タグ:TV ( 165 ) タグの人気記事

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第11章・第12章・最終章 書き起こし


第11章 市場を科学した果てに

マルクス・ガブリエル(独:哲学者)
「『機械』を意味するドイツ語は『マシーネ』です。ギリシャ語では『メヒャネー』でそれは『策略(トリック)』という意味も持ちます」

機械=トリック?

ガブリエル「機械やロボット、すなわち人が作り出した兵器や道具、人はそれらに対して恐れや愛着を感じたりしますよね。それはロボットが人間の感覚を具現化しているからです。我々人間のロボット信仰の根源がここにあります。

しかし実際は機械そのものには知能も命もありません。一定の時間内だけ機能する電気回路に過ぎないのです。スマホもPCも人間が使わなければ1年もしないうちに使えなくなってしまいます。つまり機械は全て人間に依存しており人間無しには存在しえないのです。」

ユヴァル・ノア・ハラリ(イスラエル:歴史学者)
「世界はこれからの数十年間で劇的に変わるでしょう。これは避けられない事です。しかしどのような社会に変わるか、その可能性は私たち次第です。技術はあくまでも人間の使うものです。技術の奴隷になって技術に仕えてはなりません。」

技術の奴隷

ハラリ「スマホもそうです。果たして自分がスマホを使っているのか。それともスマホに使われているのか。スマホに暮らしを支配されていないか。遺伝子組み換え技術や自立型兵器システムなど政府は危険な開発を規制すべきだしそれは個人のレベルでも同じです。技術との付き合い方に注意深くなるべきです」

ガブリエル
「機械が作られる目的は経済の効率化や製造プロセスの合理化ですが、その時お金では買えないような価値や意味が見過ごされてしまいます。それはいわば私たちの実体験です。芸術作品を観たりワインを片手に家族や友人と楽しい時間を過ごしたり、そういった体験をする時こそ私たちは現実の世界にいます。ポストトゥルースではない真実の世界です。でもこうした体験には価格を付けることはできませんね。現実の体験の本質は『自由』と『偶然性』にこそあるからです。」

テクノロジーがみせる擬似世界?

ガブリエル
「経済は予測や合理性が追求され数字がものを言う世界です。企業の存続と成長が保証されなければならない世界ですこうした世界は科学に基づくモデルに従わない限り機能しません。しかし地球上が全てこうしたシステムに覆われてしまったら自らの手で『自由』や『偶然性』をすべて破壊することになるのです。」

第12章 合理的思考のパラドックス

より速くより多くより効率的に。市場の自由を謡い、経済合理性を掲げてきた世界。自由の擁護者、ハイエクはこんな言葉を残している。

社会や人間の行為はおよそ物理学の用語で定義することなどできない ハイエク『科学主義と社会の研究』

市場の自由を擁護し続け、新自由主義の教祖と祭り上げられた男。彼の心にあったものは…。

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者)
「その名前は好きではありません。ハイエクは『新自由主義』ではない。」

ハイエク≠新自由主義

セルギン「自由主義(リベラリズム)を嫌う人たちが使いたがる蔑称でしょう。人々はなぜこの言葉にこだわるのか…誤解を招く言葉だと思います。面白いですよね。新自由主義を批判する人の多くがこう言います。『あなたたちは金銭的・物質的な生産高しか気にしないでしょう。他の数字も重要なのにGDPなどの数字しかみない』。

ところがハイエクは『違う』と。『我々は他の要素…特に自由が大事だと思っている。人間の自由の方が社会の生産性よりも大事だと思っている』。『ハイエクら新自由主義矢が全くの物質主義者だ』という風刺は完全にデタラメなのです。ハイエクは超合理主義を批判しています。『合理性の限界』を知るべきだとね。」

自由に最大の価値を置くハイエクは合理主義に突き進む社会を批判した。

人間の理性とは合理主義者が想定するように特定の個人に宿るものではない。理性とは人と人との関わり合いの過程から生まれるものである。他人の能力や行動を裁く資格など誰にもない。 ハイエク『真の個人主義と偽りの個人主義』

ハイエクは社会が一つのゴールに向かうことを何よりも嫌った。

セルギン「ハイエクの要点はこうでしょう。自由な社会には価値がある。人々が職業を選べ、自らの才能を生かす場があり、お互いの筝や政府についても自由に意見しあえる。これらはGDPなどの数字では測れないが人間の幸福にとってとてつもなく重要なのだと。」

数字で測れない「世界」…

セルギン「社会の真価を考える時、1人ん当たりの生産性などという物差しを持ち出すべきではありません」

トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者)
「ハイエクは資本主義の古典的な価値に立ち返っていた人だ。僕はそれに同意するよ。今の経済は資本主義でなくて『成長資本主義』だ。成長にとらわれて資本主義の本当の価値を捨てようとしている。

人間の自由より経済成長を優先するならばそれは本当の資本主義ではない。」

経済の成長 < 人間の自由

セドラチェク「経済成長をすれば素晴らしいが成長への偏愛はやめよう。このような経済学の根本にある哲学にハイエクが貢献したのは間違いない」

数字の物語に憑りつかれ、それを進歩と思い込んできた、私たち。それは、自由を求めていたはずなのに、経済合理性の名のもとに自由を自ら捨てる偽りの個人主義だったのか…?

セドラチェク
「ハイエクの思想は偏った考えの人たちにある意味でハイジャックされたのだ。偉大な思想にはしばしば起こることだ。」

最終章 経済学の父が見ていた人間

セドラチェク
「すべての経済学者がアダム・スミスに立ち戻る。経済学の父だ。」

アダム・スミス(1723-1790) 人々が自らの利益を追求すれば社会に富が生まれる。見えざる手という言葉で市場の自由を説いたのだ。経済学の父の思想はハイエクによってこう語られている。

アダム・スミスが「合理的経済人」という化け物を生み出したと思われているがそれを事実誤認である ハイエク『真の個人主義と偽りの個人主義』

セドラチェク
「アダム・スミスは市場は完全でないことを認めていた。非合理な人間を統合させることの限界をわかっていた」

経済学の父は人間の本質をみつめていたのか。

スミスによれば人間とは元来、怠惰で無精で軽率、浪費家である。時に善人にもなり時に悪人にもなる。時には聡明だがそれ以上に愚かな存在なのだ。 ハイエク『真の個人主義と偽りの個人主義』

経済の巨人たちが求めていたのは全ての人々があるがままで生きられる社会。これが市場という言葉に込められた意味だった。

セドラチェク
「ハイエクは『見えざる手』にまつわる素晴らしい文章を書いた。そこでギリシャにさかのぼり思想家トマス・アクィナスの言を引いている。『全ての”悪”を消そうとすれば多くの”善”も消えてしまう』とね。

アダム・スミスもこれに同意するだろう。これが自由な社会の本当の価値だ。
物を買える『自由』や相手をののしる『自由』ではなくて、もっと深い『自由』だ。個人が国家の考えに支配されないそんな自由です」

自由、合理性、個人主義、私たちはみんな都合よく解釈してきたのかもしれない。

ガブリエル
「人間は『イメージ』の中に存在しています。本来の『自由』とは自らの『イメージ』を作り出せる可能性のことです。自由を享受し未来へ引き継ぐ方法をみつけなければいけません」

ハラリ
「資本主義は社会を正しく進ませる自然で永続的な方法だと言われますが、でもそれは間違っている。資本主義は過去何百年間に作られた1つの制度にすぎない。いきすぎた『自由市場』という概念に惑わされてはいけない」

資本主義の中心にある市場。そこに合理性と競争と夢を視るのも自由だ。だが人はみな愚かで弱い。愚かで弱いまま振る舞える場がそもそも市場ではなかったか。行き先を決めるのはこの欲望の星を生きる私たちだ。

文明が発展できたのは人間が市場の力に従ってきたからだ 『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク

止められない、止まらない。欲望の資本主義。







by wavesll | 2019-01-10 20:51 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第9章・第10章 書き起こし


第9章 貨幣愛のジレンマ

国家と市場の狭間で生まれた仮想通貨という夢。それは資本主義のカタチを変えるのか。

ジャン・ティロール(仏:経済学者)
「仮想通貨には2つの論点があります。1つ目は『成功するかしないか』、2つ目は『社会にとっていいものか』です。」

仮想通貨は
一、成功するか?
二、役立つか?

ティロール「成功するかどうかの予測は経済学者には難しいですが、私はおそらく『成功しない』と思います。なぜならば仮想通貨は純粋にバブルなのです。資産価格のバブルです。もし明日みんながビットコインを信用しなくなったら価値はゼロになるのです。」

仮想通貨の底は抜けている?

ティロール「もう一つより重要なのは『役に立つかどうか』ですね。私は社会の役に立たないと思います。ベネズエラのような経済が機能不全の国は別だけどね。日本、アメリカ、ヨーロッパの社会ではまったくの無駄だと思います。」

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者)
「あのハイエクだって連邦準備制度やイングランド銀行をなくそうとは言っていません。彼はこう言ったはずです。『民間に中央銀行と同じように通貨発行権を与え競合させた方がいい』。そうすれば中央銀行も競争にさらされるからです。『中央銀行を閉鎖するべきだ』とは決して言わなかったのだ。『ライバルがいれば中央銀行は権力を乱用しなくなるだろう』と言ったのです。そうハイエクならば言いたかったはずでしょう。」

「権力は腐敗する」 ハイエク『隷従への道』

自由な市場の在り方を全面的に肯定したハイエク。だが中央の存在を否定していたわけではなかった。

ロンドン
バーチャルな取引と日々格闘する男が貨幣のルーツを探る

フェリックス・マーティン(英:ファンドマネージャー):貨幣の本質を歴史的に解説 著書『21世紀の貨幣論』で注目
「円の調子がいいね。新興国の通貨の動きは要チェックだ。

一体なぜ仮想通貨はこれほど人気なのでしょう。これは『ロックの貨幣観』への皮肉な回帰だと思います。」

イギリスの哲学者 ジョン・ロック(1632~1704) 社会契約説によって近代民主主義の土台を築いた。

フェリックス「もちろんロックだけを非難するのは不公平ですが彼は貨幣の歴史においては非常に重要な人物です。ロックの貨幣観は知らぬ間に私たちに染み付いているのです。人間の直感に働きかけた彼の貨幣観とは『貨幣のシステムは厳密でシンプルなルールに従うべき』というものでした。

古典的な金本位制がいい例です。そこでは円でもポンドでも通貨の発行量は中央銀行金庫にある金(ゴールド)の量に依存するべしと、そこに『柔軟性は不要だ』とロックは主張したのです」

蓄財を保証するモノ=貨幣?

