鴎庵:舞台
2024-02-29T21:13:52+09:00
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カモメとは特に関係のない話をする縁側サイト
Excite Blog
小林賢太郎演劇作品『うるう』演劇的奥行きで魅せる言葉遊びとマジカルな演出の感性
http://kamomelog.exblog.jp/33272224/
2024-02-29T21:08:00+09:00
2024-02-29T21:13:52+09:00
2024-02-29T21:08:24+09:00
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舞台
うるう日に小林賢太郎の『うるう』をみました
うるうという怪物がいると言われる森に迷い込んだマジルという少年がヨイチという若白髪の男にあって。このヨイチを演じるのが小林賢太郎。
基本的にはコバケンだけの独り芝居で舞台は展開。最小限のセットながらプロジェクションマッピングなんかも含めて豊か且つ密度の好い舞台となっていて”おっ!”と想うマジカルな演出もあってとてもいい。
ただ、序盤は「演劇畑の『優しい空気』」を感じて。ウェルメイドさに鋭さがない気もして”上品だけど下世話さがないとゲラ笑いは出来ないか…”と想ってたのですが、トランプの下りではっとさせられたり、ラストシーンもいいし、物語が進むにつれ真相が露になってくると演劇に没入したり笑ったりするマジックに包まれて。ほんと演劇の魔法ですね。
演劇的な笑いという意味ではイマでもダウ90000とか居ますが、その前世代のコバケンの感覚はまさに”俺らオンエアバトル世代のセンス”って感覚もあって。この舞台みても言葉遊びの感覚とかを演劇的奥行きで魅せているし、ラーメンズとは言わずとも、また演者としてコバケンには出てきて欲しいなぁ。良質な演劇でした。
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新作歌舞伎 流白浪燦星 ルパン歌舞伎 卑弥呼の金印を追う白浪斬鉄剣
http://kamomelog.exblog.jp/33212953/
2024-01-07T20:09:00+09:00
2024-01-08T04:37:02+09:00
2024-01-07T20:09:59+09:00
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舞台
新作歌舞伎 流白浪燦星 (ルパン三世)をHuluストアでみました。
想ってたより遥かにルパンしてて楽しかった!
ルパンを演じる愛之助もめっちゃ面白いし、次元も次元してて、コメディ時事台詞も担って。
で、今回は五右衛門がメインの話で。冒頭南禅寺で歌舞伎スタイルの髪型で「絶景かな絶景かな」と登場し、ルパン次元そして「ふーじこちゃあーん」に「とっつぁーん」と立ち回りして和楽器でルパン三世のテーマが鳴り、五右衛門はアニメスタイルの衣装に。五右衛門がかっこいいのなんのって。尾上松也だったのか。銭形刑部もマジ素晴らしい。そしてアニメのタイトルの様にSEと共に「流白浪燦星 卑弥呼の金印」とタイトルが打字されて。
今回のお宝は卑弥呼の金印。それを赤き瞳の神の一族が伝説の二本の刀で斬ると雷のパワーが手に入ると。
秀吉がモデルの支配者のもとにからくり機械兵の業者がそそのかす、ここら辺マモーっぽさもあったり。ネタバレを避けるため詳細は省きますがツタンカーメンの秘宝っぽい展開にもなります。ってかこの物語、アニメSPの上出来の回みたいな面白さにあふれてて、マジ面白かった。とっつぁん和同開珎投げ銭するし、「つまらぬものを切ってしまった」な場面も出るし最後は白浪五人衆な見せ場も。ナウシカとかワンピースもそうだけど、歌舞伎って漫画原作をめちゃくちゃ上手くライヴアクション化できる舞台形式だなぁと惚れ惚れしました。
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マシュー・ボーンの くるみ割り人形 Joyful Xmasなバレエを観る甘苦さ
http://kamomelog.exblog.jp/33191685/
2023-12-20T02:09:00+09:00
