ドラマ「夢の島少女」(作・演出 佐々木昭一郎/1974年) 物語は、少年が川で倒れていた少女を助け介抱するところから始まる。その少女は、男に傷つけられた過去があったのだ。一方少年は、少女の存在が次第に心の支えになっていく。ある日少女は、少年の前から突然姿を消す。揺れ動く二人の心の軌跡を、パッヘルベルのカノンの旋律とともに、詩情豊かに描く
ドラマ「四季 ~ユートピアノ~」(作・演出 佐々木昭一郎/1980年) ピアノ調律師・栄子の音の記憶をたどる映像詩。栄子は幼いころ雪の夜に兄と学校に忍び込んで弾いたピアノの音が忘れられない。それは兄との別れの音…。雪国から都会に出て、ピアノ調律師となった若い女性の心象をさまざまな音や美しい四季の自然とともに描く。イタリア賞、国際エミー賞を受賞
NHK特集「川の流れはバイオリンの音 ~イタリア・ポー川~」(作・演出 佐々木昭一郎/1981年) A子は、バイオリンを直すため、北イタリアの川沿いの街クレモナを訪ねる。クレモナは名器ストラディバリウスのふるさと。A子はそこで出会う人々や音に何をを感じたのか…。永遠に流れる川、歌い継がれる音、生老死を繰り返す人の営みを描く。第36回芸術祭大賞を受賞
という3作がNHKBS4Kプレミアムカフェで放送されて。
「夢の島少女」の儚いエロスに”こんな芸術的に攻めたドラマがO.A.OKになっていたのか!”と驚かされて。昔のTV業界の自由に作っていい環境は素晴らしい。
スタジオゲストに映画監督の是枝裕和と少女を演じた映画監督の是枝裕和と少女を演じた中尾幸世さんがいらっしゃってトークもされたのですが、是枝監督が「日本の光景でクラシックを合わせるってとても難しいのにこのドラマでは実に自然に行っている」といっていて
自作の「四季 ~ユートピアノ~」と「川の流れはバイオリンの音 ~イタリア・ポー川~」でも同じく中尾幸世さんが主役の榮子/A子を演じて、そちらも登場人物の記憶とサウンドが非常に密接に織り込まれた作品で、”こんなにも複雑な詩情をテレビドラマに込められるのか!”と当時の制作陣の気概と視聴者を舐めていない信頼がみえて。
これらの作品ではプロの役者でなく現地の人を登場させたりして、ドラマなんだけれども実に自然というか、一種のドキュメンタリーをみているような情感があって。「川の流れ~」ではイタリアの現地の人たちが登場して、なんともいい顔を魅せるというか、人生が乗っかったドラマというか。放送枠もNHK特集だし、ジャンルの壁を超越する何とも不思議な読後感のあるドラマで。
いい映画の1ジャンルに「まるで登場人物たちの人生を自然に切り取ったかのような、そして歴史に繋がる映画」というのがあると感じていて、例えば
『山猫』や『ROMA』なんかもそうなのですが、地場の空気が立ち上がる中でその自然の光景は、日本やイタリアそして中南米でそれぞれ土地によって違うものが醸し出されるんですよね。佐々木昭一郎さんの作品は「大きな物語」にならないで一人の人間の心情にフォーカスを与えつつその環境世界を描くのもとても好くて。
最近のモキュメンタリーとは違う、ギミックというよりも非常に映画的な好さってこういう点が一つあるなと想った視聴体験になりました。