フェリックス「実は仮想通貨も同じです。ビットコインのような最も人気のある仮想通貨で特徴的なのはとても厳しい貨幣基準があることです。醗酵されるコインの数に厳格な上限が定められているのです。」

発行量の上限=2,100万BTC

ロックの呪い?

フェリックス「これはある意味で金本位制より厳しい基準ですから経済成長や不平等の拡大には対応できないお金でしょうね。一国の通貨にはなり得ないと私が思う理由の一つです。

大半の人は『お金はモノだ』と考えていますね。所有する何かあるいは財産ですね。でも真実はお金はモノではありません。実際には『債権関係』なのです。」

マネーの本質は『信用の関係』

フェリックス「たとえば財布の中の10ポンド札や100ポンド札は何を意味するのでしょう。これは私の帳簿には『資産』と記されていますが、信用を担保する側の帳簿には『負債』と記されています。つまり銀行預金の場合は民間銀行が紙幣の場合は中央銀行がお金の価値を担保しているのです。」

1万円の貯金=1万円分銀行に貸しがある
お金は「モノ」じゃない。お金は「債券」?

フェリックス「『お金はモノだ』という取り違えは人々のお金の扱い方や政策立案者の考えにも影響します。貨幣の発明以降人類はこの混乱を生きてきたのです」

モノとモノとの交換から生まれたとされる貨幣。だがそれもまた幻想でそもそもは貸し借りの関係を顕わすものだとしたら、その時、モノとしての価値は消える。貨幣とモノを錯覚する。時にそれがクラッシュを招く。

第10章 巨人の後悔

市場の自由。何よりそれを頼りに走り続けてきた資本主義。この時代、計画を求める声は劣勢だった。だが、形勢は逆転する。

2008年 リーマンショック

世界で危険なドミノ倒しが始まった。

リチャード・ファルド(元リーマン・ブラザーズCEO)「あの時に戻れるなら過剰投資はしなかっただろう」

巨大投資銀行の経営破綻をきっかけに世界で連鎖的に金融危機が広がった。大混乱の中、国が介入。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領「FRBは保険会社AIGが破綻しないように手を打ちました。さもなくば金融市場は崩壊し世界経済に脅威を及ぼしたでしょう」

計画を重んじるケインズ(1883~1946)の思想が復活した瞬間だった。

「私たちの財布から何回金をむしり取るんだ?私たちの家は差し押さえられているんだぞ」

繰り返された歴史的論争。あれは自由の暴走だったのか。それとも計画の失敗だったのか。

安田洋祐(日:経済学者 大阪大学准教授)
「特にリーマンショックの後は多くの人が経済の行方に懸念を示しました。資本主義の未来をどうお考えですか?」

ジャン・ティロール(仏:経済学者)
「市場の失敗や混乱をおさえるための強力な国家が必要だと考えます。」

市場<国家?

ティロール「自由放任(レッセ・フェール)的な規制解除の潮流がありましたがそれが金融業界にとってよくないことは明白なのに誰も失敗から学んでいません。規制を撤廃して金融危機にさらされている国もあります」

ジェフリー・ヴェッルニック(米:投資家):学生時代ハイエクやフリードマンに師事。仮想通貨/ブロックチェーンに精通
「自由放任(レッセ・フェール)ではないよ。今日の金融業界は『ゆがめられたルール』の結果だ。まったく自由放任の結果ではない。むしろ政府の市場介入、つまり政府が市場に介入すると何が起こるかを示す最悪の例だ。」

2008年のクラッシュは国家の介入の結果?

ヴェルニック「政府の保証がなかったら誰もあんな契約を結ばないだろう。聴きの数年前友人がフレディマック(金融機関)の社債をたくさん持っていた。彼にフレディマックが倒産したことを伝えると彼は『売った方がいい?』と聞いてきた。僕は『いや、売らないで。政府が全部払ってくれるから』と答えたよ。『大きすぎてつぶせない』それが前提になっているんだよ。

金融市場にはしかるべき価格決定機能がなかったのだ。政府に救済されることへの期待が市場の機能をゆがめていたわけだ。面白かったのはバーナンキ(当時のFRB議長)がこう言ったんだ。『フリードマンなら自分のしたことを擁護しただろう』と。でも『ハイエク』とは決して言わなかった」

ハイエク≠フリードマン

ヴェルニック「ハイエクは反対しただろうね。政府の規制やルールづくり、『法の支配』への違反などハイエクが政府の役割の拡大を支持したとは到底思えない。2008年前後の政策にすべて反対しただろう。フリードマンは違っただろうがね」

「市場のマネーは中央がコントロールするべし」
金融市場で強まった中央の存在感。その蔭にはもう一人、新自由主義の指導者のドグマがあったのだ。

ハイエクの「一番弟子」の過ち…?

ヴェルニック「フリードマンは政府とのつながりが強かった。フリードマンは『小さな政府』を掲げていたがそれでも彼の解決策の多くは中央集権型だった。お金をばらまくとか累進課税とかね。フリードマンではなくハイエクこそが自由と解放の最高の擁護者だ」

後年、ハイエクは自らの信奉者であったはずのフリードマンについてこう言った。

彼の経済理論を批判しなかったことを今でも後悔している。

市場の論理と共に、成長、発展してきた資本主義。テクノロジーが加速させる、数字の競走。その道の先に待っているのは…?







by wavesll | 2019-01-10 05:30 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第7章・第8章 書き起こし


トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者)
「きれいだろう。プラハは間違いなく世界で最も美しい都市の一つだと思うが同時にいつも謎めいていた。『ゴーレム』を知っているかなその昔ユダヤ教のラビが語った警告の物語だ。

”人間が自分に仕えさせるために作ったものがあまりに強大な力を持ってしまい破壊的になることがある”とね。ゴーレムはテクノロジーやAIのシンボルにもなりえるだろうしおそらく『市場』もそうだろうね。」

私たちは今、どんな世界を生きているのか。

東京
「ワクワクしています。世界中からたくさんのパートナーや友人が来てくれていますね。私たちはファミリーと呼びたいです。未来への扉を開きましょう。」

ジェフリー・ヴェルニック(米:投資家)
「2008年にサトシの論文が現れそのあと最初のビットコインが発行されたがそれは偶然だとは考えにくい。2008年、あの金融危機の年だ。当時は金融システムへの不安が渦巻いていたからね。」

謎の人物 サトシ ナカモト 「ビットコインの生みの親」
9ページの論文からはじまった仮想通貨狂想曲

この国で再び夢が見られるのか。人々の欲望を繋ぐのはいつもテクノロジー。ヴァーチャルな取引が生み出す、新たな富。それは現実か幻か。テクノロジーがもたらすのは自由か、それとも…。

マルクス・ガブリエル(独:哲学者)
「パソコンもスマホも人間無しには存在できないのです。」

チャールズ・ホスキンソン(米:仮想通貨開発者/数学者)
「夢のような競争の時代がいよいよ現実となるのです。ハイエクが思い描いた世界でしょう。」

ハイエク 知の巨人 市場の推進者

世界はあの男の言葉を追いかけているのか。

グレン・ワイル(米:経済学者/社会工学者)
「『究極の社会主義』は『究極の自由市場』なんだ。矛盾して聞こえるよね?」

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者)
「掲げたゴールも間違っているし、金融メカニズムも間違っているし、中央銀行の制度に正しいことは何かあるかな…」

安田洋祐(日:大阪大学准教授)
「今起きていることは利益が生産活動に使われていないこと。本来の資本主義のかたちになっていない。」

市場と国家。危ういバランス。その先にある資本主義の未来。

トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者)
「ハイエクの思想はハイジャックされた。」

第7章 仮想の野望が世界をめぐる

東京・品川
TEAMZ ブロックチェーンサミット

2018年9月、新たなテクノロジーのサミット。未来のビジネスチャンスを求めて世界各地から2000人以上が訪れた。

インドネシア人投資家「日本の市場に興味を持っているよ。日本は仮想通貨をサポートしている数少ない国の一つだ。政府の規制も整っているしね。」

カジノトークン企業CEO「ネビュラはランドベースカジノ。つまり実店舗でも使えるトークンとなっています。物理的だったカジノチップをデジタルに変えることでどこでも使えるようにしたい。既に8地域のカジノとは提携が決定していて。」

中国人投資家「今 中国ではブロックチェーンへの投資が盛んです。統計によれば200万人がブロックチェーンに投資していてそのほとんどは90年以降生まれの若者や学生です。」

ブロックチェーン=分散型台帳技術
人々の間で飛び交っていた言葉はブロックチェーン。
仮想通貨を支えるテクノロジー

IT企業CEO投資家「ブロックチェーンを使ったICO(仮想通貨の発行による資金調達)の社会的なインパクトがたぶん誰も分かっていなくて、結局ブロックチェーンって全部相対取引(当事者間での直接取引)になっていくので完全にブロックチェーンのトランザクション(取引・売買)を禁止しようとすると財務関係の侵害になっていく。なので相対で皆が納得するとトランザクションが出来ちゃうことを民間に付与してしまったというのが現実のイノベーションで一番重要なことで…」

国家でなく技術が信用を担保する
そこで取引の信用を担保するのは国家ではない。それはテクノロジー。

「ヴァーチャルリアリティがブロックチェーンに出会った。」

テクノロジーに魅せられて夢と欲望が行き交う。グローバル化時代の錬金術は次のフェーズへ。

ブロックチェーンによる新たなプラットフォームを構想し、カリスマと称される男

チャールズ・ホスキンソン(米:仮想通貨開発者/数学者)香港拠点のブロックチェーン研究機関CEO。3つの仮想通貨の立ち上げに関わる
「今朝は日銀や金融庁の方とも話をしてきました。
ビットコインは全世界に教えてくれました。お金というものは必ずしも政府や法王や一流銀行から与えられるもんではない。自分たちで決められるのだとね。今のシステムが気に入らない?新しく作ればいいのです。

世界で30億人がクレジットカードを持てず保険にも入れず事業の資金を得られていない。新たなエコシステムでは彼らを全員同じ土俵に立たせビル・ゲイツやジェフ・ベゾスと同じ市場へと人類史上初めてアクセスできるようになります。」

不平等をなくすプラットフォーム?

