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松平不昧展at三井記念美術館にて大井戸茶碗 喜左衛門井戸をみた

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三井記念美術館に没後200年 大名茶人 松平不昧ーお殿様の審美眼ー展をみてきました。

松江藩松平家第七代藩主でありながら茶人としても名高い松平不昧、彼のコレクションを存分に楽しめる展示が開かれているのです。

先ず目に飛び込んでくるのが金縁が美しい重文≪油滴天目≫。そこからゴゴっとした存在感が印象的な≪信楽水指 銘 三夕≫や、タイのスワンカロークでつくられた≪宋胡録九角香合≫、螺鈿細工が美しく付属の小刀なども技ありな≪楼閣人物螺鈿十角硯箱≫、富士の文様に黒線が入った≪唐物肩衝茶入 富士山肩衝≫、そして梅の花の文様が幾つも咲いた国宝 ≪玳玻盞 梅花天目≫、さらには不昧が石州流茶道で立ち返ることを志した千利休作の≪竹茶杓 ヤハラ道怡≫が。

そして…次の間では愈々御目当て、国宝 ≪大井戸茶碗 喜左衛門井戸≫!!!

井戸茶碗とは16世紀頃に朝鮮半島から渡来した高麗茶碗と呼ばれる茶碗の一種で、彼の地では日曜雑器だったものが日本の茶人が見初め、中でもこの茶碗は「天下第一の名碗」 と呼ばれる逸品。

朝鮮から渡ってきたこの茶碗はぐわっとした存在感に、まるで大物の遺跡をみるような迫力と神性が内から湧いていました。土のスケール感、高台の梅花皮がまさに井戸のように石が積まれた凝縮感。素晴らしい。何でもないとされてきた器に美しさの究みを見出だした数百年前の此の国の人々の目利き、美の哲学の結晶とも感じました。

広間へ出るとそこには掛け軸と茶器が。

≪青井戸茶碗 銘 朝かほ≫も派手でない土の美があって。≪斗々屋茶碗 銘 広島≫の渋色に青錆。重文の≪堅手茶碗 銘 長崎≫のひしゃげた感じも現代的感性。これも重文≪本阿弥光悦作 赤楽兎文香合≫はウサギが描かれた可愛らしい逸品。可愛いと言えば翡翠にクリーム色がちょこんとのった≪交趾大亀香合≫や、ダイヤカットな≪白呉須台牛香合≫に、礎を模した≪伊賀伽藍石香合≫も良かった。

光悦の孫の本阿弥光甫作≪信楽芋頭水指≫も良かったし、≪丹波耳付茶入 銘 生野≫のアブストラクトな魅力。雪舟筆≪一円相≫のシンプルで宇宙的な真円。また不昧は筆も好くて、松平不昧の絶筆≪遺偈≫の喫茶喫飯というコトバに骨頂をみて。松平不昧筆≪一行書「明歴々露堂々」≫と≪一行書「独座大雄峯」≫の力強い筆致も良かった。

そして不昧筆≪書「喝」≫一字の迫力。それと共に茶室に展示されていた≪伊羅保茶碗 千種伊羅保≫が浜と波が一碗に込められたような作品で素晴らしかった。

松平不昧筆≪茶の湯の本意≫に書いてあった「時代に合わせてブラッシュアップすべし」「下手でもOK」には唸らされて。千利休の教えが書かれた松平不昧筆≪三百ヶ条≫や、不昧の大いなる業績である、各地の名物の品録≪古今名物類聚≫と彼の蒐集物が記された≪雲州蔵帳 貴重品目録≫も。

松平不昧≪茶杓 銘 残雪・残花≫の文字のかっこよさ。小林如泥≪桐茶箱≫の雪の字。松平不昧と妻より子合作≪桐茶箱 春の月≫の品の良さ。

松平不昧の力強い筆運びに狩野伊川院栄信の亀の画が格好いい≪福禄寿亀図≫や豆腐で世の中を例えた松平不昧筆≪豆腐自画賛≫、そして花柄のデザインがとっても嬉しい松平不昧≪書「春月」≫も良かった。

最後の展示室も素晴らしく、表から裏へ菊の柄が入った長岡空斎≪楽山焼 色絵菊図茶碗≫、金に螺鈿の原羊遊斎≪片輪車蒔絵棗≫や黒に金が輝く原羊遊斎≪蝶蒔絵大棗≫、黒に菊が透明に浮かび上がる初代小島漆壺斎≪やみ菊棗≫、シンプルでエレガントなデザインの初代小島漆壺斎≪桐蒔絵茶桶≫、「福」の字の意匠がまたいい初代小島漆壺斎≪福寿棗≫、蓋の凹みがまた現代的な初代小島漆壺斎≪竹中次≫も良かった。

