![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 3月の平日のみ5点の作品が撮影可だったため、結構混んでいて。 ミロはまことに未来的なVISIONを感じさせる画を描いた画家だなと改めて感服しました。 と、同時に事前にみた公式サイトなどでは”あれ?「いわゆるミロ」はないのかな?”と想っていたのですが、白地に黒い筆が引かれそこに赤青緑黄なコンポジションのある「いわゆるミロ」も多数展示されていて。ここはもっとPRしても好かったかも、久方ぶりのミロ展だし。 今回テーマとして掲げられていたのはミロと日本の繋がり。日本のアートにミロは多大な関心を寄せ、日本の詩人と作品を共作したり、民藝とも関わりがあったとは知りませんでした。とはいえ、それだけでなく、ミロの作品とミロと関わりのある品々による結構なヴォリュームのある充実した展示になっていました。 展覧会場に入ると早速目に飛び込んでくるのが上にも写真を載せた≪アンリク・クリストフル・リカルの肖像≫。ゴッホ的なテイストも感じさせる黄色い肖像画ですが、その背景には日本の浮世絵的なものが描かれて。これは「ちりめん絵」といって当時結構出回っていたそうです。この絵に描かれた実物の同じ絵柄の≪ちりめん絵≫も並んで展示されていました。 ミロがいわゆるミロになる前の時代のフォーヴィズムを感じる≪赤い扇≫や、≪シウラナ村≫ ・≪シウラナの教会≫あたりにはセザンヌなどの印象派的・キュビズムな影響がみられたり、≪花と蝶≫はマグリットというかダリというかシュルレアリズム的な筆致もみられて。 そんなミロが己のスタイルを魅せてきた≪絵画(パイプを吸う男)≫と≪絵画≫の灰水色な背景にエイリアンや宇宙的な線画によって描かれる”人物”的な画は「夢の絵画」と呼ばれるシリーズだそうです。 ソニック・ユースのようなヘタウマさ、子供の絵のような≪絵画≫やグレーな画面に性も描かれた≪無題(恋人たち)≫やモンスターのようなものが描かれた≪無題≫などでこの世界観が打ち出されて。上に写真もある≪焼けた森の中の人物たちによる構成≫はなんというか古代と宇宙が混じったような時空を超えた画で。 またミロはステンシル作品も残していて≪無題(『カイエ・ダール』9巻1-4号所収ステンシル)≫の赤と青の2品には鮮烈な色彩があらわされていて、青の方の画は≪無題(『カイエ・ダール』9巻1-4号所収タペストリー)≫とタペストリーに織られた作品もありました。 またステンシルの鮮やかな色みの作品として赤と黄・青・白が鮮烈な≪海の前の人物たち(『ダシ・イ・ダリャ』22巻179号所収ステンシル)≫や≪スペインを助けよ(『カイエ・ダール12巻4-5号所収ステンシル』)≫というちょっとポパイを思わせるような作品も。 ミロと日本の関わりということで、日本でミロの画が初めて展示された展覧会の≪巴里新興美術展覧会目録≫やその流れから発売された≪『巴里東京』1号、2号、3号≫も展示してありました。 ミロの画というのは何時の時代においても未来を感じさせる境地へ達したなぁと想うのですが、ミロ自身も数多の試行錯誤を繰り返してそこへ至ったことがわかります。例えば≪絵画≫という油絵はもともとはコラージュした図案を抽象化させて描いたもの、また≪無題(デッサン=コラージュ:浜辺)≫は油絵でこげ茶の背景が描かれた上に雑誌か何かの人魚の画の切り抜きと、水着だけが色が塗られた美女の白黒写真が張り付けてあって。さらにメゾナイトという木のチップの圧縮板を画材とした≪絵画≫や油彩画に麻紐を結んで針金や果てはメタルな合板を張り付けた≪絵画(絵画=コラージュ)≫なんてミクストメディアですものね。 また≪アルバム13≫という連作では日本の書を思わせる白地に黒い筆で描かれた作品群が画かれていました。また≪女と鳥≫と題した2作ではジュート(黄麻)に描いた白に映える色彩と黒筆の勢いが非常に印象的で。 ミロの遊び心は≪絵画=詩(おお!あの人やっちゃったのね)≫という青が差し色になっているオシャレな雰囲気の画では「おお!あの人やっちゃったのね」という文章が書かれていて、それはオナラをこいてしまったという意味だったそうですwこのように文章と絵画のコラボレーションをミロは多く手掛けていき、ダダ詩人のトリスタン・ツァラとジュアン・ミロによる≪独り語る≫ではまさにミロ的な白地に黒い筆線と色彩がカラフルに配置された連作で。 