2018年 08月 08日 ( 1 )

本田静六『私の財産告白』 富の築き方と渡世法

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この間に続いて1000冊読んだ京大生が薦める44冊からの一冊。これはちょっとした古典の風格があって、そしてサクっと読めて良かった。

極貧生活から東大の教授となり、その貯蓄・投資生活から莫大な財産を築いた本田静六氏が財産のつくりかたと渡世の仕方を語った本。何しろ机上の空論でなく、自らが実践したことについて記されているから強度があります。

シンプルだけれど、強靭な一念がないと出来ないであろう「本田式『四分の一』貯金」には感じ入りました。財形貯蓄の走りと言うか、給料の1/4を天引きで貯金して、カツカツでも生活してしまう。さらに著述などの臨時収入は10割貯金してしまう。恐れ入ります。

そうして出来た貯蓄を雪だるまの芯として投資をする。これは投機になってはいけない。投資するために借金は一切しない。「二割利食い、十割益半分手放し」という投資法は村上世彰『生涯投資家』で語られた彼が父から学んだ『株は上がり始めたら買い、下がり始めたら売る。一番上で売ろう、一番下で買おうとしてはいけない』という教えに通ずるものを感じました。

「好景気時代には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資を、時期を逸せず繰り返す」という本田さんの言葉にはケインズ的な慧眼も感じて。「二杯の天丼はうまく食えぬ、沢山の天丼を注文して一杯食うのではなく一杯の天丼だけ注文して舌鼓を打つところに本当の味わいがある」という話には効用の逓減の法則を掴んだ知恵を感じました。

そして”「義理をかき、人情をかき、恥をかく」貧乏故の吝嗇でなく、自分の分を知って自己を抑制し一切の無駄を排す節倹をせよ”というくだりには、縁に金をしぶり、趣味・娯楽に金を遣う自分自身の行動を顧みる機会となって。藝術や旅は私の人生の愉しみですが、せめて生活レベルを落せるところは見栄をはらずに纏・絶・硬をしようと、早速晩酌をクラフトビールからスーパーで税抜き109円の本麒麟に変えたりしてます。「貸すな、借りるな」も本当に膝を打って。

そして『私の体験社会学』では「失敗は人生の必須科目、これなしに成功はなく、一度や二度の失敗に闘志を失うな」には刺激を受けました。また「馬鹿正直なだけでなく商売はアヤも大事だ」というのも考えさせられるし、逆に「偽善的によけいな謙遜はせず自らの能力を最大限に発揮すべき」という話や、「人を使うには使われるものの身になってすべてを考えよ」という話も腑に落ちて。

特に人を使うには何にでも口出しせず自主性に任せながら、きちんと目を配り人事配置などで”わかってるぞ”というのを示し、きちんと名前を憶えて人間として大切みを感じさせ、部下の意見もきちんと聴く、そして叱る時は「三つ褒めて一つ叱れ」。十分に他者の話を聴いた上で自説を述べ、最重要部以外は他者に花を譲るというのも”素晴らしい人心掌握術”だと。

そして立身出世のためには「勉強の先回り」が大事で、「職業道楽化」が一番いいと。「天才マイナス努力」より「凡才プラス努力」の方が必ず勝てるという兎と亀な噺には鼓舞され、『人生即努力、努力即幸福』という最終結論には感じ入りました。

事業/仕事など“やるべきこと、やらなければならないこと”を“やりたいこと”とし、社会に貢献することは大したもの。給料1/4を天引きで貯金することを為しえた精神の強靭さには舌を巻き、趣味だなんだいってる自分も詰めの垢を煎じて切り詰められるところは切り詰めなきゃなと想いました。また本田翁は毎日必ず一頁ものを書いていたそうで、これもBlogをやっている人間からすると毎日というのは驚異で。語り掛けられた言葉に上手く触発されていきたいな等と想う處です。

by wavesll | 2018-08-08 03:48 | 書評 | Comments(0)