さらに原羊遊斎作/狩野伊川院栄信下絵≪椿蒔絵香合≫・≪かまきり蒔絵香合≫・≪きりぎりす蒔絵香合≫の金と螺鈿の意匠が黒に映えて楽しく、狩野伊川院栄信画≪張庫形牛香合≫の木の赤茶に牛が浮かぶ様や≪古染付張甲牛香合≫、黒に薄っすらと桃が浮遊する原羊遊斎≪桃蒔絵細棗≫も素敵だったし、≪片輪車蒔絵香合≫も良く、玉川又徹作/蓋絵・酒井抱一画≪桐茶箱 水月≫も素晴らしかった。不昧を通して利休と抱一が繋がるとは。

そしてそんな不昧が創った≪薩摩竹水指 銘 山川≫も内側が黒に塗られ紅葉が映える独創的なデザインが好いし、最後に見た松平不昧≪竹筒花入 銘 心の花≫は”花は要らず、打水だけで好い”という領域へ。不昧は茶を通じて空へ到達したのかと心が震わされました。

みごとな茶の道、素晴らしい趣味をみせて貰えて、しみじみとした機微のある展覧会でした。

by wavesll | 2018-06-13 21:24 | 展覧会 | Comments(0)

NUDE展 at 横浜美術展 時を越えて先端表現をめぐる旅

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横浜美術館で開かれているヌード展 英国テート・コレクションよりをみてきました。

先ず展覧会場に入ると目に映るのがフレデリック・レイトン≪プシュケの水浴≫。神話に登場する美女を複数の女性の裸体を組み合わせることで理想の肢体として描いた作品。

この作品とウィリアム・マルリディ≪裸体習作≫は柔らかさを感じさせる金髪のコーカソイドの女性のヌードでした。

それに対してハモ・ソーニクロフト≪テウクロス≫は古代の戦士の締まった躰が凄かった。

19世紀ヴィクトリア朝英国では神話・古代をモチーフに裸身が描かれて。女性の湯殿が描かれたローレンス・アルマ=タデマ≪お気に入りの習慣≫や黄昏が波に輝くハーバート・ドレイバー≪イカロス哀悼≫のニンフたちも可愛らしかった。またウィリアム・エッティ≪寝床に就く妻を下臣ギュゲスに密かに見せるリディア王、カンダウレス≫なんてえぐい場面も。

そんな中ジョン・エヴァレット・ミレイ≪ナイト・エラント(遍歴の騎士)≫は理想化された肢体でなく、腹が弛んだヌードで当時「リアルすぎる」と物議を醸したそうです。英国の方々は流石紳士の国で御堅い。

このような形で、ヌードという題材は人間の根本的な欲求故に道徳規範との鬩ぎあいであり、自然その時代時代の前衛・先端の表現が裸体画によって更新されてきました。

エドガー・ドガ≪浴槽の女性≫はさらにアヴァンギャルドで、神話ではなく素人の女性が湯浴みをしている様を画いた作品。

バスルームの裸身画というとピエール・ボナール。彼が奥さんが湯船に浸かるのを画いた数多い作品から≪浴室≫≪浴室の裸婦≫が展示されていました。

アンリ・マティス≪布をまとう裸婦≫は明るい力を強く発して。オーギュスト・ルノワール≪ソファに横たわる裸婦≫は幸福があふれた彼一流の美女。ルノワールにしてはしゅっとした體かも。

そんな明るい絵画に相対してダークな雰囲気の作品が並んでいて。フィリップ・ウィルソン・スティア≪座る裸婦――黒い帽子≫は昏い色気のある美人画。グウェン・ジョン≪裸の少女≫は痩せ細った翳のある少女。画家とのソリも合わなかったそうです。


ここから20世紀に入りモダン・ヌードのEraへ。

アンリ・ゴーディエ=ブルゼスカ≪レスラー≫は古代のレリーフのよう。ダンカン・グラント≪浴槽≫はアフリカからインスピレーションを受けたイエローなヌード。ディヴィッド・ボンバーグ≪混浴≫はトリコロールの幾何学なヌード?ついにここまで来たかという感じ。

ヘンリー・ムーア≪横たわる人物≫は穴が開いた身体が印象的な彫刻。同じくヘンリー・ムーア≪倒れる戦士≫もシンプルに図示化された敗れ去った兵士の姿が印象的。

そしてこれが見たかった!パブロ・ピカソ≪首飾りをした裸婦≫!!人間存在が匂い立つ迫力。海の潮と赤い大地にド迫力の裸婦画。これが87才での作品とは…!全く勢いが衰えていない…!

この豊満なヌードに対してアルベルト・ジャコメッティ≪歩く女性≫は極限にすらっと削られた女性の彫刻で、非常にハイレベルに好対照していました。

さらに次の部屋は本展のメインヴィジュアルにも現れるオーギュスト・ロダン≪接吻≫が。眼で生で感じるとまるで砂糖でつくられたかのようにしっとりとしながら今にもほどけてしまいそうな質感でえもいわれぬ体験でした。この作品に限って撮影OKで、360°から撮影しました。

この間にはジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーのヌード・スケッチも。≪ベッドに横たわるスイス人の裸の少女とその相手「スイス人物」スケッチブックより≫なんかは艶っぽかった。


