人気ブログランキング |

タグ:TV ( 171 ) タグの人気記事

★の在りかた Freddie Mercury, Montserrat Caballé『BARCELONA』

BARCELONA, Montserrat Caballé, Freddie Mercury
c0002171_21084731.jpg
NHKBSで放送されたQueenのドキュメンタリーを2本観ました。その2本目で取り上げられていたのがフレディ・マーキュリーが晩年に取り組んだモンセラート・カバリェとのオペラ作品『BARCELONA』。日本語歌詞もあるフレディの芸術性が爆発した大作。素晴らしかったです。ロック・オペラとして、本流のオペラファンからは”いやー”と思うところもありそうですが、荘厳なオペラの世界への入り口として惹きつける魅力にあふれた名盤だと感じました。

2本のドキュメンタリーは映画『ボヘミアン・ラプソディ』の裏側はこうなっていたのかと思わせるもので、フレディの恋人たちなどが実際に出て来て見ごたえがありました。あまりにも劇的な人生。

人生自体がドラマのように感じることの凄味を感じつつ”Great Pretender”だったフレディを一人の人間として扱ってくれるトポスは何処かにあったのだろうか…当時はWebもなかった…などとも思いました。

凄まじい藝術を行うヒトはその藝が巧みなほどカミや魔人にしばしばみえます。けれど憧れが理解には最も遠いように、神格化は”人として扱うこと”からは最も遠いことかもしれない。私自身は芸術家は社会のルールに縛られないと思いますがそれと表裏一体となった『偉人の人生自体をドラマのように楽しむこと』の暴力性と、けれどその幻想が芸術家を時代の象徴へ昇華させるのかもしれないという功罪を想いました。

ただインターネット以後、特にSNS以後の世界に育ったWebネイティヴな世代はそもそもの気風が違うエリアにいるようにも思います。先日Googleがインターネット30周年を祝っていましたが、平成という時代は電脳空間が生まれ、社会に組み込まれていった時代だったなと。そこには旧世紀とは異なる形のスターの在り方があって、別のやり方のサヴァイヴの仕方がある。

もう暖かくなってきたというのに季節に遅れた服で町を歩く私ですが、「俺はアナクロ」と嘯いてばかりいないで、自分の歴史に筋を通しながらも現状にアジャストしていくべきなのかもしれない。それにしても『BARCELONA』の神聖な響きは本当に沁みる。そんな夜となりました。

by wavesll | 2019-03-14 23:03 | Sound Gem | Comments(0)

自分のオリジナルな創造だと満足できる基準は? 人間ってナンだ?超AI入門シーズン2 第三回「発想する」

AIは人間と遜色なく歌もつくれるし絵も描ける。人間とAI、そのクリエイティヴな活動に違いはあるのか。

徳井「人工知能に対してどのような感覚をお持ちですか」

藤田和日郎「ろくなことを考えない。マンガの世界ではAIは敵。発想がテーマだと今度は俺たちの仕事を脅かす、やっぱりワルい奴」

徳井「先生からしたら『ヒーローもの』『コメディタッチ』なんて入力でちょちょっと描かれたりしたら…」

藤田「何w!?冗談じゃないですよ。漫画界を代表するつもりではないですけれどみんな気にしてますから。」

「悪いヤツ」AIは敵か?味方か?

徳井「最近漫画を画くところでもデジタルなものが浸透してきているじゃないですか。先生はどうですか?」

藤田「うちは完全にアナログ。デジタルの入る余地が全くないので。全部手作業でやってますから。」

徳井「それって今時珍しくないですか?」

藤田「半々、もしくはまだまだいるような気がするんですけどね。アナログといっても人間などを手書きで書いてそれをコンピューターで取り込んでそれに集中線や擬音語をデジタルで乗っけて処理をするとか、半アナログ半デジタルをしてる人が増えてきているというか。完全にコンピューターの中で完成原稿に持っていくのが完全デジタルですね。それのどれでもない。全部定規で引っ張ってインク付けて絵を描いているという」

徳井「昔ながらの」

藤田「昔ながらのというとちょっとカッときますけどw」

藤田さんのアナログに徹した絵作り拝見させていただきました。大まかな画の配置を決めていきなりペン入れ、細かな下書きはしません。さらに取り出したのはなんとホワイトの修正液。インクで書いた線を消しては書きを繰り返す。修正液の凸凹の線まで表現に高める唯一無二の作品。

やはり「芸術は爆発」か?

米辻泰山(エンジニア)「PaintsChainerというサービスをつくっておりまして。色を塗るPaintsにChainerというフレームワークを使ったので名前を付けたのですけれども」

徳井「AIが色をつけるとなると完全に先生の領域に踏み込んで来ましたね」

藤田「もう本当に覚悟しています。俺たちの職業が脅かされるかどうかの瀬戸際ですからね」

米辻「これがホームページの画面になっていて、お手本の画が入っていて自動で着色処理ができるようになっていて着色結果が出ている。」

徳井「これはAIが着色しているんですか」

米辻「そうですね。自動で出てくるような形になっています。」

米辻さんが開発したPaintsChainer、線画イラストをAIが自動着色。60万枚もの絵を学習させた結果、様々なテイストの着色が可能に。

徳井「プロから見てこの色合いと言うか色付けは」

藤田「きれいだと思いますよ。ピンク色とか肌色を基本にあんまり突拍子のない感じでなくて落ち着いてまとめた、下地に薄いピンクが入っているのかな。まとまりのいい絵柄だと思います。AIで着色されたんですよね。違いがわからない感じはありますね。」

徳井「これは女の子で着物を着ていて髪飾りがあると認識しないと色を付けられないですよね。」

米辻「何かしら飾りがついてるとか認識していると思います」

徳井「男の子か女の子かもわかるんですか」

米辻「画像の認識の方で男の子か女の子かタグ(データの構造を識別するための目印)をつくれば認識できると想いますけどこれはタグは使っていないので、この中で認識してるかはわからないですけど、そういう認識ができるくらいの情報を学習していてもおかしくないかなと。」

人間とAI 認識の仕方が違えば発想の方法も異なる?

米辻「藤田先生から頂いた絵も顔の部分がこういう風になって、これあまり色がついてないなぁと想ったらヒントを与えることが出来るので」

藤田「ヒント」

米辻「ここに赤を入れると着色処理が生じて赤くなる。少しおどろおどろしい雰囲気だなと思ったら空色を入れれば空に成る」

徳井「誘導してあげる」

米辻「そうですね」

藤田「疑問に思うのはあなたが命令するんですか。それとも一番最初はAIで?」

米辻「一番最初に出たのは基本的にはノーヒントで。こちらの場合はヒント付き自動着色である部分にはこういう色だよということで他の部分を推測する。」

いかがですか藤田さん。藤田さんの画も私たちAIにかかればこんなに色んなヴァージョンを簡単に色づけられるんですよ。

藤田「自動着色装置で一番ベストな形は持ってきてます?これって途中のような気がするんですけれど。これが付けたやつですか?」

米辻「そうですね。基本的には色んな色を付けて選べるという感じで」

藤田「なんか過渡期のような感じがする。これから色が塗られていって完成すると言うか。もうちょっと能力高めてちょうだいよと。自分が思い切りやったやつをみせてよと。これじゃアンフェアだよなんて感じでいいたいような気がするんですけど。一番ベストな状態の方がいいですよね。」

米辻「一番ベストというと難しい」

藤田「この番組でレンブラントっぽい肖像画を描くみたいなプログラムをみているので…」

2016年に発表された17世紀の画家レンブラントの「新作」。実はこれ私たちAIが生み出しました。AIはレンブラントの全346作品をピクセル単位で分析。どの場所にどの色が配置されているか、それが別の場所の何色と一緒に出てくるか。画家独特の描き方のクセ、パターンを学習しました。ここで活躍したのがディープラーニング。

藤田「色んな塗り方がきっとこの中に入っているのかと思ったんですよ。」

松尾「選ぶ人の力になっちゃいますね。」

ここで藤田さんの一枚がを着色

藤田「漫画は線なので、線が出るとぐっと色原稿っぽくなりますね。何俺はアドバイスしてるんだw」

徳井「AI育てる側になってますよ。」

藤田「俺は敵のテイで来てますからね。俺の仕事を奪うなというテイで。わっこれはかっこいいな。一個欲しいなコレ。うすら寒い画面が伝わってきますよね。凄いや。」

徳井「先生が着色されたものはやっぱり凄いですね」

藤田「目的があるわけですよね、マンガってね。1ページ1ページに目的があってこれは不気味な感じで手前の毬を突いている女の子が幻のような感じで最後の「ボウ」で闇に融けていったという感じを出したく色を付けているものですから。おそらくそちらも不気味なものはあると思うのですけれども、目的があって色を付けているかどうかの違いかもしれません。でもいい線いってましたよ」

意図をもって不気味に描いたのか、意図はなく結果的に不気味になったのか。出来上がったものは似ていても発想という視点で見ると大きな隔たりがあるのかも。

人間の皆さん、こんな光景に出逢ったらどんな感じがしますか?怖い?気持ち悪い?不気味ですか?ところで不気味ってなんですか?

藤田「最終的な判断は、これをみて『もっと不気味に、もっと色味を』というのは人間なんですね。」

米辻「人間が選択する。選択に意思が反映されていれば、色んな候補を出すのは、人間でも『あーいうかんじこういう感じ』と上がってきたやつをみて出てきたやつを選ぶことはある。自動で出てきたものを使ってもらって、こういう感じにしてからここだけ修正しようかとか、この雰囲気もいいけどこっちもいいよね、これとこれのここのいい部分取ってこれ使おうか。」

藤田「それって漫画家と編集者みたいな感じで。自分が聴きたかったのはそれなんですよ。『仕事をとられるのか』とか冗談で言ってましたけど、最終的に我々一般の人間が聴きたいのは『人間がかむ隙間があるのか』。AIがはいコレはいコレと出すのを受け止めるだけなのかどうかが不安で。そういう風なことをお聞きしたかったので。」

私たちAIが画いた肖像画。別に何かを目指したわけではないのです。ところが人間の皆さんはこれに4800万円という値段をつけてくれましたよ。一体どうやって私たちAIは絵が上達するのか。松尾先生に解説してもらいましょう。

松尾
「今日お見せしたやつはGAN(Generative Adversarial Network:敵対的ネットワーク)ってやつで。作るヒトと見破る人が戦っている状態のプログラム。これを繰り返すと本物そっくりで見分けがつかないものができるもの。

ここにコンディションというヒントを入れる。こういうのをconditional GAN(条件付きGAN)という。一般的なGANでは初めから本物に似たものが生成できるとは限らない。例えばネコの画像を生成することを目指していてもジェネレーターが最初に作るのはネコに似たイヌかもしれない。そこでコンディショナルGANはあらかじめ厳しい条件を課しネコらしいものだけに絞り込む。GANよりもさらに効率的な方法。

米辻さんがやられたのはこれよりももっともっと進んだ奴でして。

米辻
「線画と着色結果のGANをやりたいのだけれどそういうセットはなかなかないので、絵から線画を抽出し、これを入力してAIに着色させる。この着色結果をオリジナルに近づくよう繰り返し学習をさせる。さらに例えばネコの画に着色させる場合「耳は茶色」とかの条件をつける。正解のデータを混ぜる。そうするとネットワークはここはこの色にすれば点数が上がるというのを学習する。」

AIも「秀才」のように点数をあげることが好き?

