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Lil PEEPのEmo Trap, VAVAの京劇Hip-Hop:Rap MusicのヒリヒリするYouth Spirit群

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LiL PEEP – Yesterday

Lil Peepのことを知ったのは彼が自殺してしまった前後でした。Oasisをサンプリングしたりグランジ然な"Emo Trap"という領域を拓いてきた彼。どこかカート・コバーンのような風格を感じさせた彼が逝ってしまったことは非常にショックで。

この曲の他にもAwful Things ft. Lil Tracy等、思春期の鬱屈と衝動を強く刻み付ける姿には、90年代に於けるROCKのヒリヒリさがあると感じるだけに、星が墜ちた悲しみがあります。

今は社会への反抗の音楽はROCKよりもhip-hopが担っているのだなと思わされたのは中国でヒップホップ禁止令が出たというニュース 。これを見た時「中国のラップって五言絶句ライクに踏むのかな」とか思ったのですが、目の覚めるようなトラックに出逢って。

VAVA / Ty. - 我的新衣
京劇ラップ。全然ぬるくない。伝統的な音楽を血肉とした上で本当にクールな形でパフォーマンスをしていて。中国の現在進行形の音楽で”これはいい”と想えたのは初めてかも。この人もTV出演がキャンセルになったようです。

革新的な領域という意味でAsiaの姿とダブってみえて。EXHIBITION : 中國最先端 C.H.I 池磊 @DIESEL ART GALLERYフェスティバル/トーキョーにも出たTianzhuo Chenの舞台もそうですが、中原から近年刺激的な藝が生まれてきてるなと。

歴史が終わらず新たにされていきYouth Cultureも進化変貌していく。自分自身の存在に迫られるようなヒリヒリとした勢いを感じた楽曲群でした。


by wavesll | 2018-01-26 07:31 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)

『欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時』をみて

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時をみました。


現代の気鋭の経済学者、哲学者、ジャーナリスト、投資担当者などが語る現代資本主義の様相。

『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』そして『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』に続く本作、今回中心に据えられた経済思想はシュンペーターとマルクス。『創造的破壊』と『資本主義はその成功ゆえに自壊する』、そしてシュンペーターがマルクスの思想から見出した資本主義に潜む『闇の力』が論じられていました。

番組では現在進むインターネット技術による社会変革が、中流層から富を奪い極一部の超富裕層との格差を広げていること、技術革新が賃金上昇に繋がらないことが社会に不安要素を産んでいると論じます。

そしてAI技術などによって現在の業務の半数ほどが機械に置き換えられる結果、仕事がなくなるため、経済を回すためにベーシックインカム等が行われるかもしれない、実際にニクソン大統領の頃にベーシックインカムは施行直前まで行ったと語られます。

けれども、現状をみていると、そういう楽天的な状況が訪れるという未来観測よりも、超・資本主義というか、ロボット資産を持つ者、或いはGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)等の圧倒的なプラットフォーム資産を持つものが容赦のない利潤を上げ、大衆は鵜飼の鵜になるディストピアな未来が見える気がします。

実際、今までの技術革新による生産性の向上は労働時間の短縮をもたらしませんでした。”より良い生活”を求めて人は”仕事がない状態”を”余暇”でなく”失業”として恐れる。

それは仕事に於ける自己実現であったり社会からの承認という意味での生きがいの喪失という点もあるかもしれません。或いは”何もすることがないヒマな人間”そのものが社会における不安定要素となるという点もあるかもしれないと考えると、”労働を越える”ことは学者の方々が考えている以上にハードルが高いことにも感じました。

実際、本番組でも”労働者に配分を多くする良い経営者は、悪い経営者との闘いに負けてしまう”と語られています。再配分の機能を個人や企業に求めるというよりも税による国家の機能として施行すべきで、その意味で課税逃れをタックスヘイブンを介して行う経済強者に対しての網を張ることへの国際的な体制をつくる必要があると思いながら、抜け駆けを考えると頭が悩ませられます。

ただでさえ、自国の利益を移民などに侵食されたくないという”排除の『悪』”が生まれている現代。

その裏にあるメカニズムをドイツの哲学者フリードリヒ・シェリングは『どんな組織もどんなシステムも時間を経て自身を維持するためには他のシステムを排除しなければならない。外部がないシステムは内部に「異質なもの」を作り出さなければならない』と論じました。

資本主義がその暴力性を抑えていたのは社会主義という「異質な対抗馬」があったから。そのタガが外れ、自分の身内の中から排除の対象をみつけるように動き出す『悪』。インデペンデンス・デイではないですが、人類が纏まるには宇宙からの侵略者が要るのかもしれません。

アントニオ・ネグリの言うところの『<帝国>』に対して個人が生き抜く術はなんなのか。私は大昔の学生時代に「Rage Against the Machineとなる力は創造性であり、Creativismな世が来る。仕事はますます創造的になる」なんて一席をぶったのですが、本番組ではフロイトを引いて『芸術家はいつも創造性の欠如への恐怖にさらされている』ことの不幸を説きます。

楽しいはずの創造が、義務になり搾取の対象となると、つらくなる。かといって体力が搾取される仕事では利潤が低い。現代の資本主義は、例えば雪が数十センチ積もるだけで大きく混乱するようなギリギリまでのハイパフォーマンスを稼働して成り立たせている。

生産の形態、条件が、社会の構造を決める テクノロジー、そして経済の在り方が社会の、ひいては人間のありようを決める これがシュンペーターがマルクスの書に見出した『闇の力』でした。

シュンペーターが書いたように資本主義はその成功ゆえに土台である社会制度を揺さぶり自ら存続不能におちいる。社会主義へと向かう状況が「必然的に訪れる」かは見通せませんが、資本主義の一番尖端である米国で社会主義的論調が勃興するのはマルクスの視座に合致した出来事にも感じます。とはいえこの不完全ゆえに変革を受け入れる資本主義というシステムの中で我々は数十年生きることに概ね恐らくなるでしょうから、自分でよりマシな意思決定をして行動していく他ないでしょう。

サヴァイヴしていくことの貴さと、世界を想う尊さ。これからさらに人間世界はドラスティックに変革していく転換点が続くと予感させられました。

by wavesll | 2018-01-25 06:01 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 第8章・第9章・第10章 書き起こし

第1章・第2章 第3章・第4章・第5章 第6章・第7章

第8章 交換だけが駆け巡る

安田洋祐(経済学者、日本)
「シリコンバレーをはじめアメリカで起こり続けるイノベーションをどう見ていますか?」

ジョセフ・スティグリッツ(経済学者、アメリカ):コロンビア大学教授。2001年ノーベル経済学賞受賞
「彼らは社会の転換を促すものだと言うね。まあイノベーションのおかげで億万長者になった人たちにとっては転換を促すものだろう。大きな影響を受けた人たちは確かにいるわけだ。

経済学者の間でいくつかの点が議論されている。その一つがマクロ経済の統計を見てもイノベーションによる生産性の上昇は認められないことについてだ。なぜだろう?我々の測定法が間違っているのか。大げさに騒いでいるだけなのか?」

見えない『富』

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)
「インターネットが何を生み出しているかを考えると、一つは生産者と消費者のマッチングだね。AirbnbやUberなどの有名なプラットフォームに見られるように生産者と消費者をマッチングさせる市場の機能を効率化している。

需要と供給の法則を強化している。まさにアダム・スミスの『見えざる手』がインターネットによって実現している。インターネットが非常に優れた市場として機能している。」

インターネットは新たな『見えざる手』?