またデイヴィッド・ホックニーのBLな挿絵も展示してありました。

次に在ったのがレアリスムとシュルレアリスムの章。

マックス・エルンスト≪男はこれについて何も知らない≫はタロット的なデザイン。マン・レイ≪うお座(女性と彼女の魚)≫はいきいきとした魚ですらっとした女性のヌード。マン・レイは寫眞作品の≪無題(ソラリゼーション)≫も美しかったです。

ポール・デルヴォー≪眠るヴィーナス≫は近現代的な舞台の中で色っぽい女性たちが存在する画。バルテュス≪長椅子の上の裸婦≫は昏い悦びがあるヌード画。

次の章に入るとまず目に飛び込んでくるのはフランシス・ベーコンの≪横たわる人物≫≪スフィンクス――ミュリエル・ベルチャーの肖像≫のオレンジ。そしてルイーズ・ブルジョワの≪カップル≫・≪女性≫・≪誕生≫・≪授乳≫・≪親しみのある風景≫・≪家族≫等の白地と滲む赤も印象的でした。

そしてルシアン・フロイド≪布切れの側に佇む≫の布の白も印象的で。

またウィレム・デ・クーニング≪訪問≫セシリー・ブラウン≪楽園の困難≫は色彩爆発で裸体が自由に躍動蠢動していました。

そしてヌード画という表現は政治的な意思表示を顕わすようになってきます。

バークレー・L・ヘンドリックス≪ファミリー・ジュールス:NNN (No Naked Niggahs[裸の黒人は登場しない])≫は白人の女性ばかりだったヌード画の世界に黒人男性のヌードが存在感を放っていました。すらりとした身体にメガネがなかなかに素敵でした。

シルヴィア・スレイ≪横たわるポール・ロサノ≫も男性のヌードを画いた一枚。毛むくじゃらのカラダにちょっと嫌悪感を感じて、自分自身の目線を否応なしに意識させられました。

女性のヌードも従来からは変わってきて、ロバート・メイプルソープ≪リサ・ライオン≫は女性ボディビルダーの写真。

写真だとサラ・ルーカス≪鶏肉の下着≫も股間に鶏が入るインパクトのある写真。

シンディ・シャーマンのグラビア撮影後にローブを纏って睨む様を写した≪無題 #97≫・≪無題 #98≫・≪無題 #99≫、ジョン・コブランズが自分の弛んだオヤジヌードを写した≪セルフ・ポートレート(フリーズno. 2、4枚組)≫、リネケ・コブランズが出産後の母子を撮った≪ジュリー、デン・ハーグ、オランダ、1994年2月29日≫・≪テクラ、アムステルダム、オランダ、1994年5月16日≫、≪サスキア、ハイデルウェイク、オランダ、1994年3月16日≫も面白かった。

そしてこの展覧会が行きついた先に在った絵画は舞台上のヌードの女性の動きを活字で書き綴ったフィオナ・バナー≪吐き出されたヌード≫。遂にヴィジュアルだけでなく概念に裸体画は到達し、NUDE展は幕を下ろしました。

今年は西洋画の大きな流れをみせる展覧会を幾つかみて。その中でもビュールレ・コレクション 至上の印象派展プーキシン美術館展 旅するフランス風景画とこの展覧会で西洋画をみる上での一つの軸が形成されつつある気がします。

普通に上手く肖像画や神話の風景を描くところから絵画でしかありえない表現世界へ飛び立っていく、さらなる超フロンティアを求める美の冒険。時を越える旅。そのダイナミズムの先端を画いたNUDEの数々に大いに刺激を感じる展覧会となりました。

最後に≪The Kiss≫の360°からのShotを。

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by wavesll | 2018-06-11 01:46 | 展覧会 | Comments(0)

UT今昔 柚木沙弥郎の染色 もようと色彩展@日本民藝館, 旧柳宗悦邸 and Parametric Move 動きをうごかす展 by 東京大学山中研究室

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いつも通り過ぎてしまい縁がなかった駒場東大前で下車し、日本民藝館にて柚木沙弥郎展をみてきました。

日本の民藝品を中心としつつマリ、コートジボワール、ガボン等の仮面やコロンビアやペルーの土偶、朝鮮の螺鈿など全球的な品々が並び、それらが民藝という思想が貫かれ、多種多様なのに一つの哲学になっていて。

そして柚木さんの染色作品がまた縄文的というかプリミティブと現代のくらしが接続されて、本当に美しかった。

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そして今日は第二土曜だったため旧柳宗悦邸である西館もみれて。日本家屋の古木の感触。柔らかさと堅さ。自由なのに雅さを感じるのはエレガンテでした。これは民藝の美、思想の顕在かもと想いました。

視野はグローバルに、けれど借り物ではなく確立された美意識の哲学・思想によって価値を編み創る姿に、本当に惚れ惚れする体験となりました。

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柚木さんも柳さんも東大の出身ですが、日本民藝館からすぐの東京大学リサーチキャンパスにて山中俊治さんの研究室のメンバーによるプロトタイプ展が開かれていました。