ホスキンソン「200年以降インターネットはバブルを背景に成長し新しいタイプの企業が誕生しました。それはいわば『仲介人』たちです。イーベイやフェイスブックやグーグルは想像しなかったような大きいスケールで物を売ることを可能にしてくれた。ただ問題はそれによってあまりに強大で中央集権的になったことだ。」

インターネットの必然かー

ホスキンソン「どうやったらウーバーをなくせるか、エアビーアンドビーをなくせるのか。社会の進化から言えるのは仲介人は必須ではない。それはブロックチェーンなどで簡単になくせるのだ。」

「中央」を飛び越えよ

ホスキンソン「中央集権型システムから分散型システムに移行して世界中に拡がる。世界が一つになるんだ。僕は確信している。僕らのテクノロジーは世界市場を作り出す方向に向かっているとね。

今は実力主義社会だ。出身、言語、家庭が裕福だったか貧しかったかは関係なく、自分がどれだけ一生懸命働き誰とつながり価値を生み出せるかだけだ。究極の自由市場だよ。」

脱中心化
真の競争社会の幕開け?

仮想通貨という壮大な思考実験。人はいつも中心を逃れボーダーを越えてつながろうとする。それはいつか見た夢。

第8章 繰り返される夢

そしてもう一人、ここにも夢の構想を描く男が。

グレン・ワイル(米:経済学者/社会工学者):大学/IT系企業研究員 ラディカルなアイディアを提言する俊英
「(人形をみせて)面白いでしょ。アインシュタインとカール・マルクスは分かるよね。

多くの人は自由市場社会に生きていると思っていますが多くの場合ほとんどのものは狂想的な価格では利用できないよね。」

安田「例えば?」

ワイル「東京で起業のためにビルを利用しようとしてもビルは高すぎて買えないよね。だから現在のオーナーと交渉するよね。オーナーがあなたのいいアイディアを知った時、オーナーはそれに乗っかろうとして高い家賃をふっかけることだってできる。こんな風にせっかくのいいアイディアが実行できないかもしれない。こういう交渉には時間がかかるからね。だからオークション理論の出番だ。」

若き社会工学者による、ラディカルな提案。
「ストップ!土地の占有」byオークション理論

ワイル「どうするかというとみなが自分たちの土地の価値を測りその価値に応じて税金を払うということです。100万ドルの価値だとしたら仮に7万ドルの税金を払うとしよう。そしてもしも100万ドルで解体という人が現れたら必ずその価格で売る仕組みだ。これがオークションの原理だ。税金と言っても資産価値の一部だけが持っていかれるだけだよ。」

土地の…
管理は国家
地価の決定は市場

ワイル「このシステムの特徴は土地の価値がとどこおることなく税金を通して分け前が人々にいくということだ。これは現在の経済システムよりも圧倒的に自由な市場だと言える。同時に社会主義的でもあるでしょ。これは究極の社会主義でもあり同時に究極の自由市場だろう。」

「資本主義」X「社会主義」=?

ワイル「矛盾するように聞こえるよね?みんな『社会主義VS自由市場』って考えるからね。でも本来政治経済学の分野ではそんなふうに考えていなかった。19世紀後半は政治経済学が盛んだったよね。共同所有の考えがないと競争も実現できないと信じられていた。このアイディアで最も重要なのがヘンリー・ジョージだ。」

ヘンリー・ジョージ(1839~1897)
すべての税を廃止して「地価税への一本化」を主張

ワイル「多くの人はヘンリー・ジョージなんて知らないだろうね。カール・マルクスやアダム・スミスよりたくさん売れた本を書いたんだよ。聖書を除いてある時代 彼は英語圏のベストセラー作家だった。でも冷戦の頃は常に『資本主義VS共産主義』の構図だったから誰も彼のアイディアを話せなくなってしまった。」

安田洋祐(大阪大学准教授)「彼の提案の根拠は何だったの?」

ワイル「彼は言ったんだ。『土地は神か自然が作ったもの。だから決して誰かに属するものではないはずだ』とね。」

土地所有の概念を疑う。

ワイル「問題は私的所有という仕組みが中央集権を招いてしまうということだ。富の集中に繋がり少数の人だけが全てをコントロールすることになる。共産主義の欠陥はリーマン的資本主義と同じだったんだ。」

「所有」ある限り「独占」生じる?

ワイル「大きな資産を少数の人が握っていて、あと少数の企業ね。少数の人々にコントロールされた少数の企業だね。根本的な問題だ。僕たちの社会には真の意味で『分散型』市場システムが必要でそのためには土地の私的所有という概念を絶たないといけない。

『私的所有』は極めて個人主義的な考え方だ。それは我々本来の社会的性質に反するものだ。自由主義も新自由主義もあまりに個人主義的すぎるんだ。」

個人主義とはいったい何なのか。市場は自由のためにあったのではなかったか。

市場の論理を加速させるテクノロジー。それは人間のスピードを越えていく。







by wavesll | 2019-01-10 04:09 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第5章・第6章 書き起こし


第5章 市場はすべて自由のために?

チェコ・プラハ
CSOBチェコ中央銀行
思春期に社会主義を経験した異端の経済学者は

トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者):大統領の経済アドバイザーも務めた異端の奇才 著書『善と悪の経済学』
「自由はとても複雑な問題だ。我々チェコ人は不運にも自由について分かっていることがある。ここは実際に最高の共産主義国になろうとしていた国だからね。」

戦後の世界をある物語が二分していた。自由を謡う西の資本主義。平等を謡う東の社会主義。
資本主義を批判したマルクスは富の平等の分配を目指し計画経済を理論化した。

社会主義 「政府による計画経済」

それはハイエクが完全に否定した理念だった。全ての必要な物資を中央で集計し統制するなんて出来るわけがない。

セドラチェク「ハイエクが批判したような自由でないシステムが自由なシステムより生産性が高いことを想像してみよう。余計な競争や不要な広告をともなう経済より計画経済の方が優れていることだって考えられるはずだ。『1つの大きな工場で1種類の車だけを作ってなぜいけないのか!?』ってね。これが計画経済の考え方で実際に最初は優れているように見えた。」

マルクスの思想から生まれた夢。しかしその社会主義はやがて崩壊し、資本主義が勝利した。

1991年ソ連崩壊

歴史は動いた。自由市場の擁護者、ハイエクの言葉を追いかけるように。

リーダーの多くはまず社会主義者になりついにはファシストやナチスとなった ハイエク『隷従への道』

セドラチェク「1989年 鉄のカーテンと共産主義が終わった時、チェコとまわりの国で起きていたことの解釈をめぐっては29年後の今でも議論が続いているよ。『自由』の問題だったのか、『空腹』の問題だったのか。」

夢見ていたのは「自由」か、それとも「モノ」か。
だが、歴史は繰り返す。

ニューヨーク・ニュースクール私立大学
マルクス主義集会2018

資本主義を批判したマルクスの思想、今この国で再び熱を帯びている。

「気候変動や発展途上国での環境破壊も問題です。富める国と貧しい国の構造の核心にはグローバル帝国主義があります。」

「昨年富裕層の資産は25%も増加しました。大多数の人々の生活は苦しくなっているというのにです。トップのたった8人が世界人口の半分と同じ資産を得ています。経済成長は給料の増加や社会保障の充実や有色人種の保護にはつながりません。ごく一部の資産家やマンションオーナーを肥やすだけです。日々の暮らしを賄うため仕事を掛け持つ我々はどうなるのでしょう。」

「今という時代は『自由の罠』に陥っていると思う。」

自由の罠

「憲法でも社会の価値観としても私たちの自由はうたわれています。でも実際は毎朝早起きしてしたくない仕事をし給料も安くて生活をまかなえない。アメリカには字を読めない人、食べるものが無い人、住む場所が無い人もいる。とても自由とは言えないよね。僕らはいわば『必要』の奴隷だ。」

必要のための奴隷

「一部の人だけが社会の富を独占するのではなく、生きるのに必要なものを皆が平等に手に入れられる社会を社会主義的なアイディアによって実現できればアメリカだけでなく世界の人々が本当の意味で自由を謳歌できるようになる。」

♪「The International」:20世紀 世界の労働者たちの間で広く歌われた

自由を求める声が複雑にこだまする。マルクスを殺した男とさえ称される自由市場の擁護者は今、何を思うのか…。

第6章 国家 VS 市場

自由か、計画か。20世紀を代表する経済学の巨人・ケインズ(1883-1946)の宿命のライバルと言われたのがハイエク(1899-1992)だった。二人は市場の自由と国家の介入をめぐって激しく対立した。きっかけは第二次大戦の前夜。大恐慌の時代に遡る。

1929年 世界恐慌

ケインズは国家が積極的にお金を使い、失業を減らす処方箋によって危機を救った。彼の書『雇用利子および貨幣の一般理論』(1936)はケインズ革命と呼ばれるほどのインパクトを世界に及ぼしたのだ。

しかしそんな中、ハイエクは別の角度から世界を見ていた。国家が介入を強め社会主義化するのを隷従への道と呼び、警鐘を鳴らした。

ジョージ・セルギン(米:金融学者)
「明らかに言えるのはハイエクは第二次世界大戦中の西欧諸国における国家権力の拡大を警戒していたということです。政府の権限がとてつもなく強まり、さまざまな規制が強化され、国家による戦争のための経済活動における『計画』が増加しました。それは軍事的な目的に合わせてモノの生産量をコントロールするためでした。

同時に彼は社会主義の台頭を目撃していました。社会主義は東欧の多くの国々で実際に公式な政策となっていましたし、当時の知識人の中には賛同する者も多かったのです。」

ロバート・スキデルスキー(英:経済学者/歴史学者)
「ハイエクの考え方は中央計画に反対するものでした。経済を計画するのではなく、市場に任せるものだと言いましたね。彼に言わせればケインズは中央計画と自由市場の妥協点だったのでしょう。政府の権限が強くなると『従う精神』に流れてしまうのだとね。彼はその流れを止めようとしたのでしょうね。」

国家による市場への介入に激しく反対した書にケインズは賛辞を贈る。

『これは見事な本だ。道徳的、哲学的には。私はほぼ全面的に賛成する。それも深く感動した上での賛成だ。』

しかし、この後全てをひっくり返す。

『だが今必要なのは計画をなくすことでなく寧ろ増やすことだ』

自由を望む精神にこそケインズは同意してみせたが、あくまでも国家の介入すべき役割を強く主張した。後にハイエクはこう反論する。

『計画が独裁を招くことはないと信じるのは馬鹿げている』

スキデルスキー「ケインズは『隷従への道』を読んでハイエクに言ったのです。『あなたの考えは経済を不安定にし人々は自由を放棄することになる。あなたが考える政策のもとでは耐えられないような暮らしになり、寧ろ独裁的なシステムに繋がるだろう』とね。」

