
ぞめきのアフターとして、八月が果てゆく中で『阿波百景』を聴いていました。
この盤の基になったのは鳴門出身の現代舞踊家で膨大な徳島の民謡のフィールドワークを続けた檜瑛司氏が監修し、1988年に現地録音され、当時カセットテープのみで発売された『阿波の民謡集』という音源。そこから久保田真琴氏がセレクトとリマスタリングしさらに追加音源を加えたのが本盤で、『阿波の遊行』の姉妹盤とも言えます。
ただ同じく『阿波の民謡集』からの選曲と言えど、滾り立つ血が沸く”起こり”が特長の『阿波の遊行』とは『阿波百景』は大分性質を異にするというか、これはより”唄”の揺蕩うソウルを特色とする盤で。そういった意味では祖谷や旧山城町の仕事唄なんかも収録されているし、『日本民謡大観』の山々に連なる盤と捉えた方がいいかもしれません。
その仕事唄と共に盆踊り唄も収録されて、徳島という土地の穣な歌世界を味わえる本盤ですが、何しろその目玉はあの「お鯉さん」の唄の音源を聴けることでしょう。
久保田さんのWORKSは『かなす』や
『南嶋シリーズ』もそうですが、日本の地に根付く、力ある音楽、音楽の力をディグしている素晴らしい仕事だなと感服して、本当にずっと追いかけていたいと想わされます。やっぱりこの日本の音は躰と心に馴染むなぁと。いい時間を呉れました。