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ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち@パナソニック汐留美術館 ファム・ファタール幻想

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国立西洋美術館などで目にして、その幻想的な古代の美しさが印象的な筆致だと思っていたギュスターヴ・モローの展覧会がパナソニック汐留美術館で開かれていると聴き、馳せ参じました。

会場に入るとすぐにあるのは≪24歳の自画像≫、なかなかの美男。しかしモローは生涯独身だったそうです。けれども母の≪ポーリーヌ・モロー≫と十歳年下の≪アレクサンドリーヌ・デュルー≫という清廉な女性二人と想いあいながらずっと暮らしていたようです。≪雲の上を歩く翼のあるアレクサンドリーヌ・デュルーとギュスターヴ・モロー≫はなんというかメルヘンな漫画のような愛らしさ。

ゆえに二人の死別はモローにショックをもたらしたのは想像に難くありません。母に次いでアレクサンドリーヌの死の後に描かれた≪パルクと死の天使≫は闇に連れ出す黒の天使の、馬に跨る姿が強烈な色彩で画かれていました。

実生活では修道女のような女性を愛したモローでしたが、一方、彼の作品には妖艶で時に狂気を孕み、男を狂わせ堕としていくファム・ファタール(宿命の女)が数多画かれます。

中でも舞踏の褒美に聖ヨハネの首を求めたサロメは彼にとって特別なモチーフとなりました。

オリエンタルな風合いも感じさせる≪洗礼者聖ヨハネの斬首≫の描写に、闇に照らされる≪踊るサロメ≫、アブストラクトな筆致の≪サロメ≫、中央アジアのような衣装を纏った闇の聖女のような≪サロメ≫

そして彼の画の中でもとりわけ鮮烈な印象を与えるのが≪出現≫。聖ヨハネの頭が宙に浮かび、それを攻撃的な目線の裸のサロメが指さす。お互い死体のような肌色。

この≪出現≫、未だ未完成なのか、背景の建築の構造が線画だけで画かれたりしているのですが、逆にその透過した感覚がアストラルな存在感を持っていたり、ちょっと仏画的な幽体的ストラクチャーを感じました。この超攻性な女性像は、従来母にそそのかされた存在として描かれるサロメに、凶暴な魅惑を与えていました。

この他にも幾何学なデザインの衣服の<≪踊るサロメ(刺青のサロメ)≫のための習作>や燃えるような紅の≪サロメ≫、白く繊細で脆い美少女な≪サロメ≫、一癖も二癖もある悪女な≪サロメ≫等々々、何枚もの絵画が本展にもありました。

さて、モローはサロメの他にも様々なファム・ファタルを描いています。

トロイア戦争の発端となった≪トロイアの城壁に立つヘレネ≫、≪ヘレネ≫はヴィーナスのように美しい。またローマ皇帝クラディウスの皇妃でありながら若い男をたぶらかす≪メッサリーナ≫、色黒で性的に蠱惑する≪デリラ≫、獣体の化け物の美女が迫る≪オイディプスとスフィンクス≫に闇の中の獣な≪スフィンクス≫、バッコスの巫女に八つ裂きに殺された様の≪死せるオルフェウス≫。

ちょっと菩薩的な母性を感じさせる≪メディアとイアソン≫、天使の青い翼が印象的な、英雄を奴隷として買い愛人とした≪ヘラクレスとオンファレ≫

また船乗りをその魅力的な歌声で惑わせる妖、セイレーンも印象的でした。三姉妹なキャッツアイ感のある≪セイレーン≫に逢魔が時な風景の≪セイレーン≫、そしてピンクと青の発色がなんともファンタスティックな≪セイレーンと詩人≫は素晴らしかった。

モローは、現実の女性と対等の関係性や時に衝突しながら所帯じみた「日常の折衝」を持てなかったのか、彼が画く女性に対する男の存在には逆に圧倒的な強者としての接し方が描かれていたようにみえました。

白鳥に変身したゼウスと接吻をする≪レダ≫。もっと直接的に白鳥とまぐわっている≪レダ≫も。また宵闇に霹靂が走る怖さのある≪セメレ≫。イスラエル王ダヴィデが欲情し犯す≪バテシバ≫、巨人ポリュフェモスがニンフを横恋慕し恋人を殺した≪ガラティア≫、牡牛のゼウスが圧倒しメロメロにさせている≪エウロペの誘拐≫、ケンタウロスのネッソスがヘラクレスの妻を襲う≪デラネイア≫は大理石の彫像のような描き方でした。

またボーズオブカナダのジャケのような幻想的な光に包まれた室内を描いた≪クレオパトラ≫に黒い天女のような≪サッフォー≫はこれもまた東洋的な感覚も。一方≪エヴァ≫にはしっかりした肉体と意志ある眼の輝きがあり、男は儚く描かれたりしていました。