コーエン
「今の時代 誰もが競争圧力にさらされている。GAFAを除いてはね。GAFAは自分たち以外の皆をより強い競争社会に放り込む一方で自らは競争に脅かされることがない。」

GAFA=Google, Apple, Facebook, Amazon

コーエン
「インターネット世界の巨大企業 グーグル、アップル、フェイスブック…他者には競争圧力をかけながら自らは競争を回避できるわけだ。私がインターネットの世界についてまず言いたいことだ。」

スティグリッツ
「たとえば検索エンジンの恩恵は確かに大きい。多くの人が利用している。フェイスブックを楽しむ人も多い。これらは生活の質に影響を与えているが統計には反映されていない。電気やDNAに比べてどれほど重要なのかという点について経済学者の間で議論が尽きない。

イノベーションを生む側にとっては皆の暮らしに影響を与えることは喜びだろうしそれは当然だ。しかし他人に24時間追い立てられることはそれほど幸せなことかな。」

わたしたちを駆り立てる新たな価値

経済における価値、それは何なのか?何が価値を決めるのか?なぜそれに価値を見出すのか?

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「『タデ食う虫も好きずき』と言うように『価値』というのは難しい…価格は分かりやすいが≪価値≫というのは謎だ…そもそも『取り引き』というのは不思議だよね。

ペンをあなたに売るとする。当然 金額の同意が必要だよね。私が10で売りたいのにあなたが9しか出さないなら成立しない。価格には正確な同意が必要だ。だがこの時、お互いが商品に見出す≪価値≫には差がないといけない。

売り手はペンの≪価値≫が価格より低くないと売らないよね。一方 買い手にとってはペンの≪価値≫が価格より高いから買うわけだよね」

そもそもお金とモノを交換できるのは何故…?

マルクスは交換に神秘を発見した。 『商品が貨幣になる命がけの跳躍』

資本主義の世界に潜む謎

セドラチェク
「お金によって価格を比べることができるようになる、それは順序付けることができるということだ。でも≪価値≫は…例えばトマトよりリンゴが『どれくらい』好きかを測ることはできない。リンゴの方がトマトより2倍好き?4倍好き?100倍好き?

あなたの父親よりも母親が好きか?父親と母親の≪価値≫を比べることなんてできないよね。」

価値の交換は 幻か

セドラチェク
「≪価値≫は主観的 価格は客観的だ。人々は「≪価値≫と価格の関係」を理解しようとずっともがいてきた。このダイナミクスについて明快に答えるのは…困難だ。」

価値を交換しつづけるゲームの中で私たちは踊り続ける

第9章 闇の力が目覚める時

コーエン
「変化する現状を読み解く鍵はルーティンジョブとノンルーティンジョブだ。その昔ルーティンワークの世界では『搾取』されるのは体力だった。今ではイノベーションの能力だ。

テクノロジーによってルーティンワークは消えつつある。今度は創造力の追求が新たな義務になったのだ。」

安田「義務ですか?」

コーエン
「義務だ。創造的でないといけない。『ロボットになりたくない』『人間でいたい』というような話ではない。『創造的であれ、さもなくば、死ね』と迫られているのだ。」

創造性か死か

コーエン
「いわば『創造性』がグローバル経済に搾取されるストレスがある。私たちは生産性を向上させ、想像力を高め…職を奪っていく機械に打ち勝たねばならない。私たちは新たな競争の世界に突入し緊張感を強いられている。世界はかつてないほどに『経済のルール』に支配されつつある。」

テクノロジーが資本主義のルールを決める時…

『機械怪獣』

マルクスは機械を怪獣に例え、その悪魔的な力を見抜いていた

手動の製粉器は封建社会を産み、蒸気式の製粉機は資本主義社会を産む。

生産の形態、条件が、社会の構造を決める テクノロジー、そして経済の在り方が社会の、ひいては人間のありようを決める

経済のあり方が 人間のありようを決める ヨーゼフ・シュンペーター(オーストリア生まれ 1883-1950)

シュンペーターがマルクスの書に見出した『闇の力』とは、これなのだ。

経済や社会は独自の力で動く 人々は自分の希望に依らず一定の行動を選ばされてしまう。自由を奪われるというよりも自ら心理的に選択の幅を狭めてしまうのだ

個人がその流れを変えることは出来ない。資本主義の、構造の力。

コーエン
「常に自分を変革することを強いられているということだ。

フロイトは有名な著書『文化への不満』の中で『芸術家のように生きるのは不可能だ』『芸術家のような人生にしてはいけない。なぜなら芸術家は不幸だからだ』『芸術家はいつも創造性の欠如への恐怖にさらされている』と語っている。

今の新しいテクノロジーの世界では常にそうした緊張がある。」

『芸術家』になることを迫られる不幸?

コーエン
「いつも『自分が特異なことは何か』と自分自身に問いかけなくてはならない。それがストレスと緊張を生むため今の社会では燃え尽きてしまう人が大勢いる。人々は能力を限界まで出し切ることが求められている。そこが昔の労働者とは異なる点だ。

新しいテクノロジーが本当にやっているのは前の文明の破壊だ」

昨日より素晴らしい今日。今日より素晴らしい明日。人々は変化に心を躍らせる。でも、それが義務になってしまったら。

楽しいはずの創造はいつのまにか苦しくなる。働くのは、何のため?

第10章 ゲームは終わらない

ロバート・スキデルスキー(経済学者、イギリス):ウォリック大学政治経済学名誉教授。ケインズ研究の権威。近著『なにがケインズを復活させたのか?』
「人には働かないことに対する『恐れ』がある。働かないことは『余暇』ではなく『失業』と捉えられる。人々にとって働かないことは所得が減り生きがいがなくなることと同じ。仕事でアイデンティティーを得ている人が多いから、大きな問題だ。

仕事を減らす自動化が進む一方、人々はどうすべきか。働かないことは人々を解放するのか。それとも生きる意欲を喪失させるのか。大きな問題だからこそ誰も正面から向き合おうとしない。」

生きること=働くこと を越えて

スキデルスキー
「予測では今存在している仕事の4~5割が機械に代替される。長期的には人々の労働時間は減って週20~25時間になるのだろう。それはケインズが1930年代に予測した事だ。

彼らの所得はどうなるのだろう。労働時間が短いことで所得が減るなら反対されるだろう。だから代わりになる所得が必要になる。一つの案がベーシックインカムだ。すべての人に無条件で基本給を配る。」

国家が『最低限』の保証をする時…

ルトガー・ブレグマン(歴史家・ジャーナリスト、オランダ):「週15時間労働」「国境の開放」など斬新な提案を次々に 近著『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』
「アメリカの歴史の中で誰もが忘れているある逸話があるんだよ。実はニクソン大統領は70年代のはじめベーシックインカムを施行させる寸前だった。

当時ほとんど誰もがベーシックインカムが施行されることを信じ切っていた。有名な左派の経済学者ガルブレイスも賛成していたし右派で新自由主義者のフリードマンも賛成していた。誰もが支持していたからニクソンは『僕が大統領になったら実行する』とね。

彼の提案は二度議会を通過した。だが民主党はもっと高いベーシックインカムにすべきだと主張して折り合わなかった。二度ともね。」

『自由の国』の幻のプラン

ブレグマン
「もう一つの歴史の皮肉はアメリカで行われたベーシックインカムの社会実験だ。結果は文句のつけようがなかった。社会保障費は下がり犯罪は減少、子供の成績は上がり人は労働をやめなかった。

だけどただ一つ、離婚率は上昇した。50%ほどね。すると共和党など保守派は皆『ベーシックインカムは採用しない』と決めた。女性がより独立してしまったら男性は良い結婚生活を送れなくなる、ダメだとね。こうしてベーシックインカムはアメリカで忘れ去られることになった。

だがわずか10年後ある研究者が当時の統計の誤りを発見した。離婚率は上昇してなかった。時すでに遅しだ。偶然が絡み合った奇妙な歴史だ。

もしもアメリカがベーシックインカムを採用していたら影響は計り知れなかっただろう」

カビール・セガール(電子決済サービス企業戦略担当、アメリカ)
「水は『公共の資源』だよね。蛇口をひねれば水が出てくる。人はいくらかのお金を払って水会社から水を使わせてもらう。公園や空気もそうだよね。なぜお金だけはそうならないんだろう。

お金は今 銀行から配られているよね。お金を借りられるかどうかを。銀行員が決めるのは本当にフェアかな?未来はきっと政府がお金を全部持っていて、誰でもそこから直接お金を引き出せるようになるかもね。

皆がユニバーサルインカムのクレジットカードを持っているんだ。誰もが年に5万ドルをもらえていくらかのルールのもと使用できる。

自動化で仕事が減る社会では富を生み出すために皆が働く必要はなくなる。結局自由に使える時間こそが富だ。まさに有限の貨幣だからね。」

時間 有限の『貨幣』?