回転翼のドローンによって二足歩行ロボットがさらに進化したAerial Biped (動画link)や螺旋の腹や節がなんとも美しく躍動するParametric Tube (動画link)、さらには球体が変容する超現実的なオブジェともいえるF.o.G (動画link)等、まるでCGの世界が現実になっている作品が、つまみをつかってインタラクティヴなカタチで展示されていました。

こうしたテクノロジーとアートの学際的な分野は落合陽一さんも展開していますが、技術的先端度ではこちらがさらに一歩先んじていると感じて。この分野、切磋琢磨でさらにわくわくが加速していく予感が湧いてくる素敵な展覧会でした。

柚木さんの展覧会は24日まで。山中研究室の展示は17日までとのこと。リサーチキャンパスは駒場キャンパスとはちょっと離れた場所なので、そこだけご注意を◎

by wavesll | 2018-06-09 18:16 | 展覧会 | Comments(0)

プーキシン美術館展ー旅するフランス風景画@東京都美術館 景色の時空間的変遷

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東京都美術館へプーキシン展をみに行ってきました。

17世紀から20世紀の仏風景画のコレクションが一堂に会して眺められる展覧会。

と、言いながら、最初の17Cの風景画はどうもピンとくるものが少なくて。。というのも風景が主題になるのが遅かった西洋に於いて、風景画の初期の作品は人間の物語における光景が描かれるというか、あまりに人間中心主義過ぎて、日本や中国の山水画をみている目からするとちょっと劇的すぎるというか、人為的に感じてしまうのですよね。

実際この時代の様式では雅宴画(フェト・ギャラント)というやはり人々が主役なものもあって。逆にその演劇性が魅力的な域まで行っていたのはジャック・ド・ラジュー≪狩猟後の休息≫。大画面で狩りを終え酒を注ぐ様子やブランコで遊ぶ娘など、まるで絵画の中で動いているような筆致が好かった。

アニメーション的という点ではフランソワ・ブーシェ≪農場≫はなんだかジブリ的な画き味でこれもまた面白く感じました。

他にもウジェーヌ・ルイ・ガブリエル・イザベイ≪ムーア式の入口≫なんかはアルジェリアのエキゾな感じで良かったのですが、例えばフェリックス・フランソワ・ジョルジュ・フィリペール・ジエム≪ボスポラス海峡≫なんかはいいのだけれどもあまりに普通というか…濃い味に慣れてしまった舌には上品すぎる出汁の旨みがわからなくなっているのかもなんて気になりました。というか”西洋”があまりに普遍に在る環境に慣れているのでしょうね。

そんな中から19Cに入ってくると自然風景そのものが愈々主役を張る様相を見せてきます。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー≪嵐、パ=ド=カレ≫は昏い天気のトーンが主役で。同じくコロー≪夕暮れ≫の煌めきもいい。アンリ=ジョゼフ・アルピニー≪女性のいる森の風景≫も人はあくまでアクセントであり風景が主題で。

ジュール・コワニエ/ジャック・レイモン・ブラスカサ≪牛のいる風景≫なんかはくっきりとした質感が3Dのように浮かんできて。コンスタン・トロワイヨン≪牧草地の牛≫も牛の表情が好かった◎

そしてギュスターヴ・クールベ≪水車小屋≫が素晴らしくて!荒い筆致からリアルを超えた質感が生まれていて。迫力に見惚れました。

またレオン=オーギュスタン・レルミット≪刈り入れをする人≫は人と自然が日常として融け合う”里”としての情景で。これもまた良かった。

ここで風景の舞台は大きく舞台を変え、19世紀の終わりごろに当時大規模な再開発で大きく変貌を遂げたパリに於いて”都市環境”という風景主題が生まれました。”やはり西洋画はヒトが入ると活き活きする”なんて思いました。

ピエール=オーギュスト・ルノワール≪庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰≫はルノワールがあのムーラン・ド・ラ・ギャレットを画いた別の作品で、木洩れ日の下語らう柔らかな表情の人々が印象的でした。

ピエール・カリエ=ベルーズ≪パリのピガール広場≫とアルベール・マルケ≪パリのサン=ミシェル橋≫はピクトグラム的。

ジャン=フランソワ・ラファエリ≪サン=ミシェル大通り≫はまさに絵になる風景。現代と中世の中間のリアリティ。都会の人々、とりわけ黒いドレスを着た女性が美しい。そしてエドゥアール=レオン・コルテス≪夜のパリ≫は光の表現がとてつもなく良くて。本当に暖かく美しく輝くガス灯が素晴らしい。

そしてルイジ・ロワール≪パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)≫は本展で一番好きだった画!超巨大で景色がリアルサイズで広がっているような感覚で銀色の都市風景が拡がって。西洋の侘び寂びを感じました。此れは生で観て欲しい!

