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ホメロス『オデュッセイア』物語のインスピレイションの源流 貴種流離譚の冒険噺

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『イリアス』に続いて『オデュッセイア』で古代ギリシャの神話世界を旅する読書体験をしていました。

旅、まさに『オデュッセイア』はオデュッセウスの大いなる旅路が画かれて。
『オデュッセイア』の時代は『イリアス』から数年後。トロイア戦争を終えた後、オデュッセウスは自分の領地であるイタケに帰ろうとしますが、神々から様々な苦難にあった後に仙女カリュプソに惚れられ島に閉じ込められています。

一方でオデュッセウスの邸宅では、もうオデュッセウスが死んだものと考えられて、彼の財産と美しい妻ペネロペイアを狙った求婚者たちがオデュッセウスの財産を食いつぶしています。物語はオデュッセウスの息子テレマコスが、父の消息を聴くためにトロイア戦争で父と共に戦ったネストルそしてメネラオスを訪ねに船出するエピソードから始まります。

『イリアス』でも、登場人物たちの”天命”とも言える先の展開のネタバレがありましたが、『オデュッセイア』は”成程あの続きをこう書くか”とニヤリとさせられる後日談としても存在して、例えばアキレウスやアガメムノンは物語時点でもう死の世界に行っていたり、”あの兵どものその後”が画かれて。

とはいえ、アカイア側トロイエ側の夥しい歴戦の英傑たちが相まみえる戦争叙事詩であった『イリアス』に対し、『オデュッセイア』でフォーカスされるのはオデュッセウスの旅、そしてオデュッセウス一家の物語で。上巻では彼の漂流譚、そして下巻では求婚者たちをやっつける様、そしてペネロペイアの愛の真意を探る様が画かれて。

下巻の、アテネの加護を得て乞食になりすまして自宅へ潜り込み、最終的に求婚者たちに鉄槌を下す噺も面白いのですが、何しろ上巻で語られるオデュッセウスの流離譚が面白過ぎて。

キコネス人の国、ロートパゴイ族の国を経て、隻眼の巨人キュプクロス族の国に辿り着くが、部下を喰われたり散々な目に遭う。巨人ポリュペモスを盲いにし脱出するが、それでポリュペモスの父であるポセイダオンの怒りを買う。風神アイオロスに援けられイタケに帰れそうになるが寸ででおじゃんに。またしても巨人族(ギガンテス)であるライストリュゴネス族に襲われ命からがら逃げだし、悪い女神キルケの島につき、最初襲われるがキルケに惚れられ月日を過ごす。

キルケの許を発つため、一旦冥府で予言を聴いた後、船出し、魔女セイレンや怪物スキュレ、魔の淵カリュブディスの脅威を切り抜けるが陽の神ヒュペリオンの牛を部下が屠ったため神の怒りを買い、オデュッセウスの船はゼウスの雷で破壊され、全滅。オデュッセウスは一人カリュプソの島に流れ着いて冒頭場面、神々の会議で解放され、パイエケス人の国に辿り着き、イタケへ送ってもらう。

というグランドラインを航海する海賊たちもびっくりな冒険が展開されて。実際、この物語は後世の様々な物語に影響を与えていることでしょう。パイエケス人の王女であるナウシカアはあのキャラのインスピレイション元でしょうし、キルケが秘薬で人間を豚などに変えてしまうくだりは千と千尋を想起させます。

知略と精悍な肉体ひとつで様々な苦難に立ち向かうオデュッセウス(「憎まれっ子」の意)の冒険を読むのは大変に愉しいものでした。『イリアス』はトロイエ側に感情移入して読んでいましたが、この話では完全にアカイア側に心を寄せました。

『イリアス』『オデュッセイア』はトロイア戦争にまつわる八篇の叙事詩からなる「叙事詩の環」の一部で、ギリシア神話と言うのは様々な詩人たちが一つのユニヴァースを物語っていく形になっているのはマーヴェルみたいで面白く感じました。

その中でもホメロスは頭抜けていると聴きました。実際。『イリアス』も『オデュッセイア』もかっなり面白くて。神話と言うのは物語の原型であり源流ですが、そうした教養的なところを抜きにしても単純に凄く面白い力ある叙事詩でした。実際の地中海世界の地理と神話世界のレイヤーがかぶさるように、現代もWebというレイヤーが在ったり数々のポップ・カルチャーがあったり、一種私たちも「叙事詩の環」づくり一端に参加しているような気もするような、力ある物語の読書体験になりました。

by wavesll | 2021-05-07 01:23 | 書評 | Comments(0)
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