セガール
「『自由な時間』ほど豊かに感じるものはない。それこそ自由な人間だ」

コーエン
「シュンペーターは『資本主義は生き残れるか』と尋ねられ『生き残れないだろう』と答えた。その理由は単純に言えば官僚的なプロセスのせいで資本主義に必要な起業家精神が失われると考えたからだ」

世界を覆い尽くした資本主義。成功ゆえに失われるもの、成功ゆえに生まれる裂け目 それは何なのか

ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ)
「現代資本主義の世界では巨大コンツェルンが原料から販路まですべてをコントロールしている。コンツェルン同士は競争関係になく時に協力関係すら築いている。どんな産業でも売り上げの大半が数社の巨大企業に偏っている。

『競争』というものは実際には存在していないのよ。」

競争なき資本主義?

ヘルマン
「例えばある経営者が複数の企業を渡り歩くことが多いでしょう。あるいは執行役員の後に監査役になったりね。さらに複数の企業の監査役を兼任することもある。監査役同士が同大学出身の旧知の仲だったりもする。そうした状況では競争原理など働くはずがないわ。

いわば『村』のような狭いところで意思決定がなされる。『エリートのお友達集団』なのよ。」

競争なき富の固定化

ジョセフ・スティグリッツ(経済学者、アメリカ)
「シリコンバレーで働く人たちの多くは創造性を発揮することにやりがいを感じているようだが、公平を期すために言うと彼らは税金を逃れている。彼らは税金回避にとても熱心で世界各国で課税を逃れている。タックスヘイブンを利用し世界中で得た利益を税率の低い地域に移しているのだ。」

シュンペーターは書いた

資本主義はその成功ゆえに土台である社会制度を揺さぶり自ら存続不能におちいる。社会主義へと向かう状況が「必然的に訪れるのだ」

ロバート・スキデルスキー(経済学者、イギリス)
「資本主義というのは資本を蓄積する仕組みだが、それがもはや重要でなくなった時、資本主義のシステムはなくなる。必要とされなくなり消えるのだ。

それは政府が経済の所有と管理を行う社会主義ではなく、もうけるというモチベーションが重要じゃなくなる世界のことだ。」

欲望からの解放?

ヘルマン
「資本主義が非常に魅力あるシステムなのは明らかよ。人類が初めて発明した経済成長を生み出すためのシステムだものね。でも資本主義は成長を生み出すけれど、残念ながら永久に成長し続けることはできないのも事実よ。

いずれ資本主義が崩壊するのが先か、私たちが資本主義から抜け出る道を見つけるのが先か、どちらかね。」

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)
「かつて私たちは資本主義の代替案があるだろうと考えていた。モノの生産と消費に関する理論がたくさんあった。だがそのすべてが誤っていたことが技術の進歩の歴史によって証明された。

資本主義はさらに多くの矛盾を生み出し人類を滅ぼしかねない。現在起きていることについてのマシな理論を立てないと人間世界の滅亡はいつか本当にやってくるだろう。」

ダニエル・コーエン(経済学者。フランス)
「今の世界に名前を与えるならばまさに『デジタル社会』だ。

物や機械を相手にする世界から人を相手にする世界に移っていくはずだった。ようやく人間的な世界が訪れるかもしれない、とね。

だが『デジタル社会』はそうじゃなかった。問題を解決するための魔法の杖などない。手っとり早い解決策にだまされてはならない。」

光を追い求めるうちに、闇を、忘れ去ったのか。まるで、林檎を高く売ることに夢中になって、林檎の味を忘れたかのように。

セドラチェク
「シュンペーターは言い当てていた。『資本主義は批判を受け入れられる唯一のシステムだ』とね。この世界はどうにか機能している。でも、それがなぜ機能しているのか実はよく分からない。物理も同じだ。現象の細部まですべてを説明できる完璧な理論はない。

資本主義はある程度までは機能するが完璧でないということにいつも注意を払うべきだ。現在の世界について確実なことは誰にも分からないのだ。」

数字のゲームから誰も逃れられない。だがゲームにはルールがある。ルールを決めるのは、時代の、私たちの、欲望。今夜もルールは書き換えられていく。欲望の資本主義。


『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』をみて
by wavesll | 2018-01-25 00:09 | 書評 | Trackback | Comments(0)

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 第6章・第7章 書き起こし


『資本主義は その成功ゆえに 自壊する』 ヨーゼフ・シュンペーター

カビール・セガール:元 投資銀行新興市場部門ヴァイス・プレジデント 近著『貨幣の「新」世界史』
「あなたが何かを買う時、欲望が何かを手に入れたいとサインを出している。そうなるように人間は進化してきた。例えば私が『お金』と口にするだけであなたの体には心理的な変化が生まれる。お金という言葉を聞くだけで体に電流が走り反応してしまうのだ。

冷静な感覚でいられなくなる。いつもお金や欲望が頭の中にあるとしたら、あなたの脳は絶えず思考回路をつなぎ変えていることになる。あなたはお金を使っているつもりでお金に使われているんだ。人生を左右してしまうほどの強い力だよ」

増殖する資本に魅せられて。欲望の世界はまくを開けた。

ジョナサン・ストラル(ベンチャー投資家、アメリカ)
「資本主義は人間の創造性をドライブさせる。最高の人間、最高のアイデアが勝つ世界だ。」

つくって、使って。つくって、壊して。古いものを壊して新しいものを作るアイデアが力を持つ世界。

創造的破壊

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)
「シュンペーターの表現は現実をよく捉えているからこそ人々の心をつかんで何度もよみがえってくる」

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)
「iPhoneを発明しても同じiPhoneを作り続けていたらダメだろう?」

ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ)
「世界中で労働者の賃金が頭打ちになっている現状は資本主義にとってとても危険な状態だと言えるわ」

欲望が私たちを駆り立てる

「Anti Capitalista」

成功とは 価値とは お金とは 今「闇の力」が蘇る。

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 後編

第6章 幻想の貨幣愛

ウォール街

カービス・セガール(電子決済サービス企業戦略担当、アメリカ):元 投資銀行 新興企業部門ヴァイス・プレジデント。大統領選挙戦のスピーチライターも務めた。近著『貨幣の「新」世界史』

彼は元投資銀行のトレーダー。巨大なマネーの売り買いを仲介してきた。

セガール
「私の仕事は企業と投資家をつなげることだった。例えばアリババの新規公開株(IPO)に携わったよ。企業が株式上場するときの一番の山場が新規公開株(IPO)だ。企業がそれを望んでも投資家が乗ってこない時は厄介だ。

『市場がお金を出したがっていません』と企業に説明しなけいといけない。心証を害さないように丁寧な言葉でね」

投資のリアル

セガール
「アリババやフェイスブックなどが新規株を公開する時は全く逆だ。投資家たちが株を買いたがっても皆が皆買えるわけではない。10億ドル分注文するクライアントにもこう言わないといけない。

『すみません。5000万ドル分しか提供できません』。『注文の5%だけ?』と言われても『買いたい人が多すぎて…』ってね。」

ビッグマネーの調整

セガール
「資金が10億ドルに満たない投資家とは話すこともなかったね。『5億ドル持っているから口座を開きたい』と言われても『それは少なすぎる。他の受付に行ってください』と伝えるのだ。

私の大手取り引き先は1000億ドルの資金を持っていてその人と毎日話していたから…普通の感覚をなくしていったよ。誰かの大切な資金なのにその価値を画面上の数字にしか思えなくなる。現実感がなくなるんだ」

数字は幻惑する

カール・マルクス(ドイツ生まれ 1818-1883)
資本主義というゲームのルールに深く向き合った男、マルクス。彼は革命を望んだだけではない。生涯をかけて書き上げたのは資本主義の構造の解明に挑んだ論理の書だった。

『資本論』カール・マルクス著 1867年

マルクスはお金を王様に例えてこう記した。

この人(カネ)が王であるのは、ただ他の人々が彼に対して家来として振る舞うからでしかない。ところが家来たち(モノ)は反対に、彼が王だから自分たちを家来だと思うのだ。

王様が王様なのは皆が王様だと思うから。これからも王様であってほしいと願うから。幻想程強いものはない。

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「私たちはGDPが1~2%増加するだけで歓喜する社会に生きている。シャンパンを開けて国民全員がお祝いするようにね。乳幼児死亡率が4%減少するよりもGDPに夢中になる。どうしてだろう、言わばお金に対するフェティッシュな欲望だね。」

お金への『偏愛』?