2023-12-21T02:17:45+09:00
2023-12-20T02:09:27+09:00
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舞台
マシュー・ボーンがオリジナルな振付とストーリーで描く『くるみ割り人形』をマシュー・ボーンの『白鳥の湖』に続きみました。
ちょっとホラー的な演出もあったり、ピンクな光に包まれた舞台には少しクレイジー・ホースも感じたり。
Xmasシーズン。SNSをみるとビールを段ボールで買ってアドベントにしている方もいたりw
ただ、こういうJoyfulな舞台をみると、今年は引け目というか、ガザがあんなにも無惨な状況なのに「楽しいクリスマス」なんて過ごしていいものか、とは思いますね…。ジョンとヨーコが歌うようにWAR IS OVERな世界が早く訪れて欲しいとボトムオブザハートから想います。
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ザルツブルク音楽祭2023『マクベス』クリストフ・ ワリコフスキの超絶演出によるシェイクスピアの最新形
http://kamomelog.exblog.jp/33187080/
2023-12-16T11:52:00+09:00
2023-12-16T11:52:29+09:00
2023-12-16T11:52:29+09:00
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舞台
ザルツブルク音楽祭2023で上演されたヴェルイディ『マクベス』をみました。
言わずと知れたシェイクスピアの四大悲劇なのですが、オペラは実際のとこ「筋」はそんなには重要でないかもしれません。というと語弊がありますが、古典落語みたいに筋はもう知った上で演出や歌唱の卓越性を楽しむものなのだろうなと。古典というのはリブート・リメイク藝術というか。
クリストフ・ ワリコフスキのオペラ藝術は舞台演出という点において至上の、それこそ格式がある上にアヴァンな卓越に達していて。冒頭などにパゾリーニの映像が現れ、魔女はサングラス姿の大群として現れるし、舞台はまるで蛍光灯やネオンのようなセット、さらには亡霊は小人のようなマスクであらわれるのがまるでAKIRAをも想起させ、最期は銃殺も出たり、中世を舞台に現代と想像の世界が入り混じるこのパースペクティヴは欧米のオペラに頻出する演出ながら、そのキレは今年観た中でも随一の歌劇と想えて。
またマクベス夫人を演じるアスミク・グリゴリアンが本当に素晴らしい歌声で。マクベスのヴラジスラフ・スリムスキーもいいし、ヴェルディの楽曲自体も傑作オペラですね。これは演出へのハイレベルも含め、観客の目も肥えて厳しい期待に応える好循環があるのでしょう。
私は常々「今の日本はアニメ漫画がメインカルチャーで、寧ろオペラとかがサブカル的に面白い」と言っていたのですが、日本のサブカルのサブカルらしさであり強みはその「サブ」さというか「粗さ」というか、マンガとかは読者も子どもで作品と共に成長する寛さなのでしょう。進撃の巨人だって最初は画力はひどい、目の肥えた大人はつい「巧拙」を気にしてしまう。されど子どもはその物語の本質的な面白さやキャラの良さ、その漫画家の独創的なデザインに惚れていく。そこが日本の漫画の成長力に繋がっているのだろうなと。
と共に欧米のオペラは伝統と格式がありながらアヴァンな演出もがんがん行くのが素晴らしくて。こういう中世と機械文明が入り混じる演出プランで歌舞伎や浄瑠璃もみてみたいですね。VR能 攻殻機動隊はまだみれてないんだよなー。
あと、逆にオーソドックスなオペラを観たい場合はYoutubeなんかにフルで上がってたりするので、それもありですよ。あとはU-NEXTが結構オペラを取り扱ってくれています。
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エクス=アン=プロヴァンス音楽祭「ヴォツェック」/ ベルク 実際の情婦殺害事件から造られた、浮気した内縁の妻を殺す男の現代劇としてのオペラ
http://kamomelog.exblog.jp/33176733/
2023-12-09T17:33:00+09:00
2023-12-09T17:59:17+09:00