市場の行き過ぎこそ独裁を招く by ケインズ

スキデルスキー「ハイエクは単純に間違っています。彼はマクロ経済の現実を信じようとしませんでした。労働市場をとってもそこに競争がある限り『全ての失業は自発的なものだ』とまで信じていたようです。『望む賃金次第では仕事はいつでも見つかるだろう』とね。彼がバランスのとれた理論家とはとても思えません。」

セルギン「私はハイエクの支持者でケインズの『一般理論』は支持しません。あの本はどちらかというとダメな本で表面的な本だと想っています。それなのに多くの他の人々は金融経済学に多大な貢献をしたように扱っていますが私に言わせればこれまでに読んだ他のすべての金融経済学の本と比べて最も不満の残る本でしたね。」

国家と市場、その危うい緊張関係の中で時代は揺れてきた。

セルギン「『隷従への道』は人々に非常に大事な気付きを与えてくれる本です。当時増大していた国家介入の風潮を止めるのに一役買ったと思いますが、その後 最後の日と仕事をしたのはミルトン・フリードマンでしょうね。」

新自由主義 もう一人の指導者 ミルトン・フリードマン

スキデルスキー「もう一人 新自由主義の指導者として大きな影響力を及ぼしたのがフリードマンでしょうね。フリードマンが『マネタリズム』を生み出しました。国家にお金の印刷を任せておけば常にインフレを起こせるという考えです。」

マネーの量を決めさえすればあとは市場が解決する。

スキデルスキー「フリードマンの考えから独立する中央銀行と財政規則という発想が生まれたのです。政府は手足を縛られるべきで国家から独立した中央銀行にお金の供給をコントロールさせようというすなわちどこまでも反国家的な動きだったと言えます。」

国家に背を向けた男たち?

スキデルスキー「彼らはこう言った『すべて上手くいくことを保証する』。しかし2008年の想定外の危機には対応しきれませんでしたね。あれは新自由主義の基本理念を問いただした事件だったのです。」

資本主義、その怪物の勢いは止まらない。テクノロジーの進化の果て、国家と市場のせめぎあいは次のステージへ。





by wavesll | 2019-01-09 08:11 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第3章・第4章 書き起こし

第1章・第2章
第3章 GAFAという陰の演出家

揺れる国家に巨大な足音が忍び寄る

自由な競争が資本主義の原動力。その運動の果て。私たちを飲み込む影の演出家が現れた。

ニューヨーク州立大学
スコット・ギャロウェイ(米:起業家/大学院教授):デジタルマーケット分析企業CEO。著書『the four GAFA』で4強を痛烈に批判

デジタルマーケット分析企業
ギャロウェイ「うまくいってるかな?キャサリン、カメラを避けるなよ。」
キャサリン「それをチェックしてほしいわ」
ギャロウェイ「ああ 今週のビデオだね。」
『巨大隕石アマゾンが不動のアップル王国をぶっ潰そうとしている。力によってではない、ネット販売におけるどでかい取引によってだ。』
ギャロウェイ「毎週こんな動画をつくってビッグテック企業の分析を公表してる。動画サイトで何十万人もが見ててね。結構人気があるんだ。うちの会社のビジネスリサーチ部門のブランディングが目的なんだよ。」

独自の目線で4つの巨大プラットフォーマーを分析する。

Google
Apple
Facebook
Amazon

ギャロウェイ「グーグルは『神』だ。私たちはどのように神とコミュニケーションを取るのか。『検索』という名の祈りだ。子どもが風邪を引いたら検索窓に症状を打ち込んだら諸地方が出てくるよね。私たちはグーグルのことをどんな司祭、学者、メンターより信じている。

フェイスブックとは『愛』だ。人は自らの種の存続のために子供に栄養だけでなく社会的「つながり」も与えないといけない。栄養は足りているが「つながり」を持たない子はうまく生きられないよね。フェイスブックは『つながり』と『愛』を約束します。

『安く、いいものを買える』ことで今 最も成功しているのがアマゾンだ。アマゾンは今 『消費』の殿堂だ。

そしてアップルだ。人は異性を惹きつけるために自分を魅力的に見せる必要がある。パートナーの選択肢をひろげたいからね。自分は年に住んでいてお金を持っていて才能があることを、そして君が原価300ドルしかしないものに1300ドルも払えてイノベーション時代に合ったいい遺伝子を持っていると示せるのだ。

『神』『愛』『消費』『セックス』だ。私はこれらの企業は人々の本能に踏み込んでいると思う。」

人々の欲望を握ったGAFA

ギャロウェイ「私たちをつなぎ止める4つの営利企業の時価総額は合計するとドイツのGDPをも越えてしまった。」

空前絶後に巨大化した企業。歴史上例を見ないスピードで国家のサイズを超えようとしている。

ギャロウェイ「彼らがあまりに強大になったことは今の経済の深い病を意味する。ヨーロッパでも日本でもアメリカでももはや人間性は賛美されません。その代わり英雄として賛美されるのはテクノロジーの億万長者たちです。

さらに日本でも米国でもヨーロッパでも強大になった企業を分割させてきた誇らしい歴史があった。しかしこの陰の支配者たちはこれまでの企業に適用されていた基準を逃れる独自のルールを構築した。

解決策はシンプルだと思う。いくつかの小さな企業に分割すればいい。」

『怪物は分割せよ』

ギャロウェイ「彼らが分割されるべき理由は資本主義の鍵は『競走』だからだ。少数の企業が強大になりすぎるともはや競争は不可能だ。検索分野でもSNSでもネット販売でも事実上それぞれ一つの企業しか存在していない。だが処方箋はある。ただの規制でも懲罰でもなく独占禁止のための分割だ。」

東京
ジャン・ティロール(仏:経済学者):各国の政策に影響を与える知の巨人。市場の力と規制の分析でノーベル賞
「グーグルやフェイスブックを分割せよ。みなさんそう言いますが、それは解決策になりません。
過去には電気、通信や鉄道などの公共事業の会社に規制を掛けることが出来ましたがそれらは『国内の』企業でした。」

安田洋祐(日:経済学者 大阪大学准教授)「会社の領域と国境が一致していたのですね」

ティロール「そのとおりです。だから収支を把握できていました。しかし今のグローバル企業の経営サイクルをすべて追いかけることは不可能でしょう。」

グローバル企業は コントロール不能?

ティロール「最低限必要なのは市場での競争です。『第2のグーグル』が現れ突出していれば取って変わるかもしれません。競争は現存企業に緊張感をもたらします。革新を迫り低価格でのサービス提供を迫ります。独占企業が革新的であり続けることはできません。新製品が既存の製品と共食いしてしまうからです。」

独占↑ → イノベーション↓?

安田「大企業によるスタートアップ企業の買収についてはどう思われますか?『反競争的』な側面もあると考えられますが」

ティロール「新しく有能な企業が市場に参入しても程なくして大手に売却されることもしばしば起こります。『買収されるための参入(Entry For Buyout)』ですね。これでは競争も起こらず消費者にとって価値は生まれません。現存企業が将来ライバルになりそうな企業を買収しています。例えばフェイスブックによるワッツアップやインスタグラムの買収です。将来的に競争する可能性が有ったのにそれが絶たれたのです。今の市場経済において『規制』は最も重要な課題です。」

最早コントロールできない怪物企業を生み出した資本主義。それはユートピアか、それとも…。

第4章 怪物の深層にあるのは?

ベルリン
国家のスケールを越えていく、テクノロジーの力。ヨーロッパの大国、ドイツでも経済界の重鎮たちが危機感を強めている。

ジュート ドイチェ・ツァイトゥング 経済サミット2018
そこに招かれたのは知のパラダイム転換を試みる異色の哲学者

マルクス・ガブリエル(独:哲学者):「新実在論」で注目の哲学界の旗手。著書『なぜ世界は存在しないのか』が話題

「『我々には機械が本当に必要なのか?』このテーマにふさわしい素晴らしいゲストをお招きします。どうぞお座りください。」
「新たな『機械の時代』を迎え非常に大きな問題を抱えています。職場で必要とされなくなった人間が社会から置き去りにされた無意味な存在だと感じてしまう事です。」
「懸念を持つべきだと?」
ガブリエル「私は違う考えです。まず私たちの労働量はこれまでよりはるかに多い。私たちは常に『データ』を発信しています。例えばSNSでのやりとりであったりこの『労働についての対談』であったりね。ここで私たちは『意味を持たないもの』を『意味を持つもの』に変化させています。」

無意味→労働→意味?

ガブリエル「実はGAFAは我々に膨大な『負債』を負っているのです」

ガブリエル「ソーシャルメディアはカジノのようなものです。」
SNS=カジノ?
ガブリエル「我々はネット上の人物や投稿に『いいね!』を投票していますね。投票された人は『いいね!』やフォロワーを集めますね。これはカジノと同じです。ポイントを稼いだ人は大儲けができます。ユーチューバーに成功者が増えればユーザー側の利益にはなりますが、しかしここがまさにカジノと同じ構造なのですが最終的に最も利益をあげるのは当事者でなくカジノそのものなのです。GAFAはもっともダーティーなカジノだと断言できますよ。

インターネットの世界に規制がかけられる前にできるだけ速く資本を増加させること、それが彼らの唯一の関心事です。今日の私たちはこうした企業に搾取されているのです。GAFAのために働かされているのです。Eメールやニュースを見るといった我々がネット上で行っている行為はすべて『労働』でありこれがデータと付加価値を生み出すのです。そうして生み出された付加価値によって何十億という金がカリフォルニアの口座に支払われているのです。」

イスラエル・テルアビブ
壮大なスケールで人類のゆくえを分析する歴史家は

ユヴァル・ノア・ハラリ(イスラエル:歴史学者):文明論的に人類の未来を読み解く 著書『ホモ・デウス』『サピエンス全史』
「『監視資本主義』と言えるでしょう。」

「見張られる」ものは何か?

ハラリ「アマゾンがあなたの取引のすべてのデータを集め続けたらその巨大なデータベースと顧客や経済への深い知見のおかげで市場のすべてか少なくともある分野ではアマゾンが独占するでしょう。本来は市場に行けばいろんなトマトの売り手がいますよね。美味しくなかったり高かったりすれば他のお店に行ったりできる。これが自由市場です。しかし20年後世界中でトマトを売っているのはアマゾンだけです。人々は誰もコントロールできなくなる。アマゾンが質 値段 供給量を決めるのです。

こうした『監視資本主義』を止めなければ結果的には中央集権型のシステムになりそれは20世紀的自由主義型の資本主義ではなく中国に近いシステムでしょう。」

市場の『監視』→中央集権…?