セドラチェク
「お金の象徴化とも言えるね。本当にナンセンスだ。日本のGDPが2%上がったところで…人々への収入の影響はほとんどゼロだ。乳幼児死亡率4%減は実際に恩恵がある。自分が少し『善人』になれた気がするからね。

世界中に十分に食べるものがない人がいる中で自分が十分な食事をしていても自責の念にかられなくなるために自分の収入のたった1%を与えるだけでいいんだとしたらどうだ?1%で世界中が幸せになれるならやるよね。

所得の50%ならどうだろう?やる人は多くないだろう。こんなふうにお金への執着があるわけだ。」

セガール
「ウォール街ではいつも人は『もっと』を求める。その元にあるのは不確実な未来への備えだよね。持つお金が多ければ多いほどより未来は安心だと感じる。それで…人は時々過剰に安心を求めてしまう。そして人々が貯蓄に走ると社会に恐慌が起きる。

私たちは恐怖と欲望からできている。だから『もっともっと』となってしまうんだ」

不安ゆえの『もっと』

およそ90年前に起きた世界大恐慌。画期的な処方箋を提示したのは稀代の経済学者 ケインズだ。

J・M・ケインズ(イギリス生まれ 1883-1946)

失業が社会の最大の不安だとした彼はこんな言葉を残している

みな 月を欲するため 失業が生まれるのだ。欲望の対象 すなわち貨幣 それを生むことができず欲しがる心を抑えられないのならば失業の問題など解消できない -J・M・ケインズ著『雇用・利子および貨幣の一般理論』

ケインズは貨幣を月に例えた。ヒトは手の届かないものへの憧れにいつも囚われてしまう。
人々の心の底にある無意識をコントロールすることこそ資本主義の鍵だとケインズは気付いていた。

セドラチェク
「お金が道具ではなく目的になってしまうんだ。お金はあらゆるものと交換可能だから人はお金を欲望する。いつの間にか貯めこむことが喜びになってしまう」

使うためのお金が貯めるためのお金に。目的と手段が逆転したらいつしかヒトはお金の奴隷になる

第7章 二つの世界を欲望が覆った

西の資本主義、東の社会主義。当時、世界は二つに分かれていた。巨大な二つの力の均衡。

その頃西の世界に現れた二人の指導者。

ロナルド・レーガン(在任期間1981-1989)
マーガレット・サッチャー(在任期間1978-1990)

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)
「あれは1980年代…興味深い事件が起きた。経済が危機に直面していた時代、レーガンとサッチャーが革命を起こした。『生産性にとらわれる時代ではない』『ポスト物質主義時代が到来する』…そんな考えは誤りなんだと彼らは認識した。大きな経済改革が不可欠だとね。

それまでの社会の型を破壊し変形させたのだ。彼らは『悪徳の栄え』を引き起こすことになる。彼らは強欲を成長の原動力として解き放った」

欲望の解放がルールを変えた

ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ)
「レーガンはトランプにとって偉大なるお手本でありトランプがやろうとしている富裕層への減税と軍事費の拡大、それはまさにレーガンと同じことをしているのよ」

歴史は繰り返す 悲劇として?喜劇として?

コーエン
「1980年代以降の資本主義は工業の時代だった50~60年代とは変わってしまった。社員や労働者を切り離していく中に新たな価値を見出したのだ。かつては大企業が労働者を守ることに組織としての大きな価値を置いていたのにそれを捨て去っていったのだ。」

解放された『市場の力』

コーエン
「レーガンとサッチャーが80年代に行った革命で市場が解放され、ウォール街のマネーのパワーが解き放たれた。この時期にウォール街でほしいままに振る舞った『乗っ取り屋』たちはさまざまな企業を買い占め、分割して売り払った。

オリバー・ストーンの映画『ウォールストリート』で実によく描かれているよ。事業に極めて疎い人間が企業の価値をバラバラにしてしまった。これが新しい金融資本主義の動きの基礎となっている。」

資本の増殖を求めて、バーチャルな価値が行きかい、増殖する現場。そこで見えた資本主義のリアル。

セガール
「何十億も扱える投資家…彼らがどんな決定をするかが市場を動かす。家で少数の株を買う人は市場を動かさない。『200万株買いたい』『数十億ドルする会社を買いたい』と言う人が動かす。ソフトバンクの株を数十億ドル分買いたいと言うような人だ。

銀行員と政治家の相互関係…それが資本主義を動かすわけだ。」

巨大なマネーがさらなるマネーを引き寄せる

セガール
「政府が銀行からお金を借りることを金融界は基本的に断ることはない。これが現代社会の基盤になっている。いわばJPモルガンなどの大銀行は連邦準備銀行の資金を利用できるわけだ。政府にお金を貸し利子を取れるような企業は他にないよね。大きなパワーだ。

政府と銀行の関係は互いに共生する生物のようだ」

ルールを手にし圧倒的なパワーと巨大なリターンを求めるウォール街。掲げてきたのは自由な取引。だが…

コーエン
「レーガンが唱えた『トリクルダウン理論』を覚えているか?彼は社会の上の富は下に滴り落ちると言われたが全く違った。とても寛容…というよりもあまりに楽観的な考えだった。もともと持っていた人の手に富は残ってしまった。」

富は…滴り落ちなかった

東西冷戦の終結 膨れ上がる資本の運動 勢いは止まらなかった 加速するグローバリゼーション

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「物事が良い状態になるには、必ず悪い状態の時にエネルギーを蓄えているように見える。これは資本主義と共産主義の間でシステムが変わる時にもそうだったと思うね。90年代のはじめに私はそんなことを考えていた。

当時チェコは経済のシステムを変えようとしていた。その際変化は比例的に進むと考えていたのだがそれは間違いで実際はJカーブが描かれた。」

変化はいつもJカーブ

セドラチェク「そこで思い出したのがスラヴ民話に出てくる『死の水』と『生の水』だ知ってるかなぁ」

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)「いいえ」

セドラチェク
「誰かが死んだり瀕死の事態になったりした時、その人を生き返らせるためにはまず『死の水』をかける。するとすべての関節が外れる。その後に『生の水』をかけると生き返る。『生の水』だけでは効かないのだ。

同様に資本主義にエネルギーを与えているのは共産主義の存在でありそれが今は欠けているのかもしれないね。」

ガブリエル「まさにそうだね」

資本主義 社会主義

セドラチェク
「資本主義を考える時 共産主義と比べるのは実はとても困難だ。もちろん他のシステムと比較してもいいのだが、残念ながらこの二つが何十年かの間実際に並存していたのでね。

資本主義の社会では共産主義的な実験を許容されるだろう。もし私が、お金も要らないし銀行も携帯電話も紙も要らないと決めたら実行は可能だ。

実際にドイツの美しい森の中に行ってジャガイモを育てて私たちを止める人はいない。それどころか人々は私たちに興味を持って『頑張れ!』と応援してくれるはずだ。

でもその逆は絶対に機能しない。共産主義は資本主義的実験を許さない。」

資本主義=資本主義+社会主義?