そして上部に写真を掲載してある本展のハイライトの一つである≪絵画(カタツムリ、女、花、星)≫と≪ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子≫が並ぶ壁面が。これはライフサイズでみてこその、なんという上質な家具のような空間を創り出す絵画で、そのリズムカルな配置から木製の楽器による調べが聴こえてきそうな≪絵画(カタツムリ~)≫とメタリックでスペーシーな≪ゴシック聖堂で~≫は共にとても存在感がありました。 次のエリアでは日本とミロの関連性が展示されていて。 まるでノートの落書きみたいなラフさに赤が鏤められることで芸術になっているジュアン・ミロ≪人物たち≫の下には同じような構図の歌川国貞(三大豊国)≪見立大名行列≫が。仄暗い≪夜と人物と鳥≫と≪夜の中の女たち≫の隣には日本に影響を受けて試みた木版によるポール・エリュアール、ジュアン・ミロ≪あらゆる試練に耐えて≫が。 そしてジュゼップ・リュレンス・イ・アルティガスとの共作による焼き物たち。≪大壺≫の翠の巨大さにまず度肝を抜かれますが、ミロが絵付けした≪花瓶≫の現代的なフレッシュさがまた素晴らしい。また≪あるモニュメントのためのプロジェクト≫や穴のある砦のような≪女≫も現代的なセンスのオブジェな焼き物で、樂焼を想ったり。 またミロが関心を示した日本美術として≪大津絵≫や≪こけし≫、≪あかべこ≫、≪埴輪(頭部)≫などが在って、民藝運動とも交流があったと聞いて。またミロのアトリエには菱田勇巳かた贈られた≪三尊塼仏拓本≫や≪朱雀紋空心塼仏拓本≫や朝比奈宗源・和田三造による□△○が表紙の書籍≪『仙厓 高名なる禅僧による墨絵』≫があったり、また縄文的なものにも関心があったことを伺わせていました。 そしてミロは2度の来日を果たしてくれています。 ≪すると鳥は、ルビーが降り注いで茜色に染まったピラミッドの方へ飛び立つ(勅使河原蒼風のために)≫は水色のピラミッドの山型が美しい。≪女(勅使河原蒼風のために)≫はシュルレアリズムなカラダに胸と性器が描かれて。 また松丸東魚とジュアン・ミロの共作による書≪色紙≫や、ミロが篆書風に「祝毎日」と描き「ミロ」と「MIRO」とサインも書した≪祝毎日≫も印象的。 そして日本におけるミロとの交流の第一人者である瀧口修造による『ミロ(西洋美術文庫48)』やジュアン・ペルーチョ、瀧口修造・飯島耕一訳『ジョアン・ミロとカタルーニャ』、ジェームス・ジョンソン・スウィーニー、瀧口修造・飯島耕一訳『ジョアン・ミロ フォトスコープ 視覚言語』の表紙の色彩も素晴らしかった。 またクレヨンのラクガキのようで絶妙な≪無題≫や、有名な俳句にミロが画を入れた雑誌≪『デリエール・ル・ミロワール』164-165号≫ ≪『デリエール・ル・ミロワール』169号≫に書籍『俳句』も素晴らしい色彩感覚にあふれて。 水色と山吹色が印象的な≪海辺の少女≫に、瀧口修造が詩を書きジュアン・ミロが画をいれた≪手づくり諺ージョアン・ミロに≫には瀧口修造直筆の草稿≪手づくり諺抄≫も。≪ジョアン・ミロの3冊の本展ポスターのためのリトグラフ≫とそのポスターも素晴らしかった。≪『20世紀』46号≫も美しい表紙でした。瀧口修造、ジュアン・ミロ『ミロの星と共に』や瀧口修造 ≪ミロは詩である≫も夢にみえたり虫にみえたり旗にみえたり。 ≪無題(瀧口修造へのオマージュ)≫のうるわしき墨の滲みは本展覧会壱好きだったかも。 ≪アントニ・ガウディと瀧口修造へのオマージュ≫も好く、また≪ジュアン・ミロからの贈物(ミロのカラバサ)≫の瓢箪にも喜んだそう。 またミロによるブロンズ作品も展示してありました≪母性≫はまるで岡本太郎の鐘のようなトゲトゲなフォルム、≪鳥≫や≪あるモニュメントのためのプロジェクト≫、≪枝の上の鳥≫もそうですが、構想のインスピレーションをガラクタのコラージュから練っていたそうです。≪人物≫も印象的でした。 そして最後の間では圧巻の絵画たちが。 ≪マジョルカ・シリーズ≫では80才を超えてますますエナジーがほとばしる美しき色彩たち。墨を使った≪無題≫の筆致。≪人、鳥≫のサンドペーパーに木や釘を使った実験性、≪マキモノ≫という巻物を意識した作品もあり≪絵画≫では絵のフロウが流れて。 cf
by wavesll
| 2022-03-31 19:11
| 展覧会
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