そして最後の間では処女にしか懐かない一角獣などの一連の作品群。

華やかに展開される欧州さとオリエンタルさが高次にエキゾチックでエレガントな≪一角獣≫、ヘンリーダーガー的なコラージュ感も思わせる≪一角獣と女性≫、落ち着いた女性といきり立つ一角獣との対比が強烈な≪一角獣≫≪妖精とグリフォン≫は真っ白な可愛らしい女性とペットのようなグリフォンが洞窟?にいる図。

そしてパナソニック汐留美術館と言えばルオー・ルーム。ジョルジュ・ルオーはアンリ・マティスなどと共にモローから絵を学んでいて、モロー美術館の初代館長でもあるつながりが。

ジョルジュ・ルオー≪秋の夜景≫などの色遣いにも影響があったとして映像で紹介されていたギュスターヴ・モロー≪ユピテルとセメレ≫の南米な緑の華やかさは最後の最後でまだまだ知らない一面がモローという画家の仕事にはあるのだという未知さを感じさせました。

この展覧会、なんと千円でさくっとみれます。なかなか良かったです。6/23まで。

by wavesll | 2019-05-23 18:03 | 展覧会 | Comments(0)

シド・ミード展 SYD MEAD: PROGRESSIONS TYO2019 @アーツ千代田3331 フューチャリストのヴィジョンを視る

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≪TOKYO 2040≫
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≪TOKYO 2040 (Tracing)≫
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≪CAR SKETCHES - 4 PANEL≫
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≪FUTURE IMPERIAL CAR≫
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≪FUTURE BUGATTI≫
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≪SILVER COACH≫
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≪CAR STYLING MAGAZINE≫
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≪FUTURE ROLLS ROYCE≫
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≪SENTINEL COVER ART≫
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≪BIOSTAT ARRIVAL (SENTINEL II COVER ART)≫
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≪HYPERVAN - REAR DOWN VIEW≫
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≪HYPERVAN - PROFILE≫
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≪HYPERVAN - CRIMSON PLAZA≫
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≪MEGACOACH≫
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≪CYBERRACE ARRIVAL≫
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≪MOBILAGE ARRIVAL (OBLAGON COVER ART)≫
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≪RAYS WHEELS: Sports Sedan≫
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≪YESTERDAY'S TOMORROW≫
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≪PEBBLE BEACH TRIPTYCH≫
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≪MOVIE HISTORY≫
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≪RUNNING OF THE SIX DRGXX≫
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≪SPACE CAMP DREAM≫
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≪ENTERING STARGATE≫
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≪CAVALCADE TO THE CRIMSON≫
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≪VOYAGE TO THE CITY≫
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≪UNDERWATER CAMERA CONCEPT≫
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≪OCEAN LINER AT DOCK≫
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≪KASOGI YACHT≫
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≪DEFINITIV - DAY VIEW≫
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≪DEFINITIV - NIGHT VIEW≫
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≪RUNNING OF THE 200TH KENTUCKY DERBY≫
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≪PARTY 2000≫
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≪THITIAN FANTASY≫
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≪GOLFCOURSE CLUBHOUSE≫
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≪BAR BASQUE FOOD PARC≫
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≪CITY ON THE MEGABEAM≫
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≪FOUR MAN CORVETTE LAUNCH≫
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≪ENZMAN STARSHIP slash DAEDALUS PROBE≫
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≪MOON 2000≫
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≪DISASTER AT SYNTRON≫
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≪SPACE WHEEL INTERIOR≫
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≪BARRIER ATTACK COLONY≫
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≪SUPERSHUTTLE≫
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≪EYES ON DESIGN≫
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≪SENTURY COVER ART≫
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≪VILLAGE MACHINE≫
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≪VILLAGE MACHINE - FACTORY≫
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≪CELANNESE CELCON The Stone Age≫
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≪CELANESE CELCON The Bronze Age / The Iron Age≫
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≪JUNGLE WALKER :1 (Pencil Sketch)≫
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≪JUNGLE WALKER :2 (Marker Drawing)≫
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≪JUNGLE WALKER :3 (Tracing)≫
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≪JUNGLE WALKER :4 (Gouache)≫
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≪SPACE COLONY UNDER CONSTRUCTION (Marker Darwing)≫
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シド・ミード展@アーツ千代田3331をみてきました。

『ブレードランナー』や『エイリアン2』etc、日本の作品だと『ターンAガンダム』や『YAMATO 2520』のヴィジュアルを創った“フューチャリスト”。

色味がダリ的に感じながらも魔法や古代を描くシュルレアリズムでなく、技術の発展に基づき未来の都市そして宇宙像を描いたのが刺激的。元々がフォードのデザイナーからのキャリアということでクルマの画が本当にカッコよくて。そして船の画に港湾都市、そして宇宙コロニーまで。

