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serial experiments lain インターネットと神秘 人は情報に落とし込めるのかという思考実験の傑作

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serial experiments lain、このアニメの存在は私は98年当時は全く知らなくて、それこそ10年代にネットロアのようにTwitterで話題が出たことで知ったのでした。

カルト的な、コアで熱狂的な人気があるという噂話を聴くにつれ興味は高まっていたのですが、違法サイトで観たりBlu-rayを借りに行く行動までは繋がらなくて。しかし今(10/25まで)Gyaoで配信されていると知り、アクセスしてみると、その異様な面白さからビンジ・ウォッチングをして。けれど物語情報の重量があまりに凄くて、結局数日かけて全13話を見終わることになりました。

98年、初代iMacが出ていたくらいの、それこそNetScapeでYahooを通じてネットをみていたような時代に描かれたテクノロジーと神秘主義の掛け合わさったような、一人の少女に纏わるこの物語は、2021年の今のネット環境において物語に現実が追い付きつつあるというか、相当時代を先取りしていたのだなという印象。

物語を彩り推進する因子として90年代的な時代様相の援助交際、クラブ、薬物から、集合無意識、果て又グレイまで詰め込み、当時のまだニューエイジ的、或いはAKIRA的な残滓からか、特に序盤は非常にドラッギーな演出が施されていて。とりわけ影が異世界へ繋がるような暗黒として描かれていたり、とにかく密度の濃いエナジーにあふれた作品で。物語は”この先どうなっちゃうんだ?すっごいことになったぞ”というめくるめく展開を見せて、けれども全く支離滅裂なものではなく、きちんと作品内で説明すべき骨格は説明されていて。凄い作品でした。

そして岩倉玲音というキャラクターの持つ、デジタルの精霊の様な象徴性が凄くて。彼女の存在は自己同一性が揺らがされる形で画かれていて、システムにより万能感を得ること、あるいは気づいたらそのシステム自体が己とは違う形で一種のモンスターとして独自に出現していく様などは『アルジャーノンに花束を』や『DNA2』などを想起したり。安倍吉俊先生をフックアップした作品でもあったのですね。このキャラクターデザインの持つ魅力も物語に大いに説得力を持たせていると感じます。

レイヤー、「ワイヤード」といわれるインターネット的な世界が、此の物語では死後の世界的にも集合無意識に繋がる様にも描かれ、現代のように社会化・脱アングラ化されたネット空間と言うよりも神秘主義的な舞台装置として機能していて。

一方で、人の全人格データをネット上に落とし込むなんて話はSNSやAIを経た今、現実化の端緒につきつつあるような話題で。特にこのCOVID-19でリアルワールドでの活動が制限されて、自分の生活・実存がWebに大きく存在が傾くようになった人は多かったのではないか、なんて私自身はちょっと想ってしまうくらいで。攻殻機動隊やエヴァのような現実離れしたSF作品と言うよりも、ネット環境のある時代の、口裂け女の様な伝承的なホラーとして愉しんだところはありました。

物語の終わりに関しては、人間・玲音はあれで幸せだったのだろうか…と想ってしまって。EGOというか、肉体があり、一人の人間であるという制約こそが幸せなのでは?と私は想ってしまったのですが、そこまで思い入れを彼女に持つくらい、此の物語にみいっていたのだなとも。ビッグデータみたいな形で、人間存在が数字に落とし込まれていくことが現実化しているからこそ、”人間性、人間であること、物理的な生命”であることに愛おしさを、今、感じているのかもしれません。本当に色々な思索が湧きだす、刺激的な作品でした。

またアニメを見終わった方向けの情報なのですが、今serial experiments lain 2020 eXhibitionというインターネット上の展覧会も開かれていて。こちら無料で観れるのですが、セル画がみれたり、いいアフターとなってくれました。NFTなんかも売ってたりしたのですね。この尖り方は90年代文化の一つの先端で、今もって私なんかは魅了されてしまうものが在るなと思った次第でした。

cf




by wavesll | 2021-10-22 01:46 | 映画 | Comments(0)
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