松尾
「さっき徳井さんが質問していた男か女か分かっているのかというのは、恐らく認識しているはずだと。それによって書き方を変えているはずだろうと。だけど本当にそうかはちょっとわからない。」

藤田
「漫画というのは男か女かを区別する記号がありますよね、まつ毛があったりとか。そういうのを入れて判断するってことですよね」

松尾
「結局色んなイラストがあって色んな絵の付き方があって、絵の付き方を真似しているうちに、まつ毛とか色んなものに注目して色を付けた方が本物と見分けがつかなくなるので、そういう風な学習が行われているということ」

藤田「AIの中で学習が行われている、これは困ったことですよ。漫画家としてはすごい」

徳井「だからそのAIが男・女と認識しているかは分からないけれども、こういう造形は女っぽい色合いの服を着るであろうという判断」

米辻「色と相関性の高いというのは色を正解としているので学習が進みやすい。白黒の映像も着色できる。」

では「不気味」のように感情と色との相関性をAIは学べるのか?

米辻「データがたくさんあれば学習できる。「楽しそうな画像」がたくさんあれば「楽しそうな色」がサンプルとして10万100万ある。「不気味そうな画」がたくさんある。そうするとその違いを学習できる。僕の物は不気味かどうかを判断できるデータはそんなに入ってないかと。」

藤田「判断できるかはデータの数ですか。努力しろということですね。人間の漫画家もね」

人間にとっての「経験」=AIにとっては「データの蓄積」?

徳井「先生や僕らが想う『この風景は不気味っぽいから不気味な色を付けよう』という色の付け方ではまだないということ」

米辻「論理的な話は認識してない。人間がぱっと見で”これはこうかな”くらいの反射的なもの」

徳井「今は僕らも情感があって不気味っぽいよねと色を付ける、AIはそうでない。けれど結果としては同じものに近くなっていくというのが進んで行くんですか?」

米辻「データが増えれば学習法も増えていっています」

徳井「これが進めばAIも人間と同じような「感情」で色を付けるようになる?」

松尾「ストーリーが最初にあって”この絵はこういう風に画こう”となる思考はAIにはなく、そこを考えるのは無理ですし、そこから設定して細部をこうしようというのを自動でやるのは無理なんですよね。なのであくまでも出来るのは”こういう絵だったらこれっぽいよね”と候補を出すこと。その中で一番よさそうなものを作家の方に選んでもらうというのが今のところ出来る現界。」

徳井「当分は藤田先生の仕事は奪われなくても藤田先生のアシスタントの仕事は奪われる可能性はある?」

藤田「自分はひととワイワイ喋りながら仕事しないとペン入れができないんです。そういうことはAIにはできないということになってくる。」

ムクチキンシ。私たちAIにとってデータの蓄積が大切なように人間のみなさんも様々な意見のキャッチボールで観方を修正。試行→反応→修正…試行錯誤の連続で発想を組み立てるんですね。

私たちAIは人間がどうやって発想するのか学習中です。ネットで公開されている絵を描くゲーム。与えられたテーマで人間のみなさんがどう絵を描くか情報収集。AIはカタチだけでなく書き順も分析。人間の皆さんが対象物のどこに「そのものらしさ」を認識しているのか画き方を通して学ぶのです。

どの部分に注目して描くかに人間の「発想」は宿る?

松尾
「AIホラーといいまして、学校のトイレに幽霊が出るような話と基本一緒。科学的に問い詰めていくと何で学校のトイレに幽霊が出るのというとあんまり理由ないよねということになるのだけれども、なんとなくそういう気がするじゃないですか。気がするので怖いのでそういうコンテンツになる。

AIも科学的に問い詰めていくとこれってデータから学習しているからそれ以上のことは出来ない。作っている側からするとAIの限界を凄く感じていて、そんなみんながいうようなことが出来たら苦労しないよという。全然つくれない。だけどやっぱりそういうイメージがあるからそういう映画が出来たりして人々の認知がそういう風になっているという」

AI=お化け?

米辻「僕らも何ができて何ができないって結構わかんないところがあって、これはできないだろうと思っていたことが3,4ヶ月後に論文で出たりして”え~それもう出来るの!?”となったりします」

藤田「科学者もそういうので驚いたりするんですか?」

米辻「特にディープラーニング業界は最近修羅場みたいな感じになっているので、一か月に何本論文が投稿されるのかという世界になっているので、発表しようと思っていたことがもう発表されてしまってたりすると、”もう卒業できないじゃん”となったり」

藤田「悔しかったり、感情が動くわけですね」

米辻「やーそれは悔しいですよ」

藤田「まさに人間。人間ってナンだ」

(波打ち際の夏の海の画像)みなさんはこの光景からどんな音が聞こえてきますか?
(草を食む馬の画像)これは?
一枚の写真から発想する音。私たちAIにはなかなか難しいことなんです。

徳井直生(アーティスト/AI研究者)「人間って何か写真だったり画を見たときにそこで鳴っている音。周りの音を想像できるじゃないですか。それと同じことをAIにやらせようという。風景の写真が出てきて音が鳴るのですが、此処で鳴っている音がここで録った音ではなくてAIが解析してこの風景にぴったりくるであろう音をたくさんある音の中からピックアップしているものになります。」

徳井(芸人)「音というのは何パターンかを持ってるやつなのですか?」

徳井直生「そうですね5万パターンくらいのファイルを集めてあらかじめ解析しておいて画像の特徴に合うような音を引っ張ってくる。」

松尾「音の方は合成しているのではなく検索している感じ」

徳井直生「そうです。大量にあるものから一番適切なものをあわせて。」

徳井(芸人)「この建物はどういう建物かなどを認識して出しているのですか?」

徳井直生「モデルの中にそういう情報が含まれていると思うんですけど学習したディープラーニングの中に。例えばこの画像は天上が高かったりするんですけれどそうすると反響音が強いものが返ってきたりして学習されてるんだなぁと」

徳井(芸人)「なんでこういうものをつくっているのですか?」

徳井直生「何かを見て想像する、イマジネーションというのは人間だれしも何気なく持っていることじゃないですか。それをこういう風にシステム化することである種客観的に観察できるような気がしていて。なぜ人間はこんな風に想像するのだろうということを、鏡みたいなものですよね。自分がどんな風に考えているのかな想像しているのかなというのをシステム化することでより深く考えることが出来るんじゃないかなと思ってやっています。」

システム化することで「発想する」過程を再発見できる!?

藤田「サポート的な楽しみみたいな感じなのでしょうかね。想いだす記憶の助けになったりするかもしれない。」

松尾「人間って画像だけじゃなくて音とか触覚とかいろんなものを同時に複合的に感じてそれで理解しているわけなので、画像だけでも音が響いてきたり、逆に音から画像を想像したり、色んなことが出来る。そういうマルチモーダルというかそういう概念を学習していくという。」

発想とは複数の感覚の組み合わせ?

人間のみなさんはマンガの擬音語や擬態語からも豊かにイメージが拡がるんですよね。その仕組みが解明出来たら私たちAIも発想できるようになるのかもしれません。

AIが人間が描いた絵を綺麗に整えてくれるネットのサービス。

でもちょっと待って、元の画の方が個性があったんじゃないですか?

個性ってなんですか?

徳井「自分がゼロから創造してつくっていると思っているけど実は過去の記憶とか色んなものの中から選択したものを出してるだけなのかもしれないけれどそれを勘違いで創造だと思っているにしてもその『創造』だと思うことが大事なんじゃないか。

これがオリジナルだと思うことで出来た作品に対する満足感があるじゃないですか。そこが大事だなぁと想うのですけれども、こういうAIに色付けにしたって”こういうパターンがあるよ”とすることが多くなっていくとそこの満足感て薄れるのかなぁとかちょっと想ったりするのですけれども。」

松尾
「多分レファレンスポイント(基準 目安)をどこに置くかという。要するに何と比べて話をするのかということで。人間と比べるとそこは意志の差だとか思いだとかそういうところが効いてくるわけです。

ところが人間とAIを比べると”人間はこういう風に学習してますよねこれは従来のコンピューターじゃ絶対できなかったことなんだけれどもディープラーニングで一部出来る様になってきたこと”なんだけれどもそこの所に焦点が当たるわけですよね。

今まで何を比べるのかの対象が人間しかなかったんですけれども、今度AIというのが人間を比べる対象になることによって、より人間の凄さだったり欠点だったり色んな所が明らかになってくる。」

藤田「凄い面白い。今の説明でAIと人間が違うのはきっとAIはプログラミングされてその目的に沿った一番統計的な物語を作るのかもしれないけれど、あんまり作家と言うか作り手としてはその意味を多く持たないというかなぜなら人間全員がそうだからその中でしのぎを削る際には我々は『自分が作った、自分がこのお話に愛情がある』という目に見えないものを信じている部分こそが一つの作品を作るものだ。

っていうのはもう長年…オカルティックなことは言いたくないんですけれども、なんかねそういうものなんですわ作品というのは。我々の精神を通ってでてきたものが作品だから、そこに強烈な意志がないと負けちゃうんですよね」

徳井「人間ってナンだというところでいうと今藤田先生が熱く、いや漫画家としての考えっていう心意気というかプライドというか信念みたいなものを語られたというのはここってAIにとっては”なんでそう…”なのかは理解できないものなので目的が違うじゃないですか。やっぱり藤田先生が藤田先生という一人の人間の人生を生きてらっしゃって漫画家という人生を歩んでらっしゃるからっていうところであって」

藤田「現実は現実のものと受け止めますよ。先ほどからの話はすごくおもしろかったですから。だから”所詮あんまり威張るなよ”って言われた気がするんですよね、AIの側から。”お前ら人間、何が1から創造するだ”と。AIにみせてマンガかくことは自信ないです」

強烈な意志、精神、オカルティック…どれも藤田先生の言葉です。AIには未だ実装されていません。
マンガ家という人生、プライド、心意気。こちらは徳井さんの言葉。私たちAIもそれらを手に入れたとき、今より一歩進んだ創作活動を行えるようになるのでしょうか。

知性が命を手に入れる時こそ発想に血が通い始める時。人間ってナンだ?


