
6/21は夏至。この一年で一番日が長い一日は北欧においては夏至祭などで大いに祝われるものです。
そこで北欧気分を味わおうと、ちくま学芸文庫の『北欧の神話』を読んでいました。
本書では北欧神話の重要性を「ゲルマン民族の神話」であったとし、「チュール」、「オーディン」、「トール」、「フレイ」がそれぞれ火曜日、水曜日、木曜日、金曜日に対応している等、ギリシア神話と共にヨーロッパの根幹をなすものであると語ります。またローマ神話との対応だと、よくオーディンはユピテル(ギリシア神話のゼウス)と対応するなんて説がありますが、本書ではオーディンは寧ろマーキュリー(ギリシア神話のヘルメス)と対応するという説が取られていました。
オーディンの神格化が進んだのは、彼が自分の身をユグドラシルに磔にし、ルーン文字を創造したから、詩の神として詩人にもてはやされたからという説もありますが、いわゆる全知全能の神とはかけはなれた、ゼウスよりもさらに人間味に溢れてえこひいきとかしたり、片目を知恵を得るために差し出したりとか、不完全性が面白い神なのが興味深いですね。
ギリシア神話ではゼウスの前にクロノスがいましたが、北欧神話でもオーディンたちの前にも世界があって。無の霧の中にギンヌンガの裂け目があり、ムスペルヘイム(炎の国)では巨人が見張りをしている。ユミルという巨大な生き物が生まれ、ブリという神が生まれ、ボルという神が生まれ、霜の巨人一族が生まれ、ボルが巨人の女ベストラと結婚してオーディン、ヴィリ、ヴェーの三人の神が生まれていきます。
ここら辺の物語はどこか『古事記』のイザナミ、イザナギの物語を想わせました。オーディンたちはアスクとエムブラという男女の人間をつくり、彼らはミッドガルドに住みました。ヨルムンガンド(ミッドガルド蛇)といい、FFVII好きにはニヤリとさせられる元ネタが北欧神話にはいっぱい。またフェンリル(ロキの子供の狼)、スレイプニル(オーディンの八本足の愛馬)なんかは昔のインターネット人にはクスリとさせられます。また「ベルセルカー(狂戦士 バーサーカー)」なんて言葉もあったり。ワルハル宮(戦死した死者の魂がラグナロクまで収容され鍛錬の場となる宮殿 ヴァルハラ)やヴァルキュリー、ユグドラシル(世界樹)なんかももろにそうですが、わくわくさせられるかっこいい概念に北欧神話はあふれていますね。
北欧神話で面白いのは神と巨人族という対立軸だけでなく、神にもオーディンたちアサ神族と、ヴァナ神族がいること。これらの神や巨人は交流をしていて、例えばヴァナ神族のフレイやフレイヤはアスガルドに来ていること。ここら辺は出雲と大和と言うか、古代の民族的勢力圏の話なのかなと。
また北欧神話最大のトリックスターであるロキはフェンリル、ヨルムンガルド、ヘルの父親でもあり、ラグナレク(神々の黄昏 最終戦争)を引き起こす主要因にもなるのですが、そのイタズラっぽいキャラはどうも憎めない魅力があります。トールに花嫁衣裳を着せて巨人のところに潜入させてミョルニルの槌を取り返す噺なんか、あのトールのごつい野郎が花嫁姿なことを想像するにわらけてきますw『エッダ』が基本ユーモラスに物語を叙述しているのもありますが、北欧神話のこのユーモラスな部分は、ラグナロクの血生臭さと好いコントラストを生んでいますね。
そしてラグナレク後の世界再生の話も興味深く読みました。兵どもが夢の跡、それでも世界は生き残った神々と共にまた歩み出します。ここら辺なんかはエジプト神話の世界観に通じるものがあったりもしますね。
オーディンが不平等に勝利を人間の間に振り分けたり、あるいは争いの種を撒いたりしていたのは、来るべきラグナレクで闘う戦士をヴァルハラに集める為という説明何かは封神演技にも通じる処を感じたりして、北欧神話を通して、人間の中にある神話の原型にアクセスするような気持にもなる読書でした。また『エッダ』なんかだともっと詩的な表現もあるのかな?そういうものも読んでみたくなりました。