2023-12-09T17:33:43+09:00
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舞台
「ヴォツェック」を観ました。
このオペラは1821年に実際に起こったヨハン・クリスティアン・ヴォイツェックという名の元兵士の情婦殺人事件をもとに書かれている。貧しい床屋上がりの兵士が、鼓手長と通じた内縁の妻マリーを殺すという陰惨な内容の物語で、当初ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲だったのですが、WWIにも従事したアルバン・ベルクが完成させて。
20世紀のオペラは殺人事件にしても往年のヴェルディ『エルナーニ』のような優雅な味わいというよりも人間心理に迫るシリアスで陰鬱な雰囲気を奏でるものが多いですが、特にこの「ヴォツェック」は私たちの生きる現代とも地続きというか、時代劇をみるというよりも現代劇としてみれましたね。
経済的な理由からか内縁の妻との間に息子がいるも結婚をしていないヴォツェック。少しでも足しになればと治験?のような人体実験に身を晒しているが、内縁の妻からは「家族に関心がない」とみられ、その心の隙間を衝かれたか、あるいは金のイヤリングに誘惑されたか内縁の妻はヴォツェックの職場(軍隊)の男に抱かれてしまう。
ヴォツェックは今でいうと弱者男性のような側面もあるのですが、昔の男は自分の女が公衆便所みたいになったことを知ると絶望から刺殺にいたるのが、例えば近年の漫画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』では嫌みの一つを女に言うのがやっとくらいに日本男児は破壊性を失った感はありますが、時代はジェンダーフリーですから、このオペラが作られた時よりもより創作の現場としては女性の主体性を描くようにフォーカスがシフトしている最中なのでしょうね。
陰鬱で救いのない話なのですが、そこまで重ったるくなく、舞台演出もシンプルながらラストシーンあたりの沼の描写とか、なかなかみるべきものがありました。
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英国ロイヤル・バレエ「ライク・ウォーター・フォー・チョコレート~赤い薔薇ソースの伝説」メヒコを舞台にした魔術的リアリズムバレエ
http://kamomelog.exblog.jp/33157114/
2023-11-24T03:08:00+09:00
2023-11-24T03:11:34+09:00
2023-11-24T03:08:03+09:00
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舞台
バレエというと欧州が舞台のイメージがありますが、実は中南米が舞台のバレエもつくられていて、この英国ロイヤル・バレエ「ライク・ウォーター・フォー・チョコレート~赤い薔薇ソースの伝説」もメキシコ人作家ラウラ・エスキヴェルによるベストセラー小説がバレエ化されたもの。
「末娘は結婚せず母親が死ぬまで面倒を見なければならない」というしきたりによって結ばれることが出来ずにいた主人公ティタと愛しい男が20数年の時の中でぐつぐつと煮込まれたラテンの情愛が表現されていて、中でも面白いのがティタが念を込めてつくりふるまう料理がマジックリアリズム的なカオスな幻影を巻き起こすダンス描写。こういう魔術的な表現はCGIばりばりの映像作品よりも、寧ろ観客が想像力を駆使する舞台表現で映える気がしますね。
ラスト、裸体のような状態で抱き合う二人のラヴ・シーンが燃え上がって。まさにTe amo。面白いバレエでした。
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Mozart『Così fan tutte』/ ザルツブルク音楽祭2020 貞淑な姉妹を堕とすNTRオペラ
http://kamomelog.exblog.jp/33148118/
2023-11-12T16:45:00+09:00
2023-11-12T16:45:53+09:00
2023-11-12T16:45:53+09:00
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舞台