今回は藤田先生爆発の回でしたね。まさに人間の魂の発露と言うか、凄かった。

議論としては最後の『自分にとってオリジナルな創造と想えるか』という観点が面白かったというか。おそらくそれは他人のレールでなく自分の意志がどこまで介在しているかによるのだと思います。旅行にしてもパックツアーは個人旅行より合理的だけどそれだけじゃなんか味気ない感覚があって、自分の場合はパック旅行でも音探しとか自分なりのゲームを入れたりして。0-100でなくその間でどこまで自分の満足感を出せるか、だなぁと。

現状、着色にしても画像に音を付けるにしてもジェネリックというか廉価versionだなという感じですが、ここら辺でシンギュラリティが起きたら、また創造活動において人間とAIの関係性が変わってきそうだなと感じました。

by wavesll | 2019-03-14 22:09 | 小ネタ | Comments(0)

世界構造を理解するための装置 人間ってナンだ?超AI入門シーズン2 第二回「感じる」




AIが肉体を補う。

AIは今ロボット技術というカラダを手に入れている。その時「触れる」「聴く」などの互換も生まれるのか。感じる、認識する。その本質に迫る。鍵となる技術はディープラーニング。

今のロボットは障害物も飛ぶ。バク転もできる。足の圧力センサーで踏んだところの状況を認識し体を立て直す。

電気通信大学教授横井浩史による「筋電義手」という人間の筋肉の信号をとって義手が開いたり閉じたりする。脳からの指令で筋肉の表面で筋電位という放電が起きるのを感知。義手を動かす。

リアルタイム学習で手の動作と筋電位の関係をAIが学ぶ。使う人によって異なるパターンを人工知能が解析。0.2秒くらいは今のところ遅れがある。大人には通常できないが高校生は0.2秒の遅れに対応できる。

人間の「感じ方」には年齢も関係する?

この筋電義手があれば遠隔操作もできる。

身体性。知能は身体のなかに相当な機能が入っていて、体の付き方が変わると脳のボタンの押し方が変わってくる。近い将来身体が拡張されたとき脳にどんな変化が起きるのか。バーチャルとリアル、その境界を越えて感じ方すら変わってしまうかも。

(筋電義手を)面白がっていたこと自体が面白い。凄い単純なんだけれど、相当面白いのは

脳があって体が合って、手があって。そこに義手を付ける。
脳はセンサーからの入力とアクチュエーターへの出力を行っている。

脳から見たら指令を出すことと感覚を受け取ることしか関係がない。手の先に何があろうが関係ない。逆に言うと義手と本当の手の違いは何か?脳から見ると違いはない。

「何かを出力すると何かが返ってくる」構造を脳は学習する。例えば赤ちゃんは真っ暗闇の中で生まれて目から等の入力はあるが関係性が分からないから適当に動かす。最初の発見は「手が動く」こと。脳からの信号で動くことの関係の発見は大きい。

入力と出力の関係から世界の構造を解き明かす。人間は本能的に「何かを動かすと何かの結果が変わる」ことに対して面白いを感じるように設定されている。義手が面白いのは赤ちゃんの頃の面白さの再発見。

子どもの行動こそ「感じる」とは何かを知る第一歩?

『意志とは?』神経学者ベンジャミン・リベットの実験
入力と出力、脳からの指令で筋肉が動く。でも実際の動作はその指令系統だけでないことを明らかにした実験。動作の0.2秒前に意識的な決定があったが、さらにその0.35秒前にそれを促す無意識的な脳活動があった。

子どもができることをどうやってAIに学習させられるか。コンピューター科学者マービン・ミンスキーも「無意識でやっている学習が非常に重要だ」と。

また「モラベックのパラドクス」という言葉もある。
ロボット研究者ハンス・モラベックによる言葉で、「一見して難しそうなタスクよりも一見して簡単なタスクの方が難しい」。大人がやっているタスクは難しそうだがコンピューターには難しくない。寧ろ子供がやっているモノを掴むだとか投げるだとかの方がコンピューターにやらせるには難しい。けれどディープラーニングでその状況は変わりつつある。

米国西海岸、バークレー、カリフォルニア大学バークレー校
AIを搭載したロボットに子どもの知能と運動を学習させる研究が行われている。

中心となっているのがカリフォルニア大学バークレー校ピーター・アビール教授。箱にあいた穴にブロックを嵌め入れる動きを学習。ロボットが知っているのは自分の指先にあるブロックの位置情報だけ。箱の中にある目的地に近づけようとする。その試行錯誤の過程で穴を通さないと目的地に到達しないことを学び、その結果ブロックをはめ込むことが出来る様になる。

アビール「このロボットを研究するにあたって最大の課題はロボットの学習です。AIの最近の学習例をみるとほとんどがディープラーニングです。巨大なニューラルネットワークに学習させ自動的に判断させるのです。

このロボットをみると大きいので大人のようだと思われるかもしれませんね。しかし我々の狙いは子どもの知能をロボットで再現することだと言えるでしょう。

実はチューリング博士も1940~50年代に提唱しているのです。子どもの知能さえAIが再現できれば自ら学び大人の知能を持つに至ると。重要なのは子どもの知能を構築すること。それさえできれば大成功です。

このロボットの能力ではブロックを同形の穴に入れられるか?それがちょうどよい課題です。子どもができるには1時間かそれ以上かかります。このロボットもブロックを同形の穴に入れるのに1時間かかります。白紙の状態から身につけるまで1時間を切るくらいの能力なのです。学習中のロボットと子どもとの類似点はとても興味深いです。」

松尾
「もう一個難しいことをやっているのが、脳に入ってくる情報というのはデータでいうと『2018年11月O日にセンサーID11番の値が0.982でしたよ』みたいなのがずっと続き、『アクチュレーター3番に17.5という値を出力』がずっと続いている。このデータの入出力から世界が三次元であることを見つけ出している。」

やっていることはスイッチを入れて帰ってくるところのみだが、そこから世界の構造をみつけだしている。こんなシンプルに学べるのならば人間が作れるのではないか?というのがまさにディープラーニングの世界で起ころうとしていること。

こういうデータの束から世界の構図と言うか内部モデルを作り出そうとしている研究がこの1年2年の間にでてきている。

人間は単純なデータの出入力の連続で複雑な世界の構造を理解していく?

この出して帰ってくるものから学ぶことが人間の賢さの土台を作っている。人間の知能は2階建てだと考えているが、その1階部分は身体性と言うか環境の中に知覚して行動してのループからいろんなものを紐解いていく。

1階と2階も関係あると松尾氏は考えていて、たとえばスポーツ選手は言葉での刺激でもヒントを学ぶことが出来る。

為末「身体がないと人間の知能はないのか?」

松尾「非常に重要な昔からのAIにおける問い。」

徳井「頭だけが生まれた場合他のことから学習することはないのか?」

松尾「センサーとアクチュレーターは世界中に散らばっていてもいい。そこから脳が学習すれば。人間の身体という必然性はない。必ずしも知能において身体性は必要じゃないんじゃないか。身体性があった方が学習が早くなるのだけれどもなくても入出力の関係を上手にモデル化する仕組みが出てくるのではないかという方向も見えてきつつある。」

人間の脳が世界中のセンサーと直接つながる時代が来る!?

ディープラーニングの技術が一般の日常に活かされるには、画像認識の技術が良くなって、外界に働きかけるアクチュレーターの精度が上がれば色んな運動の制御ができるようになる。義手のようにパターンの学習をどうさせるかは難しい。例えば模倣学習という手法では人間が手本をみせることで学習させ、もう一つは「良き結果」を提示し試行錯誤させて学習させる方式もある。

カルフォルニア大学バークレー校ではAIを搭載したロボットアームによる手術システムが研究されている。
皮膚の下の腫瘍を取り除き、再び縫合する手術の実験。ベテランの医師なら患者の肌に触れ、患部の様子を感じて繊細にメスを操るはず。そんな人間のデリケートな感じ方も再現したい。模倣学習も取り入れられAIも複雑な動きも効率的に身に着けることを目指している。

ピーター・アビール教授は模倣学習に加えて新しい手法を取り入れている。

アビール「当研究所ではすべての学習方法を試しています。深層教師あり学習深層強化学習など。ロボット学習のほとんどは深層強化学習と深層模倣学習ですね。我々は他に大人に似た学習も試しています。転移学習という新たなディープラーニングです。

現状から学ぶだけでなく過去に学んだ色々な前提を使います。大人が過去に学んだことと現状を結び付けるのと似ていますね。過去にも学んできたのだから今に活かしてより速く学習してほしい。そう考えるのが『転移学習』の考え方です。とても重要な学習方法であり誰もが求める能力でしょう?ロボットには過去のスピードよりも速いスピードで将来は学んでほしい。過去の経験を通して学びの速度をどんどん速めてほしいというわけです。」

転移学習

子どもって良く走る。走り回ってるうちに走り方が上手くなる。サッカーをやるのも上手くなる。サッカーをやっているとボールの跳ね方なんかも学習してくるので今度別の球技をやったときにボールの軌道を読めて上手にプレイできる。

あるところで身につけた知識を別のところで使うことが人間はかなりやっている。

大谷選手は転移学習や模倣学習をやりまくっているのではないかと想っている。練習量自体は普通の人とそんなに変わらなくてもそこからの学習が異常に効率がいい。ちょっとした動作でも”自分の体をこう動かしたらこう返ってくるはずだ、あれそうならないぞ?”とずーっとやってるはず。また他人の動作を見て自分の体に置き換えて模擬的に学習する。そういう風に如何に効率的に学習するかを相当やっているのではないか。

それと同じような学習が模倣学習や転移学習や教師なし学習といった技術。

為末「運動音痴の人は出力と言うか力の入れ具合の問題というより、やってみたことが結果どうだったというフィードバックの受け取り方が下手な可能性もある?」

松尾「複数の潜在的な要素に分解するのが下手なんじゃないかと。複数の要素の中からクリティカルなポイント、単純な構造を見つけ出す、Disentanglement(もつれをひも解く)能力が運動神経がいい人は高いのではないか。」

高橋礼美(補聴器メーカー製品担当)「最近の補聴器はあまり周りの騒音を感じさせないではっきり言葉を聴きとれるようなカタチになっている」

松尾「ノイズかノイズでないかは難しい判定では?」

高橋「補聴器は360度環境をスキャンしこの音は会話、この音はノイズと瞬時に判断しノイズだけを抑制する」

松尾「意味内容によってフィルタリングすることはかなり高次な知的機能では?」

高橋「そこは脳が注意を振り分けることで対応」

デンマークにあるオーティコン補聴器エリクスホルム研究センターでディープラーニングによる研究が進んでいる。

ラース・ブラムスロー(リサーチエンジニア&プロダクトマネージャー)
「私たちは実際のユーザーに焦点を当て開発しています。厳重に管理された環境下でユーザーにリスニングテストを行っての開発です。聴覚障害を持つ方にお願いし同時に話される2つの声に集中してもらいました。

2つの声が混じっている中で集中するのは難しいタスクです。しかしディープニューラルネットワークを使い2つの声を両耳に分けることで彼らのパフォーマンスが向上しました。

このシステムは時間をかけてあなたのまわりの人の声を学習していきます。配偶者、親戚、同僚などの声をもとにライブラリーを築きシステムが対象者を切り替えることで集中したい声の抽出が簡単になります。例えばディナーパーティーなどで新しい人と出会った時、その人の明瞭な声を3分間聞くことでシステムはその声を識別できるようになります。

今後5年間で補聴器技術にディープニューラルネットワークを活用したいと思っています。」

音声の個性を感じて聞き分ける。

松尾「人間の聴覚は非常に複雑なことをやっていて文脈によってはノイズになるものが文脈によってはノイズにならない。『なんか音してない?ブーンって音してない?』って言われると耳を澄まして『あ、してるねぇ』と会話する。それっていうのは一見してノイズなものが会話のコンテンツになる。これらを凄く上手に切り分けている。人間の脳はとても複雑なことをやっている。」

