もいいけど、こんな黒人主人公のアニメみてみたいなぁ。

そして文体も面白くて。原語はピジン語交じりのヨルバ語的ブロークンな英語らしいのですが、「だ・である」と「です・ます」が混在する文体であったりして翻訳もニュアンスを伝えようと工夫してるなと。

アフリカの神話伝承的物語はエジプト神話を除いては初めて読んだのですが、マジックリアリズムよりもさらにファンタジーな、アフリカ版アラビアンナイトのような幻想奇譚に一気に嵌りました。この作者のチュツオーラの他の作品も読んでみたいです。全部で174ページでぐいぐい読めるので、南米文学・千夜一夜物語・ギルガメシュ叙事詩・世界各地の神話辺りが好きな方には目茶苦茶お薦めです。

by wavesll | 2021-04-05 23:34 | 書評 | Comments(0)
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