モーツァルトのオペラ『コシ・ファン・トゥッテ』のザルツブルク音楽祭2020での公演をみました。
ある姉妹と、その恋人2人がいて、その恋人の男二人に老哲学者が「女はかならず心変わりするものだ」と彼女たちの貞節を験す賭けを持ち掛けて。男たち二人は戦争に駆り出されたことにして、変装してそれぞれ親友の彼女をたぶらかそうとします。
最初は強硬に拒否していた姉妹たちも、徐々に誘惑に心が我慢しきれなくなって、堕とされる。最後まで拒否していた姉も「もう頑張れない」と墜ちる。”これがNTRか、ってかモーツァルトもNTRを描いていたのか”と背徳の悦びと、その後のトラジックな展開にみているこちらも持ってかれて。
老哲学者がいう「コジ・ファン・トゥッテ(女はみんなこういうものである)」というのは分かりませんが、浮気・不倫というのは悪魔の蜜のような甘美な歓びがあるのでしょうね。それにしても人間が描く物語って、本当に古今同様なものが通底する処があるんだなぁと。
音楽的にはこの姉妹の歌声、特に前半部の、平和で健全な幸せに満ちていた頃のパートが好きでした。まぁ、現実ではNTRには起きて欲しくはないですなw
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Alexander Ekman: Hammer / エーテボリ歌劇場ダンスカンパニー 人間社会の進歩からのSNS虚栄的な爛熟、そしてリスタートのコンテンポラリーダンス
http://kamomelog.exblog.jp/33147944/
2023-11-12T12:35:00+09:00
2023-11-12T12:39:39+09:00
2023-11-12T12:35:50+09:00
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舞台
コンテンポラリーダンスは何しろ基本的には台詞がないところを読み解かないといけないので合う合わないがあるのですが、このアレキサンダー・エクマンが振り付けたスウェーデンの エーテボリ歌劇場ダンスカンパニーによる『ハンマー』は私の好みを衝く作品でしたね。
まず音楽が打音を基調としたシンプルかつエクスペリメンタルなものでとても良くて。好い音楽がかかるとそれだけでダンスもみてられるというか。
そしてダンスの読み解きなのですが、私はこれはホモ・サピエンスの社会の遷移にみえて。
生命の進化とか、社会の進化とか、そういうタイムスパンをダンスは描くことは結構あるのですが、最初の規律的な本能に従う単細胞的ヒト社会から、各々が着飾って個性を見せ付けあう時代そして恋人との逢瀬が描かれるのをみて。
”確かに現代でメディア漬けで「他人が主役」のコンテンツをどっぷりみている自分にとっても「旅」と「恋愛」というのは「自分達が主役になる出来事」だよなぁ”と感じて。「個人の実存」というものは愛するものによって生まれ出ずるのかもなと。
ただ、次第に段々状況がさらに変異してくるというか、最初はキス直前の2人の写実画が描かれた床がいつのまにか鏡張りになっていて、ダンサーたちがセックスする相手が鏡に映った自分自身になっていっているように感じて。
そしてこれは禁じ手でもあると想うのですが、台詞ありのTVショウ収録現場が演じられて。そこにはインフルエンサーカップルやデューク更家みたいのが出てきて、”虚栄”を強く感じさせて。
「自分が自分らしくいられる為の行為の発露」であった「創造的人生」が、他人からの承認欲求を求める虚栄モンスター化へと変貌した?かといって日々の労働はまるで賽の河原、これはディストピアか…。
と想っていたら、GTOよろしくそんな状況をハンマーで打破するものがあらわれ、それが宗教的変化を起こしたというか再び原始からリスタートするような一幕でダンスは終わって。
上に書いたのは私なりの解釈でしたが、そんな現代における寓話的なコンテンポラリーダンスだったなぁと感じました。なかなか好かったです。
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三代目猿之助 スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」の衣装が凄い!
