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『リグ・ヴェーダ讃歌』辻直四郎訳 古代インドの人たちの精神活動を顕したバラモン教の根本聖典

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リグ・ヴェーダ、インド文化の初頭を飾りインド哲学の本源をなす重要文献.すべて口授で伝承され,後にサンスクリット語で集録された.もろもろの神を讃えて,財産,戦勝,長寿,幸運を乞い,その恩恵と加護を祈った歌たち。インドの仏教以前の宗教的知見・神話的な世界には前々から興味があって。で、この本が絶版になっていると聴き、手に入れられるうちに買った方がいいだろうと古本屋サイトで取り寄せたのでした。

そこで描かれるのは暁紅の女神ウシャスや雨神パルジャニアといった自然神を讃える歌達。ヴィシュヌであったり、ルドラ(のちのシヴァ)であったり、後世のヒンドゥーとは神の立ち位置が違っていたり、アグニ(火の神)とか、何か日本語の語源にもなってそうな語感だとか、アーディティア神群の中でヴァルナの伴侶としてミトラが登場したり、洋の東西をまさに繋ぐ感覚が面白い。リグ・ヴェーダの神々の源流はイランの『アヴェスター』から来ているものもかなりあるようです。一方でヤマ(死者の王)は仏教では閻魔大王になったり。ヤマは知っていましたが、それに近親相姦を迫るヤミーという妹がいるのは今回初めて知りました。

リグ・ヴェーダにはデーヴァ(神)とアスラ(悪魔)が登場しますが、二つとも超自然的な力を持っている存在で、一読したところ仲魔のように入り混じっている感じ。また全十巻の内、第九巻はソーマ(神酒)について描かれたもので、神々が痛飲するこの蜜のような酒は、雨のメタファーであり一種性液のメタファーにもなるのかなと思いながら読んでいました。

そのソーマ(ゾロアスター教のハオマ)を大変好むヴァジュラ(金剛杵)を使う雷霆神インドラは父殺しの出生の秘密を持つところなどはゼウスとクロノスに通じる処もあるなと。またブラフマナス・パティ(祈祷主)の概念はウパニシャッド哲学においてブラフマンに繋がっていきます。さらにリグ・ヴェーダでは宇宙創成論と関連して子が親を産み親が子を産む循環発生という神話があり、これは非常に興味深い処でした。プルシャ(原人)の体から世界がつくられたというのは北欧神話のユミルに通ずるところがありました。

また讃歌には神々のことを歌うだけでなく、例えば賭博をやって全財産すったことを嘆く歌とか、長髪のヨーガの修行者の歌とか、主婦が指導権を握るための歌もあったり。リグ・ヴェーダの最後の讃歌は和合のための歌でした。

読んでいて、”あぁ、なるほど、科学が発展していないときは世界の成り立ちや不可解な現象をこのような形で処理していたのだな”と。自然は災害ももたらすし、多くの戦や、人間関係の諸々の事象も含め、古代インド社会で生きる上で起きる様々な厄災などの根本原理を神に求め、一種呪文のように神の力を借りて精神的に解決していく。

現代からすると「科学が発展していないから」という事も出来ますが、だからこそ人間の身体体験に基づき肚に落ちる説明体系になっていて、当時も一種のカウンセリング的な効果があったのかもなぁと。その見返りにバラモンはダクシナーを求めたのだなと。また西洋と東洋の間にある世界を垣間見る上でも新しい旅な読書になりました。

こうなるとゾロアスター教のアヴェスターとか、その後のインドのウパニシャッド哲学も気になるwいつか読んでみたい処です。

by wavesll | 2021-09-15 02:49 | 書評 | Comments(0)
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