フューチャリストとして凄いなと想うのは、彼のデザインのような現実が21世紀に起こりつつあること。例えばマカオの風景アゼルバイジャンの光景藤森照信氏によるラコリーナ近江八幡、あるいは藤本壮介氏によるベトンハラ・ウォーターフロントセンター設計競技1等案などに近い絵があったり、そしてバーニング・マンの世界観はシド・ミードさんの影響を大いに受けているのではと感じました。”未来を予言するには未来を自分で創ることが一番確かだ”なんて言葉がありますが、彼の影響は本当に広範に影響を与えていました。

さらに特に∀ガンダムで顕著でしたが『絵』に留まらず『映像の場合の動作可能な工学的デザイン』を考え抜いているのがまた凄い。なかなか面白いArt体験となりました。

さて、基本的には撮影OKだったのですが、やっぱりガラスの映り込みもあるし、そして何より、『ブレードランナー』をはじめとした映画のヴィジュアルの部屋、そして『∀』と『ヤマト』のヴィジュアルの部屋はほぼ撮影NGなので、是非まなこで愉しんでいただけたらと思います。6/2まで。

by wavesll | 2019-05-17 20:49 | 展覧会 | Comments(0)

CORONA "THIS IS LIVING?"@公園通り

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コロナのソーシャルなPRインスタレーション。プラスチックフリーはどんどん進めていくでしょうね。500mlのペットボトル登場ってそれまで2Lしかなかった世代にはぎょっとしましたし。

by wavesll | 2019-05-12 15:39 | 街角 | Comments(0)

BONE MUSIC展@Ba-Tsu Art Gallery

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隠田・Ba-Tsu Art Galleryで開かれているBONE MUSIC展に行ってきました。

ロックやジャズが統制されていたソ連でアンダーグラウンドで流通していたレントゲン写真を使ったレコード。X線写真だから生で観るとかなりペラペラな盤な印象。

この肋骨レコードの存在は数年前に高円寺で開かれたソ連・東欧グルーヴィナイト Vol.2で知っていたのですが、今回レントゲン・レコードの実物をまじまじと多数見ることが出来たのと、その製造などに関わるバックストーリーを多数の映像展示で観ることができて、スチリャーギとばれた若者たちの達のカウンターカルチャーを担うまさに気骨をみることが出来たのは嬉しかったです。

磁気テープの普及によって肋骨レコードが消えていったというのも面白かった。展示は明日12日まで。

by wavesll | 2019-05-11 23:27 | 展覧会 | Comments(0)

国立公文書館にて≪平成≫を観る

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竹橋駅からほど近く、国立近代美術館の先にある国立公文書館にて小渕さんが掲げた≪平成≫の書がみれると聴き、訪れました。

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現在国立公文書館では江戸時代の天皇という特別展をやっていて、その最後にかの書はありました。

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生で観ると「戌」っぽいというか、踊るような筆致。平成の時代、もう再来週には終わっているんだなぁ。

書の隣には平成と令和の原典となった書物の頁が開かれていました。

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また大日本国憲法や終戦の勅書、日本国憲法の原本も展示してあって。思わず「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」を探してしまいました。
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國の歴史を伝える国立公文書館、なんと無料で観ることが出来ます。平成の終わりにこんな歴史探訪もいかがでしょう?

by wavesll | 2019-04-20 19:56 | 展覧会 | Comments(0)

奇想の系譜展 後期@東京都美術館

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奇想の系譜展後期@東京都美術館をみてきました。

前期後期みた展覧会は久しぶりでしたが1500円が全く悔いなく最高だったのが『奇想の系譜』執筆のきっかけとなった曽我蕭白≪群仙図屏風≫!早くも今年壱の画が出たかも!黄色の鶴、毒々しい桃、カエルは白い粒粒が立体的で、黒くMADな仙人オヤジと透ける扇の女仙人にデジタルノイズな景観に青眼の虎千変万化に流転するサイケデリックで鮮やかな画はPhotoshopのコラージュ的とも言えるが水流の様な樹に龍仙対決の風と波濤と一つの気脈がしっかりと流れていて!こーれは凄かった!

