【本編】『釈迦』<3週間限定公開>
大映『釈迦』を角川シネマコレクションYoutubeChでみました。
市川雷蔵演じる釈迦と、そのライバル、ダイバダッタは勝新が演じて。
一番印象的だったのは最序盤のゴータマ・シッダールタ太子が王宮の生活と庶民の生活の落差にショックを受ける場面で、当時のカーストに基づいた苛烈な生活が描写されるのですが、私は昨年インドに行ったのですが、とにかくゴミが酷くて。プラスチックの有無で自然分解とかで街の風景とかは違うかもしれませんが、映画の中で描かれる「インド」より現実のインドの方が汚れていて。
よくユダヤ・基督・イスラムのアブラハムの宗教は中東の苛烈な砂漠気候からこそ生まれたもの、なんて話がありますが、同時に仏教が生まれたのもカースト制や街の汚濁など、南アジアの風土からこそのものだったのかなと想って。
物語の中では「諸人」のような台詞が多く、キリスト教を想起したり、あるいは仏陀(ブツダ)となってからは顔が映されなくなった釈迦の姿はムハンマドを思わせたり。
製作陣の中に『カーマ・スートラ』のイメージがあったからか、女性の性愛の欲望が男を苦しめる、みたいな話が物語に多かったですが、明らかにインドロケはしてなかったのは残念でした。と、いいつつ「鹿野苑(サールナート)」が出てきた時はなかなかアガりました。
悪の宗教家となったダイバが神罰を受け死に瀕した時に蜘蛛の糸を垂らすブツダの場面では”俺みたいなしょうもない男にもブツダは蜘蛛の糸を垂らしてくれるだろうか”とか想いましたね。
あの南アジアのカオスの中でこそ、仏陀の理路整然とした悟りが生まれたのだなと改めて想いました。あと伊福部先生の劇伴も好かったです。