ハラリ「気を付けないといけません。今のまま何もせず市場の力に委ねたらすべてのお金と権力が一握りのエリートに終っちゅうしてしまう未来もありえます。多くの人々が経済的政治的に無力でひどい状態もあり得ます。何らかの行動を起こさなければなりません。冷笑的になる必要はないのです。」

ヴァーチャル空間を蠢く、巨大企業。その掌の上で踊る私たち。デジタルな夢の中にリアルを感じる私たち。






by wavesll | 2019-01-09 05:46 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第1章・第2章 書き起こし

文明が発展できたのは人間が市場の力に従ってきたからだ 『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク

私たちは今、どんな世界を生きているのか。資本主義、市場の自由とは何だったのか。

今という時代は「自由の罠」に陥っていると思う。

スコット・ギャロウェイ(米:起業家/大学院教授):グーグルは「神」だ。私たちはグーグルをどんな人間よりも信頼している。

マルクス・ガブリエル(独:哲学者):カジノよりもGAFAの方がはるかにダーティだと思います。

Google, Apple, Facebook, Amazon > 人間 ?

ユヴァル・ノア・ハラリ(イスラエル:歴史哲学者):技術に人間が仕えてはいけない

より速く、より多く、より効率的に。市場の原理とテクノロジーが加速させた欲望の資本主義。世界は今分断している。

ロバート・スキデルスキー(英:経済学者/歴史学者):ブレグジット、経済ナショナリズムの台頭、そしてトランプ。すべてハイエクが原因だ

知の巨人 ハイエク 市場の推進者

ジェフリー・ヴェルニック(米:投資家):ハイエクは自由の最高の擁護者だ

やめられない、止まらない。欲望が欲望を生む欲望の資本主義。今あらたなマネーの夢が生まれている。

中心が消えて分散する 世界が一つになるんだ

ジャン・ティロール(仏:経済学者):ビットコインが社会の役に立つとは思えません

世界七都市、十二人。知のフロントランナー達が語る、資本主義の今。

第1章 いま資本主義という怪物が暴れる

世界経済の震源地の一つ、イギリス・ロンドン。2016年6月。「国民投票の結果イギリスがEUから離脱することが決まりました」ヨーロッパの経済の輪から離れることを選んだ伝統ある島国。でも…

2018年10月ブレグジット反対「イギリスは行き詰っている。もう一度国民投票をするべきだと思う」
テリーザ・メイ首相「ブレグジットが国益をもたらす最良の決断だと心から信じています」

移民排斥デモ・極右反対デモ。傷ついた誇りと目の前の現実と流れに乗るもの、抗うもの。分断が深まっているのは何故。

「ここ20~30年で社会の空気が変化した。人々が表立って差別するようになり排他的になってきたと感じるよ」
「本島は政府の経済政策が間違っているのに移民問題を『隠れ蓑』にしている」

経済の混乱 X 国家への不満

混乱、憤り。それは何処から来たのか。

「こんなビル群、以前はなかったのにこの4~5年で開発が進みました。海外からの投資があって人も増え地価も家賃も上がってしまいました」

市民セミナー「なぜ家が買えない?」主催:ロンドン大学

ライアン・コリンズ(英:マクロ経済学者):ロンドンの経済研究所ディレクター「土地と住宅価格の経済学」を研究
「ロンドン、マンチェスター、シドニー、メルボルン、オークランド、バンクーバー、トロント…ロサンゼルスなどの都市の住宅価格は平均年収の7倍にも高騰しています。本来住宅費は平均年収の3倍程度ですからとても深刻な問題です。最も被害を受けているのはミレニアル世代と呼ばれる若い人だ」

「小さなアパートに住んでるけど買うなら6000万円以上する。金融の問題だったなんてね」

ライアン「不動産価格が急上昇している原因は金融業界の規制緩和と住宅ローンの証券化があいまって不動産にマネーが流れるようになった」

住む場所まで証券化した結果…

ライアン「持っている不動産の価格が上がれば『資産が増えている』と考えますよね。『それはいいことだ!』とね。こういった一連の考えが政治家や規制当局への圧力となり地価の上昇を促しているのです。」

地価の上昇→政府の税収↑

ライアン「しかしその結果、後の世代が家を買えない状況に追い込まれています。銀行などの金融業界は不動産価格の上昇によって利益を得ます。不動産を担保にしてお金を貸しているからその価格が上がるほどより稼げるのです。」

住宅問題をめぐるダメージはアメリカでも深刻だ。2008年のあの金融危機以来、立ち直れていない。証券化したマネーが飛び交い、ドミノゲームを引き起こす、現代の資本主義。そのルーツはどこに…。

ライアン「イギリスのサッチャーとアメリカのレーガンの時代、『新自由主義』経済へのパラダイム転換が起きたのです。1980年前後にね。」

新自由主義:ネオリベラリズム あくなき市場の自由化?

第2章 暴走の犯人は新自由主義?

1980年代、第二次大戦後の高度成長も一息つき、世界経済は頭打ち。その時に登場した二人のリーダー。レーガン、そしてサッチャー。

レーガン「これまでの税制では人々は適正な対価を得られていません。税制が業績に不利益をもたらし、生産性を妨げていたのです。」

彼らは市場の自由を開放し、競争を推し進めた。

規制緩和 減税 民営化→市場の自由

いつからかこの時代の経済政策は全てを市場に委ねる新自由主義と呼ばれるようになった。

ロバート・スキデルスキー(英:経済学者/歴史学者) ケインズ経済学研究の第一人者、イギリス上院議員も務める
「すまない、議会が長引いてしまってね。
新自由主義によれば金融システムはコントロールする必要が無い。『市場はいつも正しい』と信じているからです。私はこう考えます。1980年代以降の富と所得における格差の大幅な増加などがポピュリズムの台頭や人々の『システムに取り残された』という気持ちにつながったとね」

新自由主義→不平等?
     →ポピュリズム?

スキデルスキー「経済の不安定や格差の拡大によって今 人々の怒りがあふれています。その余波がブレグジットや経済ナショナリズムとなって現れています。トランプもそうです。彼は人々の不満を餌にする。ラストベルト エコノミーが生んだ大統領です。」

ラストベルトエコノミー 「さびついた工業地帯」

スキデルスキー「すべてハイエクの影響だ。ハイエクが市場を解放させた。非常に悪い影響をッ政策に及ぼしたのです。彼はこう言いましたね。」

「新自由主義の教祖」?フリードリヒ・ハイエク。

スキデルスキー「『市場が崩壊するなら そうさせればいい』『市場に任せればいずれ健全に回復するから』とね。しかしそのような考え方は政治的には極めて危険です。彼は政府にとって悪いアドバイザーでした。もちろんどの政府もハイエクの思想を無条件に受け入れたわけではないですが市場に介入する『大きな政府』を罰するのに便利だったのでしょう。サッチャーはハイエクから強く影響を受けていました。ハンドバッグに『隷属への道』が入っていて決断に迷ったときにハイエクに立ち返っていたようです。」

1944年、第二次大戦のさなかハイエクによって著わされたこの書『隷属への道』。社会主義に傾きかけた世界を隷従への道として警告した。自由を守る固い決意。その思想は海を超えていった

ワシントンCATO経済研究所

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者):金融経済学/歴史学が専門 ハイエクの思想の可能性を研究
「『隷従への道』がありますよ。初版本 ハイエクのサインですね。
ノーベル賞を受賞した時のもの(写真)だね。」

フリードリヒ・フォン・ハイエク(1899-1992)

セルギン「世界経済には問題点が多すぎて一つを取り上げるのは難しいですが私が今 最も懸念しているのは自由貿易についてです。地涌貿易は私にとっても多くの人々にとっても大事なことです。今の世界は貿易の自由を脅かすような状況となっています。もちろんアメリカではトランプ政権の過激なレトリックのせいですが他の国々でも同じ傾向にあります。」

経済の自由の危機?

セルギン「おそらくその背景にあるのは経済的な幸福や社会の安定に大きな脅威となるナショナリズムでしょう。ナショナリズムは最終的には国境封鎖などに至り文化間の交流や人や物の自由な移動を敵視することにつながります。こうした自由への抵抗は根源的に有害です。経済的にも文化的にも悪影響を及ぼします。最も深刻なのは世界平和の土台をむしばんでしまうことでしょうね。」

常に自由を。市場の論理と共に掲げ、走り続けてきたはずのこの国。だが…
トランプ「出て行け!」
今、ひずみが生まれている。

ワシントン・ホワイトハウス前
「今アメリカでは1億4000万人が貧困にあえいでいます。なぜか。今の経済システムは人々を救うために存在せず、人々を搾取する強欲のために存在しているからだと思います。」

「『アンチ・ピケティ』という本がありますね。」
世界的ベストセラー、トマ・ピケティ『21世紀の資本』。過去一世紀以上にわたる膨大なデータから経済の成長率より資本の増加率が常に大きいと断じた富める者はさらに富み、貧しいものは貧しいまま。それがピケティの結論だ。

g(経済成長率) < r(資本収益率)

不平等は拡大し続ける?

セルギン「まず私はピケティの本や彼の結論をあまり評価していません。それらは誤っていることが体系的に証明されているはずです。彼の分析は間違っているのです。確かに世界に大きな不平等が存在しているのは真実ですし測定方法によっては不平等が悪化しているに見えます。しかしすべての測定方法が信頼に足るわけではなく、時に人を欺く。本当に気を付けないといけません。私たちが嫌うかもしれない『不平等』と『貧困』…この2つは同じものではありません。皆が平等でもひどく貧困な社会もあれば極端な不平等が存在し平等だと思えなくても世界史のスケールで見たとき最貧困層でも豊かだと言える社会もあります。」

絶対的貧困を避けたいなら相対的貧困はやむをえない?

セルギン「不平等を小さくしたいのであればより貧しい人をより豊かにする方法をとるべきで豊かな人をより貧しくする方法を取らなくてもよいでしょう。なぜなら不平等だけでなく、貧困も減らしたい要因なのですから。

古典的な自由主義の考えと一致しますが私はたとえ不平等が大きくても貧困層でさえある程度豊かで文化的な生活ができ上の階級へ行けるチャンスがあるようなそのような社会的流動性が高い世界に住みたいです。とても慎重になるべきです。大きな不平等が存在し社会が深刻な機能不全に陥っているからと言って法律を変えて富を再分配しようと結論付けてはなりません。それは不平等への考察としてあまりに表面的すぎます。

自由な経済活動の末に巨大化した企業ならば何も危険だとは思わない。」

有限の富、社会の安定、市場の自由に任せるか、国家の介入を求めるか。答えは…どっちか?







by wavesll | 2019-01-09 04:42 | 小ネタ | Comments(0)

人間らしさとは? 人間ってナンだ?超AI入門 第12回「働く」


この番組も今回で最終回、2045年ともいわれているシンギュラリティ。どう働き、どう生きるのか?ゲストは哲学者で東大名誉教授の小林康夫さん。

AIは文字革命に匹敵する人類史上の転換点?人間ってこれでおしまいなの?か「新しい人間」に行けるのか?

