

鏑木清方展、会期最終日に行ってきました。
鏑木清方といえば美人画。その優美さには感嘆しました。あの消え入るような切れ長の目、とけるような唇。まるで浮世絵の美人画がぷっくり膨らんで、生ける日本人形のような日本女性の綺麗が描かれて。可憐なだけでなく、時代を生きた女性のすっくとした美しさも描いて。清方さんは真の心から女が好きなんだなと。
また清方さんが描いた絵は明治における江戸の名残り、当時の風俗が非常に細やかに描かれて。記憶の中に在る風雅さが描き込まれた画は非常に心を打つものがありました。また着物の柄の凝り方、素晴らしい筆致がまた女性への愛を感じました。
そして前半のハイライトが
≪明治風俗十二ヵ月≫、これがみたかった。一月から十二月の12幅の掛け軸に描かれた月ごとの街の風景。例えば一月はカルタをやっていたり、8月は氷を打っていたり、12月は人力車夫がお客にケープをかけたり。生き生きと描かれた記憶の中に在る日本情緒の風景が沁みわたって。素晴らしかった。
そして
≪浜町河岸≫・≪築地明石町≫・≪新富町≫の三連。≪築地明石町≫の洋風の柵や黄色い朝顔が在りし日の外人で賑わったことを忍ぶ、時代を生き抜いた女性のうつくしさを描いて。その左には≪浜町河岸≫に歩くうら若き少女の可憐さが。そして≪新富町≫では酸いも甘いもかみ分けた大人の女性が描かれて。素敵な空間でした。
また鏑木清方は様々な物語に挿絵画家として活躍したり、物語を題材にした絵画を描いたりもしていました。
歌舞伎を題材とした作品も名画揃いで。
≪野崎村≫の過ちを犯して帰るシーン、
≪薄雪≫の情緒が滲みあふるる幽玄の瞬間。
≪道成寺(山づくし)鷺娘≫の鷺の化身の白装束と遊ぶ姿。
≪京鹿子娘道成寺≫のまるでファッションのラフ画のような美しい楽しさ。≪本朝二十四孝 十種香の段 八重垣姫 勝頼 濡衣≫のぴしっとした綺麗さも好かった。映像展示では「好きなものしか描かない。戦の画は描かなかった」と清方が述べていました。
また清方は小品の生活画も描いて。
≪夏の生活≫は金沢で過ごした時期の思い出をさらりと描いたもので、ここから「卓上芸術」が始まって。
≪にごりえ≫の黄桜のカッパのようなクラシックな漫画表現にも通じる絵たち。清方は豊国→国芳→芳年→年方→清方と浮世絵の流れを汲む画家ですが、ここからマンガに本当に繋がっていっていたとしたら面白い。
≪お夏清十郎物語≫も着物の柄が素晴らしくて。≪築地川≫もメモリーにあふれたあの頃の画。≪『苦楽』表紙原画 舞妓≫・≪『苦楽』表紙原画 雪≫・≪『苦楽』表紙原画 菖蒲湯≫・≪『苦楽』表紙原画 神田祭≫も当時の空気感があふれていて。最後に飾られた≪『苦楽』表紙原画 たけくらべの美登利≫の少女の閃光のような瞬間を捉えた筆にもしみじみと感動しました。