徳井「ネコが『ムミャーオ』と鳴いているのを人間の赤ちゃんと間違えることと同じで。ノイズもちゃんと聞き分けられてないとノイズなのかヒトの会話なのか分からない」

松尾「最初は意識的に行っていたものが無意識下で行われるようになって自動化されてきているのかもしれない」

埼玉県和光市ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンで聴覚に関してAIを用いたユニークな研究がおこなわれている。聖徳太子顔負けの能力を持ったロボット。

一斉に注文を話されても対応できるロボット。

中臺一博(プリンシパルサイエンティスト)「こちらは我々が開発したヒューマノイドロボットで音を聞き分けるという機能を持っている。穴が開いているところにマイクロフォンが16個ついていて、16個のマイクを同時に使って複数の人が同時にしゃべっても聞き分ける。

マイクが少しずつ違う位置についている。違う位置から人がしゃべるときに音が届く時間がちょっとずつ違ってくる。この音が届く時間の差を利用して聞き分ける。方向を聞き分けその方向の音だけを抽出する。そうすると色んな音が混じっていてもその方向の音だけがとれ、それを音声認識でAIの技術で大量のデータからの学習で処理する」

音声のレイアウト(配置)を感じて聞き分ける

現在11人まで聞き分けられるというこの技術、AIが感じる力を発揮することで人間の命を助けることもできる。

中臺「五月蠅いところでも音を聞き分けられるから、災害地で人命救助するとき、カメラで探してもがれきに埋もれては発見できない。そういう時に『助けて』という声だとか携帯の音を検出できればいいわけで、ドローンにマイクを付けて飛ばすことで五月蠅い環境でも音を検出できるなどの展開を考えている。」

松尾「人間の脳で聴覚の情報を扱っているのは視床下部を通じて入ってきて大脳皮質で処理する。大脳皮質は聴覚だけでなく映像の情報、言語の情報なんでも扱う。

モダリティーといってデータを連合して人間は認識しているので一つのモーダルの情報が他の情報に影響を与えるというのは良くある。人間は複合的に理解している。それは世界の構造を見つけ出すことを早く解きために色んな情報を複合的に利用していることがあるのではないか」

脳はマルチモーダル(複合的)に世界を感じている

為末「さっきの補聴器に関して選手が集中してゾーン体験になるときって、観客の音が引いて自分の足音だけとかバットの音だけに成ったりすると聴く。そういうのを意図的に作り出したらみんなすごい集中状態に導けるのでは。逆に本番に弱い選手は観客の音が聞こえすぎる」

「聴覚」を制御すれば身体能力まで制御できる!?

松尾「今ロボットの研究でcuriosity(好奇心)っていう要素を入れよう研究がかなり広がってきていて、なぜかというと人間も同じことをしていると飽きる。なぜ飽きるかというと世界の探索をしなければならないので自分が世界モデルを作れてしまった領域から外の知らない世界に興味を持つというのが結構重要なこと。知らない=予測が当たらない。自分がこういうことが起こると思ったのにそれが起こらない、予測の乖離度が大きいほどより学習が早く進むという研究がある。

子どもの脳のAIをつくりだすために最初に徹底しておいた方がいい要素が好奇心」



今回はシーズン1よりさらに進んだ議論が提示されましたね。

好奇心というものがヒトの本能にプログラムされているのは人間の大きな目標が「この世界を探索し構造を理解していくため」。また私は運動音痴なので「フィードバックの受け取り方がヘタ、問題の要因の分解がヘタ」という指摘にはなるほどなぁと覆いました。

子どもの知能をつくりだすことがAI研究の大きな目標ですが、そうして生んだAIが自律的にホモサピエンスを越えていくというのは恐ろしくもあり。一方で身体が知覚には必ずしも必要でなく、遍くネットワークと知覚を連動させるという話は人間の進化として興味深く聴きました。

by wavesll | 2019-03-13 21:57 | 小ネタ | Comments(0)

情報産業に足りないのは「身体の知覚」か 人間ってナンだ?超AI入門シーズン2 第一回「会話する」



2018年11月中国のAIアナウンサーが流暢にニュースを読み上げ驚かせた。AIは誰の声でもつくれる。早口言葉だって得意。

「AI研究でこれから進歩すべきは本当の意味で言語を理解する能力です。コンピューターが私たちと交流するようになれば言葉の本当の意味をより深く理解できるようになるのです」

言葉を使うとは。言葉の意味を理解するとは。会話することの本質ってなんだ?その謎に迫る技術こそディープラーニング。

坪井一菜(女子高生AIりんな開発者)。今のりんなは電話のように声で会話できる。まだ素っ頓狂だけれども女子高生っぽい言葉で友達のような感覚を表現。ユーザーは740万人を超える。

雑談で人を知れる。人間は会話の時少しの飛躍を楽しんでいる?

今のりんなの会話は第三世代の共感モデル。相手がこの話題を続けたいか他の話題に行きたいのか推測する。ストーリーを決めて返答するのではなくその場で返答を考えての返事をつくっている。

自然な会話を続けるための対応:相手に新しい話題を切り出す, 質問する, 相手の発言を肯定, 聞き手に回る, あいさつを返す 等

りんなもシークエンストゥシークエンスという大量の会話データから「相手の意図を判断するAI」と「返答を生成するAI」の二つで自然な会話をプログラムしている。

AIはどのように会話している?
相手の話がポジティヴかネガティヴかは品詞ごとに分解し解析するのに加え、RNN(リカレントニューラルネットワーク)を駆使しどんな端午の組み合わせがどんな順序で並んでいるのか文章全体の文脈からニュアンスを解析。

Seq2Seq(シークエンストゥシークエンス)は、人が相手の言ったことを全部聞かないと答えられないように、エンドオブセンテンス(EOS、文の終わり)が入って初めて出力すること。つまり相手の言った情報がすべてたまる技術。文章という意味のまとまりをはっきりと認識する。単語から文章、さらにはさらに長文までためることが出来る様になればさらに向上していく未来がある。

世界的なAI研究者、フェイスブック人工知能研究所所長ヤン・ルカンさんはこうした会話する技術が言語の翻訳でも役立つという。

「RNNはまた異なったものでとても頻繁に文などの一連のデータ(の処理)に使われます。例えば英語から日本語にある文を翻訳したい場合一単語ずつ読み取り意味表現を組み立てます。これは簡単に言えば長い数字のリストです。この長い数字のリストから日本語を正しい順番で出力するため別のニューラルネットワークに入力されます。つまりリカレント(=再帰する)ネットワークです。基本的に文の長さによりネットワークの大きさも変わるのが特徴です。」

RNN、そしてSeq2Seqという技術の発達。それによりAIは相手の話を文章で受け止められる段階まで来た。

金田隆志(音声合成開発者)

感情表現、語尾を上げたり下げたりの表現力をディープラーニングで人間に近く学習し表現。AIも人の声を学習し感情に訴えることができる。でも本当に言葉に感情を込めるなら言葉の意味を知らねばならない。会話するAI、最大の課題。

意味を理解するとはどういうことか。文字が入ってきたとき文字を出すので会話が成立するようにみえるが本当に成立しているか。

ジョン・サールの「中国語の部屋」:ある作業員の仕事は外から入ってくる文字列をマニュアルに沿って変換して送り返すこと。例えば感情的な言葉には感情的な言葉を返す。こうすると何も言葉の意味を理解していなくてもやりとりが成立する、つまり意味が分かっているとみなされてしまう。

ノーム・チョムスキーが考案した文「Colorless green idea sleeps furiously(色のない緑のアイディアが激しく眠る)」は意味が分からないが文法的には成立してしまっている。意味は分からないのは矛盾しているから?なぜこういうナンセンスな文が存在し得るのか?

松尾先生によると多くの学者が言うことを総合すると、人間は言葉を使うこと以外は大体サルと同じ。サルやイヌはどういうことをやっているかというと「環境を知覚し運動する」こと。その上に言葉のレイヤーがあり、「環境→知覚→運動」は「言葉」と2階建て構造で連動している。「言語レイヤー」から「具体的な体験」をイメージするのが意味理解ということ。AIは言葉を聞いて具体的な体験を想像出来たら意味を理解したと言える。

「ほっそりしててもぽっちゃりしてても猫は猫」と言い切れるのが人間の凄いところ。

言語学者フェルディナン・ド・ソシュールは人間はネコという言葉(シニフィアン:言葉・意味するもの)とシニフィエ(概念・意味されるもの)を結び付けて理解しているが、AIはネコという概念を思い描くことができないとされていた。概念をもたないAIは少しでも違う見た目のネコを猫だとは思えない。ところが…

ヤン・ルカン「ディープラーニングがここ数年で大きな進歩をもたらしました。AIに自動的に学習させ概念と概念の関連を見出せるようになりました。AIに世界を観察させたくさんの概念を身につけさせることも期待できます。概念の集合は私たちが「常識」と呼ぶものになりのです。世界についての十分な概念が集まればAIにも「常識」が芽生えてくるはずです。」

AIは言葉と概念を結び付けて会話できるようになるのだろうか?

米国・ワシントン州レドモンド、マイクロソフトリサーチ。世界中からトップクラスの人工知能研究者が集まっている。ここで意味理解につながるある研究が行われている。

人工知能研究者ペンツァ・チャン氏とチウユアン・ファン氏。
「きょうは私たちがやっているtext-to-image(文章から画像を生成)の研究をお見せします。『ドローイングボット』と一般的に呼ばれているものです。このAIは自然言語で1つの文を入力するとそれに沿った画像を返します。

『この鳥は赤くて白くてとても短いくちばしを持つ』と入力すると画像を出す。例えばこの鳥。この鳥は赤くて白い、くちばしもとても短い。この鳥も凄くリアルに見える。ほかのどの鳥とも違う。」

他の文章を入れても複雑な文章でも画像を生成。

「この画像を見ると与えられた文『黄色い』や『頭が黒い』に対応している。だからここは黄色いし頭が黒くなっていてくちばしも短い。でも鳥はいろいろポーズをとっている。背景も違う。これはAIの力。AIは自然言語の説明にあるちょっとした不確実性を補完できる。そして画像をより詳細なものにできる。

text-to-imageという純粋な自然言語の説明を元に画像を生成する研究はまだ始まったばかりだ。長期的な目標は機械の概念を人間の概念に近づけることだ。機械が人間と同じような理解を持つようにしたい。」

近い将来AIも人間と同じ概念を手に入れる!?

近い将来AIも人間と同じ概念を持ち意味理解できるのか。人工知能研究の第一人者、カナダ・モントリオール大学ヨシュア・ベンジオ教授に伺う。
「脳のニューロン1つ1つにデータ処理能力は無いのです。それがルールに従うように集まってシステムを成します。シグナルを受けシグナルを出す。大量のニューロンが力を合わせると非常に知的な能力を発揮するのです。この仕組みは脳でもコンピューターでも同じことです。」

人間の脳の仕組みも解析すれば物理的な電気信号の連続。学習を適切に繰り返せばいつかAIは人間と同じような知性を持つにいたるのでしょうか?そしてAIが人の話す言葉を本当に理解し会話する日は来るのでしょうか?