ガブリエル
「私たちが『資本主義』と呼んでいるものは…もちろんこの言葉の意味はこの200年間で変化してきた。なぜなら私たちが資本主義としてその特徴を説明しようとしているシステム自体が変化し続けてきたからだ」

セドラチェク
「そうだ。シュンペーターが鋭い言葉を言っていた。資本主義に終わりがないのは自身が変わり続けるからだと。」

昨日の資本主義≠今日の資本主義?

創造と破壊のスピードは、上がり続ける



『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』をみて
by wavesll | 2018-01-24 20:50 | 書評 | Trackback | Comments(0)

ヘンミモリ個展「表層/発生」@大久保ART SPACE BUENA

「表層β」
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「表層α」
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「においの化石」
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「手紙」
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「やわらかな庭」
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「みをつくし」
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「夜の残像」
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「おやすみ」
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「壁A」
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「壁B」
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大久保ART SPACE BUENAで開かれているヘンミモリ個展「表層/発生」へ行ってきました。

前回の『メタモルフォシスと飽和』からさらに進化し焦点がくっきりした蜜蝋を使ったミクストメディアの作品群。半立体の絵画性は光によって表情を変え、生で観ると格別でした。

そのテクスチュアは鉱物の断面のような、孔雀の羽根のような、貝の質感のような。紙の繊維や鉛筆の描写が活き活きとしたライヴ感をもたらしていたり、瀧水図のようにも天界からみた陸と海の境にも感じれて。エレクトロニカな美と大地の拍動が同居する物質としての存在感を感じました。オープニングイヴェントでエレファントノイズカシマシの音と共にイシズカユウにライヴペインティングした衣装も展示してありました。

作品は購入することが出来、既に注文が入っている作品も。マーチャンダイズには果物が液状化するポストカードやアクリルカードに描かれた作品も。ミクストメディアの作品群が白壁にしっくりとマッチして格好良かった。これはホント現場でみる充実感のある展示で凄くおススメです◎会期は1/28(日)まで。

by wavesll | 2018-01-24 00:02 | 展覧会 | Trackback | Comments(0)

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 第3章・第4章・第5章 書き起こし

第1章・第2章

第3章 ショウの幕があがる時

ドイツ、ボン大学、哲学インターナショナル・センター

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「真面目な人がクレイジーになるとただのクレイジーな人より厄介だよね」

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ):ボン大学教授。「新実在論」を提唱。注目を集める気鋭の哲学者。近著『世界は何故存在するか』
「僕もまったくそう思うよ。

資本主義を定義するならば『商品活動に伴う活動全体』となるだろうね。そして今日の資本主義の世界はいわば『商品の生産そのもの』になった」

生産の体系=資本主義

ガブリエル
「そもそも生産する(produce)とは何か?語源は『前に(pro)持ってくる(duce)』だ。つまり商品の生産とはいわば見せるための『ショウ』なのだ。」

生産=新たに「見せる」こと

ガブリエル
「フェイスブックの『いいね!』やこの会話も商品の生産だ。その意味ではカメラやディレクターや私たちの今の気持ちもそこに含まれる。今では資本主義は全てがショウ化している経済システムだ。

偶然かもしれないがドナルド・トランプは資本主義の顔のようだ。彼はテレビショウを作っている。資本主義は代替案のないショウだと思うよ。

ドナルド・トランプの戦略は従来の戦略と全く異なると言える。重要なのは鉄鋼会社を守ることでも雇用を守ることでもなくショウを売ることだ。今のアメリカの政権が富を生み出す方法はまさしくショウ形式によるものだ。」

フェイクさえ商品(ショウ)になる

ガブリエル「そうなると最近のアメリカ製品で最強のモノの1つは」

セドラチェク「見せ物だね」

ガブリエル
「そのとおり。フェイクニュースのような偽物があふれている理由の1つは大量生産がなされる状況において恐らく偽物が理想的な商品だからだ。ベストな商品は安く作れて浮ついたモノなんだ。」

ショウほど素敵な商売はない。新たな欲望の世界の幕が上がった。

「景気は上がってきているがトランプのふるまいはまずいね。彼はまともなことを言えなくなったようだね」
「人々は彼の能力と目指すところを信頼していると思う。だからこの国のことも信頼できるし私も安心して投資が出来るよ」
「資本主義は自然な形だと思う。ライオンや猿が住むジャングルに社会主義なんてないだろう。結局私たちも動物だ。資本主義はずっと続いていくだろう。お金も食べ物もなく路上で暮らして心の問題を抱えている人もいる。見るのは悲しいけど…『自由な社会』が払うべき代償だね」

資本主義=自由?

第4章フォースの覚醒

グローバル化 貿易 投資

国境を越えて資本を増やそうとする人々と、そこから取り残される人々。引き裂かれる欲望の世界

トランプ「壁をつくるぞ。議論の余地はない。」

右でも左でもない。上でも下でもない。資本主義はどこへ向かう?

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「もともと私たちは『政治移民OK、経済移民にはNO』と言ってきた。『経済移民はいい暮らしがしたいだけ』『それはNoだ』。

だが実際は逆だった。数多くの移民がヨーロッパに来て私たちの代わりに働きさらに消費をしてきたことを私たちはOKだと思っていた。移民と犯罪の可能性を結びつけたりイスラムと関連づけたりすることもなかった。

なのに突然…状況が政治的になり移民が仕事ではなく助けを求めてきた瞬間私たちは『NO』と言ったのだ。実際は何千万もの経済移民を歓迎してきたのに。事態が政治的になった時『NO』と言ったのだ。

私たちは理屈に反する本能的な行動をしているね」

いつから政治の裏側に経済という本音が張り付いたのか。建前では仲間、でも実は、敵。矛盾は何故生まれた?

経済と政治の錯綜

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)
「皆がポピュリズムと言うがそれは無意味で的外れな診断だ」

ポピュリズムはマジックワード?

ガブリエル
「今起きている現象には恐らくそれを表現するためにより適した言葉が見つかるのではないかと思う。これはグローバリゼーションに対する抵抗の一種じゃないかな。この分野で何かが起きているんだ。

グローバリゼーションは基本的に経済プロセスだから起きていることを経済的に説明しなくてはならない。政治的ではなくね。

ドイツの人口の12.6%が排外主義に目覚めて投票を決めたわけではない。そうではなくむしろ地球のあちこちで不公平を目にするようになったためと考えた方が良い」

グローバル化→格差の発見

ガブリエル
「まだ十分に話題にされていない国にブラジルがある。いまブラジルは崩壊しつつある。ブラジルは今の資本主義の過度な実験場と言えると思う。知る限り地球上で最も不平等な国だ。南アフリカよりもね。

経済学者のあなたの方はこの様子をどう感挙げるかな…。ポピュリズムや民衆扇動が…」

セドラチェク
「ポピュリズムは正しい言葉ではないよね。ポーランドでも起きた…」

ガブリエル
「そうだ。EU内で起きてることだ」

セドラチェク
「ヨーロッパの交渉の中心にいてEUの理念に賛成していた政権だった。なのに2週間で突然邪悪な勢力(フォース)が目覚めたのだ。僕はポピュリズムと呼びたくない…これは暗い悪のようなものだ。」

悪の力(フォース)

セドラチェク
「あれは2015年の終わり頃『スター・ウォーズ』が公開されたね。『エピソード7』タイトルは『フォースの覚醒』だった。少し予言めいてるよね。2015年末に何かが起こり悪魔的な門が開いたのではと…私は陰謀論とかを調べたりさえもしたよ。

何か構造的な変化が生じたのかもしれない。この状況を表すうまい言葉が見つからないが、もう人々が『いい人』でいられなくなったのかもしれない。『なぜ私が助けなきゃいけない?』とね。『私のことは助けてくれないのに』ってね。

何というか…キリスト教徒の反応はイスラム教の国々の反応よりも極端に経済的なものだった。イスラム教の国々は実際はるかに多くの数の難民を受け入れている。」

ガブリエル「そうだね」

いい人 疲れ?