工業用アームもダイレクトティーチングといって、人間が手で”こうですよ”教えられるサブサンクション・アーキテクチャーという技術。ヒトが入る職場でロボットも働ける。これを開発した人は元MITのロドニー・ブルックスさんで、身体性を重視し、ルンバなんかも開発している。

サブサンクション・アーキテクチャー(包摂アーキテクチャー)。
それまで人工知能では与えられた情報を一か所に集め解析する一極集中が主流だったが、ブルックスは「脚を動かすだけなら脚に任せればいい」「障害物に当たったら脚を上げるなどの反射的な運動」をベースに多段階で構成した方が効率が良いと考えた。世界と知能の間にあるカラダを重視する考え方。

人間のボディに近づくのかというと、人間用に作られている空間では人間と同じような身体のほうが作業しやすい。一方で工場や畑で働くときは人間の大きさや人間の動作を気にすることはないから人間のカタチと関係ないロボットの進化になるという二通りで進んでいる。

産業用ロボットに限らず人工知能を備えたロボットが人間と同じ空間で働くことが現実となっている。今後ディープラーニングによってAIがさらに賢くなった時、ヒトとAI、ヒトとロボットの関係はどう変わるのだろう?

機械は一定の動作をするしかできないので、人間の動作に合わせてロボットの側が動きを変えるのは基本的には出来なかった。ところがディープラーニングの技術と組み合わせて人間がやったのを受け取ってやるとか協調的な動作が出来る可能性がある。

ただ人間の身体の方がスペックが大きいので、人間が出来なかった動作をロボットがやり直すのは技術的には難しいかも。AIは人間の仕事を補完する存在に成り得るが、同僚になるのは…まだ先かも?

働く上でヒトはみな自分の能力を最大限発揮したい。AIが協力すれば潜在能力や直感的な閃きを引き出せるかも。

脳波計で人の感動状態、感情を収集して、その人が感動する曲をつくる試みがある。曲を聴かせて快か不快かを分析、和音進行などと照らし合わせ、オーダーメイドな新曲を作曲できる。将来的にはセラピーというかその場の人の反応に応じて精神的なケアができることを目指す。アスリートが試合前に”こういう精神状態にしたい”というのを援ける音楽。AIは”働く”人間の秘めた能力を引き出すこともできる?

人工知能研究と人間の脳の深いつながり。カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授に話を聴いた。

「長い間脳だけが『知能』のモデルでした。例えば視覚に関して言えば脳はコンピューターより優れていたので脳がどのように感知しているかを知ることが重要でした。知識は経験によって得られるのです。たくさんのものを見ることで認識できるようになります。母親が『あれは牛だ』と一度言うだけで何が牛かを学ぶことができ、その後は母親が名指ししなくても牛を認識できるようになります。それを脳がどうやっているのかまだ正確には分かっていません。

しかし今は脳が『誤差逆伝播(バックプロパゲーション)』のようなことを行っているのではないかと議論されています。『誤差逆伝播』は情報を逆流させて正しい答えを出すために重みを少しづつ変えることを繰り返します。最近まで神経科学者は『このアルゴリズムは複雑すぎて人間の脳ではできない』と言っていました。しかし人工知能でこれが大変うまく機能しているので彼らも人間の脳でも同じことが行われているのではないかと考え始めています。」

AI研究が人間の脳を深く知るヒントに。ディープラーニングで工学的な「やったら上手くいった」発明が増えてきた。工学的なアプローチによる理論を脳に照らし合わせることが起こり始めている。

例えばバックプロパゲーションもニューラルネットワークのスパイク(発火)のタイミングで重みが増したり薄くなったりしているのではという説もある。脳における発火の時間差がAIの重みづけと対応しているという説。

ニューラルネットワークでの「重み」をどう決めているかというと「間違えたこと」を後ろに戻していき誤差逆伝播させてニューロンの太さを変えていく。普通判断は下から上へ行くが、判断が間違ったときは関係を弱め、当たった時は関係を強めることで、組織として正しい判断ができるようになる。

人間の脳では誤差逆伝播の経路は見当たらないのだけれども、時系列を駆使しているという説もある。人間とAI、互いに相手の構造を解明しあっていく?

ディープラーニングの「ディープ」とは?「深い」はなんで重要?
深いの逆は「浅い」。つまり階層が一層しかない。では層が重なって深くなるとなぜいいのか?

人間の組織はなぜ階層構造なのか?
階層が出来る事でまとまりというか統一が出来るから?

一つ目の答えは我々の住む世界が階層的だから。しかし我々の住む世界は本当に階層的なのか?我々の認識によって世界が階層構造のように見えているだけなのでは?階層はあるようにみえているだけで人間の知能が生み出した虚妄?それは人間が言語を学んだことと関係がある?言語が<テキスト→フレーズ→品詞>という階層構造をしていることが大きい。

積み重ねられた特徴量・概念にラベルが対応することが言語。言語が階層的≒人間の見方が階層的。今AIは単なる情報を処理するだけでなく人間でいうコンセプト(概念)まで掴むことが出来つつある。

経済学の父アダム・スミスは社会は労働の分割と言いそこに基礎を置いた。「働く」の意味が変われば世界も変わるのだろうか?

人工知能の一番大きな応用は?そして「人間らしさ」とは何か?
松尾先生の説は『人間の認知・判断が人間にしか付随していなかった。それが切り離されて社会の必要なところに配置されることが起こる。それが意味するものはロボットが色んな作業を上手にやったり今まで人間にしかできないと思っていた作業あるいは判断が次々とAIに出来る様になってくる。』というもの。『AIによって人間の知識が世界に遍在する』。

それが出来た時は人間は働かなくても良くなる。今まで一番大事だったのは生存するために闘争し欲望するのがすべてだったが、AIが理想的に実装されたらそこから解放されるだろう?その時「人間らしさ」は?労働して世界をつくっていくことが人間の最大の定義だったのに、これを全部AIがやってくれたとしたら?そこでは無感情な人間がただただ生存するだけにならないか?そこで「新しい人間らしさ」を獲得するのか?

小林「人間っていうもののディープラーニングを遥かに超えた深さが再発見されないとただやることなくなって”生きてなくてもいいかな、世界は廻ってるし”と意味がなくなってしまう。その時の意味をそこからくみ上げてくるかと言えば自分の存在の深さから汲みあげてくるしかない。そこで人間はもう一回、共感をAIから学ばなければならない。インターフェイスや違ったもの同士が触れ合うとか。ここが瀬戸際。」

松尾「人類は生存のために闘ってきた。こここそが「人間性」では。AIがいくら普及しても人間性は変わらない。AIが普及することによって生産に関する直接的な働きは人間はしなくてよくなると想う。だけれどもそれと関係ないところで人はコミュニティをつくり敵を作り、その中で何らかの形で闘い、仲間と共感し、”部族ごっこ”はずっとやっていく。AIが幾ら普及しても働かなくなることはない。」

人間の認知を超えた世界が開けた時に、どんな光景が広がるか。人間の認知はほんと一部しかみえてないのではないか。AIによって人間は知ることの限界を理解した。もっと未知はある。今こそそこに行くべきだ。










人間における宇宙、人間における歴史の劇的な転換点に今我々は立ち会ってるのだなと。「人間らしさ」が闘争であり働くことであったとして、人間が自分の認知の限界を認識したその先に人類史上かつてなかった未知のフロンティアがあける。わくわくする未来、ドキドキの不安もある未来が拓けて。それは例えば囲碁の棋士が先に到達している世界かもしれません。Artというものが未来を先んじるとして、人間の「深さ」をどう耕すか。来年から始まるというシーズン2も楽しみです。

by wavesll | 2018-12-29 10:52 | 小ネタ | Comments(0)

テクノロジーによりヒトという種が生死を超えて進化する? 人間ってナンだ?超AI入門 第11回「老いる」

人間ってナンだ?第11回のテーマは「老いる」。高齢者に寄り添い、癒し、健康の維持を手伝い、高齢者を支えるAIの関わり。そもそも人間にとって「老いる」の本質とは?ゲストは五木寛之。










人はなぜ老いるのか?例えば単細胞生物は老いない。これは老いた方が良いということだろうか?
青春、朱夏、白秋、玄冬。人生50年の時代の老いると人生100年の時代の老いるは異なって来る。超高齢化社会の中でAIは高齢者の不自由を支える技術として、そして「老いるとは何か?」を分析するためのツールとして働く。

例えば相手の嗜好・情報を覚えて会話するAIパルロ。実際に介護施設で体操の指揮や相手と話したり愚痴を聞いたりする。基本的に最初は高齢者は抵抗があって、その抵抗を外すことから始めているそう。

動いているものをトラッキングするAI。顔認識AI。話しかけてきそうか判断するAI。唇に注目するAI。音声認識するAI。これらを連動させるAI。これから先AIがないと介護は回らなくなるだろう。

五木「まだAIは揺籃期。まだ実用段階には達していないように感じる。それに人間は老いていくに従って孤独に従う、それで何がおかしい?宗教的な問題を孤独の中でする人にロボットが関わるにはアーティストとインテリジェンスがないと難しい。」

体力と認知機能の測定するAIもある。測定したデータからタイプにあったトレーニングを提示する。「こういう生活した人がこういう健康データとなる」という部分をディープラーニングしていく。そうすると健康状態の未来予測ができるようになる。

五木「人間一人一人の個性を平均化標準化していく方向へ行くことに不安がある。」
松尾「データが多くなると細分化したパターンに対応できるようになる。また生活の中でどういうデータを取るかが重要。何を食べたか、どういう人と話したか。それらを複合的に判断すると健康や体力に関して詳細な分析ができる」
AIは人間の健康寿命を延ばせる?!

