今日もまた横浜中央図書館に行って、本を借りてきました。それがこれ。日本音響研究所のTVに出てる鈴木さんが、発声のメカニズムから、声から何がわかるか、そして日本人の声について書いておられました。洋楽と比べ邦楽は細く聴こえる疑問が氷解。なかなか面白い新書でした。鶯とウグイス嬢の声紋分析を比較したり、鈴木氏が関わったバウリンガルの開発話も。このエントリでは読書ノートとしておっと想ったところをメモしていきます。
![]() ・声が"言葉"になるには、咽頭・鼻腔・気管で共鳴することが大きな要因である。共鳴体が大きければ低い音に共鳴、小さければ高い音に共鳴。(cf. ヴァイオリンとコントラバス ・声は口腔からの周波数や鼻腔からの周波数が上手く混ざったところで完全な声になる。それは口から12センチ離れたところ。そこから完全なる声になる ・人間の聴覚は約30~17,000ヘルツだが、聴きやすい周波数は大体2,500~4,000ヘルツ。自然界の音は幅広いが、人間の声は周波数幅が狭く、聴きやすい周波数を多分に含んでいるので、人の声は聴きやすい。更に、同じ大きさの音ならば、意味のある言葉を人間は無意識に聴こうとする ・人間が聴きとれる上限は約17,000ヘルツ程度といわれているが、超音波(20,000ヘルツ以上の音)に清涼感を覚えることがる。実際に実験すると、老若男女問わず、約9割の人が22,000ヘルツの音に脳波反応した。また、受け取り可能な周波数は言語によっても差異がある。英語には超音波まで含む発音が多く、英語を話す人たちはそういったレベルの音まで受け取っている ・風呂場で歌うと上手く聴こえるのは①風呂全体がエコーボックスとなり声の揺れが目立たなくなる②湯気で周波数の高い音が削られ、声が柔らかく聴こえる③水蒸気が声帯の皺を埋め、声帯の振動をスムーズにしてくれるから ・ヘリウムガスで声が変わるのは、一般的に気圧が低くなると声帯は振動しやすくなり、声は高めになるから ・声には、鼻が詰まったりして鼻腔を使わない鼻声と、鼻と口を正しく使った喉声がある。発声方法には喉の筋肉を使う方法と肺からの空気のスピードを変える方法つまり腹式発声がある。腹式発声を主に使う声として歌声がある。普段の声は悪いのに歌声は美しい人がいるのにその逆が無いのは、歌う時は意識して技術的に発声するが普段の声は意識や訓練なく発声しているから ・TV番組の実験で、声を出す時プロ歌手は腹筋80に対して喉の筋肉20という割合で使い分けていた ・声は声帯を振動させ口の中に共鳴体を作り外部に発するもの。大きい太鼓と小さい太鼓を叩いた時で音が違うように、人間も大きな顔の人は声帯も大きいので低い声、小さな顔の人は声帯も小さいので声は高くなる。男性と女性でも声紋は異なる ・周波数分析に使う変換式は仏数学者フーリエが発見したフーリエ変換という。CDやネット上の音源もフーリエ変換で音をデジタル化している ・性別の他、声紋からは体格、背の高さを推測できる。「ファントの法則」という理論が、背の高さと声の高さが、ある係数を加えて反比例することを証明している。背の高い人はパーツも大きく低い声。2003年現在では5センチ刻みで身長を判別できた ・声は25才を過ぎる頃から劣化していく。声帯と、口の構えを作る筋肉、神経の伝達能力の劣化から。そのような条件を組み込んで声を検証すると、年齢を5歳刻みで推測できる ・方言によって出身地が分かる。特徴を消すようにしても、かなり本格的な訓練を受けない限り自分が18才までに暮らした場所特有のアクセントが残る ・その人の職業が言葉や話し方に多大な影響を与える。教師は相手の話を余り聞かず、畳みかけるように話し、敬語が上手く使えない。接客業の人は、相手に好印象を与えるために反応を伺う適切な間を取り、特徴的なリズムを持つ ・声の周波数の乱高下で嘘をついているかわかる。聴いて分からない時も周波数分析で確実にわかってしまう ・アジア民族は広い草原や山々の中、より遠くへ声を届かせる為、周波数の高い音が必要だった。またアジア人全般、アングロサクソン系より体格が小さく、声帯も共鳴体も小さく、声は高くなる。しかし、日本語は高周波を必要としない言語なので、周波数は高くないが音域としては高いと言える ・日本人は腹式発声している人が少ない。日本語が肺からの空気圧を余り必要としないから。アジアの言語は言いを使わないで発せるものが多いが、韓国語は息を使った発音が多く、その意味で英語に近い ・東洋人はアングロサクソン系を比べると、頭の形が横幅が広く奥行きが短い。共鳴体の違いでその民族にとって出しやすい音があり、民族に適した言語体系になる。狩猟民族は肺活量が多いとか、アフリカのお皿を入れた下唇で発生しやすい言語体系など ・気象条件も声に影響を与える。寒い地域の人々は空気を沢山出すと体温に影響するのであまり口を開かずに声を発する。 ・日本の女性は、言葉遣いの男声化や体格の発達から、声が低音化している。逆に男性は女性の社会進出の影響を受けてか高音化している ・縄文から弥生時代には日本では母音が8つあった。中国の影響の強さからか。 ・日本でいい声とされるのは「渋くていい声」だが、欧米では高くて透き通るような声がいい声だと認識される ▲