またアルベール・マルケ≪冬のパリ、サン=ミシェル橋の眺め≫はヘタウマというかシンプルが逆に面白くなる時代の到来が予感させられます。

さらに時代は印象派へ。画家たちはパリの郊外へ描きに出かけに行きます。

本展の目玉の一つであるクロード・モネ≪草上の昼食≫は木洩れ日に照らされる光景、緑の耀きが美しく、フォンテーヌブローの外れシャイイ=アン=ビエールでの情景がグラフィカルに新しいリアルを顕わしていました。

そしてクロード・モネ≪陽だまりのライラック≫には”ライラックってこんな花だったのか”とブランキーを想いながらピンクの淡い画面を観ました。初期に描かれた太鼓橋のある≪白い睡蓮≫と≪ジヴェルニーの積みわら≫にはゴッホ的な筆致も感じて。

ゴッホ的というとアルフレッド・シスレー≪霜の降りる朝、ルーヴシエンヌ≫≪オシュデの庭、モンジュロン≫そして≪フォンテーヌブローの森のはずれ≫にも感じて。ビュールレ・コレクション 至上の印象派展で学んだのですが、西洋絵画の中でのゴッホ・ムーヴメントは決して孤立していず繋がりがあったのだなと。

またニヤリとさせられたのがカミーユ・ピサロ≪耕された土地≫でパネルにあった画家の「他の誰もが何もないとみるような辺鄙な地に美を見出しうる人は何と幸福であることか」という言葉。なかなかこじらせておるのとw

アルベール=シャルル・ルブール≪河のほとり≫は仄明るい水辺が好かった。またモーリス・ド・ヴラマンク≪小川≫は森林の緑の勢いが凄かった。

そしてアンリ・マティス≪ブーローニュの森≫は何でもない風景なのだけれど迫力で惹きつけられるのは黒とカラーの魅せ方・存在感なのだなぁと。

そして20Cに入ってくるあたりでは交通機関のさらなる発達から画家たちはフランスの様々な土地へ。

アルマン・ギヨマン≪廃墟のある風景≫は紫色が映える紅葉の山。ジャン=ピュイ≪サン=モーリスにある古代の橋≫はフォービズムに裏打ちされた明るく輝く緑の丘の画。

ポール・セザンヌ≪サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め≫≪サント=ヴィクトワール山、レ・ローヴからの眺め≫はこの段々と滲んでくる光景の変容が一種アニメーション的な変遷として感じられます。

ピエール・ボナール≪夏、ダンス≫は幸せな一瞬を永遠に普遍化した大作。

アンドレ・ドラン≪港に並ぶヨット≫は大好きな壱枚でした。フォーヴ(野獣)でトリコロールなハーバーの風景。気持ちいい絵画。

ルイ・ヴァルタ≪アンテオールの海≫はゾワッ、ボワッとした木々と潮と岩、すっごく好きな一枚でした。

オトン・フリエス≪カシスの木々≫は自然のパワフルさがなんとも見事に伝わってきて。

この記事の最初で”西洋の風景画は人為を感じる”と書いたのですが、寧ろ過激で現実を超えてくる筆致をみせた時に自然の本質が顕れてくるに至った感覚がありました。

そして遂に画家は海を渡って、そして想像の翼を広げていきます。

ポール・ゴーガン≪マタモエ、孔雀のいる風景≫はフレンチとタヒチのケミストリー。

そしてアンリ・ルソー≪馬を襲うジャガー≫は結局行くことは出来なかった熱帯の風景へ、植物園などからインスピレーションを受け妄想。創造を膨らませ神話的な世界へ到達した作品。

楽園が現前していました。モーリス・ドニ≪ポリュフェモス≫はギリシア神話の世界に20Cの格好をした人々が入り組む浜辺の画。

最後の2枚は近現代的幾何学な絵画だったのですが、そんなにそれは私の好みではなくて。音楽でも70sの熱帯雨林なグルーヴが最高というか、美味しいところを喰いきってしまわれた後にさらなるフロンティアを探究しているという点で画家は音楽家に先んじているのかもしれないと。きっと新しい超現実な普遍はブレイクスルーの先に開けるはず。

またロシアでなく他国のフランスをコレクションしたことがプレゼンスを持つに至る美術の面白味というか、複製芸術とはまた違う点なのかもと想いつつ、けれど確かにJTNCのグラスパーとかそういうことあったなと。風景画の変遷を旅して、現代・未来というフロンティアの淵まで再到達した気がしました。

イマの絵画、ということで最後に置いてあった視覚障碍者の方向けの”触れる絵画”は筆致が凸凹で顕わされていて共感覚的で面白かったです。この展覧会、なかなかに鯔背ですよ◎

by wavesll | 2018-06-08 23:59 | 展覧会 | Comments(0)

落合陽一「山紫水明∽事事無碍∽計算機自然」展@GYRE

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神宮前GYREへ落合陽一さんの個展「山紫水明∽事事無碍∽計算機自然」を観に行ってきました。面白かった。

落合さんと言えばとこれいう浮遊する球体がスピンしながら回転する≪Levitrope≫(動画link)の他、波形なオブジェが浮遊する≪Silver Floats≫(動画link)も好かったし、特殊なレンズにより視覚をハックしてくる≪Morpho Scenery≫や磁性流体を使った≪波面としての古蛙≫(動画link)も佳かった。

こうしたメディアアートには一定の批判もあり、チームラボと十把一絡げにするTweetなんかも散見したのですが、寧ろ言論強者ゆえ惑わされているのではという警戒心を持つ点で落合さんは菊地成孔氏的なポジションに感じます。

