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『阿波百景』お鯉さんの唄、とりわけレコード化された最古の阿波踊りが聴ける久保田真琴セレクトによる『阿波の遊行』の姉妹盤

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ぞめきのアフターとして、八月が果てゆく中で『阿波百景』を聴いていました。

この盤の基になったのは鳴門出身の現代舞踊家で膨大な徳島の民謡のフィールドワークを続けた檜瑛司氏が監修し、1988年に現地録音され、当時カセットテープのみで発売された『阿波の民謡集』という音源。そこから久保田真琴氏がセレクトとリマスタリングしさらに追加音源を加えたのが本盤で、『阿波の遊行』の姉妹盤とも言えます。

ただ同じく『阿波の民謡集』からの選曲と言えど、滾り立つ血が沸く”起こり”が特長の『阿波の遊行』とは『阿波百景』は大分性質を異にするというか、これはより”唄”の揺蕩うソウルを特色とする盤で。そういった意味では祖谷や旧山城町の仕事唄なんかも収録されているし、『日本民謡大観』の山々に連なる盤と捉えた方がいいかもしれません。

その仕事唄と共に盆踊り唄も収録されて、徳島という土地の穣な歌世界を味わえる本盤ですが、何しろその目玉はあの「お鯉さん」の唄の音源を聴けることでしょう。

お鯉さん、本名 多田小餘綾(ただ こゆるぎ)さんは「阿波おどりのシンボル的な人」と徳島市のホームページにも掲載され、Wikipediaにも頁がある伝説的な歌い手で、この盤では81歳当時の「阿波よしこの」に加え「徳島の麦打唄」、さらには1966年10月録音の「阿波よしこの 弐」に1931年8月15日録音の阿波踊りが初めてレコード化された際の当時24歳のお鯉さんの唄声が聴けて。この時空を跳躍する阿波の唄の藝の、なんともいかした響きにはやられました。

久保田さんのWORKSは『かなす』や『南嶋シリーズ』もそうですが、日本の地に根付く、力ある音楽、音楽の力をディグしている素晴らしい仕事だなと感服して、本当にずっと追いかけていたいと想わされます。やっぱりこの日本の音は躰と心に馴染むなぁと。いい時間を呉れました。




by wavesll | 2022-08-31 01:33 | Sound Gem | Comments(0)
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