http://kamomelog.exblog.jp/33147613/
2023-11-11T23:51:00+09:00
2023-11-13T13:45:19+09:00
2023-11-11T23:51:59+09:00
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舞台
追悼 市川猿翁 スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」アンコールをみました。
哲学者 梅原猛が三代目市川猿之助(二代目猿翁)のために書き下ろし、神話のヤマトタケルの波瀾の半生を雄大なドラマに仕立てた本作は、昭和六十一年に初演され、”スーパー歌舞伎”という新ジャンルを築き上げた歴史的作品の95年の上演回。
これが本当に凄かった!何が凄いって煌びやかな衣装!毛利臣男さんによる衣装は今見ても先進的というか、豪奢であり瀟洒であり、例えばヤマトタケルの父の帝はまるで中国皇帝のようだし、女性たちの衣装も時に艶やか、時に爽やか、そして時に葬送な出で立ちで。敵役のクマソタケルや伊吹の神々などの造形も歌舞伎でありながら神話性があって。そして幾度も衣装替えがあるヤマトタケルの衣装デザインはどれも勇壮で美麗で、あの みづら(美豆良)なヘアスタイルを煌めく稲穂で固めるとか発想からして凄い!まだ当時日本に金がうなっていたのを感じさせる、非常にファッショナブルな歴史絵巻で、これは衣装をみるためだけにでも見る甲斐がある舞台でしたね。
ヤマトタケルの物語は熊襲への男の娘ストラテジーとか大体は知っていたのですが、その死に繋がる伊吹山(岐阜・滋賀県境)で闘う神として巨大な白猪と対峙することになるのは、”あ、このスーパー歌舞伎の初演は1986年だから、『もののけ姫』はここからというかヤマトタケルの物語からも着想を得たのか。”と想って。そして美空ひばりやきゃりーぱみゅぱみゅもびっくりの白く華麗な白鳥の姿での宙乗りは、堂本光一の「SHOCK」の祖先なのだなぁと。これは凄い舞台でしたね。
今回のスーパー歌舞伎での「平定する」ことを「平らげる」とするセリフ回しも印象的でしたが、梅原猛氏による脚本というとスーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』も印象的で、きっちりした物語になってましたし、このヤマトタケルで示されたうつくしさの基準はその後の大田楽などの現代に古代社会を浮かび上がらせることにも影響を与えたと想うし、このハイファッションぶりは『落下の王国』にも比肩すると感じました。好いものみれました。
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ジョージ・バランシン「セレナーデ」等をニューヨークシティバレエinマドリッドで観
http://kamomelog.exblog.jp/33137641/
2023-10-31T05:07:00+09:00
2023-11-01T06:09:57+09:00
2023-10-31T05:07:38+09:00
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舞台
ニューヨーク・シティ・バレエ団がレアル劇場(マドリード)で披露した
「セレナーデ」振付:ジョージ・バランシン 音楽:チャイコフスキー「スクエア・ダンス」振付:ジョージ・バランシン 音楽:ヴィヴァルディ
コレッリ 「ザ・タイムズ・アー・レイシング」振付:ジャスティン・ペック 音楽:ダン・ディーコン
を観ました。特にNYCバレエを創立したバランシン振付の2作品が、まるで古代ギリシア・ローマの彫刻をみるかのように端正で美しくて。
とりわけチャイコフスキーの『弦楽セレナード ハ長調 作品48』をバランシンが振り付けた「セレナーデ」は、腕で輪を作って繋がる様とか、群舞の有機的なダンスがとても素直に素晴らしくて。人間のカラダが自然に美しくなる舞だなぁと。いいもの観れました。
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歌劇「影のない女」(R.シュトラウス)@バーデン・バーデン復活祭音楽祭2023 2組の夫婦が危機に陥り真実の愛を験されるオペラ
http://kamomelog.exblog.jp/33124804/
2023-10-15T17:19:00+09:00
2023-10-15T17:24:10+09:00
2023-10-15T17:19:30+09:00