けれどもDCPRGを生で浴びた時の言語無関係な圧倒的な快楽のように落合さんの作品には非言語表現である質感への拘りが感じられるというか。確かに一種「素材・技術をそのまま出した」ようなソリッドな表現だけれども、チームラボの作品に感じる質感の浅さへの不満は落合さんの作品群にはそんなに感じないというか。(ちなみにそんなチームラボも宇宙と芸術展 at 森美での映像空間作品は良かったと感じました )

今回だとモルフォ蝶が物理的にパタパタする奴や動物の目のパネル、吹き抜けに在った昆虫のパネル、イルカの寫眞と彼らの声の展示や、プラズマの放出による虫の音の展示など”もうちょっとふくよかに肉付けした方がいいのではないか”という表現もありましたが、鯖の肌を顕わした≪波の形,反射,海と空の点描≫等かなり良く、質感により雰囲気が起ち上がる域に達していたと感じました。

展覧会を出る時にたまたま落合さん自身にもお会いできて。きさくに写真撮影にも応じられていて。お声掛けしたのですが、服装などまさにイメージ通りな飄々とした方でした。

by wavesll | 2018-05-26 03:25 | 展覧会 | Comments(0)

TAMASHII COMIC-CON@渋谷キャストでのアメコミヒーローズ

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by wavesll | 2018-05-25 18:55 | 街角 | Comments(0)

西美のコレクション展にて新蔵品のベルト・モリゾやモネ、ドガ。ミロやカンディンスキー、藤田嗣治にポロックにピカソetcをみる

ベルト・モリゾ ≪黒いドレスの女性(観劇の前)≫
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ペーテル・パウル・ルーベンス ≪眠る二人の子供≫
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アレッサンドロ・マニャスコ ≪嵐の海の風景≫
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アリ・シェフェール ≪戦いの中、聖母の加護を願うギリシャの乙女たち≫
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レアンドロ・パッサーノ ≪最後の審判≫
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ヤーコブ・ヨルダーンスに帰属 ≪ソドムを去るロトとその家族(ルーベンスに基づく)≫
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ウィリアム・アドルフ・ブーグロー ≪音楽≫
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ギュスターヴ・クールベ ≪眠れる裸婦≫
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ピエール・オーギュスト・ルノワール ≪アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)≫
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エドガー・ドガ ≪舞台袖の3人の踊り子≫
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ピエール・ボナール ≪『デリエール・ル・ミロワール』第158-159号(1966年4月刊)『ラ・ルジュ・ブランシュ』誌のためのポスター(表紙)≫
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マルク・シャガール ≪赤い鶏≫
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マルク・シャガール ≪イスバの風景≫
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マルク・シャガール ≪青い魚≫
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ジョアン・ミロ ≪絵画≫
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ワシリー・カンディンスキー ≪『小さな世界』:I≫
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ワシリー・カンディンスキー ≪『小さな世界』:II≫
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ワシリー・カンディンスキー ≪『小さな世界』:III≫
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ワシリー・カンディンスキー ≪『小さな世界』:IV≫
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ワシリー・カンディンスキー ≪『小さな世界』:V≫
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オーギュスト・ロダン ≪フギット・アモール(去りゆく愛)≫
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モーリス・ドニ ≪若い母≫
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ジョン・エヴァリット・ミレイ ≪あひるの子≫
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ラファエル・ロラン ≪詩≫
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ラファエル・ロラン ≪楽≫
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ピエール・ボナール ≪働く人々≫
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ポール・シニャック ≪サン=トロペの港≫
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キース・ヴァン・ドンゲン ≪カジノのホール≫
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ジョルジュ・ルオー ≪道化師≫
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マックス・エルンスト ≪石化した森≫
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パブロ・ピカソ ≪アトリエのモデル≫
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パブロ・ピカソ ≪男と女≫
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藤田嗣治 ≪座る女≫
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ジャクソン・ポロック ≪ナンバー8, 1951 黒い流れ≫
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国立西洋美術館の愉しみと言えば常設展。先日プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光 を観た時にみたコレクション展はやっぱり凄くて。注目は新蔵品。写真を載せたモリゾ、ドガの他、モネも複数新蔵品があり、さらには≪つみわら≫なんかも展示してありました。

ポロックも最晩年の黒がうねる作品。そしてフジタが凄い良いのがあったのが嬉しかったです。そして新館 版画素描展示室で開かれているマーグ画廊と20世紀の画家たち―美術雑誌『デリエール・ル・ミロワール』を中心にもカンディンスキーやシャガールが素晴らしかったです。

おまけにこれまでも撮って来た西美常設展の寫眞レポをお裾分け◎






by wavesll | 2018-05-21 20:52 | 展覧会 | Comments(0)

