



Chirgilchin - Kaldak Khamar - 2009 - Full Album
トゥバのレジェンド・グループ、チルギルチンのライヴを北鎌倉の浄智寺にて観てきました。
モンゴルではホーミーと呼ばれる伝統的歌唱法をトゥバではホーメイと呼び、チルギルチンはトゥバを代表する音楽グループで中心人物コシュケンディ・イーガリさんはロシア人として唯一グラミー賞を得た人物。
そんな彼らを日本に招聘した巻上公一さんのトークがライヴ前に少しあって、何しろトゥバ共和国はロシア連邦に属する小国なので、ウクライナ侵攻によりチルギルチンの4人を日本に呼ぶのは困難を極めて。先ずロシア政府が「非友好国の日本に行くビザなど出さん!」と言ってきたのをあの手この手、それこそ個人的コネクションも駆使してなんとかビザを下ろし、更にはロシアから西側諸国へは飛行機は出ていませんから、トゥバからウランバートルへ1800km以上もクルマで向かうという強行軍でクルマが壊れて…とかこのエピソードトークだけで新書一冊書けそうw
ロシアの少数民族という重層性と、また彼ら自身の政治的な立場の難しさは勿論あるとは思いますが、私自身ここ数年トゥバの音楽を是非生で体験してみたいと焦がれていたので、是が非でもこのライヴは来てみたかったのでした。
そして矢張り凄かった!濁声の先に宇宙の口笛みたいな音がテレパシーのように頭の中に届く!なんと澄んだ聲なのかと驚愕して。
最初は”人力テルミンみたいだ”なんて思っていたのですが」、オンダール・モングン=オールさんのホーメイなんかはまるで水面に波紋が漣めくような揺らぎがあってまさに“こんなヴォーカルというか音は初めて聴いた”という凄さ。
チルギルチンの音源はApple Musicや上に載せたようにYoutubeで聴けるのですが、この生の宇宙の口笛的・テレパシー的音楽体験はちょっと音源で聴くのとは次元が違うというか、初めてスペシャリティコーヒーを飲んで酸味のある珈琲の美味さが分かった時のような、ホーメイというもの自身への認識が全く塗り替えられる劇的体験となりました。
またコシュケンディ・アイドゥスマーさんがメェ~メェ~と羊の声を真似た「Kadararda Khoyum charash」や、或いは車の走行音を真似たヒッチハイク民謡「Kaldak-Khamar」、ロシアのアコーディオンであるバヤーンの弾き語りや”カルグラー”のスタイルでの低音担当のブルターン=オール・アイドゥンさんのソロや口琴を使った曲なんてのもあって。ちょっとこのライヴは特別な体験だったな。最後は「Аа-шуу декей-оо」をみなで謡って。民謡リスニングという意味でもエクスクルーシヴな夕になりました。
cf