蕭白は他にも破いた手紙を噛む水色の着物が綺麗な≪美人図≫や顔が壊れているのに指が綺麗な≪柳下鬼女図屏風≫ビチビチの鯉と鳳凰、さらに亀、そしてDJ系のアー写のようなポーズが印象的な≪群仙図屏風≫、風に融けるような獅子と大人しい虎の≪獅子虎図屏風≫にディズニーキャラのような≪虎図≫も良かったです。

入ってすぐの伊藤若冲では赤白黄鶯色の≪白梅錦鶏図≫の紅黒白斑の長い尾っぽがよく、≪蝦蟇河豚相撲図≫のひょうきんさ、≪達磨図≫のイっちゃってる目線に≪乗興舟≫は前期から場面変えで静かな夜景が拡がっていました。

長沢芦雪はピンクの犬が可愛い≪降雪狗児図≫にこれもディズニーキャラ的な≪旭日大亀図≫が良かった。

そして岩佐又兵衛。凛と矍鑠とした≪自画像≫に、≪山中常盤物語絵巻 第五巻≫では牛若?の若武者の着物が美しく、≪浄瑠璃物語絵巻 第四巻≫は牛若と姫の恋物語で絢爛豪華な着物のグラフィックはYOJI YAMAMOTOならぬMATABEI IWASAといった感。彼の豪奢なデザインセンスは直線的な面でみせられるより着物のように立体的な曲面で一層映えるなと。

≪伊勢物語 鳥の子図≫でも北欧デザインのようなすっきりした唐草模様の着物が綺麗で。その他も鼻息荒い≪雲龍図≫や猛牛に自在に乗る≪老子出関図≫も良かった。

狩野山雪では棕櫚が南国感あって川沿いに老師たちがリラックスしている≪蘭亭曲水図屏風≫に脱穀などの風景がなんとも澄んだ空気感のある≪四季耕作図屏風≫、そして武骨な男たちが活躍する≪武家相撲絵巻≫が前期から展示替えでやってました。

最終階ではまず白隠慧鶴。鬼を擦って食べると仏性に気付けるという≪鐘馗鬼味噌図≫に、おぼっちゃまくんのキャラみたいな≪布袋図≫にこれまたおぼっちゃまくんテイストの≪南無地獄大菩薩≫もにんまりさせられました。

鈴木其一は前期でも感動した≪百獣百鳥図≫ではエメラルドブルーの孔雀と赤い猿に魅せられて。≪四季花鳥図≫ではひまわりの緑の惑星感、≪牡丹図≫の彫刻感、≪朴に尾長鳥図≫は田中一村感がありました。

そしてラスト、歌川国芳。≪宮本武蔵の鯨退治≫では鯨の尾のにじみがまた良くて。≪七浦大漁繁晶之図≫でもそうですが、ナウマンゾウからゴジラまでの巨大な生物との狩りの歴史が日本にはありますね。≪大物浦平家の亡霊≫のカラーの幽影に≪鬼若丸の鯉退治≫ではダイナミックな水紋に歌舞伎な服装が良かった。

≪文覚上人那智の瀧荒行≫は小さく表れる仏神がまた良かった。そして≪龍宮玉取姫之図≫がタイやタコやカニやイセエビが擬人化して刀で戦っていて面白かったw≪東都首尾の松之図≫はヤドカリの目線で。

≪みかけハこハゐが とんだいゝ人だ≫は想っていた以上にヒトの身体が活かされていて。≪其まゝ地口 猫飼好五十三疋≫は東海道五十三次をやっぱり猫が好き風に一枚絵にした絵でした。

この奇想天外な世界が展開される展覧会も明けて本日4/7が最終日。お薦めです。

by wavesll | 2019-04-07 03:23 | 展覧会 | Comments(0)

トルコ至宝展 チューリップ(ラーレ)の宮殿 トプカプの美@新美

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「トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美」を新美にてみてきました。

イスタンブールでトプカプ宮殿を訪ねた時、工事で宝物殿が閉まっていて、今回日本でのトプカプ宮殿展の開催は嬉しい驚きでした。


本展は何しろ最初の間がクライマックス。金・ダイヤモンド・ルビー・エメラルド・真珠・七宝と贅をつくした≪ターバン飾り≫や、ズドンとした存在感の≪スルタン・マフムート2世の玉座(支配者の肘掛け椅子)≫がのっけから凄くって。

≪スルタン・アブデュル・ハミト2世の花押(トゥーラ)≫の黄金や≪スルタン・ムラト4世玉座図≫ではピンクのうるわしさがまた良くて。

そして≪スルタン・メフメト4世の宝飾短剣≫はなんと柄がエメラルド!≪儀式用宝飾水筒≫も金銀財宝がぎっちり。≪宝飾兜≫もアラビア文字が美しく、≪立法者スルタン・スレイマン1世の刀剣≫は鳥と花、植物、文字で金色に彩られ、メフメト作≪直刀≫は赤い珊瑚やトルコ石・ダイヤモンドが美しく、≪柳装飾の盾≫も紅に美しかった。