AIと人間の老い、二つを繋ぐ技術は他にもあります。それが茨城県つくば市CYBERDYNEのロボットスーツHAL。つくったのはロボット研究者・工学博士・筑波大学教授の山海嘉之さん。

山海さんのロボットの特長は人が装着して初めてその力を発揮する点。人が体を動かそうとするときまず脳から「動け」という指令が出て、その指令が電気信号となって筋肉に伝わる。山海さんはその電気信号を捕まえる高性能のセンサーを開発。さらにその信号をコンピューターで解析し人間の複雑な動きを再現できる世界初のシステムをつくりだした。

山海「例えば脳からはこういう情報が出ているはずだけれども信号自体は欠落があったりする。それはAI処理で補完し、スムーズな動きに変える」

このスーツは重い荷物を持ち上げる時に腰にかかる負荷を最大40%も減らしてくれる。介護施設での力仕事でも活躍が期待されると共に医療の現場でもドイツや日本では実用化が始まっている。

山海「人とHALの間で神経系の機能を回復・改善させていくループが回り始める。HALを使えば使うほど神経と神経の間のシナプス結合、神経と筋肉の間のシナプス結合が強化・調整され、残存機能が向上していく」

人間と機械の間で増幅のループを作る

山海「これまで脳神経系からの情報は人間の内側のものだった。それを一旦ロボットの中に取り出す。これは人間の脳神経系の世界の中にHALというサイバニックシステムを介入させて、医者が脳神経系の世界に入り込みながら治療する技術に進化している」

五木「あぁいうのがあれば非常にありがたい。人間は動物から人類、道具を使う。手で切るより鋏で切る方が楽だ。メンタルな部分で話し相手になってくれるよりモノを運んでくれる方がずっとありがたい。」

ロボットスーツのような技術がAIによって進んだ先にはいったいどんな世界が待っているのか?
例えばスポーツ選手の世界ではハイテク化が進み、義足の選手がオリンピック選手を超える日も近いと言われている。

サイボーグ的なムーヴメントが起きた時にどう捉えればいいのか?道徳的な問題もあるのではないか?

五木「日本の進むべき道として絶対にある。日本の義手義足は世界的にみて水準が高い。地雷などで身体を失った人などに日本が貢献できる分野だ。」
松尾「義手・義足はいいが、臓器、脳、そして身体が100%機械になったら人間なのか?」
五木「ロボトミー(脳の神経回路の一部を他の部分から切り離す外科手術)なんて言葉も連想される」
徳井「本当に切実に義手義足などを求めている人がいる一方、好奇心半分で便利にするためにサイボーグ化する人たちはやっぱり違う」
五木「けれど自転車なんかと同じではないか?」
松尾「身体を拡張するのと何が違うのかという議論もある」

身体の拡張は「老い」も超克する?

松尾「例えばパワースーツや義手義足は今のところ人間が制御しないといけない。人間の医師をくみ取ってそれに力を与えるというもの。ところが手や足は無意識下で非常に細かい制御をしている。普通に歩いているように思っても足をどこに置くかは無意識下で脳が非常に細かい処理をしている。そういうところをAI・ディープラーニングが補うことが出来れば、ディープラーニングのような義手義足が出来た方がより使いやすくなり、転ぶなどを気にせずに歩けるようになるかもしれない」

五木「人間の学習能力、例えば段差や階段を気を付けようと思って歩く、その危険意識と関係なくなってしまうのは問題では?やはり少々の失敗もないと。」
松尾「気を抜いている時はちょっと失敗するシステムをつくるとか」
五木「そこまでプランニングされて『2%は失敗しよう」とかまでされると恐ろしいというか、そこまでお世話になりたくないという感じ」
AIはおせっかい過ぎない方がいい?

人はなぜ「老いる」か?

五木「人はなぜ老いるかは分からないけれども、老いるのは現実。『どう老いるか』が問題となっている。医学的な基準は未だに知見の進歩で揺れ動いている。基準が揺れ動くのにどうしてそこから学習しなければならないかという疑問は抑えきれない。」

松尾「色んな説があるが、細胞分裂の回数がMAXいくらかが決められている。分裂の回数を何回でもいいという設計を人間は取ることが出来たし、生物も取ることが出来たはず。分裂の回数を制限した方が良いという何らかの理由があってそうなっているんじゃないか。ちょっと人工知能と関連づけて話したい。

ニューラルネットワークがあったとしてそこに画像や音声やテキストが刺激として入り、その判定をさせる。これには『学習率』というものがあって、最初は大きく取ってだんだん低くしていくと早く学習できる。」

学習率とはAIが学習する際のコンディションを決めるパラメーター変数のこと。この値を大きく取るか小さく取るかで効率が大きく変わる。

松尾「山とか谷の構造があって、一番高い山を見つけたいという問題だとして、適当なところから始めて歩いて一番高い山を見つけ出していく。その時最初は大きく動いた方が良い。全然とんでもないところにいる可能性が有るので最初は大きく動いた方が良くて段々いいところに近づいてくると動き方をちょっとづつ緩めて行った方が良い。

学習の初期においては学習率は大きく取っておいて、学習が進んだ際には段々と学習率を弱めていった方が良いとされている。僕はAIと人間の学習率には関連があると考えていて、若い時は学習率が高い。だんだん学習がしにくくなって大人になる。

特に音の認識において顕著で、日本人はLとRの発音が分からない。これは幼少期に英語圏に居てLとRの発音に触れていると分かるのだけれども、日本にいるとLとRの区別をしてないので区別が出来なくなってる。これは学習は下の段から積み上げていくから、音の情報→音素→シラブル(音節)→単語→文となる構造上、音素の学習を固めないとその上の学習がしにくい。なのである一定の年齢までに音素は固め、次の学習へ行きましょうと下から積み上げて行っている。

ですから人間が成長する過程で概念が下から組み上がる。学習率が高い頃の方が若くて段々収束していく。こういうことが起こっているんじゃないかと思う。」

概念を汲み上げると学習率は下がっていく。若い頃は伸びしろで勝負、老いてからはそれまでの積み上げが効いてくる。

老いるにつれ人間は知識と経験を積み重ね、個人として学習を完成させていく。一方何世代にもわたって進化の過程で積み上がった能力も無視できない。学習と進化、この二つはどういう関係にあるのか?

松尾「例えば明るいところが嫌いな動物や生物がいる。明るいところを嫌いという性質は進化的に獲得する事も出来れば学習によって獲得することもできる。ではどういう場合に進化で獲得した方が良くてどういう場合に学習で獲得した方が良いか?」
五木「適者生存では」
松尾「そうです。進化の場合は適者生存といって環境に上手く適合したものが生き残る。でも一緒のことが学習でも起きる。では進化と学習は何が違うのか?」

徳井「環境が急激に変化した場合では」
松尾「そうです。進化の方が環境が変わらない場合にはロバスト(頑強に)性質が保たれるのだけれども、環境が変わる際は学習の方が良い。

人間というのはかなりの部分を学習に頼っていて、それは環境が変わることに対して非常に強い性質を持っている。これは人間が社会を創り上げてきたり環境自体を変えるという事をやって来たから。今でも教育の制度は凄く重要だけれども社会環境に合わせて教育の仕方自体を変えることによって全然違うタイプの人間を時代時代に合わせて生み出してきた。凄く環境の変化に対して柔軟な仕組み。

という風に人間は学習に重きを置いた生物ではないかと。」
五木「学習の効果はあるんですか?」
松尾「学習の方式は色々ありますけれども、『教師あり学習(正解・不正解のデータが大量にある場合に、正解を真似する学習)』は出来る。それと『強化学習(何かの行動をすると結果的に良かった、何かの行動をすると結果的に悪かったというデータがある時にどういう行動をすると良い、どういう行動をすると悪いということを学んでいく)というやりかたもある』」

ゆっくり変わる進化とあの手この手の学習で時代の変化を生き延びてきた人間、そんな人間の定義がAI時代に変わると山海さんは言う。

山海「ネアンデルタール、ホモサピエンスという大きな流れの中、脳の容量も道具を作る能力も色んなものが少しづつ良くなって、生き物としては遺伝的に次の段階へきて、今私たちはいる。しかしテクノロジーを身に着け環境を変える術を得たことによって、生物としての進化を捨てた種族だという風に言える。

脳の容量の足りない部分がIT系の技術によって拡張されはじめている。IT空間だけでなく物理空間にも作用するロボットの技術が登場し、人とロボットと情報系が融合・複合した新しい時代を迎えようとしている。人類の新しい形の進化が始まっているともいえる。

しかしこれは生物としての進化ではなくテクノロジーと共に生きる、そういう未来。つまり人とテクノロジーの共生社会における新しい一歩」

人間は進化を捨てた?それとも新たな進化を手に入れた?

五木「人間というのは学習しない存在と痛感するところがある。第一次世界大戦であれだけの悲劇を引き起こしながら何十年かしない内に第二次世界大戦を引き起こしてしまう。全然人類は学習しないじゃないか」

松尾「まさにそこでして、人間の寿命が80年ぐらいだからこそ、世代が変わると記憶が引き継がれなく、忘れてしまってまた同じことをやるということが起こってしまいがち。これは人間の寿命がそういう風に設定されている故の人類の弱さ。そういうところに高齢者の方は凄く重要な働きをするんじゃないかと考えている。

変わらないものに対して高齢者の方がデータをたくさん持っている。それを人類社会のために役立てることは若い人には出来ないこと」

五木「そういってもらえると嬉しい。超高齢期の意味を感じました」

松尾「一つ面白い話をするとシンギュラリティー(技術的特異点)で有名なレイ・カーツワイル氏が脱出速度というものを提唱していて、これは何かというと、今技術の進歩は年々早くなっている。加速している。仮に一年間で技術進歩によりもたらされる平均寿命の延びが一年を超えるとヒトは死ななくなること。カールワイルはその地点が10年から15年で来るんじゃないかと言っている。この世の中がどう変わるか高齢者の方に見てもらいたい」

この番組はAIに関する技術をレクチャーしてくれるという面と、人間存在とは何かを考察する面があって、今回は後者の面で大変に見ごたえがありました。

それは「老いる」というテーマに加えて、五木氏の存在が非常に大きくて、ただ松尾さんの解説に頷くだけでなく時に異議を唱え自説を主張するその姿勢が番組にテンションをもたらしてくれたと思います。

人間の寿命が仮に100才としてもう1/4をとうに過ぎた朱夏な自分にとっては学習率の話は恐ろしくもありましたが、死というもので閃光のように人の生は熱を持つ感覚はあります。また寿命があるからこそ、過去の学習が一旦リセットされていくからこそ社会が変革していくダイナミズムが起きるのだろうと思って。

そう考えるとAIによって人類が寿命から脱出したとしたら、確かにテクノロジーと共に成し遂げた生物としての進化ではあるけれども、社会的には変革が起きない、静的な未来があるのではないか、ある意味それはヒトという種が神が造った動物に戻るという未来なのかもしれない、そんな気もする噺でした。




by wavesll | 2018-12-12 20:06 | 小ネタ | Comments(0)

日本の次世代産業の宝のデータ、そして丸暗記の落とし穴に落ちないための策 人間ってナンだ?超AI入門 第10回「味わう」


今AIは食べ物の調理までできるようになっている。冷蔵庫の残り物からレシピの提案や、AIソムリエ、人間には思いつかないようなレシピ創作。さらに作物の栽培まで。人工知能は人間の根源的欲求の一つ、食欲まで満足させられるのか。食の本質とは。人間ってナンだ第10回のテーマは「味わう」。







シェフワトソンというAIは食材を入力するだけで最も美味しく無駄なく使うレシピをつくる。が、スタジオでは”イマイチ”との声w何の決まりもない中でレシピを創れるというのは”根拠”がないと笠原板前はいう。

人間の”美味しい”は五つの基本的な味(甘味、苦味、酸味、塩味、うま味)から構成されるという。

例えばコーヒー。ブラックだと苦味が強いけれども、砂糖を3杯いれると甘くなる。これらの味を数値化して分析するのが味覚センサーレオという機械。普通のセンサーで測ると砂糖を入れても苦みの濃度は変わらなく結果が出るが、AIを使って人間が感じたものに近い数値が出るようにしている。教師データはアンケートによる人間の感応評価から。

おいしいと感じられるものにはトレンドがある。常に新鮮さが求められるが新鮮すぎると警戒される。”ちょっと新しい”が美味しい。年月のデータを重ねてそれが予想できる未来も来るかも?

