
何処にも行けないし、厭なことは起きるし、そんな鬱々とした日々、”パラオでもいきたい…”とお思いの方に、読書で南洋へ心を飛ばす御提案。
本書『パラオの神話傳説』は「傳」の字でも分かるように旧い本で、昭和4年から6年に当時日本領だったパラオで蒐集された神話・伝説をつづった本。その為レイヤーが多数あるというか、パラオの海外旅行だけでなく、日本の時間旅行も味わえる感じです。
アマゾンだと高かったりするのですが、私は非アマゾンの日本の古本屋さんたちがやってるサイトでみつけ、安価に購入することができました。
パラオの文化圏には漫画でも知られるペリリョウ(ペリリュー島)や、古代の巨大な貨幣でも知られるヤップ島なんかもあって、そうした南洋の文化、文字を持たなかった彼らの神話・伝説が、こうして現代文明の前に消滅する前に認められたのはとてもいいことだなと想いました。
そこで出てくる神々は、名前もウヘル・ア・ヤングヅとか、ラッツムギカイだとか、ホダル・メレクだとか。人名もティプティプフミーユフだとか、エビル・タハラバスだとかオバク・エラ・ティカダサオとか、もう想像を越えた世界が広がりトリップ感があります。
神話には神々と人との交わりであったり、部族の長がそのなかでどう表れたかの物語であったり、海蛇や大蛇、鼠なんかも多数登場して、神と人と生き物が近い世界観。特に鼠とかが人を産むこともあったり、非常にシームレスに心が人と自然が繋がっている感がありました。神々も里に度々現れますし、人々も呪文というか歌をよく歌うし。
そんな話もありながら、部族間での戦争の話も度々出てきたり。パラオもこういう人と人との歴史の積み重ねが、伝説化して行ってるんだなぁと、注訳と聴きなれぬ単語たちと格闘する旅的な読書をしながら想った次第でした。
オクヰヅだとかゲランムスだとかガルホロンだとかオルワンガルだとか、パラオ各地の地名も多数登場して。いつかパラオも行ってみたいし、この神話たちの舞台となった場所をまなこで観たくなりました。