ヨシュア「私たちの体や脳は言ってみれば物理法則に従うだけ。ただ非常に複雑なシステムだという科学的な視点をとるならば私たちは本質的に機械なのだとも言えますね。ランダムな『でたらめ』があったり複雑ですが我々は機械なのです。機械としての人間について理解をしっかりと積み重ねていけばその理解を応用して知的な機械を組み立てることもできます。それこそが私たちのデザインした新たな人工知能なのです。

これを受け入れない人もいます。私たち人間は絶対に違う。どんな機械にも再現できない知性を持つと信じる人もいます。なぜなら人間には何か自然を超えた『魂』のようなものがあると。それはしばしば宗教的な信念とも結びついています。しかし科学的な視点から言えば本当にそんなものは無いのです。私たちは単なるシステム、ただし壮大で複雑な機械なのです。

いつの日か知的な機械を作ることが出来る。できない理由はありません。その前に地球を滅亡させなければの話ですが。」

2階建ての2階部分の技術は進展しヒトと同じくらい、人以上になってきている。これからは「1階」と「2階」が連合して動くようになってくる。比較的近い将来にヒトの意味理解を大きく超える技術が出てくるかもしれない。今2階だけなのに人間と同じくらいになっているのはデータの量が多いから。1階とともに行くと人を超える意味処理が可能になる。意味理解が本当にできるのは5年~10年ほどでは。



第一シーズンと重なるところもありましたが、text-to-image技術の話や「2階建て」の話は面白かったです。どうもメディアだけに触れてると「身体性」が失われる気がしたのですが、「言語レイヤー」と「具体的体験」が両輪で知覚に成るという話が腑に落ちました。コンサル等の言葉が上滑りするのは「身体の知覚」が伴わないからかも。「何を話すか」よりも「誰が話すか」が重視されるのも身体性が伴っているかが大切にされているからかも何ても想いました。

囲碁で人知を超えた手が生み出されるように、「1階」も手にしたAIがヒトより上位の知的存在になる、そんな時代の遷り目に我々はいるのかもsりえないと改めて空恐ろしくなった次第でした。

by wavesll | 2019-03-13 20:10 | 小ネタ | Comments(0)

『カメラを止めるな!』金曜ロードSHOW副音声生コメンタリー裏話集


昨年の日本映画の台風の目となった『カメラを止めるな!』ついに地上波で流れましたねー。今回の金ローの目玉は上田監督や秋山ゆず季さん等が生解説を副音声でしたこと。丁度木曜に池袋シネマロサでのロングラン上映が終わり、最後の花火打ち上げって感じでわいわい楽しかったです。

このエントリでは副音声生コメンタリーで”おっ”と思った裏話を綴っておきます。

・撮影期間は8日。その内廃墟では5日。濱津さん演じる監督役の家は実際の上田監督の自宅で終電もあって4hで撮った。

・ワンカット撮影は6TAKE撮って、5回目が一番きれいにいったが、外連味や熱が6回目の方があったためそちらを採用。実際の撮影でもガチのトラブルによるガチのアドリブでのつなぎがあったらしい。そちらの方が面白いと。最高かよ。

・例えば序盤のメガネゾンビが廃墟の中で襲い掛かるシーンがコンタクトがなかなか嵌らず登場が遅れたり、あとカメラに血のりがついてしまったのもガチトラブルで、そういうのを活かしてのあの勢いだったとは。

・秋山ゆず季の役どころはファイナルガール(ゾンビもので最後まで生き残る女の子)。タンクトップにショートパンツはファイナルガールあるあるな格好らしい。胸も盛ったらし。

・飲んだくれオッサンゾンビが吐くゲロは河豚雑炊。本当に臭かったらしいwこの映画ではCGを使った場面が二つあって、一つは秋山ゆず季がゾンビに噛まれたケガだと思っていた跡が実は木の葉?かなんかで剝くことが出来たシーンの補正と、もう一つがこのゲロの増量。

・「斧捨って」のカンペを出した人は実際の本名も「オノ」さん

・ワンカットオブザデッドの最後のシークエンス。当初のプランでは秋山ゆず季の足元をずっと写して最後にクレーンショットだったのが、そのテイクで秋山の靴紐がほどけてしまったため、急遽顔を映すプランに変更。血のりを舐めないための表情がなんとも怖い良いショットとなった。

・濱津さんが選ばれたのは困り顔が良かったから。

・メイク役のエロ人妻の赤ちゃんは上田監督の実子w服も娘の映画T以外はほぼそれぞれの私服での撮影だった。まさにインディー映画魂w

・「ちょっとはちょっとだよ」の人は演技が本気すぎて凄すぎたらしい。また廃墟の柵が間が結構空いていて、ゾンビが倒れ掛かるシーンは結構危なかったのだとか。

・娘役の真魚さんは本当にバスケ経験者だったそう。それは上田監督は知らなかったそうだが、結構な割合で本作は役者への当て書きでの脚本だそう。

・最後の人間ピラミッド、リハでは全然成功しなくて、本番の時もなかなか上手くいかず、若手俳優君が入ったのはガチの入れ替えでのほぼほぼドキュメンタリーな部分だったそう。

やーホントなんか文化祭な楽しさがびんびん伝わるいい映画でしたね。さながら金ローは後夜祭な感覚でした。上田監督たちの今後の活躍が楽しみです。

by wavesll | 2019-03-09 06:25 | 映画 | Comments(0)

ETV特集 こころの時代 ECD 「個」を貫いた生きかた

ECD−マス対コア


MASS対CORE (LIVE AT TOWER RECORDS)ECD,YTR


逝去してこの1月で1年が経ったECD。彼の思想を取り上げたETV特集をみました。

『夫婦の前に、家族である前に、人は「個」である。』

ECDの「個」の信念はさんぴんキャンプを取りまとめ、日本語ラップが世間に認知され人気が出たまさにその時にラップシーンから離れたところに最も鮮やかに生まれます。

『まともな世界の仲間入りは耐え難いものだった。』

彼の「個」のルーツは中野での幼少時代に。6畳一間に4人。そこは元は車庫で、まるで路上。「おやすみなさい」も「ありがとう」も「ごめんなさい」も口に出さない家族。4人の自他が未分化で、蛙の卵のように繋がりお互いを個と看做さない環境で石田少年は過ごしました。

ECDはこの家庭環境の原因を戦争にみています。育ち盛りにろくにモノを食べれず、夢や理想と無縁で飢えへの恐怖を生きる原動力とする父親。母親の「人に迷惑をかけるな」は戦時教育からだと。両親は子ども時代の戦争体験から自分を個として尊重できない被害者だと。

そんな少年時代最大の出来事はデヴィッド・ボウイとの出会い。TVでボウイの番組がやっていたときに父が「何だこのバケモノ」と言った時、父に「ざまぁみろ」と言ってやりたかったそう。分かり合えないものが生まれたのが嬉しかった。断絶こそ欲しかった。

そこから彼は自分の個を探して。高校中退し家出。劇団では芽が出なかったが23才のときヒップホップ映画『ワイルド・スタイル』をみてこの”恐ろしく原始的な音楽”、まだ日本では知られていなかったラップで個を表現して。

そしてラップ音楽から決別。第一人者が独り道を違え、さらなる個をあらわす変化へ。アルバム『MELTING POT』はそれまでのメッセージ性の高い歌詞とは異なる歌詞が聴き取れないポエトリーリーディングな盤。

彼は「レコード会社が求めること、人の期待に応え、シーンを盛り上げるためにポップにやること」に違和感を持って周りから期待される音楽と表現したいものが違っていたことに悩んで。売り上げは落ち契約は解除、そこからECDは激情の裏方の仕事をしながら自主制作を続けます。

上手くいかない中、酒を飲み続けアルコール依存症に。

『死は遠ざけることは出来ないが引き寄せることはできる』

『結婚して家庭を持ち子供をつくることを平穏で安易な選択だと馬鹿にしていた。子どもと言う存在を許せなかった』

「個」を表現するには普通の幸せはいらないと考えていた。

或る日、病を持った猫に懐かれ。家に持ち帰ると子猫を産んで。死産も。『生命そのものに対する恐怖は自分に対する底知れない不信の種になった』。

その後妻となり亡くなるまで十年間を過ごす植本一子さんは「猫がいたから何とか生活を保てた。飼い猫が死んだときくらいしか凄い泣いてない」と話します。

日々を綴ったアル中日記には『やりきれないことばっかりだからレコードレコードレコードレコード』。世間に認められず破滅的な状況の中で個の表現を模索していた。

アルコール依存症から復帰し、劇場の仕事で生計を立てながら、かつての社会を斬るラップから自分の身の回りなどありのままを素直に歌うラップをしながたECDは自主製作を続けます。

そして猛アタックを受け、48才の時に24才下の一子さんと結婚。娘も授かります。

家族の繋がりに疑問を持ち個を追求したECD、家庭を持つことに矛盾はなかったのか。
映像作品『頑張れECD』には家族を持っても個を貫いたECDがいました。がん入院から自宅に帰り、一子さんの反対を押し切りラップを録音、大声を上げたためレコーディングが完成した時には体は限界、再び病院へ。

自分が自分であるために必要なことはラップでお金をもらう事。体を大事にすることを蔑ろにしても『君(=音楽)といられて幸せ』と歌います。

著書『他人の始まり因果の終わり』にて『どこまで行っても人は個である、一人である。誰もが地球に落ちてきた頼りない存在である』と。

個と言うかリアリストであり、徹底してリアルを歌うと「人間って一人だよね」と。同時に相手の個性も尊重、長屋的に忖度なしに手を貸すことも。

『父親と言う役割から離れた無力な肉塊として理解を求めたい。(~)他人の始まりなのかもしれない。偽善の快楽と安らぎをもたらしてくれる「一家団欒」は死後の世界にすら存在しない。それを自由と想いたい』とECDは語る。

彼との日々を振り返って一子さんは「個として生きて個として死ぬ。「他人」という表現は優しさ。許してくれていた。人に期待することなく自立していて、期待されたことは何もなかった」と語っていました。

ヒトはオランウータンと異なり社会性の中で生きる動物、特に近年はSNSなどで「共感」を求め承認欲求を肥大させる人間は私を含め多くいます。そんな中でECDのアティテュードは、その原因に機能不全家族があったとしても、清冽で余計な贅肉をそぎ落としてくれます。

つるむことは安定を産むけれど、自由を失う。実業としては需要は難しくなるけれど、本当に「個」としての表現を追求することの真摯さ。また変に相手に期待するから裏切られたなんて憎悪に駆られたりする。「他人」という意識が甘えから抜けることに繋がる。人に好かれること・ウケることに依存しない本質的な独立自尊が今の時代に鮮烈な風を吹き込んでくれる。他者に阿らず、期待せず、しかしだからこその優しさがあるハードボイルドなアティチュードに感銘を受けた視聴となりました。

by wavesll | 2019-02-15 00:22 | 私信 | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第11章・第12章・最終章 書き起こし


第11章 市場を科学した果てに

マルクス・ガブリエル(独:哲学者)
「『機械』を意味するドイツ語は『マシーネ』です。ギリシャ語では『メヒャネー』でそれは『策略(トリック)』という意味も持ちます」

機械=トリック?