ガブリエル
「あなたの『悪』の分析に賛成だ。悪というものを今一度考えてみる必要がありそうだね。シェリングという哲学者がいて彼についてはたくさん研究したが、今のところ彼が悪についてベストな説を発表している。」

ドイツの哲学者 フリードリヒ・シェリング(1775~1854)

ガブリエル
「この本の中で彼は、悪は人間の心の中でだけでなく、実在するポジティブなフォースだと主張している。

どんな組織もどんなシステムも時間を経て自身を維持するためには他のシステムを排除しなければならない。外部がないシステムは内部に『異質なもの』を作り出さなければならない。これが悪のダイナミクスだ」

”外側”がないと、悪が生まれる by シェリング

ガブリエル
「システムが大きくなりすぎたら…たとえばローマ帝国だ。スター・ウォーズも『帝国』だったね。ローマ帝国は外部があるという感覚を失った瞬間に崩壊を始めた。確かにグローバリゼーションは新たな悪を生み出したのかもしれないね。

資本主義は国家というよりも経済的な帝国だが帝国は内部から悪を作り出すのだ。これが『ナショナリズム』などが復活している背景なのだろう。確かに悪に似た姿をしている。」

ただ一つの地球(ほし)に住むわたしたち
「悪」は個人に生まれるのか
「悪」は社会に生まれるのかー

第5章 イノベーションの呪縛

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)
「資本主義はゾンビに例えることもできる。ゾンビが醜いからではなく非常に効率的だからだ。フロイトによれば人間の抱える問題は『増えること』と『食べること』に行き着く。心理学では有名な説だね。

でもゾンビはその上を行く。人を『食べる』と同時に『増える』からね。でも私たちはこんな効率化を望まない。ゾンビは愛する者の魂を奪い動物以下になってしまうからね。」

資本主義はゾンビ的?

セドラチェク
「資本主義の問題点は道徳規範を失い中心が空洞化していくことだと考えていた。哲学者ラカンの読みすぎかな…。しかし空洞だと思っていたのは私の間違いだった。実際には中心に強力で支配的な観念が存在しているようだ。」

資本主義の強迫観念ー

セドラチェク
「原則は『役に立つことだけをしろ』。『自分を愛してくれる者は愛し、自分のことを嫌う者は嫌え』。『よくしてくれる者にはよくし、意地悪をしてくる者にはやり返せ』だ。

この観念はあらゆるところに根付いていて生まれた時から親しんでいるから私たちは気がつかないのだ…」

なぜ気づかない

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)「資本主義はどこまでも拡大し続ける性質だからね。」

セドラチェク「そうだ。生産額をね」

ガブリエル
「そうしないといけない。資本主義は『成功』という概念の上に成り立っているシステムだ。『成功』は非常に重要だ。」

『成功ファースト』の資本主義

ガブリエル
「ひとたび成功するとさらに未知のものを見つけようとする。ある企業が何かを達成し成功を収めたとしよう。その後も成功者であり続けるためには同じことを続けていたらダメだ。iPhoneを発明しても、同じiPhoneを作り続けていたらダメだろう?

成功者でいるためには何かを達成するだけではなく絶えず成功し続け自らを維持する必要がある。これまで見えていなかったものに目を向けるのだ。新たに「存在」を見つけ、値段をつける。」

セドラチェク「二酸化炭素とかね」

ガブリエル「いい例だね。それが資本主義の特性だ。」

セドラチェク「経済学者として納得できるよ。」

すべてを商品化せよ

成功、名声、価値、お金。もうヒトは後戻り出来ない。飽くなき創造と破壊こそが、エンジン。
新しさを追いかけて何が悪い?

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)
「資本主義の歴史をシュンペーターは『創造的破壊』の連続だとした。あくまで『破壊』を指摘したところに注目すべきだ。創るために『破壊』すること。資本主義の世界で人々はずっとこれを繰り返し、それは強迫観念のように私たちを駆り立ててきた。

シュンペーターの表現は現実をよく捉えているからこそ人々の心をつかんで何度もよみがえってくる」

私たちの住む世界はシュンペーターが思い描いた道を進んできたのか。でも…

「資本主義はその成功ゆえに自壊する」ーヨーゼフ・シュンペーター

奇しくもカール・マルクス(ドイツ生まれ、1818-1883)がこの世を去った年に生まれたヨーゼフ・シュンペーター(オーストリア生まれ、1883-1950)。資本主義を批判した男へこんな賛辞を送っている。

マルクスの体系は批判されても反証を突きつけられても致命傷を負うことはなく、かえって構造の力が際立つ。偉大なものには闇の力がある -ヨーゼフ・シュンペーター著『資本主義・社会主義・民主主義』

時代を越えてよみがえる闇の力とは?

お金と欲望をめぐる物語、舞台は後半へ続く



『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
『欲望の民主主義 世界の景色が変わる時』をみて

by wavesll | 2018-01-23 22:35 | 書評 | Trackback | Comments(0)

たまご かおり『無題(鳥)』X Tsegué-Maryam Guèbrou ‎– Éthiopiques 21 : Piano Solo 第43回音の貝合わせ

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この鳥を描いた<たまご かおり>さんの絵、私はたまらなく好きで。
美しいだけでなくて、どこか野生の焔を感じて。
いつか個展をみてみたい、或いは鴎庵上で電子個展を開けないかと夢想する画家さんです。

そんな生命力と可憐さを音であらわすならば、どんな音楽が好いのだろうと悩みに悩んだ結果、”よしこれで行こう”と想ったのがこの一枚
エチオピークス・シリーズの中でも珠玉の一枚である本作は女性ピアニストによる詩情あふるる、けれど大地にすっくと立った音楽。

風を彫ったような、ふわりとぞわりが同居するような。軽みと鮮烈さをこの2人には共通して感じて。
芸術への、そして人への愛情が内発するような、そんな温かいエクスペリエンスでした。


by wavesll | 2018-01-23 00:01 | La Musique Mariage | Trackback | Comments(0)

銀界の雪翳に電子音楽

Ø - Atomit




by wavesll | 2018-01-22 22:04 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 第1章・第2章 書き起こし

私たちは、働く。生きるため、お金のため、社会の為。雨の日も風の日も。それが、資本主義のルール。

でも

「資本主義は その成功ゆえに 自壊する」ヨーゼフ・シュンペーター

ヒト・モノ・情報 世界が回る お金が回る

ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ)「資本主義は弱肉強食の世界」

止められない、止まらない。欲望が欲望を産む、欲望の資本主義。

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス)「創造的であれ。さもなくば 死だ」

「創造的破壊」
資本主義のエンジンを突き止めた男

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ)「マルクスは資本主義は『最強の怪獣』だと言った」

「革命を起こせ」
資本主義の矛盾を突いた男

Anti Capitalista

マルクス・ガブリエル(哲学者、ドイツ)「資本主義は『見世物(ショウ)』だ。トランプはその象徴だ」

作って、使って。作って、壊して。私たちは何を求めて働いているのか。

「欲望」は満たされることを望まない。「欲望」は増殖することを望む。

「闇の力」が目覚めるー

世界経済のフロントランナーたちが紡ぐ、お金と、欲望を、めぐる物語

欲望の資本主義2018 闇の力が目覚める時 前編

第1章 分断する世界

アメリカ、ニューヨーク。
STARTUP SPECTACULAR 2017 (起業家と投資家のイベント)
ここは資本主義の最前線。資本と、アイディアが出会う場所。

「大企業での経験を経て起業するならどんなことが生かせるでしょうか」
「僕たち投資家は資金面や経営面でサポートできる」

資本を求めて、列をなす者たち。ここからまた、新たな富が作り出されるのか。

「すごく人気のツールです。ちょっとみてくれませんか。公開から1ヶ月でユーザーは1000人ぐらいになりました。」
ジョナサン・ストラル(ベンチャー投資家、アメリカ)「いいね」「君は資金を調達したいのかそれとも新たな仲間が欲しいのかな…」

