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天井桟敷の人々 藝の世界と世俗の世界のあいだで巻き起こる純愛劇

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『天井桟敷の人々 4K修復版』を観ました。

天井桟敷とは、劇場の天井付近の一番安い席。映画はパリの「犯罪大通り」で繰り広げられる人間模様から始まります。

やがてフォーカスされるのは軽劇団でマイムをしているバチストという青年と、絶世の美女とされるガランス、そしてガランスの馴染みでもある女ったらしの役者フレデリックと悪漢ラスネール、さらにバチストに思いを寄せる劇団員のナタリーと、ガランスに思いを寄せる伯爵。彼等の錯綜するラヴストーリーが物語の骨格で。

この劇で最も神秘的な存在でもあるのが白塗りでマイムを演じる天才、バチスト。彼のその純粋さが、この物語に大いなる光を与えています。バチストに対抗心を燃やすフレデリックの俗な野心がそれに鮮やかに対比されて。

そしてガランス。最初出てきたとき”ちょっとおばさんじゃないか?ナタリーの方が美女じゃないか”と想ったのですが、物語が進むにつれて世の中を渡り歩いてきた成熟した女性としての魅力と、それと共にガランスの純な心がどんどん顕わになって、観ている私もどんどん魅せられていきました。

カネ、犯罪、マウンティング、愛憎、生活…生きていく上では数多の世俗的な垢が溜まっていきます。そんな中で貫かれる純粋な愛情。中島らもbotの大人にならずに死ぬなんてつまらんじゃないか。せめて恋人を抱いて、もうこのまま死んでもかまわないっていうような夜があって。天の一番高い所からこの世を見下ろすような一夜があって。死ぬならそれからでいいじゃないか。そうだろ。ちがうかい?というTweetを想起するものが在りました。

190分、ダレることがなく、美事に惹き続ける、まさに名画なキネマでした。

by wavesll | 2022-01-30 14:51 | 映画 | Comments(0)
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