悪の建築展 第4章:前衛 at サイト青山

野口理沙子 一瀬健人 ≪卓上の物語、召し上がれ≫
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Woga
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Woga ≪呼吸≫
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KAORI KUMAGAI
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Karano Laka ≪窓≫
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瑞雪
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Mizuki the City ≪出現≫
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Mizuki the City ≪予兆≫
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山本知 ≪吉良道≫
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山本知 ≪紅吉祥院≫
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姉崎たくみ
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姉崎たくみ ≪Garden of Eden≫
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入口可奈子 ≪試作存在しない≫
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入口可奈子 ≪マテリアル101ー部分再構築ー≫
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髙橋瑞稀 ≪The water cycle≫
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悪の建築展@サイト青山に朝一に。

髙橋瑞稀さんの作品は東京春季創画展にも出品された≪渇いた水≫という作品と同じくウェルウェッチアという沙漠に咲く華の内部の水流を通してナイルからの都市の勃興を比喩するもの。

色使いとキュビズムのような構造が迫力がありました。キュビズムと書いたのは、華がミクロには脳や内臓、マクロには地形のようにみえ、そこに複数の視点が織り込まれていたため。グーグルアースなんかにも創作のヒントがあったそうです。

他の作品も見どころがそこかしこにあり、特に高層建築群を皿に乗せた野口理沙子さんと一瀬健人さんのクラフト作品が都市を飛び交い摘まみ食いをするトランスナショナルなメガロシティな感覚が現代的で良かったです。

最後におまけでそんな青山一丁目の都市の上に在った空天を。あまりの明晰さに感嘆させられました。
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by wavesll | 2018-05-21 01:25 | 展覧会 | Comments(0)

横浜市港北区・太尾堤緑道にあるヨコハマビエンナーレ'89の彫刻遺産群

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by wavesll | 2018-05-14 19:42 | 街角 | Comments(0)

プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光@西美 コンセプト・コンテキストをめで愉しむ西班牙王宮美術の扉

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国立西洋美術館にて開かれているプラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光をみてきました。

先ず展覧会場に入ると出迎えるのがディエゴ・ベラスケス≪フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像≫。この時代”美術”というものを職工的なものではなく知的で創造的な営みであるとオーソライズする動きがあり、アーティストそのものを描いた作品が多くつくられました。このモンタニェースも著名な彫刻家。彼が造っているのはフェリペ4世の像だといわれているそうです。

また画家を創造主である神と重ねる絵画も多く、神がまさに画家となりマリアを描いているところから文字が流れ出しているホセ・ガルシア・イダルゴ≪無原罪の聖母を描く父なる神≫もそう。

そして聖母マリアの彫像から母乳が飛び出て祈った聖人の口に降り注ぐという衝撃的なシーンを描いたアロンソ・カーノ≪聖ベルナルドゥスと聖母≫が面白かったwスペインでは結構描かれた題材だそうでした。

次の章はこの時代に良く描かれた哲学者達の絵画。

この展覧会の目玉は7点のベラスケスなのですが、その他の画家たちの作品も素晴らしく、殊にルーベンスが印象的で。

ペーテル・パウル・ルーベンスの工房≪泣く哲学者ヘラクレイトス≫の涙がチャーミングで。そしてこの絵にベラスケスが対抗しようと画いた≪メニッポス≫も古代哲学者の衣ではなくこの時期流行った”乞食哲学者”という現世の富に頓着しない姿と聴いて面白いなと。

この章では他にも聖書をラテン語訳した哲学者を描いたアントニオ・デ・リベーラ≪聖ヒエロニムス≫も老いと美しさがありました。

そして本展覧会ではこの人も良かった。ヤン・ブリューゲル(父)。ヤン・ブリューゲル (父)、ヘンドリク・ファン・バーレン、ヘラルト・セーヘルら≪視覚と嗅覚≫は様々な絵画が揃った光あふれる大広間の絵画。そしてヤン・ブリューゲル(父)の十八番である花を描いた≪花卉≫も良かった。

この時代はキリスト教が強い権力を持っていて、スペインの画家は他宗教について描けなかったのですが、宮廷画家のベラスケスは王室というクローズドな環境向けにギリシア神話を題材とした画も描けたそうで、≪マルス≫もそんな一枚。

この軍神マルスの絵、鎧を脱いだマルスがへたっと休んでいる場面が描かれています。これは様々な解釈があるのですが、一つには鎧を脱いだマルスというのは平和を顕わし、フェリペ四世の優れた治世を示しているとのことでした。

この時代でもスペイン国外の画家はカトリックに縛られずに絵を描け、さらには王宮では裸婦像も肖像されていて。ティツィアーノ・ヴィッチェッリオ≪音楽にくつろぐヴィーナス≫のふくよかな裸婦の美しさ。ピアニストの男性の黒い衣服や濃い色の内装が裸婦の肌の白さを際立たせていました。

またルカ・カンビアーゾに帰属≪ルクレティアの死≫も自らの白い肌に短刀を突き刺し血を流す様が煽情的で。

そしてペーテル・パウル・ルーベンス、ヤーコブ・ヨルダーンス≪アンドロメダを救うペルセウス≫が何とも見目麗しい美男美女で。ルーベンスの絶筆と言われるこの作品、最期までこんな優しく眩しい絵を描いていたんだなぁ。