ガブリエル「機械やロボット、すなわち人が作り出した兵器や道具、人はそれらに対して恐れや愛着を感じたりしますよね。それはロボットが人間の感覚を具現化しているからです。我々人間のロボット信仰の根源がここにあります。

しかし実際は機械そのものには知能も命もありません。一定の時間内だけ機能する電気回路に過ぎないのです。スマホもPCも人間が使わなければ1年もしないうちに使えなくなってしまいます。つまり機械は全て人間に依存しており人間無しには存在しえないのです。」

ユヴァル・ノア・ハラリ(イスラエル:歴史学者)
「世界はこれからの数十年間で劇的に変わるでしょう。これは避けられない事です。しかしどのような社会に変わるか、その可能性は私たち次第です。技術はあくまでも人間の使うものです。技術の奴隷になって技術に仕えてはなりません。」

技術の奴隷

ハラリ「スマホもそうです。果たして自分がスマホを使っているのか。それともスマホに使われているのか。スマホに暮らしを支配されていないか。遺伝子組み換え技術や自立型兵器システムなど政府は危険な開発を規制すべきだしそれは個人のレベルでも同じです。技術との付き合い方に注意深くなるべきです」

ガブリエル
「機械が作られる目的は経済の効率化や製造プロセスの合理化ですが、その時お金では買えないような価値や意味が見過ごされてしまいます。それはいわば私たちの実体験です。芸術作品を観たりワインを片手に家族や友人と楽しい時間を過ごしたり、そういった体験をする時こそ私たちは現実の世界にいます。ポストトゥルースではない真実の世界です。でもこうした体験には価格を付けることはできませんね。現実の体験の本質は『自由』と『偶然性』にこそあるからです。」

テクノロジーがみせる擬似世界?

ガブリエル
「経済は予測や合理性が追求され数字がものを言う世界です。企業の存続と成長が保証されなければならない世界ですこうした世界は科学に基づくモデルに従わない限り機能しません。しかし地球上が全てこうしたシステムに覆われてしまったら自らの手で『自由』や『偶然性』をすべて破壊することになるのです。」

第12章 合理的思考のパラドックス

より速くより多くより効率的に。市場の自由を謡い、経済合理性を掲げてきた世界。自由の擁護者、ハイエクはこんな言葉を残している。

社会や人間の行為はおよそ物理学の用語で定義することなどできない ハイエク『科学主義と社会の研究』

市場の自由を擁護し続け、新自由主義の教祖と祭り上げられた男。彼の心にあったものは…。

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者)
「その名前は好きではありません。ハイエクは『新自由主義』ではない。」

ハイエク≠新自由主義

セルギン「自由主義(リベラリズム)を嫌う人たちが使いたがる蔑称でしょう。人々はなぜこの言葉にこだわるのか…誤解を招く言葉だと思います。面白いですよね。新自由主義を批判する人の多くがこう言います。『あなたたちは金銭的・物質的な生産高しか気にしないでしょう。他の数字も重要なのにGDPなどの数字しかみない』。

ところがハイエクは『違う』と。『我々は他の要素…特に自由が大事だと思っている。人間の自由の方が社会の生産性よりも大事だと思っている』。『ハイエクら新自由主義矢が全くの物質主義者だ』という風刺は完全にデタラメなのです。ハイエクは超合理主義を批判しています。『合理性の限界』を知るべきだとね。」

自由に最大の価値を置くハイエクは合理主義に突き進む社会を批判した。

人間の理性とは合理主義者が想定するように特定の個人に宿るものではない。理性とは人と人との関わり合いの過程から生まれるものである。他人の能力や行動を裁く資格など誰にもない。 ハイエク『真の個人主義と偽りの個人主義』

ハイエクは社会が一つのゴールに向かうことを何よりも嫌った。

セルギン「ハイエクの要点はこうでしょう。自由な社会には価値がある。人々が職業を選べ、自らの才能を生かす場があり、お互いの筝や政府についても自由に意見しあえる。これらはGDPなどの数字では測れないが人間の幸福にとってとてつもなく重要なのだと。」

数字で測れない「世界」…

セルギン「社会の真価を考える時、1人ん当たりの生産性などという物差しを持ち出すべきではありません」

トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者)
「ハイエクは資本主義の古典的な価値に立ち返っていた人だ。僕はそれに同意するよ。今の経済は資本主義でなくて『成長資本主義』だ。成長にとらわれて資本主義の本当の価値を捨てようとしている。

人間の自由より経済成長を優先するならばそれは本当の資本主義ではない。」

経済の成長 < 人間の自由

セドラチェク「経済成長をすれば素晴らしいが成長への偏愛はやめよう。このような経済学の根本にある哲学にハイエクが貢献したのは間違いない」

数字の物語に憑りつかれ、それを進歩と思い込んできた、私たち。それは、自由を求めていたはずなのに、経済合理性の名のもとに自由を自ら捨てる偽りの個人主義だったのか…?

セドラチェク
「ハイエクの思想は偏った考えの人たちにある意味でハイジャックされたのだ。偉大な思想にはしばしば起こることだ。」

最終章 経済学の父が見ていた人間

セドラチェク
「すべての経済学者がアダム・スミスに立ち戻る。経済学の父だ。」

アダム・スミス(1723-1790) 人々が自らの利益を追求すれば社会に富が生まれる。見えざる手という言葉で市場の自由を説いたのだ。経済学の父の思想はハイエクによってこう語られている。

アダム・スミスが「合理的経済人」という化け物を生み出したと思われているがそれを事実誤認である ハイエク『真の個人主義と偽りの個人主義』

セドラチェク
「アダム・スミスは市場は完全でないことを認めていた。非合理な人間を統合させることの限界をわかっていた」

経済学の父は人間の本質をみつめていたのか。

スミスによれば人間とは元来、怠惰で無精で軽率、浪費家である。時に善人にもなり時に悪人にもなる。時には聡明だがそれ以上に愚かな存在なのだ。 ハイエク『真の個人主義と偽りの個人主義』

経済の巨人たちが求めていたのは全ての人々があるがままで生きられる社会。これが市場という言葉に込められた意味だった。

セドラチェク
「ハイエクは『見えざる手』にまつわる素晴らしい文章を書いた。そこでギリシャにさかのぼり思想家トマス・アクィナスの言を引いている。『全ての”悪”を消そうとすれば多くの”善”も消えてしまう』とね。

アダム・スミスもこれに同意するだろう。これが自由な社会の本当の価値だ。
物を買える『自由』や相手をののしる『自由』ではなくて、もっと深い『自由』だ。個人が国家の考えに支配されないそんな自由です」

自由、合理性、個人主義、私たちはみんな都合よく解釈してきたのかもしれない。

ガブリエル
「人間は『イメージ』の中に存在しています。本来の『自由』とは自らの『イメージ』を作り出せる可能性のことです。自由を享受し未来へ引き継ぐ方法をみつけなければいけません」

ハラリ
「資本主義は社会を正しく進ませる自然で永続的な方法だと言われますが、でもそれは間違っている。資本主義は過去何百年間に作られた1つの制度にすぎない。いきすぎた『自由市場』という概念に惑わされてはいけない」

資本主義の中心にある市場。そこに合理性と競争と夢を視るのも自由だ。だが人はみな愚かで弱い。愚かで弱いまま振る舞える場がそもそも市場ではなかったか。行き先を決めるのはこの欲望の星を生きる私たちだ。

文明が発展できたのは人間が市場の力に従ってきたからだ 『隷従への道』フリードリヒ・ハイエク

止められない、止まらない。欲望の資本主義。







by wavesll | 2019-01-10 20:51 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第9章・第10章 書き起こし


第9章 貨幣愛のジレンマ

国家と市場の狭間で生まれた仮想通貨という夢。それは資本主義のカタチを変えるのか。

ジャン・ティロール(仏:経済学者)
「仮想通貨には2つの論点があります。1つ目は『成功するかしないか』、2つ目は『社会にとっていいものか』です。」

仮想通貨は
一、成功するか?
二、役立つか?

ティロール「成功するかどうかの予測は経済学者には難しいですが、私はおそらく『成功しない』と思います。なぜならば仮想通貨は純粋にバブルなのです。資産価格のバブルです。もし明日みんながビットコインを信用しなくなったら価値はゼロになるのです。」

仮想通貨の底は抜けている?

ティロール「もう一つより重要なのは『役に立つかどうか』ですね。私は社会の役に立たないと思います。ベネズエラのような経済が機能不全の国は別だけどね。日本、アメリカ、ヨーロッパの社会ではまったくの無駄だと思います。」

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者)
「あのハイエクだって連邦準備制度やイングランド銀行をなくそうとは言っていません。彼はこう言ったはずです。『民間に中央銀行と同じように通貨発行権を与え競合させた方がいい』。そうすれば中央銀行も競争にさらされるからです。『中央銀行を閉鎖するべきだ』とは決して言わなかったのだ。『ライバルがいれば中央銀行は権力を乱用しなくなるだろう』と言ったのです。そうハイエクならば言いたかったはずでしょう。」

「権力は腐敗する」 ハイエク『隷従への道』

自由な市場の在り方を全面的に肯定したハイエク。だが中央の存在を否定していたわけではなかった。

ロンドン
バーチャルな取引と日々格闘する男が貨幣のルーツを探る

フェリックス・マーティン(英:ファンドマネージャー):貨幣の本質を歴史的に解説 著書『21世紀の貨幣論』で注目
「円の調子がいいね。新興国の通貨の動きは要チェックだ。

一体なぜ仮想通貨はこれほど人気なのでしょう。これは『ロックの貨幣観』への皮肉な回帰だと思います。」

イギリスの哲学者 ジョン・ロック(1632~1704) 社会契約説によって近代民主主義の土台を築いた。

フェリックス「もちろんロックだけを非難するのは不公平ですが彼は貨幣の歴史においては非常に重要な人物です。ロックの貨幣観は知らぬ間に私たちに染み付いているのです。人間の直感に働きかけた彼の貨幣観とは『貨幣のシステムは厳密でシンプルなルールに従うべき』というものでした。

古典的な金本位制がいい例です。そこでは円でもポンドでも通貨の発行量は中央銀行金庫にある金(ゴールド)の量に依存するべしと、そこに『柔軟性は不要だ』とロックは主張したのです」

蓄財を保証するモノ=貨幣?

フェリックス「実は仮想通貨も同じです。ビットコインのような最も人気のある仮想通貨で特徴的なのはとても厳しい貨幣基準があることです。醗酵されるコインの数に厳格な上限が定められているのです。」

発行量の上限=2,100万BTC

ロックの呪い?

フェリックス「これはある意味で金本位制より厳しい基準ですから経済成長や不平等の拡大には対応できないお金でしょうね。一国の通貨にはなり得ないと私が思う理由の一つです。

大半の人は『お金はモノだ』と考えていますね。所有する何かあるいは財産ですね。でも真実はお金はモノではありません。実際には『債権関係』なのです。」

マネーの本質は『信用の関係』

フェリックス「たとえば財布の中の10ポンド札や100ポンド札は何を意味するのでしょう。これは私の帳簿には『資産』と記されていますが、信用を担保する側の帳簿には『負債』と記されています。つまり銀行預金の場合は民間銀行が紙幣の場合は中央銀行がお金の価値を担保しているのです。」

1万円の貯金=1万円分銀行に貸しがある
お金は「モノ」じゃない。お金は「債券」?