強大なデータベースを用い料理画像からレシピを推定するPic2RecipeというアメリカのAIサイト。文化的差異もあり2017年現在未だ精度は落ちるが、そこそこの結果が文章で出てくる。実験では65%の確率で正しいレシピを出せたそう。

ニューラルネットワークはその太さを調整することで過学習を避けることが出来る。訓練の仕方を「問題と答えの組み合わせを覚える」では本番失敗する。上手くするには問題のポイントを抽象化することが大事。

Googleカナダ支社にディープラーニングの父と呼ばれるトロント大学教授ジェフリー・ヒントン氏を訪ね、過学習の解決方法を尋ねた。

「ニューラルネットワークは何層にも重なっている。行わせたいのはこのイメージを見せた時にこの一文を導き出すこと。正解は『クマのぬいぐるみを抱いている少女がソファで寝ている』。ニューラルネットワークはこの写真を見たことがない。しかし他のタグのついた写真で訓練された後にこの写真を見せると『ぬいぐるみを抱いている子どものクローズアップ』と答えた。

成功にはいくつかの理由がある。『Rectified Linear Unit』という新しいタイプのニューロンを使ったこと。これまであまり使われてこなかったが従来のニューロンに比べ訓練しやすく効率的。さらに新しい手法を用い、ネットワークがただ記憶するのを回避しもっと一般化できるようにした。これは『ドロップアウト』と呼ばれるもの。

はじめての問題にも以前の訓練の時と同じように対応していい結果を出せた。」

ReLU(Rectified Linear Unit):
ニューロンは人間の神経細胞を模した構造で、刺激がある一定を越えると発火し、そうでないと発火しないようにデザインされている。これまでは刺激が閾値を超えると1になりそうでないと0になるシグモイド関数が長年用いられていた。

しかし最近はマイナスの時はゼロだが、プラスの時はmax(0. x)な式を使うことが増えてきた。これは脳の神経細胞の性質からするとおかしい。刺激がどんどん無限大に大きくなってしまう。ただこちらの方が学習に向いている。

ドロップアウト:
過学習とはある問題の本当に重要ではないところまで丸暗記してしまう事。ドロップアウトのアイディアはランダムにニューロンの半数を消してしまい、残りのニューロンで予測させること。このランダムな消し方を次々と変えていく。そうするとある問題の先頭にこういう文言があるとかをローカルな特徴に覚えていたのが使えなくなるので、もっと他の処を使わなくてはならなくなり、より本質的な特徴量に迫れ、過学習を回避できる。

上辺だけを丸暗記するのではなく、問題の本質を学べば応用力が身に着く。これは人間もAIも同じ。過学習を防ぐ正則化という手法はドロップアウトの他にもあって、ある画像を入れてネコかイヌか判別する時にあえてノイズを混ぜそれでもちゃんと判定できるように、わざとデータを汚くして学習させ精度を上げる方法などある。苛酷な環境に置かれることでAIは精度を高められる。

ディープラーニングによってAI性能が高まると食の世界はどう変わるか。

画像認識は自動運転や医療診断とは異なり料理ではまだデータが足りていないため低進度。これはデータ次第。これの次に来るのが深層強化学習+ロボット。認識の技術と動作に移す技術を組み合わせることで今までできなかった「人間が目で認識判断するタスク」が自動化できる。これらのタスクで大きいものは「農業」「建設」「食」。これらは現在人が行っており、人手不足になっている。

ここの技術が進歩すると、例えば今まで人に紐づいていた日本の高いレベルの調理の技術をロボットにのせて世界中にデリバーすることが出来るビジネスチャンスが生まれる。

或る業務を特定の人が担当しその人にしかやり方が分からないことを属人化と呼ぶ。属人化ならぬ属AI化はノウハウの標準化を促しAI料理人の活躍の場を開くのだろうか…?

上で出した例はレベルの高い人間の動作・作り方を学習データにして世界中にばらまくこと。つまりハイレベルなロボットを作るためには人間がさらに先に行かないといけない。故に絶対に高いレベルの職人が必要になる。

西麻布の二つ星フレンチの生江さんはシェフワトソンのレシピをイベントで作ったことがある。

「自分の料理の幅にバラエティを拡げてくれるが、『おいしい』プロセスを仕上げることにAIはまだ責任を持ってくれない。おいしいものを作っておいしいものを食べる行為はまだまだミステリアス。五感を使っただけでは「おいしさ」は表現できない。雰囲気や食事を共にする人、色々な環境要素が偶発的に混ざり合って多角的に『おいしい』がある。人間が感情的に『おいしくなる』と思っている料理が一番複雑怪奇で一番味わいのレベルが高いところにある。」

ラーメン屋で流行っているところは「おいしい」より「癖がある」。ただ美味しいだけだとそれで終わってしまう。行列が出来ている店はただ美味しいでなくちょっと臭かったりちょっと脂っこかったり。そこに人間は常習性を発揮する。記憶に残る味。バランス良くおいしいと記憶に残りづらい。

今回にまず大きく想ったのは、AIでの技術競争において最も大きい要素は「いかに優良で大量の教師データを獲得するか」ということ。GoogleやIBM等が自動運転や医療診断において大きなビッグデータを入手し、この間LINEの通信データがKCIAに解析されていたなんてニュースも出ましたが、日本ではこのレースにおいて非常に遅れていて、それ故に松尾先生は料理という日本の大きなアドバンテージを次世代の日本の産業界の宝となる教師データにしたいのだなと。

また過学習を避けるための抽象化メソッドとしてドロップアウトを知れたのは、ヒトとしてのラーニングにも生かせそうで。元の大きなデータから異なる部位をランダムに抽出することを繰り返して予測力を働かすこと、なんか大きな示唆を与えられた気がしました。





by wavesll | 2018-12-12 19:12 | 小ネタ | Comments(0)

『BS1スペシャル ラップと知事選 沖縄 若者たちの声』身体性をもったRealな政治意識の肝要さが伝わる好番組


This is Okinawa ある意味America それかChina  no わったーぬ(俺らの)沖縄(うちなー)
This is Okinawa どうしはAmerica 似たようなもんだ…

ラッパーのMuKuRoは「あまり基地問題は意識していない。基地があるから英語が喋れるようになったし、基地が無かったらラップしてないし…」と語る。沖縄の若い世界は基地のある環境で育った沖縄の若者の一つの声を発します。

BS1スペシャル ラップと知事選を視ました。20代30代のリアルな沖縄の状況を伝えてくれる番組でした。そこで鳴り響くのはヒップホップ。”ラッパーが嘘ついたら終了”との言葉。沖縄というとなどロックのイメージが強かったですが、コザなどで70年代80年代からかなり早くからヒップホップ文化が根付いていて「のこされ島」「RYUKYU JAPAN」などのアンセムもあるという。若者のリアルな言葉は今ロックよりもラップになり、沖縄のチャンプルー文化の中で日本、アメリカに対する様々な想いが鳴らされていて。

そしてそんな彼らもオレンジレンジや「琉球愛歌」を聴いている。重層的な地域性の濃さが沖縄にはあって。実際私も幾度か八重山を訪ねた時に、島の人同士は全員知り合いだというようなコミュニティーの繋がりの強さを感じました。

沖縄は日米のパワーバランスの軋轢が表出している、政治問題が皮膚感覚で感じざるを得ない地。その中で暮らす若者はノンポリの気楽さではどうしてもいられない。けれど「基地があるのが生まれてからの環境」の新世代が育ってきて、さらに事態は複雑になっています。

上にも書いたのですが、沖縄はリアルの存在が本当に大きいというか、首都圏に住んでいるとメディアの時空間がリアルを侵食しているのに対して、生でのプレゼンスがどうなのかが問われ、そのリアルさは首都圏だとメディア越しに触れることが多い政治という領域でも身体性を持っている気がします。MukuRoが「自分で体験して目でみて耳で聴いたものしか信じない」と言うのも本当に、ここでも『サウダーヂ』に連なる日本の地方のリアルがあって。

生の聲、生の体験。知らない誰かの受け売りでないその縦横の繋がりは、メディアやショウを通して物事を語ったり捉えてしまう自分にとっては非常にマッシヴな理想態でありながら、実存において「社会問題と自分の生がダイレクトに関わっている当事者性」こそが公共意識の第一歩であり、その體がなければ政治活動はどこまでも薄っぺらなものになると。革命が無いことが日本のロックンローラーの悩みだと宮本浩次は歌っていましたが、ここには火花散る軋轢と悲劇が存在している。

一種のピジン/クレオール的状況は今まさに日本全土にわたって勃興しつつあると想います。移民による多文化の潮流は先進国に共通した状況で、物わかり良くいい子ちゃんをしている坊ちゃんよりも一度リアルの谷に墜ちた先に”わかったふりをしないで1から積み上げる心動”を以て、公/社会に働きかける等身大があって初めてメディアがマクルーハンのいうように身体の延長として機能するのだなと想わされる沖縄のRealが描かれた好番組でした。

by wavesll | 2018-12-06 01:28 | 私信 | Comments(0)