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舞台
バーデンバーデン・イースター・フェスティヴァルでの『影のない女』をみました。リヒャルト・シュトラウスの音楽をベルリン・フィルが演奏したこのオペラ。
霊界の王(カイコバート)の娘は皇帝と結婚している。皇后となった彼女には影がなく、子供ができない。影をもたぬ呪いで皇帝が石になるのを嘆き、皇后は貧しい染物屋の女房から影をもらい受けようと図るが…というこの歌劇を、修道院にて妊娠してしまった少女のみる夢として演出され上演された。
まず音楽として物凄く好きでした。リヒャルト・シュトラウスのオペラはいいものが本当に多いですね。
そしてストーリー面で、夫の兄弟たちが居候しているのにイライラしている奥さんなんか、義実家でのあるあるにも感じたし、皇帝である夫が石化するのを防ぐためにお忍びで人間界へ皇后が下りたのを、それとは知らずに皇帝が”人間の匂いがする、裏切りだ!”となるとかすれ違いもあるあるだなぁと。「影がない」というのが「子供が出来ない」ことを表すのも面白いし、子供が生まれない女性を古い言い方で石女などというものがありますが旦那の方が石になるというのも洋の東西で面白い所だなとも思ったり。
二組の、霊界と人間界の夫婦に危機が訪れ、真実の愛が験される歌劇ともいえるこのオペラ、3h超えの大作ですがダレることもなく楽しく観ることが出来ました。上にも書きましたが、R.シュトラウスのオペラはみて外すことが滅多にないですね。
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舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』剣士にして詩人の秘めたる恋物語
http://kamomelog.exblog.jp/33124365/
2023-10-15T06:45:00+09:00
2023-10-15T06:47:54+09:00
2023-10-15T06:45:02+09:00
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舞台
シラノ・ド・ベルジュラックというと想いだすのはONE PIECEの尾田栄一郎さんの初期短編集『WANTED!』の一篇にシラノという剣豪が出てくる話があるのですが、このBS松竹東急で流れたブロードウェイの舞台はその大本である、エドモン・ロスタンの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」に描かれた実在の剣士であり作家であり哲学者であり理学者の恋物語。
剣の腕は1対100でも勝つほどの強さを誇るシラノ・ド・ベルジュラックのコンプレックスは大きな鼻。醜い相貌だと恋するロクサーヌにも内心を打ち明けられない。いとこであるロクサーヌから恋の相談を受け、その恋慕の相手、クリスチャンと話すとクリスチャンは見た目はイケメンだが頭が弱くて愛の言葉一つもまともに紡げない。そこでシラノはクリスチャンの愛の言葉のゴーストライターとなってロクサーヌに愛の言葉を贈り続けるが…というお話。
舞台表現としては序盤にシラノが決闘する場面があるのですが、フェンシングに基づいた殺陣は普段時代劇の殺陣を見慣れてる身からすると新鮮でしたね。
古くは騎士道物語でもそうであるように、姫との秘めたる愛、報われぬ恋なんかが主軸になりつつ、戦場でのガスコン魂の見せ場もありますが、なんといっても一番の主眼はシラノが紡ぐ愛の言葉たち。ロクサーヌは直截的な肉欲にまみれたストレートな求愛を嫌い、詩情豊かな愛の表現を「魂の美」として時めきを感じる女性で。
今風に言うとシラノはクリスチャンという青年の体をVtuberのアバターのように使って、自分本来の魂の美しさ、愛の深さを表現していたのですが、当然クリスチャンもロクサーヌを愛していますから、そこでの衝突もあって。物語の線としてシラノはロクサーヌ以外の女性には”醜い”と毛嫌いされていたという設定で、そんな中で真っ当に人間の男としてみてくれたロクサーヌに惚れぬきつつ、自分のルックスの悪さを気にして尻込みしてしまうシラノのいじましさ何かもよくあらわれた舞台でしたね。そしてなんといってもそれを肉付けする言葉の表現の豊饒な華麗さが素晴らしい。
