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羅小黒戦記とソフトパワー戦記

『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』本予告映像
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羅小黒戦記のTV版全五話をみました。

2019年の中国のアニメ映画で、日本でもかなりの話題になったこの作品。みてみると、”え?ジブリ?HXH?フジリュー版封神演義やマトリックス経由のドラゴンボールも混じってる”と、まるでBYDがマクラーレンとポルシェとリンカーンをニコイチにしたようなクルマをつくるのと同様に、あまりにもまんまな”インスパイア”に鼻白むところはありました。

とは言え、中華デザインというかこういう簡易体の漢字のようなシンプルな色や線には中国らしさがありますし、立体空間をグリグリ動くアニメーションは技術的にはかなり高クオリティにも感じて。妖精とかそういうのが都市でバトルし、スマホなどの文明の利器と霊性さが同居するというのはフレッシュにも感じましたね。

そしてそれ以上に感じたのがこの作品の思想性。
主人公の妖精ロシャオは最初人間の開発で棲み処の森を追われ街に出てきて、妖精のフーシーたちに助けられたところを人間でありながら霊術を使えるムゲンに拉致られ、その最悪の出会いから、徐々にムゲンに心を開いていきます。

例えば『幸せの黄色いハンカチ』のムショ帰りの高倉健が敗戦で悪の一文字を背負うことになった戦後日本人の肖像であったように、支配側・体制側のムゲンが”良い者”に描かれ、レジスタンスであるフーシーたちがテロリストとして描かれ、そしてロシャオが文明や豊かさにコロっと心ほだされるといった描写・思想は中共体制の下でつくられた作品ならではというか、現代中国人の写し鏡でもあって。

そしてこの作品自体が、一種そういう思想をサブリミナルに広める役割も果たしているというか、ソフトパワー・ウォーの兵でもあるなぁと。

本作は花澤香菜さんなどが声優を務めていますが、原神もそうですが、まぁ日本のタレントは地獄の沙汰も金次第というか、ホイホイ仕事は引き受けますよね。BYDも長澤まさみがCMに出てましたが、一種ソフトパワー戦の先兵でもあって。

個人的に妙なシンクロニシティを感じたのは、フーシーたちが街を襲撃した際に「人質を取れば交渉が上手くいく」と言った台詞。まさにパレスチナのハマスの台詞であって、この映画はイスラエル側が正義や善で、パレスチナは悪であるという価値観・思想に基づいてつくられているといえば、なんとなく私が感じた印象が伝わるかと想います。

近年のKPOPや韓流文化もそうですが、日本は芸能人もテレビ局もカネで転びますから。フジテレビなんかドイツでも問題になっているTEMUのCMもめざましテレビや27時間テレビで流していましたしね。オンラインカジノ広告もそうですが、彼らが道徳心でなく、私腹を肥やすために”クオリティが高く安価にコンテンツを使え外国政府から補助金も貰えるから”とカネで転んでいく現状の中で、まぁロシャオのように目を輝かせるキッズたちを、私はちょっと”不味いなぁ”と想うところはあり、大枠の構図としてこういう政治思想戦な構造があることを認識した上で、コンテンツを愉しんだ方がいいんじゃないかなぁと想いました。

by wavesll | 2025-03-15 15:12 | 映画 | Comments(0)
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