
椎名林檎 - 静かなる逆襲
中高生の頃の私のヒーローは椎名林檎だったのですが、東京事変をやり始めた辺りから一度心が離れて、『三毒史』で完全にカムバックするまでリアルタイムで林檎の楽曲を聴いていなかった時期があって。
ただ、2017年に『平成風俗』を聴き返したときに、私の精神年齢と林檎嬢の発表時の精神が呼応したのかとても楽しめることがあって。その後も『三文ゴシップ』も楽しむことが出来たり。それは破滅的なロック衝動だけでなく、少しは大人のゆったり感が私にも生まれてきたところがあるからかもしれません。
ただそうなると逆に邦楽ロックから気持ちが離れたりもしていたりもしたのですが、この夏から秋にかけて”あ、なんか無理せず自然にJ-ROCKも楽しめるバイオリズムになったかも”と想い、いよいよミッシングリンクの最後、『日出処』を聴くタイミングが来たかなと。
で、聴いてみて一曲目の「静かなる逆襲」が”あれ?なんかこれ聞き覚えある…”と想ったらデモテープに入っていた
「果物の部屋」のリファイン版じゃないか!この『日出処』は6年ものソロワークの集大成的な盤でもありますが、この再始動の場に最初期のデモテ楽曲も持ってくるとはこれは素晴らしい一手だなぁ!こうなると
「酸素をください」なんかもリファインして世に出してほしいなぁ!
この盤はあきらかに林檎がアグレッシヴに打ち出している盤で、NHKのタイアップ関連の
「自由へ道連れ」や
「孤独のあかつき(信猫版)」などのロックナンバーもありながら、年を重ねた上で出す熟練なロック音楽性があって。それは昭和ビッグバンドやIDM的な打ち込みなどまさに林檎節を感じさせながら豊かにJ-ROCK世界を廣げる音源になっているなぁと。なんと
「赤道を越えたら」にはイヴァン・リンスも参加とは凄い。
特に女性からは林檎のベストワークであるとも言われている
「ありあまる富」で〆るこの構成も、第二のデビュー盤というか第一期以降のソロワークベスト盤的なゴージャスさがあっていいですね。個人的には私の精神年齢は「ありあまる富」まで追いついてない感があるので、これから不惑になって行く中でまた幾度も聴き返したいなと想いました。