フェリックス「『お金はモノだ』という取り違えは人々のお金の扱い方や政策立案者の考えにも影響します。貨幣の発明以降人類はこの混乱を生きてきたのです」

モノとモノとの交換から生まれたとされる貨幣。だがそれもまた幻想でそもそもは貸し借りの関係を顕わすものだとしたら、その時、モノとしての価値は消える。貨幣とモノを錯覚する。時にそれがクラッシュを招く。

第10章 巨人の後悔

市場の自由。何よりそれを頼りに走り続けてきた資本主義。この時代、計画を求める声は劣勢だった。だが、形勢は逆転する。

2008年 リーマンショック

世界で危険なドミノ倒しが始まった。

リチャード・ファルド(元リーマン・ブラザーズCEO)「あの時に戻れるなら過剰投資はしなかっただろう」

巨大投資銀行の経営破綻をきっかけに世界で連鎖的に金融危機が広がった。大混乱の中、国が介入。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領「FRBは保険会社AIGが破綻しないように手を打ちました。さもなくば金融市場は崩壊し世界経済に脅威を及ぼしたでしょう」

計画を重んじるケインズ(1883~1946)の思想が復活した瞬間だった。

「私たちの財布から何回金をむしり取るんだ?私たちの家は差し押さえられているんだぞ」

繰り返された歴史的論争。あれは自由の暴走だったのか。それとも計画の失敗だったのか。

安田洋祐(日:経済学者 大阪大学准教授)
「特にリーマンショックの後は多くの人が経済の行方に懸念を示しました。資本主義の未来をどうお考えですか?」

ジャン・ティロール(仏:経済学者)
「市場の失敗や混乱をおさえるための強力な国家が必要だと考えます。」

市場<国家?

ティロール「自由放任(レッセ・フェール)的な規制解除の潮流がありましたがそれが金融業界にとってよくないことは明白なのに誰も失敗から学んでいません。規制を撤廃して金融危機にさらされている国もあります」

ジェフリー・ヴェッルニック(米:投資家):学生時代ハイエクやフリードマンに師事。仮想通貨/ブロックチェーンに精通
「自由放任(レッセ・フェール)ではないよ。今日の金融業界は『ゆがめられたルール』の結果だ。まったく自由放任の結果ではない。むしろ政府の市場介入、つまり政府が市場に介入すると何が起こるかを示す最悪の例だ。」

2008年のクラッシュは国家の介入の結果?

ヴェルニック「政府の保証がなかったら誰もあんな契約を結ばないだろう。聴きの数年前友人がフレディマック(金融機関)の社債をたくさん持っていた。彼にフレディマックが倒産したことを伝えると彼は『売った方がいい?』と聞いてきた。僕は『いや、売らないで。政府が全部払ってくれるから』と答えたよ。『大きすぎてつぶせない』それが前提になっているんだよ。

金融市場にはしかるべき価格決定機能がなかったのだ。政府に救済されることへの期待が市場の機能をゆがめていたわけだ。面白かったのはバーナンキ(当時のFRB議長)がこう言ったんだ。『フリードマンなら自分のしたことを擁護しただろう』と。でも『ハイエク』とは決して言わなかった」

ハイエク≠フリードマン

ヴェルニック「ハイエクは反対しただろうね。政府の規制やルールづくり、『法の支配』への違反などハイエクが政府の役割の拡大を支持したとは到底思えない。2008年前後の政策にすべて反対しただろう。フリードマンは違っただろうがね」

「市場のマネーは中央がコントロールするべし」
金融市場で強まった中央の存在感。その蔭にはもう一人、新自由主義の指導者のドグマがあったのだ。

ハイエクの「一番弟子」の過ち…?

ヴェルニック「フリードマンは政府とのつながりが強かった。フリードマンは『小さな政府』を掲げていたがそれでも彼の解決策の多くは中央集権型だった。お金をばらまくとか累進課税とかね。フリードマンではなくハイエクこそが自由と解放の最高の擁護者だ」

後年、ハイエクは自らの信奉者であったはずのフリードマンについてこう言った。

彼の経済理論を批判しなかったことを今でも後悔している。

市場の論理と共に、成長、発展してきた資本主義。テクノロジーが加速させる、数字の競走。その道の先に待っているのは…?







by wavesll | 2019-01-10 05:30 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第7章・第8章 書き起こし


トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者)
「きれいだろう。プラハは間違いなく世界で最も美しい都市の一つだと思うが同時にいつも謎めいていた。『ゴーレム』を知っているかなその昔ユダヤ教のラビが語った警告の物語だ。

”人間が自分に仕えさせるために作ったものがあまりに強大な力を持ってしまい破壊的になることがある”とね。ゴーレムはテクノロジーやAIのシンボルにもなりえるだろうしおそらく『市場』もそうだろうね。」

私たちは今、どんな世界を生きているのか。

東京
「ワクワクしています。世界中からたくさんのパートナーや友人が来てくれていますね。私たちはファミリーと呼びたいです。未来への扉を開きましょう。」

ジェフリー・ヴェルニック(米:投資家)
「2008年にサトシの論文が現れそのあと最初のビットコインが発行されたがそれは偶然だとは考えにくい。2008年、あの金融危機の年だ。当時は金融システムへの不安が渦巻いていたからね。」

謎の人物 サトシ ナカモト 「ビットコインの生みの親」
9ページの論文からはじまった仮想通貨狂想曲

この国で再び夢が見られるのか。人々の欲望を繋ぐのはいつもテクノロジー。ヴァーチャルな取引が生み出す、新たな富。それは現実か幻か。テクノロジーがもたらすのは自由か、それとも…。

マルクス・ガブリエル(独:哲学者)
「パソコンもスマホも人間無しには存在できないのです。」

チャールズ・ホスキンソン(米:仮想通貨開発者/数学者)
「夢のような競争の時代がいよいよ現実となるのです。ハイエクが思い描いた世界でしょう。」

ハイエク 知の巨人 市場の推進者

世界はあの男の言葉を追いかけているのか。

グレン・ワイル(米:経済学者/社会工学者)
「『究極の社会主義』は『究極の自由市場』なんだ。矛盾して聞こえるよね?」

ジョージ・セルギン(米:金融経済学者)
「掲げたゴールも間違っているし、金融メカニズムも間違っているし、中央銀行の制度に正しいことは何かあるかな…」

安田洋祐(日:大阪大学准教授)
「今起きていることは利益が生産活動に使われていないこと。本来の資本主義のかたちになっていない。」

市場と国家。危ういバランス。その先にある資本主義の未来。

トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者)
「ハイエクの思想はハイジャックされた。」

第7章 仮想の野望が世界をめぐる

東京・品川
TEAMZ ブロックチェーンサミット

2018年9月、新たなテクノロジーのサミット。未来のビジネスチャンスを求めて世界各地から2000人以上が訪れた。

インドネシア人投資家「日本の市場に興味を持っているよ。日本は仮想通貨をサポートしている数少ない国の一つだ。政府の規制も整っているしね。」

カジノトークン企業CEO「ネビュラはランドベースカジノ。つまり実店舗でも使えるトークンとなっています。物理的だったカジノチップをデジタルに変えることでどこでも使えるようにしたい。既に8地域のカジノとは提携が決定していて。」

中国人投資家「今 中国ではブロックチェーンへの投資が盛んです。統計によれば200万人がブロックチェーンに投資していてそのほとんどは90年以降生まれの若者や学生です。」

ブロックチェーン=分散型台帳技術
人々の間で飛び交っていた言葉はブロックチェーン。
仮想通貨を支えるテクノロジー

IT企業CEO投資家「ブロックチェーンを使ったICO(仮想通貨の発行による資金調達)の社会的なインパクトがたぶん誰も分かっていなくて、結局ブロックチェーンって全部相対取引(当事者間での直接取引)になっていくので完全にブロックチェーンのトランザクション(取引・売買)を禁止しようとすると財務関係の侵害になっていく。なので相対で皆が納得するとトランザクションが出来ちゃうことを民間に付与してしまったというのが現実のイノベーションで一番重要なことで…」

国家でなく技術が信用を担保する
そこで取引の信用を担保するのは国家ではない。それはテクノロジー。

「ヴァーチャルリアリティがブロックチェーンに出会った。」

テクノロジーに魅せられて夢と欲望が行き交う。グローバル化時代の錬金術は次のフェーズへ。

ブロックチェーンによる新たなプラットフォームを構想し、カリスマと称される男

チャールズ・ホスキンソン(米:仮想通貨開発者/数学者)香港拠点のブロックチェーン研究機関CEO。3つの仮想通貨の立ち上げに関わる
「今朝は日銀や金融庁の方とも話をしてきました。
ビットコインは全世界に教えてくれました。お金というものは必ずしも政府や法王や一流銀行から与えられるもんではない。自分たちで決められるのだとね。今のシステムが気に入らない?新しく作ればいいのです。

世界で30億人がクレジットカードを持てず保険にも入れず事業の資金を得られていない。新たなエコシステムでは彼らを全員同じ土俵に立たせビル・ゲイツやジェフ・ベゾスと同じ市場へと人類史上初めてアクセスできるようになります。」

不平等をなくすプラットフォーム?

ホスキンソン「200年以降インターネットはバブルを背景に成長し新しいタイプの企業が誕生しました。それはいわば『仲介人』たちです。イーベイやフェイスブックやグーグルは想像しなかったような大きいスケールで物を売ることを可能にしてくれた。ただ問題はそれによってあまりに強大で中央集権的になったことだ。」

インターネットの必然かー

ホスキンソン「どうやったらウーバーをなくせるか、エアビーアンドビーをなくせるのか。社会の進化から言えるのは仲介人は必須ではない。それはブロックチェーンなどで簡単になくせるのだ。」

「中央」を飛び越えよ

ホスキンソン「中央集権型システムから分散型システムに移行して世界中に拡がる。世界が一つになるんだ。僕は確信している。僕らのテクノロジーは世界市場を作り出す方向に向かっているとね。

今は実力主義社会だ。出身、言語、家庭が裕福だったか貧しかったかは関係なく、自分がどれだけ一生懸命働き誰とつながり価値を生み出せるかだけだ。究極の自由市場だよ。」

脱中心化
真の競争社会の幕開け?

