アイヌ・北方民族の芸能
『日本民謡大観』をApple Music上に在る70枚を聴いて、そこで欠けていた
沖縄の音楽を個人的にDigり、残る北海道・樺太を考えた時に想起したのが、在りし日の代官山蔦屋書店で借りた3枚組CD『アイヌ・北方民族の芸能』でした。
1973年にビクター音楽産業株式会社が文化庁の協力、文学博士・本田安次氏の監修で刊行を開始した画期的な全集『日本の民俗音楽』の別巻である本作は、私が知る限り最高のアイヌ音楽のオーセンティックなコンピレーションだと想います。
ウポポやリムセといった形式の唄は、『日本民謡大観』を聴いたうえで聴くと改めて”本州の音楽とは全くリズムから何から異質なものがここにある”と日本と言う国の多民族性を感じます。このビート感、シンプルながらちょっとドライヴがかっているかっこよさ、少し陽性な妖精さを感じる好さがありますね。
春採アイヌ、平取アイヌ、塘路コタン、静内のシャクシャイン祭、芦別アイヌ、樺太アイヌ、オロッコ、ギリヤークの音源が納められていて、凍える、しばれる大地が北方には広がっているのですが、勿論夜の闇の深さと炎を囲む霊気に満ちた様なんかも想像できるのですが、北方って、凄く光に満ちた輝きがさざめく地でもあるのだろうなと想って。
私自身はアイヌ音楽の専門家でも何でもないのですが、これを聴くと、初心者にも”あぁ、これこそまことのアイヌの音か…”と納得のいくような本物感が充ちていて。あらためてこれは音楽遺産だなと想うし、変にアレンジしてない分エヴァーグリーンな作品でもあると感じました。これはちょっと高いですが、是非聴いてもらいたい音でした。音楽的にもこのリズム構造や、カムイユーカラやイヨンノッカラの謡いの玄妙さ、酒造りウポポの輪唱に、樺太アイヌの言葉の昔噺は聴くべきものがあると感じます。ムックリやトンコリの演奏も◎
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