またちょっと本筋とは逸れますが、美青年というのは勿論女性からは大いに好感を得るものですが、案外男は男でイケメンってのには好感を持つというか、ルサンチマンがありつつも”そんなことを気にするのは男らしくない”というプライドと”美男子への好感”っていう美意識が、アンビバレンツを持ちながらもあるんじゃないかなぁと想ったりします。ただ、今、ものすごい勢いでジャニーズ事務所が叩かれているのはジャニーズが体現する美少年ってのは男が好むイケメン像からはかなり離れた、ふにゃふにゃなショタコンみばかり、というところもあるのかなと。exTOKIOの長瀬なんかは男も好きだとは思いますけどね。
そう思うとシラノの、ストレートに愛を告白できずにクリスチャンの躰を借りてコミュニケーションするのはバ美肉おじさんというか、非常に現代的なルッキズムの戯曲でもあるなぁなんても想いました。]]>
パリ・オペラ座バレエ『ベジャール・プログラム(火の鳥・さすらう若者の歌・ボレロ)』@バスチーユ
http://kamomelog.exblog.jp/33121973/
2023-10-12T21:08:00+09:00
2023-10-13T02:08:15+09:00
2023-10-12T11:08:41+09:00
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舞台
バスチーユ・オペラで上演されたモーリス・ベジャールの振付によるストラヴィンスキー『火の鳥』、マーラー『さすらう若者の歌』、ラヴェル『ボレロ』を観ました。
最も心躍らされたのが上に載せた『火の鳥』。
黒い群舞が、時にシステマチックで、植物や、あるいは戦争状態を表すアールデコのようなダンスを魅せる中で、赤い火の鳥が輝きと再生をみせて。太陽の化身のような火の鳥が、実はM78星雲の光の巨人たちであったようなヴィジョンが美しかったです。
そして『さすらう若者の歌』はブロマンスというか男同士の友情を超えた愛情も感じさせるタッグな演舞で。
そして『ボレロ』。『昴』好きな自分にはシルヴィ・ギエムを観に行くほど特別なダンス。冒頭のスポットライトで身体部位が閃く演出から、そのたおやかで秘めたる熱情を円形舞台の上で舞うダンサーの好さと、今回は特にその円形舞台を囲む群舞のフォーメイションの遷移が目が釘付けになるくらい魅力的にも感じて。いいものみれました。
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舞台神聖祝典劇『パルジファル』/ ワーグナー@バイロイト音楽祭2023 3Dグラスで魅せる聖杯・聖槍伝説に基づく救世主譚
http://kamomelog.exblog.jp/33114364/
2023-10-08T17:53:00+09:00
2023-10-08T20:48:49+09:00
2023-10-08T17:53:15+09:00
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舞台
『パルジファル』をみました。
ワーグナーが構想から40年かけて完成させたこの楽劇は聖杯伝説を基にしながら、『パルジファル(純潔な愚者)』によって王が救われる物語となっていて。
第一幕。時は中世、スペインのモンサルヴァート城の王、アルフォンタスは、守ってきた聖槍を悪い魔導士のクリングゾルの手先、クンドリに誘惑されて奪われ、その際に聖槍で傷つけられた箇所から血が止まらない。クリングゾルはさらに聖杯も狙う。王を救うための神託である「共苦して知に至る、汚れなき愚者を待て」に基づき、ある若者を連れてくるが、にっちもさっちもいかない。
第二幕で若者がクリングゾルの魔の城にやってくる。クリングゾルは若者の純潔を奪おうと城内を淫らな花園に変え、さらにクンドリを差し向け、その若者の名である「パルジファル」が記憶を喪失していた母親の物語から篭絡し、唇を奪う。が、この接吻からパルジファルは知を得て、アンフォルタスの苦悩を自分のものとし、救世主として覚醒、聖槍でクリングゾルを返り討ちにする。
第三幕でパルジファルは探していたクンドリに出会い、アルフォンタスを救い、聖杯を掲げる。
という4hにも渡る劇なのですが、実は私はこの劇の真価を目撃していなくて。というのも米国のMITの教授、Jay Scheibが行った演出は、3DメガネをかけてのARによる舞台の拡張というもので、今回収録された映像にはそのARの部分は組み込まれてないからです。
なので、ヴィジュアル的なものは円形のライティング以外は結構シンプルなものだったのですが、ワーグナーが描いた聖杯、そして聖槍をめぐる物語がまず面白くて。最後の晩餐で使われ、聖槍で傷つけられたキリストの血を受け止めた聖杯。インディ・ジョーンズやFateなど様々な物語に登場しますし、ロンギヌスの槍も先日宇部の地に刺さりましたね。その聖遺物をめぐる物語をワーグナーが描いたものをみれたというのは嬉しい。