また≪カフタン≫という上着や≪スルタン・ムラト4世のシャルヴァル(ズボン)≫、≪皇子用のカフタンとチャクシュル(靴付きズボン)≫、真珠母貝や銀金で彩られた≪ベルト≫、≪射手用指輪≫や≪射手用箙≫もエメラルドやルビーできらめき、碧玉、金、ルビー、エメラルド、七宝で輝く≪宝飾筆箱≫や黄金の法具のような≪宝飾手鏡≫に翡翠が美しい≪宝飾翡翠カップ≫、そして七宝やルビー、エメラルド、トルコ石の≪壁掛け時計≫と宮廷のエクスクルーシヴな暮らしがみえます。

そして今回の展覧会で初めて知ったのはオスマン帝国のチューリップ文化。チューリップはアラビア語でラーレと言いますが、この文字を組み替えるとアッラーにもなり、アラビア文字の数字の加算でもアッラーと同じになり、さらにはスルタンの属するカユ族の紋である三日月(ヒラール)の意味にもアナグラムで成るという。様々なアイテムにチューリップの意匠が使われて。

≪兜≫はゴールデンチューリップ。≪長靴≫はネオンサインみたいだし、≪付袖≫のスリーヴに、≪宝飾吊るし飾り≫は水晶が凄い。銀金に象牙も使われた≪宝飾ベルト≫に≪バックル付きベルト≫も美しい。≪鞄≫、≪ピストル・ケース≫もシンプルに美しいし、≪新生児用掛布団≫もチューリップ柄。≪ハサミとケース≫も麗しく装飾されて。ガラス製の≪吊るしランプ≫や象牙の≪葦ペン削り板≫や赤珊瑚の≪匙≫も素晴らしかった。

また文物も展示してありました。ルーミー文のチャケリー≪詩集のワニス塗り表紙≫を初めとして、アブドゥッラー・ブハーリー≪ピンク色の燕尾型チューリップ≫や≪論文集≫、メフメト・ラースィム≪スルス書体・ナスフ書体のアルバム≫、≪『偉大なる祈り』(Hizb el-Azam)の花束文様≫、デルヴィーシュ≪バラ色の燕尾型チューリップ≫、メフメト・アシュキー≪『チューリップ花暦』(Riale-i Takvim-i Lale)≫や≪『書道手習い本』(Elifba Cuzu)≫にセイイド・ハーフズ・ヒュセイン・ルトフィー・ザーラーヴィー≪『善のしるし』(Delail-i Hayrat)≫、ムスタファ・ハリーム・オズヤズジュ≪ナスフ書体扁額≫も、美しいカリグラフィと植物の輝き、そして淡いピンクの遣い方が非常に印象的でした。

ここから器などのパート。一番印象的だったのは、トプカプ宮殿でみて”おっ!これは面白い”と想っていた中国の陶磁器にオスマントルコで宝石を埋め込んだ≪染付宝飾皿≫・≪宝飾碗≫・≪染付宝飾碗≫・≪宝飾皿≫。黒と金の≪亜鉛製皿≫もなかなかだったし、イズニクのタイルのキャプションにはイスタンブルでみたスレイマニエモスクをつくった建築家ミマール・スィナンの記述も。時が下るとタイルの産地はイズニクからキュタフヤに遷ったそうです。

紅に輝く≪聖遺物用箱≫や≪聖遺物(髭)用風呂敷≫にはメヴラーナ美術館で観たムハンマドの髭を思い出して。≪礼拝用敷物(セッジャーデ)≫や丁寧な暮らしを思わせる≪ナプキン≫、エメラルドブルーにピンクの≪香炉≫にムハンマドの香りだという≪バラ水入れ≫、≪七宝製バラ水入れ≫はパステルで、≪エディルネ木画の葛籠≫には魔法的な幾何学模様が。螺鈿っぽい加工がしてある≪梯子≫や≪サイド・テーブル≫には宮廷のハイクオリティさをみて。アフリカの夕景のような≪ザール・ベルデ(壁用カーテン)≫、ピンクの七宝にクリスタルガラスな≪水タバコ≫、≪スルタン・アフメト3世肖像画≫の細密描写。

1/20スケールで銀と木でつくられた≪スルタン・アフメト3世の施水場模型≫、ベイコズ・ガラスでつくられた≪チューリップ用花瓶(ラーレ・ダーン)≫に外で使われたという≪サーイェーバーン(日陰テント)≫、≪靴下≫も花柄、花の意匠をつけた≪轡≫なんてのもありました。

そして≪スルタン・スレイマン1世のものとされる儀式用カフタン≫や≪染付カラック(芙蓉手)様式皿≫や植物がみずみずしくカラフルに描かれたヨーロッパやフランスの≪皿≫や取っ手がカクカクしている≪コーヒー・セット≫。ドイルからは絵画にも描かれた≪備え付け時計≫、フランスからは三角形の文様の≪暖炉時計≫がありました。