ペルセウスを画いた絵だとルカ・ジョルダーノ≪メドゥーサの首を持ち勝利を収めるペルセウス≫のペルセウスの翼の生えた兜も良かった。またぎょっと驚かされるド迫力だったのはビセンテ・カルドゥーチョに帰属≪巨大な男性頭部≫これは本当吃驚する大きさなので是非生で◎

そして宮廷の人々が描かれた絵画も勿論沢山ありました。

ベラスケス≪狩猟服姿のフェリペ4世≫は華美に飾り立てずに王の文化的なセンスを感じさせるのが喜ばれたそう。また王族の特徴である顎がフェリペ4世と共通するフアン・カレーニョ・デ・ミランダ≪甲冑姿のカルロス2世≫も。フェリクス・カステーリョ≪西ゴート王テオドリック≫は威風堂々としていました。

またこの展覧会で初めて知ったのですが、スペイン王宮には矮人という小人症の家来が働いていて、フアン・バン・デ・アメン≪矮人の肖像≫や王太子に仕えた矮人をベラスケスが画いた≪バリェーカスの少年≫という作品も。

そしてこの展覧会のメインビジュアルにも現れているディエゴ・ベラスケス≪王太子バルタサール・カルロス騎馬像≫

他の王族の絵画の背景が暗いのに対し、バルタサール王太子の背景は明るいスカイブルー。空色にライトピンクの衣が映えます。躍動感ある馬。けれど尻尾がちょっと荒い筆致に感じて。よくよく見れば衣服も結構筆跡が残っていて。

この時代の絵画が粗いテクニックだったという訳ではなく、例えば同じ部屋に飾られているアロンソ・サンチェス・コエーリョ≪王女イサベル・クララ・エウヘニアとマグダレーナ・ルイス≫アントニオ・デ・ペレーダ≪ジェノヴァ救援≫はかなりのハイレゾだし、ベラスケス自身が二十歳の時に描いた≪東方三博士の礼拝≫も精細な筆致。

”ではこれは狙ってのことだろうか”と訊いてみると此の絵は高い位置にかかっていたそうで、遠くから見た時にベストにみえるように描かれていて、”ベラスケスは印象派を先取りしている”と言われているとか。≪マルス≫の兜もこの試みがされていました。ビュールレ・コレクション展で≪可愛いイレーヌ≫がダンヴェール家には”精緻ではない”と気に入られなかったと聴いていたので、スペイン王家は柔軟で進取な感性を持っていたのだなと想いました。

≪王太子~≫の背景の山々は実際に在る風景だそうですが、この展覧会にはベラスケスの弟子フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソによる風景画≪ローマのティトゥス帝の凱旋門≫なんて風景画も飾られていました。また光景でいうとデニス・ファン・アルスロート≪ブリュッセルのオメガングもしくは鸚鵡(オウム)の祝祭:職業組合の行列≫も夥しい人物による広場での大行列がイラストレーション的で非常にくっきりと描かれていて印象的でした。

また17世紀スペインでは静物画が新しいジャンルの絵画として勃興していて。フアン・バン・デル・アメン≪果物籠と猟鳥のある静物≫フアン・デ・エスピノーサ≪ブドウのある八角形の生物≫といったリアルな静物画が展示してありました。

またこの時期の西班牙ではボデゴンという風俗画な静物画が流行っていて。アレハンドロ・デ・ロアルテ≪鳥売りの女≫なども濃い口な筆致で大変良かった◎さらにイソップ童話を主題としたパウル・デ・フォス≪犬と肉の寓話≫なんて作品もありました。

そして最後の章は宗教画


そしてペーテル・パウル・ルーベンス≪聖アンナのいる聖家族≫もとびきり眩しい魅力を放っていて。ルーベンスの描く女の人は何とも優しい瞳をしていて時めかされるwこの時代はヨセフ信仰があったらしく、若いヨセフが描かれたバルトロメ・エステバン・ムリーリョ≪小鳥のいる聖家族≫等も展示してありました。

この展覧会では藝術理論などの白黒の書物も展示してあって。エフェメラル(一時的)に飾り立てられた建物が描かれるフェルナンド・デ・ラ・トーレ・ファルファン≪セビーリャ大聖堂におけるカスティーリャ王フェルナンド3世列聖の祝祭≫やベラスケスの師匠によるフランシスコ・パチェーコ≪絵画芸術、その古代性と偉大≫なんて作品もありました。

西洋画の質感が最近また好みになってきていて。中世の西洋絵画は宗教や王族を主題とした写実性(すこし霞んだ)重視の“普通な高級画”といった感じで近現代の超現実的な絵画をみている目からすると少し退屈に想えることもあったのですが、段々西洋絵画の愉しみが分かってきたというか。

寧ろ現代アート以上に文脈や中に描かれている物語、そして神話と現実の重なりや、今回はベラスケスに印象派的な技法の祖先をみたり、コンセプトを読み解く楽しみがあるのだなと。また新しい扉が開かれていくのを感じる展覧会となりました。


by wavesll | 2018-05-11 23:21 | 展覧会 | Comments(0)