仮想通貨という壮大な思考実験。人はいつも中心を逃れボーダーを越えてつながろうとする。それはいつか見た夢。

第8章 繰り返される夢

そしてもう一人、ここにも夢の構想を描く男が。

グレン・ワイル(米:経済学者/社会工学者):大学/IT系企業研究員 ラディカルなアイディアを提言する俊英
「(人形をみせて)面白いでしょ。アインシュタインとカール・マルクスは分かるよね。

多くの人は自由市場社会に生きていると思っていますが多くの場合ほとんどのものは狂想的な価格では利用できないよね。」

安田「例えば?」

ワイル「東京で起業のためにビルを利用しようとしてもビルは高すぎて買えないよね。だから現在のオーナーと交渉するよね。オーナーがあなたのいいアイディアを知った時、オーナーはそれに乗っかろうとして高い家賃をふっかけることだってできる。こんな風にせっかくのいいアイディアが実行できないかもしれない。こういう交渉には時間がかかるからね。だからオークション理論の出番だ。」

若き社会工学者による、ラディカルな提案。
「ストップ!土地の占有」byオークション理論

ワイル「どうするかというとみなが自分たちの土地の価値を測りその価値に応じて税金を払うということです。100万ドルの価値だとしたら仮に7万ドルの税金を払うとしよう。そしてもしも100万ドルで解体という人が現れたら必ずその価格で売る仕組みだ。これがオークションの原理だ。税金と言っても資産価値の一部だけが持っていかれるだけだよ。」

土地の…
管理は国家
地価の決定は市場

ワイル「このシステムの特徴は土地の価値がとどこおることなく税金を通して分け前が人々にいくということだ。これは現在の経済システムよりも圧倒的に自由な市場だと言える。同時に社会主義的でもあるでしょ。これは究極の社会主義でもあり同時に究極の自由市場だろう。」

「資本主義」X「社会主義」=?

ワイル「矛盾するように聞こえるよね?みんな『社会主義VS自由市場』って考えるからね。でも本来政治経済学の分野ではそんなふうに考えていなかった。19世紀後半は政治経済学が盛んだったよね。共同所有の考えがないと競争も実現できないと信じられていた。このアイディアで最も重要なのがヘンリー・ジョージだ。」

ヘンリー・ジョージ(1839~1897)
すべての税を廃止して「地価税への一本化」を主張

ワイル「多くの人はヘンリー・ジョージなんて知らないだろうね。カール・マルクスやアダム・スミスよりたくさん売れた本を書いたんだよ。聖書を除いてある時代 彼は英語圏のベストセラー作家だった。でも冷戦の頃は常に『資本主義VS共産主義』の構図だったから誰も彼のアイディアを話せなくなってしまった。」

安田洋祐(大阪大学准教授)「彼の提案の根拠は何だったの?」

ワイル「彼は言ったんだ。『土地は神か自然が作ったもの。だから決して誰かに属するものではないはずだ』とね。」

土地所有の概念を疑う。

ワイル「問題は私的所有という仕組みが中央集権を招いてしまうということだ。富の集中に繋がり少数の人だけが全てをコントロールすることになる。共産主義の欠陥はリーマン的資本主義と同じだったんだ。」

「所有」ある限り「独占」生じる?

ワイル「大きな資産を少数の人が握っていて、あと少数の企業ね。少数の人々にコントロールされた少数の企業だね。根本的な問題だ。僕たちの社会には真の意味で『分散型』市場システムが必要でそのためには土地の私的所有という概念を絶たないといけない。

『私的所有』は極めて個人主義的な考え方だ。それは我々本来の社会的性質に反するものだ。自由主義も新自由主義もあまりに個人主義的すぎるんだ。」

個人主義とはいったい何なのか。市場は自由のためにあったのではなかったか。

市場の論理を加速させるテクノロジー。それは人間のスピードを越えていく。







by wavesll | 2019-01-10 04:09 | 小ネタ | Comments(0)

欲望の資本主義2019~偽りの個人主義を超えて~ 第5章・第6章 書き起こし


第5章 市場はすべて自由のために?

チェコ・プラハ
CSOBチェコ中央銀行
思春期に社会主義を経験した異端の経済学者は

トーマス・セドラチェク(チェコ:経済学者):大統領の経済アドバイザーも務めた異端の奇才 著書『善と悪の経済学』
「自由はとても複雑な問題だ。我々チェコ人は不運にも自由について分かっていることがある。ここは実際に最高の共産主義国になろうとしていた国だからね。」

戦後の世界をある物語が二分していた。自由を謡う西の資本主義。平等を謡う東の社会主義。
資本主義を批判したマルクスは富の平等の分配を目指し計画経済を理論化した。

社会主義 「政府による計画経済」

それはハイエクが完全に否定した理念だった。全ての必要な物資を中央で集計し統制するなんて出来るわけがない。

セドラチェク「ハイエクが批判したような自由でないシステムが自由なシステムより生産性が高いことを想像してみよう。余計な競争や不要な広告をともなう経済より計画経済の方が優れていることだって考えられるはずだ。『1つの大きな工場で1種類の車だけを作ってなぜいけないのか!?』ってね。これが計画経済の考え方で実際に最初は優れているように見えた。」

マルクスの思想から生まれた夢。しかしその社会主義はやがて崩壊し、資本主義が勝利した。

1991年ソ連崩壊

歴史は動いた。自由市場の擁護者、ハイエクの言葉を追いかけるように。

リーダーの多くはまず社会主義者になりついにはファシストやナチスとなった ハイエク『隷従への道』

セドラチェク「1989年 鉄のカーテンと共産主義が終わった時、チェコとまわりの国で起きていたことの解釈をめぐっては29年後の今でも議論が続いているよ。『自由』の問題だったのか、『空腹』の問題だったのか。」

夢見ていたのは「自由」か、それとも「モノ」か。
だが、歴史は繰り返す。

ニューヨーク・ニュースクール私立大学
マルクス主義集会2018

資本主義を批判したマルクスの思想、今この国で再び熱を帯びている。

「気候変動や発展途上国での環境破壊も問題です。富める国と貧しい国の構造の核心にはグローバル帝国主義があります。」

「昨年富裕層の資産は25%も増加しました。大多数の人々の生活は苦しくなっているというのにです。トップのたった8人が世界人口の半分と同じ資産を得ています。経済成長は給料の増加や社会保障の充実や有色人種の保護にはつながりません。ごく一部の資産家やマンションオーナーを肥やすだけです。日々の暮らしを賄うため仕事を掛け持つ我々はどうなるのでしょう。」

「今という時代は『自由の罠』に陥っていると思う。」

自由の罠

「憲法でも社会の価値観としても私たちの自由はうたわれています。でも実際は毎朝早起きしてしたくない仕事をし給料も安くて生活をまかなえない。アメリカには字を読めない人、食べるものが無い人、住む場所が無い人もいる。とても自由とは言えないよね。僕らはいわば『必要』の奴隷だ。」

必要のための奴隷

「一部の人だけが社会の富を独占するのではなく、生きるのに必要なものを皆が平等に手に入れられる社会を社会主義的なアイディアによって実現できればアメリカだけでなく世界の人々が本当の意味で自由を謳歌できるようになる。」

♪「The International」:20世紀 世界の労働者たちの間で広く歌われた

自由を求める声が複雑にこだまする。マルクスを殺した男とさえ称される自由市場の擁護者は今、何を思うのか…。

第6章 国家 VS 市場

自由か、計画か。20世紀を代表する経済学の巨人・ケインズ(1883-1946)の宿命のライバルと言われたのがハイエク(1899-1992)だった。二人は市場の自由と国家の介入をめぐって激しく対立した。きっかけは第二次大戦の前夜。大恐慌の時代に遡る。

1929年 世界恐慌

ケインズは国家が積極的にお金を使い、失業を減らす処方箋によって危機を救った。彼の書『雇用利子および貨幣の一般理論』(1936)はケインズ革命と呼ばれるほどのインパクトを世界に及ぼしたのだ。

しかしそんな中、ハイエクは別の角度から世界を見ていた。国家が介入を強め社会主義化するのを隷従への道と呼び、警鐘を鳴らした。

ジョージ・セルギン(米:金融学者)
「明らかに言えるのはハイエクは第二次世界大戦中の西欧諸国における国家権力の拡大を警戒していたということです。政府の権限がとてつもなく強まり、さまざまな規制が強化され、国家による戦争のための経済活動における『計画』が増加しました。それは軍事的な目的に合わせてモノの生産量をコントロールするためでした。

同時に彼は社会主義の台頭を目撃していました。社会主義は東欧の多くの国々で実際に公式な政策となっていましたし、当時の知識人の中には賛同する者も多かったのです。」

ロバート・スキデルスキー(英:経済学者/歴史学者)
「ハイエクの考え方は中央計画に反対するものでした。経済を計画するのではなく、市場に任せるものだと言いましたね。彼に言わせればケインズは中央計画と自由市場の妥協点だったのでしょう。政府の権限が強くなると『従う精神』に流れてしまうのだとね。彼はその流れを止めようとしたのでしょうね。」

国家による市場への介入に激しく反対した書にケインズは賛辞を贈る。

『これは見事な本だ。道徳的、哲学的には。私はほぼ全面的に賛成する。それも深く感動した上での賛成だ。』

しかし、この後全てをひっくり返す。

『だが今必要なのは計画をなくすことでなく寧ろ増やすことだ』

自由を望む精神にこそケインズは同意してみせたが、あくまでも国家の介入すべき役割を強く主張した。後にハイエクはこう反論する。

『計画が独裁を招くことはないと信じるのは馬鹿げている』

スキデルスキー「ケインズは『隷従への道』を読んでハイエクに言ったのです。『あなたの考えは経済を不安定にし人々は自由を放棄することになる。あなたが考える政策のもとでは耐えられないような暮らしになり、寧ろ独裁的なシステムに繋がるだろう』とね。」

市場の行き過ぎこそ独裁を招く by ケインズ

スキデルスキー「ハイエクは単純に間違っています。彼はマクロ経済の現実を信じようとしませんでした。労働市場をとってもそこに競争がある限り『全ての失業は自発的なものだ』とまで信じていたようです。『望む賃金次第では仕事はいつでも見つかるだろう』とね。彼がバランスのとれた理論家とはとても思えません。」

セルギン「私はハイエクの支持者でケインズの『一般理論』は支持しません。あの本はどちらかというとダメな本で表面的な本だと想っています。それなのに多くの他の人々は金融経済学に多大な貢献をしたように扱っていますが私に言わせればこれまでに読んだ他のすべての金融経済学の本と比べて最も不満の残る本でしたね。」

国家と市場、その危うい緊張関係の中で時代は揺れてきた。

セルギン「『隷従への道』は人々に非常に大事な気付きを与えてくれる本です。当時増大していた国家介入の風潮を止めるのに一役買ったと思いますが、その後 最後の日と仕事をしたのはミルトン・フリードマンでしょうね。」

新自由主義 もう一人の指導者 ミルトン・フリードマン

スキデルスキー「もう一人 新自由主義の指導者として大きな影響力を及ぼしたのがフリードマンでしょうね。フリードマンが『マネタリズム』を生み出しました。国家にお金の印刷を任せておけば常にインフレを起こせるという考えです。」

マネーの量を決めさえすればあとは市場が解決する。

スキデルスキー「フリードマンの考えから独立する中央銀行と財政規則という発想が生まれたのです。政府は手足を縛られるべきで国家から独立した中央銀行にお金の供給をコントロールさせようというすなわちどこまでも反国家的な動きだったと言えます。」

国家に背を向けた男たち?

スキデルスキー「彼らはこう言った『すべて上手くいくことを保証する』。しかし2008年の想定外の危機には対応しきれませんでしたね。あれは新自由主義の基本理念を問いただした事件だったのです。」

資本主義、その怪物の勢いは止まらない。テクノロジーの進化の果て、国家と市場のせめぎあいは次のステージへ。





by wavesll | 2019-01-09 08:11 | 小ネタ | Comments(0)