by wavesll
| 2016-03-01 22:55
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![]() 半隠遁生活も10日になると、何かしらやりたくなるもので、昨日野毛の図書館でノーベル物理学者フランク・ウィルチェック著『物質のすべては光』を借り、今読了したところでした。 学生時代ブライアン・グリーン著『エレガントな宇宙』に心躍らせ、"唯光論"なる妄想似非科学記事をぶち上げた人間としては、「マジで物質は光なのか!?」と要らぬ期待をしながら手に取ったのですが、物質の全ては光ではありませんでした。『存在の耐えられない軽さ(The Unbearable Lightness of Being)』をもじった『The Lightness of Being』という原題の方が気が利いてるかな。それでも、物質の中の一部は光子だったり、情報(ビット)から物質(イット)を作り出せたり、時空を昔でいう"エーテル"が満たす"グリッド"が存在する、といった論は非常に面白く感ぜられました。単行本が出て6年経ち、文中で触れていたヒッグス粒子が発見されたし、重力波も確認された今、また新たな本をウィルチェック博士には書いてもらいたい。 ただ理論的な処は正直おっつかないところもあり、できれば『エレガントな宇宙』並みに平易に描いてもらいたいですが。それでも、ウィットに富んだ語り口からは、一般向けに描こうと努めていることを非常に感じました。 博士の関心が手品から宗教、そして物理へいったのには、非常に共感します。 この世界についてのワクワクするような真実が知りたい、と考えた時に、今一番面白い噺を提供してくれるのは物理な気がするからです。 <32次元にも巻き上げられた"量子次元"がある>、<質量ゼロの物質から質量のある物質が生まれる>なんて想像を絶しませんか?それから比べるとちょっと啓典はダイナミズムに欠けるというか。 そして、私が書いた「精神次元」なるアイディアが一蹴に伏されてしまうように何より信憑性のある科学的言説は、"確からしさ"がある程度担保されている、というのも真理的でいいですよね。一方で、理論物理で予期された現象が、観測で実在が判明するという流れは、神々しさすら感じるようなwkwk感と言うか、GODが書いたプログラミング書物を解読する行為のようにも想えます。 本書の中で、”科学者は天然自然の物理現象をプログラミングで再現し未来を造る野望に対しては現在謙虚な態度を取っている"と書かれていました。何しろ変数を入れるのが膨大になり、真の宇宙を顕すには多次元をも組み込まなければならないからだそうです。物理現象、恐るべし。未来予測は社会科学の方がイレギュラーな因子が多く難しいのかもと想っていたのですが、真実は物理現象で森羅万象を知る方が困難かもしれませんね。 そんなゴールは彼方にある、というか中ボスを倒すと次のボスの城が見えてくる遠大な科学のロード。 此の本を読みながら、理論の過程をさっと見し、結論だけしか理解できないのは、サッカーをみててゴールしか理解できないのと同じ、理力の弱さを恥じ入るばかりだなと想いました。私が仕事ができないのも、派手なゴールにしか価値を見いだせない、技術に対する素人振りから来ているのだろう。手を動かすことの偉大さを感じました。 と同時に幾らドラッカーが"白亜の塔の内部の智慧はもはや通じなく、学識と技術が組み合わされた『テクネー』の時代が来る"と言っても、真理を追究する学問が学問たる領域の輝きこそ、人類が生み出す真に価値あるものだと私は感じ、「何の意味があるんだ?」と世間的に揶揄されたとしても、この分野こそが人間が生きている価値なのだと、半ば宗教的に想っています。でも宗教的盲信はいけません。何しろもっとも素晴らしい真実は、試行錯誤で更新されていくメカニズムを持った理力の至宝なのですから。今世界で宗教テロ、移民排斥など、バベルの塔に雷が落ちたかのようなバックラッシュが起きていますが、再び人類に統合の機運が生まれるとしたら、”全てに平等”な物理現象からかもしれないな、等と想いました。 モーニング娘。'14 『時空を超え 宇宙を超え』(Morning Musume。'14[Beyond the time and space]) (Promotion Ver.) ▲
by wavesll
| 2016-03-01 14:41
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