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渡辺信一郎監督による前奏アニメ解禁!】「ブレードランナー ブラックアウト 2022」
animatrix - Animazione Film Completo in Italiano 友から教えてもらった『ブレードランナー ブラックアウト 2022』の衝撃が相当に大きくて。 実写かと思うような炎の描写で始まったかと思えばデッサンのような筆致の戦場のシーン、そして戦闘アクションの小気味好さ!全体的な作画が緻密でそのハイクオリティ振りに”ヤーバイなハリウッド資本は”と。なんと音楽がFly-loだし! 近年『BLAME!』がNETFLIXでつくられたりしてアニメ産業への金の流れがまた変わりつつありますが、自分の中でハリウッド資本で創られた日本アニメというと『アニマトリックス』が思い浮かんで。で、調べると『アニマトリックス』内の短編2本が渡辺監督によるものだと。早速TSUTAYAで借りてみてみました。 9つの短編からなる『アニマトリックス』、その内の『Kid's Story』と『A Detective Story』が渡辺監督作だったのですが、それぞれラフ画の勢いを活かした、『かぐや姫の物語』や『ピンポン』を先取りしたようなアートスタイルの『Kid's Story』と、銀幕の白黒映画のような輝きを放つ『A Detective Story』と、アニメ表現自体の素晴らしさ、工夫に心躍らされました。 『アニマトリックス』はこの他、『獣兵衛忍風帖』の川尻善昭監督や『REDLINE』をこの後に撮る小池健監督作であったり、日常とファンタジーが浮遊し融合した世界観が素晴らしかった森本晃司監督の作品であったり、日本のアニメーションの綺羅星が集う短編集でした。 こういうのをみるとついつい”やっぱりビッグバジェットがあったりカッコよさを追究する日本の90s的な海外の感性でつくられるアニメはいいな”とか思ってしまいます。 しかしそもそも私は国産アニメに知見が広くないし、寧ろ海外から日本のアニメファンの好みがまるで日本人が全米のHIPHOPの流行りをみるような目でみられてるとすれば、『けものフレンズ』や『おそ松さん』の覇権がそうであったように、日常系や萌え、ヘタウマなど新領域を切り開き続ける”本場”はやっぱり敬意を持ちたいなと。 実際、『この世界の片隅に』や『君の名は』はエポックメイキングでしたし、山村浩二 『右目と左目でみる夢』も素晴らしかったと感じました。 さて、日本人監督たちによる自由なMATRIXの世界観での遊びもある中で、3DCG映画版『Final Fantasy: The Spirits Within』の監督であるアンディー・ジョーンズによる『Final Flight of the Osiris』はかなり映画本編のサイドストーリーの感が強くて。 観ながら”あぁ『マトリックス』ってカンフー映画でもあったよな、Revolutionsなんかドラゴンボール化してたし”とか”この頃はRealとWebが完全に分かれた世界だったし第一作の頃は固定電話からしか向こうの世界に繋がれなかったくらいの時代だったけれど、今はWebに実社会や実企業、公権力が侵食したな”とか想ったりしました。 そして今の時代に『ブレードランナー』、取り分け”レプリカント”に関する物語をするに当たっては、勿論AIとロボットによる労働者の切り捨てやシンギュラリティという問題意識もあるのでしょうが、欧州における中東難民、米国における中南米移民といった、言葉は悪いですが”二級市民”と、”本国人”との間の軋轢への何らかの示唆が行われているのではないかと期待してしまいます。 その国で元々暮らしている人々からすれば、多文化共生社会の理想を実現するのはいいけれど、雇用のバッティングは兎も角、犯罪率があがったり、文化的に同化しない”バルバロイ”に対して、表には出せないはずの黒い意識が極右政党への支持としてあの英仏独ですら巻き起こっている。 日本においてもこの先発生しうるかもしれない北朝鮮難民への問題意識や外国人研修生問題、そして在日朝鮮・韓国人へのヘイト問題として、大枠での”移民問題”は他人ごとではありません。 構造的には、後進国が生産能力をキャッチアップしてきたために先進国が搾取できず、相対的に停滞に陥っていること、そしてグローバル化・トランスナショナル化によるヒト・モノ・カネの自由な移動によって、中間層以下が痩せ細ってきていることが、Webというメディアの因子から憎悪へ向かわせている、ということでしょう。 311、フクシマを経た後で、新たなる『宇宙戦艦ヤマト』的作品が待たれるように、移民・難民への憎悪と、逆に文化が破壊される恐怖に関して、何か叡智の営みとしてのフィクションからの解答が待たれると想ったりもします。個人的には日本人がディアスポラ化した世界を描く『日本沈没 第二部』のエッセンスのある作品なんかいいかなと想ったり。日本人が"イレヴン"という地位で神聖ブリタニア帝国において蔑まれるという世界を描いた『コードギアス 反逆のルルーシュ』などは中々面白かった。視点を変える"if"をフィクションでは起こせますからね。 何もフィクションの物語が必ずや黙示録的であらねばならないなんてことはありませんが、その時代時代の問題意識に応える、社会性を帯びたエンターテイメントの流れが日本のサブカルチャーにはある気がし、特にSFではそれは価値になると。そしてヴィジュアルのイマジネーションがアニマを持たせる。 平成が終わりを告げる現代に、先見的で脳に訴えかける作品が生まれたらいいなぁとメガロシティの片隅で想う神無月の夜長です。 ▲
by wavesll
| 2017-10-05 00:58
| 小ネタ
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