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舞台神聖祝典劇『パルジファル』/ ワーグナー@バイロイト音楽祭2023 3Dグラスで魅せる聖杯・聖槍伝説に基づく救世主譚

Wagner's Parsifal at the Bayreuth Festival 2023 in augmented reality with high-tech glasses #shorts
舞台神聖祝典劇『パルジファル』/ ワーグナー@バイロイト音楽祭2023 3Dグラスで魅せる聖杯・聖槍伝説に基づく救世主譚_c0002171_17265039.jpg
『パルジファル』をみました。

ワーグナーが構想から40年かけて完成させたこの楽劇は聖杯伝説を基にしながら、『パルジファル(純潔な愚者)』によって王が救われる物語となっていて。

第一幕。時は中世、スペインのモンサルヴァート城の王、アルフォンタスは、守ってきた聖槍を悪い魔導士のクリングゾルの手先、クンドリに誘惑されて奪われ、その際に聖槍で傷つけられた箇所から血が止まらない。クリングゾルはさらに聖杯も狙う。王を救うための神託である「共苦して知に至る、汚れなき愚者を待て」に基づき、ある若者を連れてくるが、にっちもさっちもいかない。

第二幕で若者がクリングゾルの魔の城にやってくる。クリングゾルは若者の純潔を奪おうと城内を淫らな花園に変え、さらにクンドリを差し向け、その若者の名である「パルジファル」が記憶を喪失していた母親の物語から篭絡し、唇を奪う。が、この接吻からパルジファルは知を得て、アンフォルタスの苦悩を自分のものとし、救世主として覚醒、聖槍でクリングゾルを返り討ちにする。

第三幕でパルジファルは探していたクンドリに出会い、アルフォンタスを救い、聖杯を掲げる。

という4hにも渡る劇なのですが、実は私はこの劇の真価を目撃していなくて。というのも米国のMITの教授、Jay Scheibが行った演出は、3DメガネをかけてのARによる舞台の拡張というもので、今回収録された映像にはそのARの部分は組み込まれてないからです。

なので、ヴィジュアル的なものは円形のライティング以外は結構シンプルなものだったのですが、ワーグナーが描いた聖杯、そして聖槍をめぐる物語がまず面白くて。最後の晩餐で使われ、聖槍で傷つけられたキリストの血を受け止めた聖杯。インディ・ジョーンズやFateなど様々な物語に登場しますし、ロンギヌスの槍も先日宇部の地に刺さりましたね。その聖遺物をめぐる物語をワーグナーが描いたものをみれたというのは嬉しい。

また「純潔」に関して、まるでブッダを誘惑するマーラのようにクリングゾルの女人たちが誘惑しますが、逆にクンドリのキスで智慧に目覚めるというのも一種の宗教観・哲学観にも感じて面白かったです。実際、純潔をパルジファルは守りながら、クンドリとの愛を貫くことになるというのが人生観をも感じさせました。

音楽的には特筆するほど感動したところはなかったのですが、クンドリの高音がまるで超音波兵器のようにさんざめくのは凄かった。全体的に歌手たちの演技と字幕によって楽劇として大変楽しめて。個人的にはオペラやバレエ音楽は、映像と歌劇の場合は訳詩を観ながらの方が面白く聴けますね。4h超ダレることなく楽しめました。AR演出が不評だったのかカーテンコールでブーイングもみられましたが、欧州のこういう古典を挑戦的に演出する気風は自分は好きですね。

by wavesll | 2023-10-08 17:53 | 舞台 | Comments(0)
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