

【歌舞伎座】「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部『マハーバーラタ戦記』告知映像
『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』をみました!
マハーバラタってこんな話なんだ!すっごく面白かった!
冒頭、神々の棲まう天上界でシヴァ神等の神々が座して話していて。”シヴァ、青顔じゃないんだな、青だと歌舞伎だと悪者になっちゃうからな”とか想いつつ、その黄金色の衣装のゴージャスさにも圧倒されたり。
もう人間は終わってるから世界を終わらせようかと話す神々の中で、太陽神が”いや、愛を持つ人間には見どころがある者もいる”といい、それに対して帝釈天が”いや、この世を統べるのは武力だ”という冒頭
そこからインドのうら若き姫を太陽神が”この世を救う”御子を授けるのですが、不貞を疑われるのを嫌った姫はそれを川に流して。ここら辺は
『十戒』のモーゼを思わせる。そしてその子はある御者の夫妻に育てられ、立派な若者、迦楼奈(カルナ)となる。
ここで面白いのは姫の格好や迦楼奈たちの衣装・セットは江戸時代みたいな和風なこと。ここら辺が歌舞伎マジック。なんでも飲み込んじゃうんだもんなぁ。
先王が亡くなり、世継ぎを迦楼奈の兄弟でもある五人の王子と、その腹違いの姉弟たちが争う武芸大会に迦楼奈も参加して。五人の王子の中には父を帝釈天とする阿龍樹雷(アルジュラ)王子もいて、”これはこいつがライヴァルになるのかな?”と想わせつつ、物語は意外な方向へ向かって行って。
腹違いの王子たちの内の鶴妖朶(ズルヨーダ)王女とその弟がなんとも悪だくみをするヴィランっぷりを示すも、カーストを突っ込まれたカルナを助けたことからカルナはズルヨーダに「永遠の友情」を誓って。ここにおいて、本当はこの世界に平和をもたらすカルナがこの物語の悪役ズルヨーダ側についてしまいます。このもつれが物語を物凄く面白くして。
そう、この歌舞伎マハーバーラタでは正邪が混沌と入り混じるのが面白い、愚鈍だと想われた五王子の長兄・百合守良(ユリシュラ)が一方では執着のなさが賢王の素養があったり、カルナが帝釈天にシャクティという超絶武をもたらされることで闇落ちしたり、逆にズルヨーダがカルナと関わることで人の心を持ったりも。
私はDVDを入手して全2枚で4hにも渡る通し狂言形式でみたのですが、このカルナ演じる五代目尾上菊之助とズルヨーダ演じる二代目中村七之助はナウシカ歌舞伎でもタッグを組んでいるのですよね。と、いうかこのズルヨーダのキャラクター解釈ってモロにクシャナで。
そもそも『ラーマーヤナ』のヒロインがシータ姫だったりするし、宮崎駿がナウシカを描く上でマハーバーラタも参照したところはあるかもしれません。時系列的に『マハーバーラタ歌舞伎』での成功から菊之助は『ナウシカ歌舞伎』へ進んだのかも。
といいつつ、実は『マハーバーラタ歌舞伎』の方が『ナウシカ歌舞伎』より面白かったというか、多分『ナウシカ歌舞伎』は初歌舞伎なお客さんも意識してか歌舞伎あるあるな演出詰め込みまくりだったのに対して、『マハーバーラタ歌舞伎』の振付の方が独自の道があったというか、殺陣もかっこよかったし。これマジでヤヴァい舞台でした。
2023年にも再演があったり、映像配信も企画されたりもしているので、是非お愉しみいただきたいですね。かなり面白い歌舞伎でした。
ヒンドゥー要素としても仙人 久理修那(クリシュナ)なんてのも出てきたりして。神々が人々に働きかけるのはギリシア神話にも似た感覚がありました。『オデュッセイア』にはナウシカア王女も出てきますしね。
音楽的にもヒンドゥー繋がりなのかガムラン的な鉄琴とか、タブラではないんだけれどもタム的な太鼓がフィーチャーされていて、これかなりヤバかったな~。いいもんみれました。