そして最後の間はトルコと日本の交流。エルトゥールル号の義援金を持って行った山田寅次郎が著した≪『土耳古畫觀』≫に寅次郎が持って行った≪金太刀≫、さらにはドルマルクチェ宮殿に展示されている鹿が画かれた有田焼の≪花瓶≫に龍と鳳凰のデザインの有線七宝の≪花瓶≫に鳩の有線七宝の≪花瓶≫、皇室からスルタンへ贈られた≪勲章(大勲位菊花大綬章)≫、オスマン帝国から贈られた≪紫天鵞絨地花文刺繍卓被≫がありました。

最初の間の密度で絢爛豪華さが続いたらもっと凄まじかったなとは思いつつ、オスマン帝国宮廷とラーレ(チューリップ)の関係やピンクの水彩の美しさなどトルコへの想いを掻き立てられる展示でした。

by wavesll | 2019-04-05 01:34 | 展覧会 | Comments(0)

濱・伊勢崎町の光景

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by wavesll | 2019-04-01 04:46 | 街角 | Comments(0)

マリンタワー平成営業最終日

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マリンタワーへ。今日でひとまず営業終了とのこと。再開は3年後。中には山下清の切り絵を基にした壁画なんかも。マリンタワーは赤い頃が原風景ですが銀色も鯔背でした。また色が変わるのかな?
by wavesll | 2019-04-01 04:15 | 街角 | Comments(0)

新・北斎展 HOKUSAI UPDATED@森アーツセンターギャラリー

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北斎研究家の故・永田さんによるコレクションを元にした。春朗、宗理、北斎、戴斗、為一、画狂老人卍の全期に渡る展覧会。ラス日に滑り込みみました。

第1章春朗期にも面白い作品が。≪「新板七へんげ 三階伊達の姿見 沢村宗十郎」≫は着せ替え出来るつくり。≪熊に団子を与える金太郎≫はふっくらと逞しい。≪「浅草金龍山観世音境内之図」≫は遠近法的。≪「浮絵一ノ谷合戦坂落之図」≫も上手いし、≪「浮絵忠臣蔵夜討之図」≫や≪「風流子供遊五節句 さつき」≫なんて作品も。

≪「能登守教経勇力」≫や≪「梶原源太景季」≫も良かったし、磯子から江ノ島までのパノラマを描いた≪鎌倉勝景図巻≫には大仏も。≪『前々太平記』≫や≪市村座絵本番付≫、≪『昔々桃太郎発端話説』≫の鳥人も面白かった。

そして第2章宗理期。

≪「すみたかハ」≫の傘の描写。≪「ぎやうとくしほはまよりのぼりとのひかたをのぞむ」≫と≪「よつや十二そう」≫のうねる風景描写。≪成身院童子経曼荼羅≫のカミの描写。首を伸ばす二匹と一匹の≪亀図≫にはほっこりしました。≪合筆 所作事尽≫も美人でした。

≪玉巵弾琴図≫の龍と西王母の対峙。≪美人愛猫図≫は胸元の猫が色っぽい。≪娘図≫はリラックスした現代的なポーズ。≪大原女図≫と≪京伝賛遊女図≫はさっと画いた線が素敵。≪来燕帰雁図≫の燕の胸のふっくらした様子がまたいい。≪見立浅妻舟図≫はジブリ『かぐや姫の物語』のよう。≪福助図≫なんて奇妙な画も。≪寿亀図≫のカメもやはりいい。≪柳下傘持美人図≫の着物のドットがまたいい。

≪『柳の絲』≫にはポニョの波をみて。≪『春の戯うた』≫はハイ。≪『絵本隅田川両岸一覧』≫はイスタンブールの風景みたいだし、≪津和野藩伝来摺物≫は武家の一年の暮らしを彩りきりとったスナップ集。

そして愈々第3章 葛飾北斎期。

≪「新板浮絵富賀岡八幡宮之図」≫と≪「新板浮絵神田明神御茶の水之図」≫は見知った土地が描かれているのが面白くて。≪しん板くミあけとうろふるやしんミセのづ≫は江戸のペーパークラフトで、湯屋の描写に道後温泉を思い出しました。

≪吉原遊郭の景≫の五枚綴りの美女たち。浮世絵の女の顔は萌え絵にも似た定型性があるなぁ。≪鳥羽絵集 門付͡瞽女≫のしこめ。≪鳥羽絵集 見立礼拝≫や≪「風流おどけ百句」つくね芋・むかひ酒・つつはらみ≫も良かった。≪謎かけ戯画集 鍋の中・手習子・江戸子≫なんて謎々な作品も。

