Alexander Ekman: Hammer (Trailer)
コンテンポラリーダンスは何しろ基本的には台詞がないところを読み解かないといけないので合う合わないがあるのですが、このアレキサンダー・エクマンが振り付けたスウェーデンの エーテボリ歌劇場ダンスカンパニーによる『ハンマー』は私の好みを衝く作品でしたね。
まず音楽が打音を基調としたシンプルかつエクスペリメンタルなものでとても良くて。好い音楽がかかるとそれだけでダンスもみてられるというか。
そしてダンスの読み解きなのですが、私はこれはホモ・サピエンスの社会の遷移にみえて。
生命の進化とか、社会の進化とか、そういうタイムスパンをダンスは描くことは結構あるのですが、最初の規律的な本能に従う単細胞的ヒト社会から、各々が着飾って個性を見せ付けあう時代そして恋人との逢瀬が描かれるのをみて。
”確かに現代でメディア漬けで「他人が主役」のコンテンツをどっぷりみている自分にとっても「旅」と「恋愛」というのは「自分達が主役になる出来事」だよなぁ”と感じて。「個人の実存」というものは愛するものによって生まれ出ずるのかもなと。
ただ、次第に段々状況がさらに変異してくるというか、最初はキス直前の2人の写実画が描かれた床がいつのまにか鏡張りになっていて、ダンサーたちがセックスする相手が鏡に映った自分自身になっていっているように感じて。
そしてこれは禁じ手でもあると想うのですが、台詞ありのTVショウ収録現場が演じられて。そこにはインフルエンサーカップルやデューク更家みたいのが出てきて、”虚栄”を強く感じさせて。
「自分が自分らしくいられる為の行為の発露」であった「創造的人生」が、他人からの承認欲求を求める虚栄モンスター化へと変貌した?かといって日々の労働はまるで賽の河原、これはディストピアか…。
と想っていたら、GTOよろしくそんな状況をハンマーで打破するものがあらわれ、それが宗教的変化を起こしたというか再び原始からリスタートするような一幕でダンスは終わって。
上に書いたのは私なりの解釈でしたが、そんな現代における寓話的なコンテンポラリーダンスだったなぁと感じました。なかなか好かったです。