ジョナサン・ストラル:ニューヨークを拠点に活動 およそ30のベンチャー企業に投資している
広い人脈を活かしてお金とアイディアを結ぶ男。

ストラル
「僕らはスタートアップ企業が集うNYのエコシステムの中にいる。若い起業家たちは皆すごいアイディアを持っていて資本を探している。

投資した会社が買収されれば大金を得られる。アップルやグーグルやマイクロソフト、あとアリババはそこら中の会社を買いあさっている。そうやって僕ら投資家と起業家は稼ぎをあげるんだ。

そして大きいアイデアと事業は生き続ける」

資本の増殖をめぐるリアルゲーム

カフェにて
「何にしますか?」
ストラル「オリジナルブレンドにしようかな、スモールで頼む」
「ミルクもね?」
ストラル「ああ、ハーフ&ハーフで」

ストラル
「はちみつをコーヒーに入れる。これが僕の魔法…秘密兵器だよ。僕が疲れるって?コーヒーがあるからね。珈琲があれば疲れていても問題ないさ毎日5~6杯は飲んでるよ。一日中起業家たちと会っているけどそれもカフェでやるんだ。カジュアルにやりたいからね。

フリーダムタワーだ。NYで一番きれいなあたりさ。ワールドトレードセンターがあったところだね。」

新たなアイデアを持つ起業家とのミーティング。彼が投資するのは人工知能によって自動化された会話で企業の採用の効率化を図るビジネスモデル

起業家「応募者がこう書くとする『チームでの仕事が得意です』
人工知能がこう答える『夢の仕事はチームワークから生まれますよね(^^)』
会話が楽しいと応募者は時間を割いて自分のことを話してくれることが分かった。」

ストラル
「このアイデアはパーフェクトな例だ。求職者は仕事を効率的に探せるし企業側も的確な判断をしやすい。人工知能は仕事を奪うことが多いよね。これは正反対だ。人工知能が仕事のマッチングに活用されるんだ。」

起業家「テクノロジーは人間と共存できる。人間が人間らしい生活をするためにテクノロジーを役立てるんだ」

つくられるのはモノではない、つくられるのはシステム

ストラル
「僕らの投資哲学は『デジタル技術による効率化』だ。世界をどうもっと効率的にするか、部分的にではなく一気に。仕事の流れはどう改善するか?お客の生活をどう改善するか?時間とコストの削減に基づいて計測するんだ。そこには絶対的な価値がある。」

至上命題は「効率化」

ストラル
「こんなふうにテクノロジーは世界を変えられる。でもそれができるのは基本的なテクノロジーであって写真シェアのアプリとかではないよ。

インターネットを利用すればコストも低いし拡張性も高い。それでトップ1%だけでなく99%の人々が恩恵を受けられる。世界の富のバランスをよくすることが投資家としての使命だと思っている」

資本主義とは破壊の連続、日々、新たな技術、新たなビジネスモデルをめぐって競争が続く。成長の原動力は、イノベーション。起業家のイノベーションが生む、創造と破壊。そこに資本主義の生命力を見出したのがシュンペーター。あのケインズと並び称される20世紀の巨人だ。

ヨーゼフ・シュンペーター:オーストリア生まれ(1883-1950)
J・M・ケインズ:イギリス生まれ(1883-1946)

資本主義のダイナミズムの放出を生涯追究し続けた彼が辿り着いた資本主義のエンジン、「創造的破壊」
創造の為には破壊し続けねばならない。それこそが資本主義の掟。

安田洋祐(経済学者、日本):大阪大学教授。専門はゲーム理論、マーケットデザインなど。海外のトップジャーナルに論文が多数掲載

エコール・ノルマル=パリ経済学院にて

ダニエル・コーエン(経済学者、フランス):パリ高等師範学校教授。政策運営にも関わってきたフランスを代表する知性。近著『経済成長という呪い』

安田「いま世界経済は多くの問題に直面していますね。特に先進国の低い成長率、不平等の広がり、反グローバリズムなど…いま最大の問題は何だと思いますか?」

コーエン「1つのパラドックスがあることを認めないといけない。」

世界経済の逆説?

コーエン
「まず一方には新しいテクノロジーの広がりがある。デジタルの世界はとても活気がありそのブームは経済を席巻しつつある。

だがその一方で先進国の経済成長はずっと停滞している。一方にはテクノロジー分野の発展そして一方には低成長…両社はこの10年間分断されていることが分かる。この逆説はミステリーだ。」

テクノロジーの発展が製剤成長をもたらさない?

コーエン
「楽観的な人はこう言う。『テクノロジー革命はまだ始まったばかり。10年経てば景気促進効果が明らかになる』。しかし別の見方もある。アメリカをはじめ世界で広がる格差と関連があるという見方だ。

新しいテクノロジーがもたらす果実は賃金体系のトップにいる一握りの人たちが圧倒的な恩恵を受けている。なぜなら彼らはiPhone1台で世界中に指示を出したりクリック1つで金融資産を動かしたりする。こうしたトップ層は以前よりもはるかに力を増している。いわば世界を見渡せるようになった。」

強者をさらに強者にする

安田「新しいテクノロジーが新たな雇用を生むこともあります。全体的な評価はどうですか?」

コーエン
「人口の中核をなす中産階級の人々、つまりサービス業、銀行、保険会社、役所に勤める人々…これらは50~60年代に生まれた仕事だが彼ら中流層は新たなテクノロジーの恩恵を受けていない。それどころかテクノロジーは彼らの仕事を時代遅れにし職を奪っている。

かろうじて生き残れるのは飲食業など比較的賃金の低い仕事だけだ。ロボットやソフトウェアで簡単に置き換えられないからね。

これらを考え合わせると至る所で新しいテクノロジーが盛況だからといって経済成長に結びつくわけではないと分かるだろう。新しいテクノロジーは大多数の人の生産性を向上するどころか職を奪う。つまり人々の生産性が失われていくのだ。」

1パーセントの生産性↑
99パーセントの生産性↓

世界の人口約74.3億人 8人の総資産(約4,268億ドル)≒36億人の総資産

加速するテクノロジー発達。それは持つ者と持たざる者。その差を広げる一方なのか。

コーエン
「『恐れ』は常にあった。絶好の例がある。農業を見てみよう。新しいテクノロジーにより世界中の農民が職を奪われたのは明らかだ。先進国の農民は激減した。フランスでは1~2%ぐらいだろうか。日本でもフランスと同程度だろう。

生産性の向上により労働力が必要なくなったのだ。農民は仕事にあぶれてしまい彼らは農村を離れ都市部に移っていった。それでどうなったか。都市では産業革命が起きていたのだ。」

(産業革命の)あの時は上手くいった。欲望の経済史のターニングポイント。産業革命。蒸気、紡績、次々と誕生した産業機械。工場が農民の受け皿となった。

コーエン
「人々の地方から都市への移動が経済成長に拍車をかけた。もしも都市で産業革命が起きていなかったとしたら相当の社会的緊張が生まれていただろう。働き口がなかったらどうなっていたことか…」

失業は社会に緊張をもたらす

コーエン
「これこそ今の私たちが直面している状況かもしれない。第三次産業 サービス業の人々は新しいテクノロジーによって職を奪われ、その後生産性が高い仕事にも就けていない。そこに大きな格差が生まれる。なぜなら自分の能力が発揮できる仕事が見つからないからだ。」

第2章 革命の夢のあとさき

2016年アメリカ大統領選挙時
デモ隊「誰を求める!?バーニー!!」

バーニー・サンダース「多くの人々は低賃金で長時間働いているのに高い賃金と富の大部分はトップ1%の人たちが握っている。間違っている。」

いま資本主義に異を唱える声が高まっている

ニューヨーク ブルックリン アメリカ社会民主主義者の会(Democratic Socialists of America)

自由だけでなく平等を新しい世代のムーヴメント

「バーニー・サンダースが当選しなくて本当に残念だったわ。私たちには変革へのポジティブで希望にあふれたビジョンがある」

「サンダースはアメリカで新しい対話のきっかけを作ったのよアメリカは正直言って冷戦から続く問題を抱えているわ。ほんの2~3年前でさえ社会主義という言葉はまだ禁句という感じで…

もちろんアメリカにも常に社会主義者はいたのよ。しかしこれが主流のアイデアになったのはサンダースの選挙活動が本当に大きかったと思うわ。

そして彼は大学の授業料を無料にしたり国民皆保険制度、皆のための医療などの具体的な提案をしたの。彼はこれらは…こうしたアイデアは新しくもなく恐ろしく急進的なものではないと人々に自覚させた。

これは社会主義の発想が多くのアメリカの人々が支持するアイデアになったのよ」

「自由の国」に社会主義のうねり?