≪「風流源氏うたがるた」≫もいいし、≪在原業平≫の太ペンな筆さばき。

≪雨乞小町≫のかっこいい美人図に≪「かな手本忠臣蔵」≫のキャプションでは北斎のお母さんは吉良方の家臣の孫だったという歴史のつながりの驚きを知って。≪富士見西行≫のいい顔。≪狂歌師像集 夷歌守・棚珎厚丸・三條小判志・山寶亭長尉斗・太羅多欄油小売安方・八声明近・柏古枝・一丁亭羽狩≫の太羅多欄油小売安方の帽子が良かった。

≪人形図≫はまるでいきているみたい。≪扇に桜図(校合摺)≫は輝くばかり。≪五美人図≫はツヤがいい。

≪猿図≫は擬人化された神の使いとしてのサルが。≪宝尽くし図≫はめでたい意匠が擬人化のように配置されて。

≪布袋図≫では人をダメにするソファでのほんわかした図が。≪相撲玩具で遊ぶ童子≫も可愛らしい。≪茶筅売り図≫の千成瓢箪のようなプレゼンテーションが良かったし≪鯉亀図≫は自在置物の様。

≪『復讐奇話 絵本東嫩錦』≫や≪『阿波之鳴門』≫も良かったし≪『新編水滸画伝』初編初帙≫の大蛇、馬琴とタッグを組んだ≪『鎮西八郎為朝外伝 椿説弓張月』前編≫や中国拳法みたいなポージングの≪『飛騨匠物語』≫、竜女がかっこいい≪『勢田橋竜女本地』≫に、≪瀬川仙女追善集『露の淵』≫も良かった。

北斎期でも開花し始めていますが、ファンタジックな筆致が第4章戴斗期では全開になって。

≪鴛鴦図≫の感情が見えるような筆運び。≪寿老人図≫のなんとも極楽な絵図。≪花魁図(画稿)≫の流し目がいい。≪芋の図≫なんて逸品も。アサヒビールを想起w

そして≪『北斎漫画』≫。あらゆるものを描いたこの絵手本帖の展示では版木もありました。

≪『北斎漫画』四編≫では天狗や竜、≪『北斎漫画』五編≫の葵上などの伝説の人物、≪『北斎漫画』六編≫の銃、≪『北斎漫画』十編≫の仙術、≪『北斎漫画』≫十一編の毘沙門天のでっらかっこよさ!≪『北斎漫画』十二編≫のギャグに≪『北斎漫画』十四編≫にはアザラシも。万物を描いたこのデザインは≪鐔・印籠・根付・目貫≫と工芸にメディアミックスも。

また絵手本では≪『己痴羣夢多字画尽』前編≫や≪『略画早指南』≫、≪『画本早引』前後編≫は子どもでも楽しめそうなデフォルメが。≪『三体画譜』≫や≪『伝神開手北斎画鏡』≫も良かった。

イカ、カレイ、イセエビが画かれた≪『北斎画式』≫もいいし、≪『今様櫛キセル雛形』≫に≪『新形小紋帳』≫のデザインもいい。≪『忠義水滸伝画本』≫のバトルポーズ、≪『和漢絵本魁』≫の土蜘蛛との闘い、北条時政が大蛇と対峙する≪『絵本武蔵鐙』≫、≪『絵本早引 名頭武者部類』≫や≪『絵本和漢書』≫、≪『画本彩色通』≫、円の≪『諸職絵本新鄙形』≫も奇想でした。

第5章 為一期。ここにてさらなる画の展開をみせます。

≪富嶽三十六景≫は太田記念美術館でみていたので≪「富嶽三十六景 隅田川関屋の里」校合摺≫があったのが嬉しかった。

≪「諸国名橋奇覧 山城あらし山吐月橋」≫の穏やかな名景。≪「諸国名橋奇覧 摂州阿治川口天保山」≫の山河一体ぶり。≪「諸国名橋奇覧 かうつけ佐野ふなはしの古づ」≫のくいっと曲がるカーヴ。≪「諸国名橋奇覧 かめゐど天神たいこばし」≫の良さに≪「諸国名橋奇覧 足利行道山 くものかけはし」≫の虚空さ。