また「純潔」に関して、まるでブッダを誘惑するマーラのようにクリングゾルの女人たちが誘惑しますが、逆にクンドリのキスで智慧に目覚めるというのも一種の宗教観・哲学観にも感じて面白かったです。実際、純潔をパルジファルは守りながら、クンドリとの愛を貫くことになるというのが人生観をも感じさせました。
音楽的には特筆するほど感動したところはなかったのですが、クンドリの高音がまるで超音波兵器のようにさんざめくのは凄かった。全体的に歌手たちの演技と字幕によって楽劇として大変楽しめて。個人的にはオペラやバレエ音楽は、映像と歌劇の場合は訳詩を観ながらの方が面白く聴けますね。4h超ダレることなく楽しめました。AR演出が不評だったのかカーテンコールでブーイングもみられましたが、欧州のこういう古典を挑戦的に演出する気風は自分は好きですね。
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テロ・サーリネン・カンパニー『トランジット』生命40億年超の遷り変わりの舞踏
http://kamomelog.exblog.jp/33071729/
2023-08-20T17:41:00+09:00
2023-08-21T03:59:55+09:00
2023-08-20T17:41:15+09:00
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舞台
爪先から脳天まで突き抜けるように心揺り動かされるダンス、プレミアムシアターでバレエやオペラを見始めて数年になりますが、本当に時折、年1くらいでこういうずば抜けた衝撃を受ける作品との出逢いがあります。
フィンランド・ヘルシンキをベースとするコンテンポラリー・ダンス・カンパニー、テロ・サーリネン・カンパニーによる『トランジット』。
Transitを直訳すれば「通過」。「トランジット」は航空の乗り換えなんかでも外来語として使われてますね。私はこのダンスに於ける意味としては「生命、遺伝子の揺りかごとしてのこの40億年超の物語」であるのではないかなと想いました。
始まりは舞台上で横たわり蠢くダンサーたち。その上には銀河のような星空のクラスター。隕石からこの星に齎された生命の萌芽が、単細胞生物として原始生命が徐々に徐々に、細菌やプランクトン、珊瑚のような原始生命、或いは魚類?へ進化変幻していくさまがダンスとして顕わされるように見えて。電子音でのダンスはなんとも心臓を鷲掴みにする魅力があって。
そして再び天啓のようなスポットライトがダンサー独り独りに次々と照射されて。ここでの悟り、一つの生命の跳躍は、海から陸への繁殖圏の拡大ではないでしょうか?植物、両生類、爬虫類、あるいは昆虫?何の言葉も語られないけれど、もしかしたら恐竜?象?そして鳥類?のような生命の歩みが踊られているように読み取れて。
そこで大きなテーマ、変化としてもたらされるのが「雌雄」ということ。雄と雌が生まれ、交わっていく。最初はぎこちないコミュニケーションが、段々と雄と雌、つまり家族、群れ、あるいは社会?を予見させて。そこには地球に訪れた過去の気候変動によるカタストロフも表現されている気がしました。この歩みでの音楽は管弦楽、それは生命の躍動を示しているのかもしれません。
そこから後半にまるで光陰矢の如しのように描かれる人間という存在。人々の影絵たちが浮かび上がらせる怒涛な歴史は、思えば生命40億年からすればあっという間の出来事かもしれません。
そして訪れる無音の白光。再びの電子音、また動きが非常に抑制され緩慢な、一種の宗教体験をしているかのようなダンス。私はこれはもしかするとAIなどの珪素生命体とでもいえる存在の時代を表しているのではないかなと。彼らには2023年現在、肉体のフィードバック感知が欠けていると想いますが、初期にあるロボティクスの「躰」の認知が踊り画いている気がして。地球生命における巨大な区切りがもしかすると生まれ出ずることが起きているのかもしれない、そんな啓示を持ってダンスは終わります。
ちょっとこのようなダンス鑑賞体験は、稀なレベルの感動を齎してくれますね。それは一種の予言でもあり、脈々と営まれるこの星の歴史の語り部との出逢いのような、そんな時間でした。
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