「労働者が団結して労働組合を作ったり…変化を起こすには人々を組織する必要があると理解しないといけない。労働者が団結すれば計り知れない力を発揮できるわ。私たちの労働が富を生み出しているんだから。」「トラック運転手たちが全員でストライキを起こしたら物流が止まり経済は崩壊するだろう」「それかアマゾンの倉庫で働く人たち…これは本当に解決策をあまりに単純化したものだけどみんなの力を結集しないといけない」

「私たちが民主主義の原則を維持することができれば破滅がやって来ることなんて心配することはない。それが本当の社会主義なんだと思う。」

「Uno(1) Dos(2) Tres(3) An Anti...Anti Capitalista(資本主義反対) Anti Vapitalista!!! 資本主義 反対!!!」

自由の国に響く社会主義を求める声 あの男はどんな想いで聴くのだろう

カール・マルクス:ドイツ生まれ(1818-1883)

ドイツ
ウルリケ・ヘルマン(経済ジャーナリスト、ドイツ):銀行員から日刊紙の経済記者に。現在の資本主義の欠陥を追究。近著『資本の世界史』

ヘルマン「資本主義はカール・マルクスが定めた定義なのよ。マルクスの理論には誤りが多かったけど正しい発言もした。彼はこう主張した。資本主義とは人がお金を商品に投資してより多くのお金を獲得することを目的としたシステムだ、とね。」

(産業革命の)あの時代、彼は分析した。(『資本論』1867年)。お金とモノ、交換されるだけではお金は増えない。でもお金が投じられ、モノがつくられ、より大きなお金をもたらせば…

買手が貨幣を手放すのはふたたび貨幣を手に入れようという「狡猾なもくろみ」のためである。だから貨幣は「支払われた」というよりも単に「前貸しされた」に過ぎない。

増やすことが目的の、お金、それが、資本。資本主義の始まり

ヘルマン
「産業革命がなぜ『イギリスで』なぜ『1760年に』起こったのかそのテーマには多く経済史の学者が取り組んでいるのよ。例えば9世紀の中国や古代ローマは非常に高度な発展を遂げており当時資本主義を導入していても不思議ではなかった。

なのになぜイギリスだったのか。それには20に及ぶ学説があるんだけど私が一番だ思う説は世界的な研究プロジェクトが発表した説で18世紀のイギリスがさまざまな偶然によって『世界一賃金が高い国であった』ことが原因だったとするものよ。

当時のイギリスは他のヨーロッパの2倍の賃金だったので良く知られているように繊維工業が競争力を失ったのよ。農業国だったイギリスでは繊維工業は唯一の輸出産業だった。

人件費が高騰していたからこそ機械化には大きな意味があったのよ。資本主義は高賃金によって活性化されるものでこれは現代でも当てはまるわ。」

高賃金が資本主義を駆動する

ヘルマン
「技術革新は常に大きな需要があって実現される。でも労働者が低賃金で購買力がなければ技術革新は機能しない。アメリカでは実質賃金の中央値が1975年以降伸び悩んでいる。インフレを考慮して計算すれば現在のアメリカ人の賃金は1975年と同程度なのよ。」

ずっと上がり続けた、人々の賃金。でも(アメリカの家計収入の推移は)ある時から止まった。

ヘルマン
「日本の状況も決して良くないわ。バブル崩壊以後実質賃金はほとんど上昇していない。ドイツでも2000年以降停滞している。いま過剰生産と売り上げの落ち込みが至る所で起きていてせっかく向上した生産性を活かしきれない状態が続いている。

そのため企業は投資に目をむけなくなったわ。これ以上の投資など必要なのか?というわけよね。その代わりに金融市場での投機が盛んになっている。

世界中で賃金が頭打ちになっている現状は資本主義にとってとても危険な状態よ。」

賃金↓ → 売上↓ → 企業の投資↓ → 賃金↓ →…

投機↑

それはなぜ?

ヘルマン
「1975年以降の世界各国の状況を見てみると労働組合が弱体化して政治的にも立場が弱まり、同時に人々の失業に対する恐怖が高まったことで仕事の確保を優先し賃金には目をつむる文化が形成されてしまった。これは社会全体にとって恐ろしく危険なことなのよ。

だから利益をすべて億万長者が独占するのではなく労働者も継続的に利益を受けて生産性と連動して賃金の上昇を実現しなければダメよ。」

持つ者だけが富を得る。産業革命の時代資本主義を批判したマルクス。マルクスはこう予言した。

「資本主義はその矛盾ゆえに滅びる」ーカール・マルクス

トマス・セドラチェク(経済学者、チェコ):CSOB銀行 チーフストラテジスト 大学在学中の24歳の時 初代大統領の経済アドバイザーに。近著『善と悪の経済学』

セドラチェク
「マルクスの理論によればお金は労働者のところに行くべきだ。すごく単純化するならそういうことだ」

…しかし

セドラチェク
「彼は労働者にはお金が行きようがないことに気がついた。なぜってもし僕が優しい資本家で労働者に高賃金を与えたら利益は減るよね。いずれ悪い資本家との競争に負けて僕は破産することになる。

僕が労働者に優しくすることで天国では報われるかもしれないけど結局は僕は良いビジネスマンではいられないということだ。

だからマルクスは主張した。人々が自発的に労働者により多くの賃金を与えるようになったら破産することになる、と。つまりこれは自発的に起こるはずがない。だから『革命を起こすしかない』。」

みんなに 冨を! みんなに 利潤を!

起こるべくして、革命が起こる。彼が想定したのは最も資本主義が進んだ国(イギリス)でのこと。でも実現したのは当時まだ貧しかった北の大地(ロシア)でのことだった。

社会主義国家の誕生

革命のリーダーたちが目指したのは人々の平等、でも…

セドラチェク
「マルクスは『自分はマルクス主義者ではない』と言ったのはすごく有名だ。はたしてイエスが生きていたらキリスト教徒になっているか…僕はそう思わないね。ブッダは仏教徒になっているか、僕はそう思わないよ」

革命の現実はマルクスの理想と違った?

セドラチェク
「まあとにかく僕は旧チェコスロバキア出身だ。マルクスの思想が実現されたところだ。そしてそれは忘れられない大失敗だった。これはまず言っておく必要があると思う」

人々が願った平等な社会は築かれなかった。革命からおよそ70年、社会主義の壮大な実験は終わった。それは束の間の悪い夢だったのか。それとも早すぎたユートピアだったのか。



『欲望の資本主義2017 ルールが変わるとき』をみて
by wavesll | 2018-01-22 21:25 | 書評 | Trackback | Comments(0)

凍える夜は琉球奄美民謡でマリン・スノウを。

琉球奄美民謡選
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凍える一日を終えて帰ってきたら先ずはあったまりたい。島唄の方々の達人でありながら謙虚な姿勢、驕らない真っすぐな研鑽に心くゆらせて。どうかみなさんもぬくぬくとされてください。
by wavesll | 2018-01-22 18:52 | Sound Gem | Trackback | Comments(0)