≪「諸国瀧廻り 和州吉野義経馬洗滝」≫と≪「諸国瀧廻り 東海道坂ノ下清滝くわんおん」≫のいなたい感じも良かった。

≪「奥州塩竈松嶌之畧図」≫の島々、≪「千絵の海 甲州火振」≫の水描写、≪「千絵の海 絹川はちふせ」≫の波の表情、≪「千絵の海 相州浦賀」≫の磯の表情。

≪「琉球八景 筍崖夕照」≫の宙に浮かぶ嶋、≪「琉球八景 城嶽霊泉」≫の中国風の景、≪「琉球八景 中島蕉園」≫の芭蕉の南国さ。

≪紫陽花に燕≫の紫陽花の乾いた美に≪菊に虻≫の湿度の美。≪雪の松に鶴≫のレインボーさ。

≪「百物語」 笑ひはんにゃ≫のエグい笑み。≪「百物語 お岩さん」≫≪「百物語 さらやしき」≫、≪「百物語 こはだ小平二」≫のデロリと肉が落ちる様。

≪詩哥写真鏡≫のシリーズも良かった。≪詩哥写真鏡 伯楽天≫の天空へ浮かぶ山、≪詩哥写真鏡 清少納言≫の覗く輩たち。≪詩哥写真鏡 春道のつらき≫の山と川の対比。≪「詩哥写真鏡 少年行」≫・≪詩哥写真鏡 木賊刈≫も良かった。

≪「鎌倉江の島大山 新坂往来双六」≫には渋谷や二子、川崎、厚木など見知った土地が描かれていてほんと時空が繋がる気がして。

≪「馬尽 轡町」≫の小人さ≪「馬尽 竹馬」≫や≪羅漢図≫も良かった。

≪六歌仙図≫が半ば立体的にも見えるような北斎の色彩画。これホント北斎が辿り着いた世界だなぁと。

≪工芸職人用下絵集≫と≪未刊絵手本版下絵≫もしみじみと良くて。≪『絵手本訓往来』≫や≪『花吹雪縁柵』≫、≪『出世奴小万之伝』≫、≪『唐詩選画本 五言律』≫と≪『唐詩選画本 七言律』≫も充実してました。

そして頂へ、第6章 画狂老人卍。

≪「唐土名所之絵」≫。なんでこんな地図だけなのにアートになるのか、スゴい!さらには≪「地方測量之図」≫という測量士たちをモチーフとした画も。なんて題材選びだw!≪雪中筍掘りの図≫なんてテーマもw

そしてこの展覧会で最も心動かされたのが≪田植図≫。笠のリズム、ドットの美、そして不思議な、ちょっと怪しさすら感じるオーラが『田植え』という画で展開される。こーれは画狂老人卍だけが辿り着けた世界だったなぁ。

≪向日葵図≫のジョジョ感。≪狐狸図≫の淡彩な僧侶。のんべえな≪鬼図≫もいいし、絶筆の≪富士越龍図≫はあらためていい。竜だと≪『画本葛飾振』(版下絵)≫も良かったし、≪『訂正補刻 絵本漢楚軍談』第二輯≫の女たちに≪『釈迦御一代記図会』≫や≪『画本千字文』≫にコミカルな≪『絵本忠経』≫に≪『絵本孝経』≫も良かった。

また≪鶴屋金助宛北斎書簡≫と≪本間北曜宛北斎書簡≫では北斎の手紙での字もみることができました。

そして最後を飾るのは≪弘法大師修法図≫。病魔の鬼と戦う空海の凄まじい法力バトル。凄かった。

この展覧会の一つのウリは春朗・宗理期の作品をまとまった量みれることでしょう。けれど面白くなってくるのは北斎期以降。しかし二周目にみてみると春朗だって結構上手い。イチローを想うというか、日々鍛練で地力を上げ練達したのだなと。戴斗期の『北斎漫画』は3000を越えるモチーフを描いて。

最も有名な作品である為一期の《富嶽三十六景》は既に他で何度かみていたが今回墨線のみの校合摺も。去年のあべのハルカス北斎展の方がポップでしたがこちらはマニアックに凄い。それにしても最終日とはいえこんなマニアな展覧会入場に1hかかるとは流石北斎。

最終形態画狂老人卍になるとあらゆるものに対する(馬を除く)デッサン力、『雪の中で筍を取る』といったモチーフの選眼力、西洋に學んだか2.5Dにみえる色遣いを会得し最早唯一人の高みへ。《田植図》をあんなにも幽玄に描く画家をほかに知らない。最早もののけの域。努力を一生続けた天才の技。

”伝導率を上げるってほんの少しの向上を日々積み重ねていく道なのかもな”と。ほんの少しの差異が閾値を越えるか越えないかを決める。最初期、美人画や役者絵でカチっとして綺麗だけど無個性とも言える絵を描いていた北斎(春朗)、様々なポーズで描けるデッサン力がついてファンタジックな画も自在に描けるようになる。そして総合力の綜合によって画狂へ。

何というか、この横綱相撲振りは心身の剛健さも予期させる。狂うには剛健でないと。前後期合わせて500点近い大ヴォリュームでの展覧会でした。

by wavesll | 2019-03-28 06:41 | 展覧会 | Comments(0)